■ 完成された「アニメのようなゲーム」 店頭デモなどでご覧になった方はおわかりいただけるだろうが、このシリーズは、誤解を恐れずにいうと限りなく「アニメを志向したゲーム」、ということがいえるだろう。TVアニメ、OVA、そしてゲームの連動というマルチメディア展開はもちろん、プロデュースを務める小島氏の作品のなかでも、「Z.O.E」シリーズには「アニメとゲームの融合」というテーマがてらいもなく、大胆に表現されている。 PS2版の前作「Z.O.E」から、このシリーズはスタッフにアニメ経験者が参加していることもあってか、非常に“魅せる”演出に優れているという印象がある。とくに今作では、シャープなエッジが要求されるオービタルフレーム(以下OF。巨大人型兵器)が主役のシーンではポリゴンを、人物描写が重要なシーンではアニメを主体にパワーを振り分けることでアニメパートと、ポリゴンによるデモパートの振り分けが功を奏している。 特質すべきは、「青の6号」や「戦闘妖精雪風」などで知られるGONZOの手によるアニメシーンの出来もさることながら、ポリゴン(Z.O.Eシェード)によるムービーシーンもそれに負けず劣らずの演出が加えられ、両者の間に違和感が皆無であること。ブラーを始めとした演出用に作成されたと思われるプログラム(「Z.O.Eエフェクト」と開発元では呼んでいる)をうまく利用し、効果的に取り入れている。リソースの節約と、ロード時間の短縮により、スピード感のあるデモシーンが実現されている。小島作品としては映画を志向した「メタルギア」シリーズを思い起こさせるものがあるが、その手法を取り入れつつ、より「ロボットアニメらしく」なっているといえる。ポリゴンデモシーンの中で、通信画面はアニメになっているというあたり(スティックでアングルを多少変更できたり、全体をR2ボタンでアップにすることもできる)は、こだわりの作りといえるだろう。 また、通常のプレイ画面での演出も同様。演出のためのプログラムは、前作に比してさらに豪華になっている。複数のロックオンが可能となったホーミングレーザーでまとめて敵をロックオンした際のハデ具合、そしてブレードとブレードがぶつかる時のエフェクト、どハデな爆発エフェクトなど、アニメを研究し、うまく「らしさ」を演出している。
■ すべてはスピードのために
アナログスティック、そしてほぼすべてのボタンを使用する操作系統となっている本作だが、背後視点の3Dアングルという画面構成ながら、ひとつの行動に対するボタンの使用頻度をなるべく抑えている点は、本作のプレイ層の間口を広げるうえでも重要なテーマとなっている。 3D視点ゲームの重要なポイントは、やはりカメラアングルだが、このゲームにおいては、移動に使用するアナログスティックを倒したあと、中立状態にした際に、「自機の背後にカメラが戻る」という方法を採用している。実際にどうなるかというと、スティックを入れる~離すという入力方法をとる場合、その移動後に方向転換するごとにカメラが移動することになる。この視点変更には最初戸惑った(意識しないときにスティックを戻すとカメラが移動してしまうし、連続で方向入力している場合は視点が移動しないため)が、例えばセガの「ファンタシースターオンライン」のように、カメラを戻すためのボタンが必要ないため、操作に慣れれば非常に快適になっていく。ボタン一つ減っただけなのに、である。 ただ、ダッシュ(アナログスティックを倒しながらR2ボタン)の場合、敵弾を回避するために右→左→右などとジグザグ軌道を選択すると、高速移動しながらカメラが頻繁に変わることもあるので、3D酔いしやすい人は、R2ボタンを押したままアナログスティックを弾くようにダッシュ入力して(一度ダッシュを開始すれば、R2ボタンを押していればダッシュは継続される)、視点を固定したままダッシュできる。逆にこまめにカメラを移動させたければ、スティックを倒しつつR2ボタンを連打しておけば、大きな視点変更が行なわれないので好都合だろう。R2ボタンを連打しないと避けにくい敵の攻撃もある。 また、各動作に関してのレスポンスには細心の注意が払われているようで、ボタンを押してからの主人公OF・ジェフティの反応は非常に快適だ。□ボタンによるショット、および近接時(敵機との間合いにより自動選択)のブレード攻撃、R1ボタンによるガード、○ボタンによるサブウエポン(後述)の使用など、すべてがダイレクトに反応してくれる。プレイするにあたって気をつけたほうがいいのは、ロックオンシステムだろう。新しいエリアに移動すると、まずセンサーに反応した敵にロックオンするシステムになっているので、あとから出現した敵が急速に接近してきても、そのままの状態では、敵を撃破しないかぎりロックオンした敵に攻撃してしまうし、移動もすべてロックオンした敵に対しての動きになる。