世界には様々な趣向をもった人達がいる。それぞれの国によってヒットするタイトルの傾向こそ異なれど、国を代表するような定番作には、地域に関係なく多くの人を惹き付ける何かがあるのではないだろうか。 スペインの「Commandos」シリーズは、ヨーロッパだけで累計200万本を優に越す大ヒットシリーズだが、残念ながら日本での知名度はいまひとつである。このような不運なタイトルを扱うときは、レビュアーとして思わず力が入らずにはいられない。今回は、(日本では)未だ日の光が当たらない名作シリーズの続編「Commandos 3」の魅力を、たっぷりとお伝えしよう。
■ 敵に気づかれることなく慎重に、そして確実に仕留めるのだ
多くの読者はRTSと聞くと、「Warcraft 3」や「Age of Mythology」といった大規模な戦闘が売りのスポーツ系タイトルを思い浮かべるかもしれない。しかし「Commandos 3」は、同じRTSながらもプレイスタイルはまったく異なるゲームだと考えた方がよいだろう。というのも、コマンドス部隊は常に人数や地形面で絶望的ともいえる不利な局面で、いかにして敵兵を仕留めてゆくかに面白みが凝縮されているからだ。
たとえば、コマンドスが敵兵に正面から立ち向かおうとしても、いとも簡単に蜂の巣にあってゲームオーバーとなる。そうならないためには、敵兵に気づかれないよう何らかの方法でひとりずつ仕留めていかなければならない。しかし、多くの場合において敵兵は一箇所に複数おり、コマンドスは彼等全員を同時に相手できるほど強くはないのだ。6人のコマンドスが持ち合わせる様々な特技を駆使して、確実に敵を仕留められる状況を作り出す。そのパズルゲームにも似た課程が、「Commandos」シリーズの醍醐味である。
■ すでに職人芸の域に達したグラフィックを見よ 史実を題材とした「Commandos 3」のリアリティを支えているのが、圧倒的ともいえるステージの描き込みだ。まずは何も言わずに下のサムネイルをクリックしてほしい。まるで現実の戦場を写真撮影し、そのまま張り付けたかのような錯覚に陥るのではないだろうか。「Sudden Strike」や「Cossacks」などに代表されるように、ヨーロッパのデベロッパーは写実派の絵画のような精密なグラフィックを得意とするが、それらの中でも「Commandos 3」は一歩抜きん出ている。 ゲーム全編にこのクオリティの背景が敷き詰められており、新しいマップに切り替わるときは、ミッションの確認そっちのけでしばしの間呆然と見とれてしまう。第2次世界大戦にそれほど強い関心を持たない筆者ですらこうなのだから、ミリタリーやジオラマに興味を持つプレーヤーであれば、これらを眺めるだけでも買った元は取れるだろう。
■ 幾通りものミッション遂行方法を実現させる6人のコマンドス達 プレーヤーが操ることになる6人のコマンドスは、何かしらの能力に秀でたスペシャリスト集団である。ここでは各キャラクタの特徴を画面と共に簡潔に紹介しよう。 「Commandos 3」のユニークな点のひとつが、任務を遂行するための方法が常に複数あり、それを変えるだけで、まったく別のミッションに変貌するところだ。一度普通にクリアしたから、じゃあ次は違うコマンドスを使ってみよう、次は銃器を使わず敵兵を生け捕りにしてみよう、といった具合に繰り返しプレイしたくなる。
■ 史実に基づいた3本のシングルプレイキャンペーン 「Commandos 3」のシングルキャンペーンは、第2次世界大戦の激戦地から3カ所をピックアップした全12ミッションで構成されている。12本というと、量的にはそれほど多くないものの、1本あたり3時間を超す高密度の内容だ。少々ネタばれを含んでしまうが、ヨーロッパ戦線の陰で人知れず暗躍するキャンペーンの内容を、ざっと解説しよう。
ロシアの司令官と、連合軍オドネル将軍との機密会談が、厳寒のスターリングラード中央広場にて行なわれることになった。だが、ナチの軍隊がこれを狙っているとの情報をキャッチ。コマンドス部隊は、会談を邪魔するあらゆる障害を取り除くことが大筋の目的となる。 スターリングラードの最初のミッションでは、ゲームが始まるやいなや、ナチの狙撃兵によって味方が次々と倒されてゆく。味方が全滅するよりも前に狙撃兵を倒さねばならないのだが、この索敵距離が一画面弱という半端じゃない長さ。時間制限プラス敵よりも不利な索敵距離を強いられるという、2重の意味で緊張感のある内容だ。 無事にナチの狙撃兵を倒したと思いきや、今度は更に大規模な軍隊がスターリングラードを襲う。爆撃によって敵味方もろとも町が粉砕され、パラシュートで降下した空挺部隊が周囲を幾重にも取り囲む。この包囲網をたった3名のみで突き破れという、普通に考えたらできっこないだろという指令なのだが、不可能を可能にしてしまうのが我らがコマンドスだ。しかし、この後に思いも寄らない展開が待ち受けている。 筆者が「Commandos 3」の全キャンペーン中で特に気に入っているのが、ここからの展開だ。スターリングラードの最終ミッションは、コマンドス3名が地下牢に閉じこめられた状態でスタートする。最初の目的は地下牢からコマンドスを脱出させることで、当然ながら丸腰のために、普段のように振る舞えない。もちろん地下牢の周囲には衛兵が多数巡回しており、たとえ彼等から銃を奪い取っても、狭い地下では逃げ場がないため気軽に発砲できない。煙草を放り投げてこれを敵兵が吸っている間に刺殺するといったように、極力音を立てずに仕留める必要があるのだ。ここでは敵兵の隙を伺いながら行動するという、スニークアクションの醍醐味を存分に堪能できるだろう。 地下牢エリアを脱出するだけではミッションは終わらない。実は頭上をとある要員が訪れることになっており、これを暗殺するのが最終目標である。だが、地上のエリアはナチの演説が行なわれるほどの中枢拠点。そのため警備兵の数も100名規模で、一見すると蟻一匹たりとも入る隙はなさそう。実際に、地上へと通じるマンホール(複数ある)から首をひょっこり出したところ、その瞬間に撃ち殺されてしまうほど堅牢だ。
