「テイルズ オブ~」シリーズといえば、スーパーファミコンで発売された「テイルズ オブ ファンタジア」からスタートしたナムコの主力RPGシリーズ。本作で久々に任天堂据え置きプラットフォームへと復帰した形になるが、戦闘の3D化、「~ファンタジア」以来の藤島康介氏のキャラクタデザイン起用、そして「~ファンタジア」、「デスティニー」、「エターニア」に続く新たなエピソードが語られることなど、随所に新規ユーザーへの取り込みを狙いつつ、シリーズファンへのアピールを忘れない巧みな戦略が伺える作品だ。 イントロダクション、ゲームシステムなどは7月14日の記事で大まかに説明してあるのでご参照いただくとして、まず今作「シンフォニア」は、シリーズ未体験のプレーヤーには「参戦の絶好の機会」といえる作品になっているのではないか、という感触を持った。 シリーズプレーヤーならおそらく取扱説明書を読まずにプレイしても十分対応できる共通性を持ち合わせながら、ストーリーは根底にシリーズ共通のものを感じさせつつも、新たな展開が待ち受けている。戦闘も同様、操作に関しては共通性を持たせつつ、今までとはちょっと違う戦いが可能という点において「絶好の機会」なのではなかろうか? と考えたわけだ。その詳細をこれから書いていこうと思う。
■ ロードの早さ、展開の早さは快適なプレイを約束する まず、GCをプラットフォームに選択したことによるロードタイムの短縮、これは戦闘を繰り返すRPGには非常に効果的だ。ランダムエンカウントだった今までのシリーズと異なり、ボス戦以外、敵が見えるシンボルエンカウント方式に変更になった「シンフォニア」は、意図して戦闘状態にもちこむことができるとはいえ、数多く戦ってレベルアップしなくては先に進めなくなるのは従来と同じ。そのときのロードの短さはありがたいことこの上ない。
また、街から街への移動も、お使い的に3カ所の地点を行き来したりはあるものの、フィールドの出入りのロード時間の短さや、シンボルエンカウントの効果でイラつくことはなかった。先に進みたいときはシンボルから逃げればいいわけである。ランダムエンカウントは、レベルによるゲームの進行度合いの調節がやりやすい方式だが、チューニングを間違えるとアイテムによる出現度ダウン以外に回避の方法がない(逃げるのも手間がかかる)だけに、個人的に「ここでストーリーの先をひとくくり見たい」ときは、スムーズに進行できるのは大きな魅力。毎日、数時間プレイするという自分のプレイ形態にあわせた遊び方が可能となっていることに好感が持てた。 ただし、先を急ぎすぎるとボスの攻撃に耐え切れずに戦闘不能からゲームオーバーへというお約束のコースが待ち受けているので、戦闘が楽ということではない。また、シンボルの中には高速でこちらを追尾するものがいたり、橋の上ででーんと構えているものもいるので、ボス戦以外の戦闘がすべて回避できるか、といわれると疑わしい。 ■ キャラ育成と戦闘の関連密度が上がった「シンフォニア」 「シンフォニア」には、いくつかのキャラクタ育成の手段が用意されている。まずは経験値によるレベルアップ。そして、ジェム(レンズ)による「EXスキルシステム」。さらに、行動によって決まる「称号システム」。これらによって、単純にレベルアップしたから攻撃力がいくつ上がって○○の特技を覚えて~という誰もが同じキャラの成長を反芻するのではなく、自分のスキルアップと同時に戦略を考えたキャラの育成を可能としている。 その最も大きなポイントとなるのは「EXスキルシステム」。ジェムを手に入れ、キャラに装着し、パラメータ変化や攻撃回数の増加など、戦闘の役に立つスキルを覚えさせられる。それにより、キャラをT(テクニカル)とS(ストライク)の2タイプに育て分ける(タイプゲージで表示される)楽しみが生まれる。同じキャラにTタイプとSタイプのスキルを覚えさせると、その数の優劣に応じてタイプゲージが伸びる。 このタイプの違いは、キャラクタが覚える術や技にも影響を及ぼす。TかSかどちらかの技しか覚えることはできず、別系統の技を覚えるには一度覚えた技を忘れることが必要となる。 また、ストーリー進行や戦い方によって「称号」が手に入ることがある。この称号によって、レベルアップ時にボーナスでパラメータの上昇値が変化するといった違いも起こる。スムーズにキャラクタを成長させるもよし、試行錯誤してベストのキャラに育てるのもよしという仕組みだ。
■ 3D戦闘はスムーズに戦えるが、難易度はやや上昇 キャラクタがポリゴンになり、キャラクタの位置にあわせたラインで戦うことになった今作のバトルシステム「ML-LMB(マルチライン リニアモーションバトルシステム)」。 プレーヤーが自ら操作することもできるし、オートでCPU任せにもできる点は従来のリニアモーションバトルシステムと同じ。今回の大きな違いは、やはり敵の数だけあるラインで戦うことだろう。2Dと違い、複数の敵に同時に通常攻撃を食らったり、逆に複数の敵に攻撃を当てることが可能となっている。例えば、→A、→A、Aと攻撃すれば、3発目の攻撃は回転斬りとなる。これで、密着している左右の敵に攻撃ができたりする。この変更点により、お互いの位置関係を把握することが大事。通常技→基本技→上位技でキャンセルができるのは今までと同様だ。このコンビネーションが重要で、敵を早く倒すだけでなく、経験値にボーナスが付くので、コンボの研究は大切なポイントとなるだろう。 ただ、3Dになったせいか、CPUキャラの動きには精彩が感じられない。ダウンしているだけの敵のすぐそばで術を詠唱し始めたり、HPが残り少ないのに敵に突っ込んでいったり……作戦を適度に切り替えたり、パラメータを確認しつつアイテムを使ってこまめなフォローを行なうなどしていかないと、ライフボトルはあっという間になくなってしまいかねない。