その場合、L2ボタンを押し、ロックオンを切り替えるという作業を必要とする。任意の敵に素早くロックオンを切り替えたければ、右スティックを利用する。ロックオンをすべての敵からはずしたければ、L2ボタンを長押しすることでロックオンを解除できる。すべての敵を撃破する必要はないし、効率よく戦うためには、これらの操作は必須となるだろう。 操作に関しては、序盤にジェフティに搭乗した際、戦闘コンピュータ、エイダ(ADA)からレクチャーを受ける、という形で、チュートリアル形式の操作説明が行なわれる。タイトル画面からシミュレータモードを選んでも同内容のチュートリアルをプレイ可能だ。また、新たなサブウエポンを習得した際にも、同様の説明が入ることがある。 今までに述べてきたシステム面に関してのチューニングは、それもこれも、すべてはスピード感のため。ハイスピードロボットアクションと謳われるこのゲームだけに、すべてはスピード感の演出のためにできている、そう思わせるものがきちんと作り上げられている。そして、その演出を幅広い層に体験してもらいやすくするための措置であると感じられる。 ■ 大ダメージを与えるために必要なアクションゲームとしてのスキル さて、ただショットを撃っていたり、適当に斬りあっているだけでも十分戦えるが、よりかっこよく効率的に戦うためにマスターしたい操作がいくつかある。静止状態でR2を押すと「バースト」状態となるが、この間に□ボタンを押せば、遠距離ではバーストショット、近接時は回転斬りとなる。敵もショットやブレードに対してガードしてくるが、バーストショットやバーストブレード(回転斬り)はガードを無効化してくれる。 また、ダッシュ中に□ボタンを押せば、敵機をロックオンし始め、離すとホーミングレーザーが飛ぶ。右方向ダッシュでは左に、左方向ダッシュでは右へとロックオンマーカーが広がっていき、戦闘機群を一網打尽にできる。 近接時のテクニックとしては、□ボタンでブレードを3回ヒットさせたあと、△(上昇ボタンと兼用)、×(下降ボタンと兼用)ボタンをつなげて押せば、最後に敵を上下に斬り飛ばすことで壁などにヒットさせて追加ダメージを得られるコンボスマッシュが狙える。 それから、サブウエポン(後述)を「GRAB」状態にして、敵に接近しつつ○ボタンで敵を掴むことができる(ガードを無効にする)。敵を掴んだあとは、○ボタンですぐ敵を投げて敵にぶつけたり、○ボタンを連打して回転投げ、□ボタンで敵を振り回す、R1ボタンで敵を盾にしてのガードなどが可能となっている。柱やエネルギータンク、外壁などで掴むことができるものもあり、攻略上「GRAB」はある意味必須といえる動作になっている。
さて、先ほど少し触れたサブウエポンだが、ゲームの進行中にボスを倒すなどしてプログラムを入手することで使用可能なものが増えていく。「必ず」使わなければならないサブウエポンは「ゲイザー」、「ベクターキャノン」ぐらい(マニュアルにすべてのサブウエポンが記述してあるのは親切だ)。しかし、使用にはサブゲージを消費するという制限はあるものの、他の武器も使いこなしを考えてプレイするとグッと華麗に戦うことが可能だし、なにより効率がよくなる。2周目以降のプレイで必要となるものもあるようだ。 また、今作の敵はインテリジェントにできており、攻撃をガードするのはもちろん、複数の敵で「パーティ」を組んで連携攻撃してくる。リーダーとなる「COMMANDER」機を破壊しないと連携がやまないので、素早くCOMMANDER機を集中攻撃する意味でも、サブウエポンの助けを必要とするだろう。 L1ボタンがサブウエポン系のキーボタンだが、L1を押すことで選択中のサブウエポンと「GRAB」が切り替えとなり、L1を押しながらスティックを上下することで所持しているサブウエポンをセレクトできる。この操作に慣れれば、画面を切り替えることなく素早くサブウエポンの切り替えができるのはありがたい。 個人的には、「ゼロシフト」の圧倒的なスピード感が気に入った。直線しか動けないが、敵との間合いを瞬間的に一気に詰めることができ、その爽快感は他のサブウエポンを凌駕する。多用すると自殺行為となるが、効果的に使えば圧倒的なパワーを発揮するもののひとつだ。それから、「ホーミングミサイル」の攻撃力もすさまじい。2周目の対ビックバイパー戦などで試して欲しいが、まさに「瞬殺」だ。それから、「マミー」の防御力、ダメージ回復機能は習得後のプレイをグッと楽にしてくれる。アクションが苦手という人にはオススメのサブウエポンだ。
■ ミッションクリア型のステージ構成 基本的にはストーリーはミッションクリア型の戦闘を経由することで進行する。与えられた条件をいかに突破するか、という仕掛けだ。