無事に地上へ出た後、要員を暗殺する手段は3通りある。ひとつは、要員がリムジンを乗り降りする瞬間にスナイパーが狙撃。次に、建設現場から爆薬を盗み出し、サッパーがこれを用いてリムジンを爆破。そして、高位の軍服を強奪したスパイが、変装して要員に近づき暗殺という方法だ。いずれの方法にしても、大勢にガードされながら動く要員「だけ」を殺すため、相当手応えがある難易度。まずは地上エリアに3人の活動拠点を築くことが、クリアへの近道となるだろう。 2番目のキャンペーンのあらすじは、ナチが占領下から強奪した美術品を、貨物列車に乗せてドイツへと運び去るというバックグラウンドストーリー。その移動経路を連合軍は把握したので、何とかして阻止したい。だが、大規模な攻撃で美術品を傷付けてしまっては元も子もない。そこで、少数精鋭コマンドスの出番というわけだ。 セントラルヨーロッパのミッション序盤は、シーフとスパイの2人を中心に展開される。彼等を敵兵に見つからないよう、駅から列車へと潜り込ませるのだ。この2人は、派手な銃撃戦こそ向かないが、隠密行動には最適のコンビである。シーフが屋根の上から縄ばしごを下ろしてスパイを登らせるといった、チームプレイにも期待できる。 列車が発車した後に、グリーンベレーを乗り込ませて3人でこれを止めるミッションは、デモ版にも収録されるだけあって最大の見せ場と言っていいかもしれない。「Commandos 3」には様々なシチュエーションが用意されているが、それらの中でも高速で走る列車での死闘は特に鮮烈な印象を受けた。敵兵は11両編成の車内のみならず、屋根の上にもわんさかといる。しかも、最後尾の車両からは援軍が続々と駆けつけてくるのだ。
・ノルマンディー シングルキャンペーンを締めくくるのは、第2次世界大戦の激戦地として知られるノルマンディー。コマンドスは上陸作戦の数時間前に、一足先にナチの後方基地へと侵入する。そして、火薬庫などの重要施設を破壊することで、前線への補給を滞らせるのが目的だ。 このキャンペーンではマリーンがようやく初登場し、湾岸施設に停泊している補給艦2隻を爆破という大任を受け持つ。海底に張り巡らされた有刺鉄線を除去したり、水中深くに潜って船底に爆弾を設置といった、マリーン以外のコマンドスでは到底不可能なミッション内容だ。
そして最後のミッションでは、グリーンベレーが自ら連合軍兵士と共に上陸挺へ乗り込み、オマハビーチでの激戦を繰り広げる。ここでは連合軍の兵士も自ユニットとして操作できるが、ナチのマシンガンや湾岸砲の前にはなすすべもない。まるで映画「プライベート・ライアン」冒頭部さながらの凄惨さをプレーヤーも体験できるだろう。
■ 最初の敷居の高さを乗り越えさえすれば面白さは保証
特に屋外における90度単位の視点切り替えは、角度が急なためにどちらを向いているのか一瞬戸惑ってしまう。これはできれば、屋内の形式で統一してほしかったところだ。それと、ここまで素晴らしい背景にも関わらず、解像度が800×600ドット固定というところももったいない。 もうひとつは、本シリーズの難易度が高いことを開発側は知っていながらも、難易度調節機能を実装していない点。例えば敵兵の視野範囲を甘くしたり、銃器の命中率を下げるといったEASYモードがあれば、もっとプレーヤーが助かるはずだ。 また、最初のミッションからシビアな制限時間が設定されているのもいただけない。「Commandos 3」のようなタイトルは、戦場を睨み据えながらじっくりと好きなだけ作戦を練れる方が向いているのではないかという気がする。 しかし、上記の細かな不満はあれど、「Commandos 3」がシリーズの名に恥じない名作であることに変わりはない。一癖あるゲームシステムのため、最初は何をしてよいのかわからず、もどかしさを感じる部分も確かにある。だが、敵のあしらい方がわかってくると、それまでの印象がガラリと一変するだろう。ここまで読んで興味を持った読者は、是非とも「Commandos 3」の新鮮なゲーム感覚を実際に体感してほしい。 Commandos 3: Destination Berlin (C) Pyro Studios SL, 2003. Published by Eidos 2003. Commandos 3: Destination Berlin is a trademark of Pyro Studios SL. Eidos, Eidos and the Eidos logo are trademarks of the Eidos Group of companies. All Rights Reserved.
□アイドスのホームページ http://www.eidos.co.jp/ □「Commandos 3: Destination Berlin 日本語版」のホームページ http://www2.eidos.co.jp/cmm3/index.html □関連情報 【2004年2月4日】アイドス、「Commandos 3: Destination Berlin」を3月4日に発売 圧倒的な緻密さで展開されるチームベースストラテジー http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040204/eidos.htm 【2003年10月16日】「Commandos 3: Destination Berlin」Playable Demo http://game.watch.impress.co.jp/docs/20031016/demo1016.htm 【2003年8月27日】Eidos本社取材レポート スニーク系RTSの大作「Commandos 3」プレビュー http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030827/eidos.htm (2004年3月18日)
[Reported by 川崎政一郎]
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