★ PCゲームレビュー★


現代を彷彿とさせる3勢力による壮絶な戦い
RTSの元祖がフル3Dになって復活!!

Command & Conquer: Generals


 リアルタイムストラテジー(RTS)ゲームの古参「Command & Conquer (以下C&C)」シリーズが、ついに待望の3D化の洗礼を受けて「Command & Conquer: Generals」として生まれ変わった。「C&C」の3D化作品といえばすでに「C&C Renegade」があるが、こちらは3Dアクションシューティングであり、正統派リアルタイムストラテジーである本家筋から見れば異端児的な存在であった。3D化されたRTS界のサラブレッドがどのような作品になったのかを見ていくことにしよう。


■ 「Command & Conquer」シリーズの系譜

 「碁盤で区切られたフィールド」、「ターン制で進行する」といった要素がデファクトスタンダードだったストラテジーゲーム(戦略シミュレーションゲームという呼び方の方が一般的だった)に新風を呼び込んだのが'95年に発売された「C&C Tiberian Dawn」だった。

 後に「リアルタイムストラテジー」と呼称されることになる新しいストラテジーゲームのスタイルにゲームファンは魅了されることとなり、大ヒットを記録。各メディアのゲーム賞を獲得し、当時のゲーム史にその名を刻んだ。

 C&Cシリーズが世界中のゲームファンに「おもしろいゲームだ」と言わしめたもう一つの要素として、各軍勢の兵力構成に「意図的な不均整」を与えたことが挙げられる。C&Cシリーズには、世界平和を維持するために生まれた国連平和維持機構「GDI(Global Defence Initiative)」と第三世界による世界統一をたくらむ国際テロ集団「NOD」軍の2つが登場する。

 そしてこの2軍勢は、それぞれが独自の文化背景を持っており、ひいてはその兵器のスタイル、攻撃手法、活用方法が全く異なっていたのであった。それまでのRTSでも「文明特性」のような形で性能の違いをパラメータレベルで加減していた「特徴付け」はあったが、C&Cでは「別のゲームからやってきたのか」と思わせるほど、ドラスティックな違いが設定されていたのだ。

 これが、それぞれの軍勢が持つ兵器の長所を最大限に活かした戦略、そして逆に短所を最大限に補う戦略を編みだす楽しさに結びつき、結果、C&C特有の面白さとして認知されたのだった。

 この後、「C&C RED ALERT」、「C&C TIBERIAN SUN」、「C&C RED ALERT2」と続編の発表を重ねていくとともに、新兵器が追加され、両軍の兵力バランス調整も施され、ゲームとしての完成度は高まっていくが、日本では第一作ほどのセンセーションを巻き起こすには至っていない。まあ、これには「Warcraft」シリーズ、「Age of Empires」シリーズなどの同種ゲームの台頭が少なからず影響したのだろう。

 その後、巻き返しを狙うC&Cシリーズ開発元のWestwoodは3Dアクションシューティングゲーム「C&C Renegade」を出す。が、C&Cシリーズの3D化はファン待望ではあったが、C&Cシリーズのファンが3Dアクションシューティングを望むはずもなく、逆に3DシューターがRTSブランドのC&Cシリーズに対して思い入れがあるはずもなし。「選外佳作」という評価が妥当な作品となった。

 そして満を持して発売されたのが本作。待望の3D化を果たし、変な色気無しの正統派RTSのゲーム性を採用したC&Cの純血種「C&C Generals」ということになる。なお、同作の開発はWestwoodではなく、Electronic Arts Pacificが行なっており、クレジットには「Inspired by Original C&C」(本作はC&Cに励起されて制作された)との記載もある。最新作の開発を本家本元が行なっていないと言うのは、少々寂しい気もする。

「C&C TIBERIAN SUN」より。ちまちまゴチャキャラ系でユニットの魅力には欠けるところがある。戦略性重視の内容だ

「C&C Tiberian Sun」は莫大な予算を使って制作されたCGと実写を組み合わせたムービーシーンも話題になった


■ 描かれるは東西の二大大国と国際テロリズムの三つ巴戦

新勢力GLAのミッション内容は過激。画面は国連の難民援助物資を強奪するミッションの途中シーン。「援助物資を市民どもに与えるな!」というナレーションに唖然
 「C&C Generals」は3という数字に縁深い。3D化された。この事実がもっともホットトピックな要素ではあるが、それ以外にももうひとつある。それは登場する軍勢についてだ。登場する軍勢がこれまでの2勢力に対して3つに増えたのだ。