2Dのときは、一番端で術を詠唱する敵を叩くには、術を覚えているキャラにそれより早く術を発動してもらうか、間の敵を倒して直接攻撃するしか基本的な防衛手段はなかった。今作は、途中でターゲットを変更すれば、その敵に直接近づいていくことができるので、そうした敵を直接叩くのはたやすくなった。 それから、今作では基本技がヒットした直後に敵に反撃を受けることがある。また、基本技や上位技の使用直前、もしくは術を詠唱中の敵を止めるためには、特に序盤は通常技では無理なことも多い。とくにボスクラスのキャラクタは、強力な術や技を使用するため、途中で止められないと痛いダメージを受けることになる。 また、ガードは、ダメージを軽減する機能を持つが、無効化するわけではない。途中で防御技を覚えるので、さらに軽減率は高まる。「テイルズ オブ デスティニー2」などをプレイしたユーザーには「ガードしても術や技を使うために必要なTP(テクニカルポイント)は貯まらない」ことを覚えておいてもらいたい。バンバン術や技を使っているとTPが足りなくなるが、これを稼ぐには、「攻撃をヒットさせること」、「アイテムで回復する」、「宿屋で回復する」といった手段をとることになる。
ボスキャラとの戦いは経験値稼ぎをサボっていると、中盤あたりから非常にきついバランスとなっている。まず、「スペクタクルズ」で弱点を探し、それに応じた対策を採ることはもちろん必要だが、それ以上にキャラクタのパワーアップは非常に重要だ。 また、1人の敵にTPを消費せずにパーティ全員で大ダメージを与えられる「ユニゾンアタック」は、アングルも変わり、さらに新たな複合特技を生み出すことがある。ゲージはあっという間にたまるので、必要なときに出してみるといい。技の組み立てやキャラクタの能力によって内容が変わるのもいい。爽快感も演出のおかげで十分味わえる。
■ ストーリーのテーマはシリーズ中トップクラスに重いかも オープニングテーマ「Starry Heavens」から始まるこの物語は、序盤から非常に重い内容になっている。今までのシリーズに比しての話だが、主人公・ロイドの境遇、そしてその周囲の人たち、人間牧場、ディザイアンとの戦い、コレットの変貌……と、とにかく「ズーン」とくる話がメインだ。ネタバレになるのは避けたいのでこれ以上は言及しないが、序盤からいきなり運命(と呼べるかどうかはべつにして)に振り回されるキャラクタたちを見ていて、気分が沈んだのは私の偽らざる反応だった。 シリーズをプレイした人ならおわかりだろうが、随所にお約束のギャグネタなどももちろん仕込まれている。でも、今までのシリーズだと序盤はなんとなくのほほんとした雰囲気がして、その間はそういったギャグを楽しみつつ遊んでいた気がする。そして、ストーリー進行の盛り上がりに応じて緊張感が増していくという流れだったのに、今回は圧倒的情報量とちょっと重たいテーマに、あまりのほほんとしていられない感じでプレイを続けた。 ひとつ気になったのは、フィールドマップもダンジョンも、3D化したわりにカメラアングルに自由度があまりないこと。ダンジョン内ではいりくんだところで柱の影などに移動するときなど、カメラを振り回したくなってしまうこともあるだけに、カメラ操作はもう少しなんとかしてほしかった。 それから、リフィルのデモにおけるモーションもちょっと気になった。スタートして程なく、ロイドとジーニアスがリフィルに怒られるシーンがあるのだが、リフィルがロイドを蹴飛ばしてしまう。あくまでも先生と生徒なのだから、“ひっぱたく”ぐらいが妥当だと思ったのだが……。ほかにもちょっと心が痛むモーションがあった。遺跡を目の前にしたリフィルの言動もちょっとコワい。ただ単に、私がリフィルを気に入らないだけかもしれない、というだけなのだといいのだが。
最後に、初回限定のスペシャルCDも充実した内容であった。プロモムービー、設定資料、スクリーンセーバー、アイコン、壁紙、そしてミニサウンドトラックとおまけというにはなかなかのボリュームである。手に入れたい人は急いだほうがいいだろう。なお、ミニサウンドトラック以外のコンテンツはWindows 98/Me/2000/XPに対応している。 (C) 藤島康介 (C) NAMCO LTD
□ナムコのホームページ
(2003年8月29日) [Reported by 佐伯憲司]また、弊誌に掲載された写真、文章の無許諾での転載、使用に関しましては一切お断わりいたします ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp Copyright (c) 2003 Impress Corporation All rights reserved. |
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