ディンゴとノウマンの過去、そしてジェフティとレオの再会……そしてジェフティに秘められた目的など、ロボットアニメ好きには直球勝負のストーリーが展開される。前作をプレイしていなくても、すんなり入っていける程度の情報提供が行なわれるので、遊んでいない人も十分楽しめるだろう。 また、ステージのどこかにある「エクストラミッションファイル」を取得することで、本編のリソースを利用した新たなるミッション「エクストラミッション」がプレイ可能となる。中には、「ビックバイパー」を駆って行なうエクストラミッション「ゾラディウス」なども用意されている(BGMは初代「グラディウス」で、モアイなども登場!)。 さらに、本編に登場するOF同士での対戦プレイもできる。レオのビックバイパーも飛行形態、人型形態にトランスフォームできるし、対戦専用のステージも設けられている。エクストラミッションファイル同様、本編ステージのどこかで入手できるものもあるので、探してみよう。
個人的にうれしかったのは、主人公ディンゴとエイダの会話のたたずまいが「蒼き流星 SPTレイズナー」を思い起こさせるところとか(ディンゴのキャストが『レイズナー』の主人公エイジ役と同じく井上和彦氏だからだと思うし、エイダの「ゼロシフト、レディ」なんてまさに……なセリフ)、前作の主人公、レオがビックバイパー(しかも可変型でオプションとかシールドとかしゃべっちゃうし付いちゃう)に乗って再登場してくれるところとか、制作側が「狙っているな~」と思われる仕掛けがいろいろ見えかくれするところ。ただ同時に「狙われていることがわかっているのに見事に狙撃された気分」を味わうことになるわけで、天邪鬼としては悔しい気分でもあったりする。 エイダの報告にツッコミが入れられたり(L3ボタンで肯定、R3ボタンで否定)、状況に応じてエイダの反応が変わったりと、細かいところまで作りこまれているところは、インタラクティブという面からみればアニメを超えた何かを感じさせる点ではある。ただ、それはあくまで用意されている選択肢のひとつでしかない、と思うと興ざめしてしまうのだが、スタッフのこだわりようには素直に頭をたれるほかはない。 また、ミッションエンドに登場する敵OFは、行動、形態にバリエーションがもっと欲しかったという気もする。「ネフティス」、「インヘルト」、「アヌビス」と強力なOFが登場するが、敵が強力になる=スピードとパワーが強化されていくという流れで統一されすぎている感があり、一番インパクトがあったのはあまり高速移動せず、要塞ともいえる4人乗りOFの「ザカート」だったりする……(初プレイで瞬殺してしまったので余計そう感じたのかも)。 総括すると、2周目以降のプレイもいろいろ考えられた作りで、ファーストプレイでは5時間ぐらいで終わるボリュームは、長すぎず短すぎずという丁度よさだと思う(2周目以降でデモを飛ばせば3時間は軽く切れる)。ボリュームや操作系は入り込みやすく間口が広いし、逆にエクストラミッションは「メタルギアソリッド」のVRモードを思い起こさせるやりこみ向けモードだし、気に入れば長く遊べる作品といえそうだ。 この作品を遊んでみて思ったことは、読者の方々にもいろいろご意見はあると思うのだが、「そろそろ『機動戦士ガンダム』の呪縛から逃れた、新たなSFタイトルが登場してきてもおかしくないのでは……」という思いだ。セガの「電脳戦機バーチャロン」をはじめ、昨今のロボットゲームタイトル、そして本作「アヌビス」はそれだけの可能性を十分示す完成度、世界観を携えていると思う。その「『ガンダム』を超える何か」がアニメから登場するのか、ゲームから登場するのかはわからないが、30代一年戦争戦中派の人間からの切なる願いである(「おまえが『ガンダム』に縛られてるんじゃねーのかよ!」というツッコミはご勘弁願いたい)。 PS:「はいだらー」はやっぱり意味がわからなくて「ポカーン」としてしまったのだが……。
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□コナミのホームページ (2003年2月21日) [Reported by 佐伯憲司]また、弊誌に掲載された写真、文章の無許諾での転載、使用に関しましては一切お断わりいたします ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp Copyright (c) 2003 Impress Corporation All rights reserved. |
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