 まあ、こんな「こじつけ」よりも、往年のファンにとってはちょっとした一大事だと言えるのが、往古復活の願をかけて登場したはずの今作にもかかわらず、初期C&Cシリーズ・ファンに親しまれてきた(!?)GDI軍とNOD軍が登場しないこと。ただし、コンセプト的には符合する軍勢がちゃんと登場するので安心して頂きたい。

 今作C&C Generalsに登場するのは、実在する国である「アメリカ」と「中国」、そして架空の国際テロ組織「世界解放軍(GLA)」(Global Liberation Army)となっている。米ソ冷戦の形が消失した今、現代戦の象徴といえば「アメリカ対テロリズム」ということになるわけだが、それでは少々露骨。そこで「中国」という東洋の大国勢力を間に登場させることによって危険なテーマに"甘み"をくわえた…といった感じだろうか。

 時代設定は近未来。ただし、実名国家が出てくるところからも想像が付くと思うが、GDI対NODとして描かれてきた初期C&Cシリーズよりは、舞台が現代寄りになっているようだ。そのため登場兵器も現代兵器をイメージさせるものが数多く登場する。

強力な航空兵器がアメリカ軍の特徴 中国のユニークユニット「ブラックロータス」。ハッカー的な存在で敵施設を遠隔占領が可能



■ 「C&C Generals」の基本ゲームシステムの解説

 ●物資(資源)を採取~内政は半自動

 同作の資源はひとつしかない。C&C Generalsにおける資源とは簡単に言えば「金」で、3軍勢ともフィールド上にある「金になるもの」を採取すれば軍資金が増えるシステムになっている。

 具体的には、コンテナの積まれた区画へ採取ユニットを派遣するか、石油掘削所を占領獲得する、といった手段がある。マップによってはフィールド上に落ちている資源アイテム単体を直接触れて獲得することも可能だ。

 複数種類の資源を集めて、その組み合わせで兵器ユニットを生産する多くのRTSとは異なり、とにかく「資源を集めれば金になる」というシンプルな仕組みを採用しているのだ。C&C Generalsの「ジェネラル(General)」とは司令官の意味であり、一軍の最高統率者であるプレーヤーは戦術戦略の捻出に集中すればよく、面倒な資材在庫管理は不要というわけだ。

 RTS初心者が「内政に追われて、戦闘に集中できない」といった悩みにさいなまれがちな、内政重視型のAoEシリーズと比べると、本作はかなり戦闘&戦略重視のゲーム性になっていると思う。

油田は占領した軍勢に継続的に資金をもたらしてくれる。敵占領下の油田を奪うもよし、奪い返されるのを見越して破壊してしまうのも有効な戦術だ 中央に見えるのがコンテナ区画。本作で基本資源となるフロックだ。画面はこの周辺をバイオ兵器で爆撃しているところ。こうすることで敵の資金供給を一定時間断つことができる


●兵力を増強(ユニットの生産)~アップグレードシステムもシンプル

 さらに「プレーヤーに優しい」のは資源の探索も資源採取ユニットがある程度は自動で行なってくれるという点。採取ユニットはまさに「働きアリ」という表現がふさわしい。もちろん、敵勢力下や中立地帯など、安全が保証されない地域への探査は行なわないので、ノコノコと前戦を歩き回って無駄死にすることはない。ただし、資源を保管する建物を資源そのものの近くに建てないと、採取効率が下がってしまう。これは他のRTSと同様だ。

 兵力はその兵器を生産する製造施設を建てることが必要なのもRTSの基本セオリー通り。C&C Generalsには兵員を育成する「兵舎」、陸上兵器を生産する「兵器工場」、航空機を製造する「空港」といった兵力生産施設が登場する。なお、本作は水域で活動する船舶ユニットは存在しないで、港や造船所などは存在しない。

 各兵器の攻撃力、防御力、攻撃手段の多彩化といった「アップグレード」も、C&C Generalsではシンプルになっている。軍事ユニットのアップグレードには、研究機関施設の建設は不可欠ではあるが、他のRTSのように「研究施設で基礎研究を済ませていないとアップグレードができない」といった複雑なシステムは採用していない。そのユニットを製造した施設で直接研究を行なえばよく、たとえば航空機のパワーアップがしたければ「空港」に用意されているアップグレード項目を実行に移せばいい。

C&Cジェネラルズでも軍事兵器は対応する製造施設で生産するので、ゲーム序盤は建物建設に追われる 陸上兵器と航空兵器の双方がぶつかり合う戦闘シーンは迫力満点だ


●戦闘~成長するユニットと昇進する将軍

 本作の戦闘システムで特徴的なのは、「成長システム」、「将軍能力システム」、「昇進システム」の3つ。「成長システム」とは、各ユニットが敵を破壊し、戦闘に生き残ると経験値が蓄積され、一定値に達するとレベル(訓練度)が上がり、そのユニットの能力も向上する、というもの。丁度RPGのレベルアップシステムと同様のシステムが各ユニットに与えられているというイメージだ。

 レベルは「ノーマル」、「ベテラン」、「エリート」、「ヒロイック」の4段階。大勢対大勢の戦闘が多発しがちな本作における普段の戦闘で「どいつを成長させよう」とは思わないかもしれないが、エリート以上に昇進すると自己回復能力を持つようになるので、成長したユニットを見つけたら大事にしたほうがよい。

 「将軍能力システム」は「将軍ポイント」を消費して、(1)自軍の特有兵力を活用したり、(2)自軍固有ユニットの建造を可能にするものだ。(1)は「Age of Mythology」でいうところのゴッドパワー、(2)は「Age of Empires II」でいうところのユニークユニットやヒーローユニットの製造に相当するといえばRTSファンにはイメージしやすいかもしれない。

 「昇進システム」の方は、将軍能力システムと密接な関係にあるものだ。簡単に言えばプレーヤー自身のレベルアップシステムだ。自軍ユニットが敵を破壊するたびに将軍としての経験値が蓄積され、これが一定値に達すると将軍ポイントが加算されていき、さらに経験値が規定値に達するとプレーヤーの階級が昇進する。

 将軍ポイントは前述したとおり将軍能力を使用する際に必要になるもので、「昇進」はその将軍能力のバリエーションを増やすものだ。昇進は3段階まで。初期状態ではレベル1(一ツ星)、将軍ポイントは最初から1持っているので、ゲームの序盤から将軍能力を利用することはできる。

 ただし、高レベルの将軍能力の方が強力なので、序盤は将軍ポイントを温存し、レベルアップしたときに強力な将軍能力を一気に活用するというのも有効な作戦となる。将軍能力の使い時をいつにするかというのも重要な戦略の一要素となるわけだ。

 この一連の「将軍(GENERAL)」システムは、いわばAoEシリーズで言うところの「時代進化」にも相当する部分なわけだが、内政をうまく回すことが早く進化することに繋がる同シリーズとは違い、戦闘に勝ち続けることが自軍の潜在能力を高めていくというゲームデザインになっている点に着目したい。このことからも本作が戦闘&戦略指向のRTSであることが見て取れる。

自軍ユニットを矩形選択、攻撃目標をクリックという操作系は他RTSと同様だが、行動パターン指定が少々面倒 中国の将軍能力パネル。縦に並んでいるのは同種能力でレベルが多段階あることを意味している。こうしたタイプの将軍能力はレベル1から順番に使っていかなければならない


敵兵器はただ破壊するだけでなく奪ったり占領したりすることも可能。写真はGLAの炭疽菌ミサイル発射施設を奪い、これを逆にGLAに向けて発射しているところ 航空兵器は単体ユニットとして自在に扱えるタイプと、この爆撃機のように特定地点を爆撃するために呼び寄せるタイプの2通りがある。ファンタジー系で言うところの召喚魔法のようなイメージ



■ ドラスティックな特徴付けが施された個性的な3勢力

 今作では、シリーズを通じて登場していたGDI軍、NOD軍の両軍は姿を消したが、C&Cシリーズの伝統ともいえる「ドラスティックな特徴付け」は本作に登場する3つの軍勢にも受け継がれている。それぞれの軍勢の特徴とプレイスタイルを紹介しておこう。

戦闘ヘリ「コマンチ」。アップグレード後は大量のロケット弾が発射可能となり、基地に帰還することなく再装填されるため、まさに空飛ぶ要塞的な活躍が可能
●アメリカ~ハイテク兵器と航空機が主力

 アメリカはハイテク兵器を主体とした軍備構成で、兵器の製造コストは全般的に高価ではあるがユニット単体の能力が高いという特徴を持つ。旧来作でいうところのGDI軍にイメージは近いといえる。アメリカ軍の独特なシステムが「レベル(訓練度)継承」システムだ。

 戦闘を生き延びてレベルアップしたユニットには、熟練パイロットが乗り込んでいるという解釈がなされ、たとえ敵に機体が破壊されてしまっもパイロットがそこから脱出してくれるのだ。そして彼を別の機体に乗せることで、即席でそのユニットをレベルアップした機体にできるのである。

 また、アメリカ軍は他の軍勢に比べて圧倒的に航空機のバリエーションが多く、空からの攻撃に長けている。とくに戦闘ヘリ「コマンチ」は燃料切れの概念がなく戦場上空に滞空が可能であり、視野も圧倒的に広く偵察もこなせることから、主力兵器としての活用も可能な航空兵器となっている。

 さて、アメリカ軍運営には資源(資金)とは別に電源の確保が必要となる。兵器製造施設はもちろんのこと、様々な建造物には電源供給が必要であり、施設を建造するたびに消費電力が増し、これが供給電力を超過してしまうと、自軍全ての施設の機能が停止してしまう。このため、最前線に大規模な自軍基地を短時間で建造することは難しくなっている。電源は原子力発電所の建設によって供給され、供給量を増やすためには増設しなければならない。電源管理もアメリカ軍運営の必須科目となるわけだ。

 将軍能力はレーザー照射をはじめとした複数武装を搭載する新鋭戦車やステルス攻撃機の製造、パラシュート部隊降下やA10爆撃機の集中爆撃要請など。大量破壊兵器としては広範囲に壊滅的な打撃を与えられる「燃料気化爆弾」、マップ上の任意の地点に衛星軌道上から粒子ビームを移動照射可能な「衛星粒子キャノン」がある。

 ユニークユニットは映画「ランボー」を彷彿させる万能ステルス・コマンドー「バートン大佐」で、敵歩兵と建物に対して圧倒的な破壊力を有している。製造数は1人に限定されているが、アンチステルス防衛線を張っていない敵陣に対しては、それこそ映画「ランボー」なみの大暴れが可能となる。

「衛星粒子キャノン」。射程距離無制限のビーム攻撃が可能 主力戦闘機「ラプター」。高速移動が可能なので斥候的な活用も有効


●中国~強力な陸上兵器と早くて安い歩兵

 中国はコストパフォーマンス重視の軍事構成となっているのが特徴となっている。「命の値段が安い」という風刺的な設定がなされているため、兵士の製造コストが劇的に安く、また非常に早く大量の兵士を揃えることができるようになっている。

 基本兵員「レッドガード」は「兵舎」で育成すると育成コスト300とアメリカ軍の基本兵員「レンジャー」の225よりも割高だが、「兵器製造工場」で製造可能な探査&輸送車両「兵員クローラー」は、なんと8人のレッドガードが搭乗した状態でコスト1,400で製造可能となっている。つまり、

・兵員1人あたりの育成コストが40%安
・探査&輸送車両付き
・製造時間は1ユニット分でOK

ということになり、スピーディに物量戦を仕掛けるのに適していることになる。

 車両兵器の製造コストもアメリカよりも割安で、その種類も豊富だ。数ある車両兵器の中でもっともユニークなのは巨大戦車「オーバーロードタンク」と、小型化組債発射車両「核キャノン」だ。

 オーバーロードタンクは高い耐久力と敵車両を踏みつぶせる特殊能力を持ち、しかもアップグレードすれば周囲の歩兵の体力回復までが可能というおまけ付き。強力な陸上侵攻こそが中国軍の本領といったところだろう。

 その反面、航空兵器は製造コストこそ安いが、種類も少なく威力はややアメリカに劣る。中国の航空兵器は陸軍侵攻の際の援護が主たる活用となることだろう。中国も施設運用には電力が必要で、アメリカ同様に原子力発電所の建設によってこれを賄うことになる。ただし、その建設コストは意外にもアメリカよりも高い。兵器は短期大量生産が可能でも、それを生み出す関連施設は闇雲に建てられないと言うことだ。

 将軍能力は、強力な遠距離砲撃ユニット「核キャノン」の製造、敵からは見えないクラスター爆弾の散布など。特筆すべきは「核キャノン」。アウトレンジからの先制核攻撃ができ、着弾地点で核爆発を起こして周囲に甚大なダメージを与え、さらに鎮火後も放射能汚染をもたらすという副次的な効果まで持った凶悪な兵器となっている。

 大量破壊兵器は、着弾地点周囲の施設や軍事ユニットを行動不能にする「EMPパルス爆弾」や射程距離無制限の核攻撃を可能にする「核ミサイル施設」がある。ユニークユニットは敵の施設を遠隔操作で占領可能なハッカー「ブラックロータス」だ。製造人数は1だが、こちらもステルス仕様になっており、占領活動時以外、敵からは見えない。アンチステルス防衛線のない敵陣を混乱に巻き込むにはうってつけのユニットとなる。

核弾頭が爆発した瞬間 爆炎が止んでも広範囲に放射能汚染が持続。中国の核攻撃は超強力だ


製造コストの安い中国の航空兵器「ミグ」。敵航空機の撃退と地上軍支援が主な任務 「EMPパルス爆弾」周囲一体の施設や軍事ユニットを一定時間操作不能に追い込める。侵攻の機会を作り出すのに長けた最終兵器だ


●GLA~自爆テロと炭疽菌を主体にした掟破りの無差別殺戮軍勢

 GLAは、テロリスト集団ということもあり、「自爆攻撃とゲリラ戦法が主体」という、これまでのRTSには登場し得なかった型破りの勢力として設定されている。なお、GLAは自前の航空兵器を持っていない。

 兵員の種類は多く、中国を凌ぐ安い生産コストが魅力。基本的な戦力を持った兵士もいるが、なかでも特徴的なのは自爆を生業とする「テロリスト」だ。テロリストは自分の命を引き替えに敵ユニットに突撃し、接触した敵ユニットとともに爆死する。その際の攻撃力はすさまじいものがあり、耐久力がそれほど高くない陸上兵器などは一撃で破壊されてしまうほど。

 しかもGLA所属者は「狂信的な自己犠牲精神を持っている」という設定がなされているために、その製造コストも極めて安い。弱点としては大量の爆薬に身を包んでいるために移動速度が遅いということ、また耐久力が低いということが挙げられるが、民間車両に乗せて自動車爆弾として運用すればそれらの欠点もある程度は克服できる。

 テロリストの断続的な突撃、あるいは大量のテロリストによる一斉突撃は敵に対してかなりのプレッシャーを与えることになるのだ。そして兵の育成スピードがとても早いのもGLAの特徴だ。民兵ユニット「怒れる暴徒」は耐久力こそ少ないが自己回復能力を持ち、一度に5人から育成が可能となっている。これらの特性をうまく運用すれば中国軍に優るとも劣らぬ物量戦を仕掛けることも不可能ではない。

 陸上兵器も種類が多く、生産コストも安価、生産スピードも速いのだが、その代わり耐久力がやや少ない。ただし攻撃力は高いので、自己回復能力獲得のアップグレードを果たした後はヒットアンドウェイ戦法を繰り返して徐々に前戦を押し上げていく戦略が強力かつ有効となる。

 陸上兵器でユニークなのは炭疽菌をまき散らすバイオ兵器タイプ。最初は炭疽菌を直接まき散らす車両「トキシントラクター」のみだが、「トキシン弾」のアップグレードを果たすことで主力戦車「スコルピオン」までもがトキシン弾を射出できるようになる。着弾地点周囲をしばらく汚染し、この付近の歩兵に対してダメージを与え続けることができる。

 ところで、GLAはアメリカや中国と違い、施設運用に電力が不要となっているのも特筆すべき要素だろう。つまり、GLAは電力管理が不要であるため、資金に余裕さえあれば前戦に幾らでも兵舎や兵器工場を建設できるのだ。

 将軍能力は、遠距離炭疽菌ミサイル攻撃が可能な「スカッドランチャー」の製造、敵陸上兵器を強奪可能なハイジャッカーの育成など。大量破壊兵器としては、爆撃機による「炭疽菌爆弾」攻撃、炭疽菌を射程距離無制限でまき散らす「スカッドストーム」といったものがある。

 ユニークユニットはスナイパー「ヤルメン・ケル」。敵車両の運転手の狙撃が可能という設定で、運転手を殺害された車両は身動きできなくなり、これを自軍の歩兵ユニットで強奪することができる。また、ステルス特性まで持っているため1対1で負けることはほとんど無いほど強力だが、製造人数は1人までとなっている。

「スカッドストーム」。直接的なダメージだけでなく、土地を汚染し二次的な被害をもたらすという意味において、中国の「核」とGLAの「炭疽菌」は似通っており、運用の仕方もほぼ共通という感じだ

建物に火炎瓶を投げ続ける「怒れる暴徒」。数で勝負の歩兵ユニットとして活用可能 毒をまき散らし敵味方問わずバイオハザードに追い込んでいく戦法を擁するGLA軍。圧倒的な戦力で壊滅させるよりも「生き残る」勝ち方で勝利するのが得意



■ まとめ~C&Cシリーズの3D化に意味はあったのか!?

 ゲームエンジンはEA Pacificの新開発「SAGEエンジン」。四輪車両の車輪が静止した状態で方向転換をするといった戦車的な動きを見せたりすることもあり、車両物理はいまひとつといった感もあるが、それ以外に動き面での違和感は特にない。優秀なエンジンといえる。

 ゲーム中は小さくしか映らない各軍事ユニットに対しても精細なモデリングが施されており、地形表現も自然。動的LOD(Level of Detail)におけるポッピング現象も皆無で、グラフィックスそのものの表現力は、現存するRTS用3Dビジュアルとしてはトップレベルにあると思う。

 歩兵ユニットの影は相変わらず原始的な「丸影」を採用してしまっているが、建造物、陸上兵器、航空兵器、背景の建物やその他の大道具オブジェクトにはセルフシャドウに至るまでの緻密な影生成が行なわれているのが感動的だ。なお、影生成はステンシルシャドウボリューム技法によるものだと思われる。

 さて、いくつかの動作環境でプレイした所感を述べておこう。1,024×768ドット/32ビット環境にて、全てのグラフィックスオプションを最高設定にした場合の動作は、GeForce3クラス、RADEON 8500/9000クラスでは少々重く感じられる。

 この状態で快適にプレイするためには最低でもGeForce4Tiクラスは欲しい。グラフィックス表現においてプログラマブルシェーダの積極活用はないようだが、ジオメトリ量とテクスチャ量が半端でないので、最高位ビジュアルで楽しみたいのであれば128MB程度のビデオカードが欲しいところだ。実際にGeForceFX 5900Ultra、RADEON 9800PROでプレイしてみたがこれらでは非常に軽快な動作を見せてくれた。

 最後になるが「C&Cの3D化」に意味があったのかという問いに対しては、とりあえず筆者は「あった」と答えておきたいと思う。土地の起伏や高低差、傾斜といった情報がちゃんと各ユニットの動きを制御する際の物理エンジンに作用しており、土地形状を活かした攻撃、要塞構築、軍備配置、防衛線の展開が可能になっているためだ。

 C&C Generalsは古参RTSのリバイバル作品としてだけでなく、新世代3DRTSとして完成している。シングルプレイ、マルチプレイ共にじっくり味わってプレイして欲しい。

立ち並ぶ建造物と草木、蠢く群衆……。そのジオメトリ量は半端ではない 高地に築き上げられた要塞は歩兵だけではなかなか落としづらい。遠距離砲撃ユニットや航空支援が必要になる。本作では3Dシステムを効果的に活用したゲーム性のインプリメントがなされているのだ


ダム破壊任務は3つ軍勢の全てにある。敵が激流に飲み込まれていく様はまさに圧巻

吊り橋に爆弾が仕掛けられた! 橋桁と共に沈み行く中国軍。シングルプレーヤーモードにはダイナミックな演出が光るキャンペーンが満載 サッカー場からわらわらと飛び出してきたGLAの暴徒達。サッカー場のグラウンドに落ちたセルフシャドウ表現にも注目。この影はリアルタイム生成だ


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【Command & Conquer: Generals】
  • CPU:Pentium III 800MHz以上(Pentium 4 1.8GHz以上を推奨)
  • メモリ:128MB以上(256MB以上を推奨)
  • HDD:2GB以上
  • ビデオカード:VRAM 32MB以上


□「Command & Conquer: Generals」公式ホームページ
http://japan.ea.com/teaser.phtml?ProductCode=EMW-4127
□関連情報
【12月6日】EA、「Command & Conquer Generals」を6月5日に発売
3Dグラフィックを採用した人気シリーズ最新作
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030401/ccr.htm

(2003年7月4日)

[Reported by トライゼット西川善司]


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