今作もパーツの追加以外に、AI育成や武器破損などの新要素が加わり、プレーヤーの遊びの幅を広げている。
プレーヤーは「レイヴン」の俗称で呼ばれる傭兵となり、様々な企業から依頼されるミッションを受けて報酬を受け取る。受け取った報酬で、「AC」と呼ばれるメカのパーツを集めながら自分のACをカスタマイズしていくことになる。 ミッションの内容はバリエーション豊富で、敵の殲滅をはじめ、特定目標の防衛や探索などが用意されている。これらを達成すれば、次の依頼が発生していくという仕組みだ。また、ミッションクリア後には評価が下され、レイヴンとしてのランクが上昇していくようになる。ランクが高くなるとより高度なミッションを受けられ、さらにアリーナと呼ばれる闘技場では同ランクのACに挑戦できるようになる。 これらのミッションはゲームの進行に合わせて変化するため、ひとつのミッションを受けると、別のミッションを受けられないこともよくある。報酬だけでミッションを選んでいくのもいいが、高額な報償が用意されているミッションほど難易度は高い。慣れないうちは自分の腕と相談しながら、慎重に選んでいく事を勧める。また、ミッションを失敗してもゲームは進行するので、失敗すると報酬がもらえないばかりか、ミッションも消滅といった散々な結果になることもある。ミッション失敗と同時にゲームオーバーにもなったりするので、ミッション選びは十分に注意したい。 そして、ミッションには様々な「経費」がかかる。これは、マシンガンやライフルといった銃器の弾薬費、さらに機体修理費といったもので、これらの経費は報酬から差し引かれる。なんとかミッションをクリアしたものの、修理費がかさんで赤字になるなんてこともよくある。機体へのダメージを抑え、ムダ弾を使わずにミッションをこなし、より多くの報酬を得るようになれることが大切なのだ。 なお、ミッションによっては僚機を連れて行くこともできる。共に戦う心強い仲間がいるとそれだけミッションの遂行も楽になるだろう。ただし、僚機を伴うには費用がかかり、設定された金額以内で選ばなければならない。僚機を連れて行かなければその分の費用は自分の報酬に回されるので、金を取るか安全を取るかの選択もできるわけだ。 ■ シリーズ最多のパーツ数。その総数は400超!! 「アーマード・コア」シリーズを語る上で欠かせないのは、ACと呼ばれるメカを構成するパーツ群。これらを組み合わせて自分だけのACをカスタマイズするのが、同シリーズ伝統の楽しみであるからだ。今作は前作「ARMORED CORE 3」とストーリーが繋がっているため、前作のパーツは全て登場する。これら200種類以上の新規パーツが加わることで、なんとパーツ総数は400を超える。これは同シリーズ最多で、カスタマイズをより深く(そして悩ましく)してくれるはずだ。 パーツ群で注目する点は、左手用の武器。前作からシールドやブレード以外にも重火器が装備できる様になったのだが、思ったよりパーツが少なくてがっかりしたプレーヤーもいるはず。しかし今回はマシンガンやレーザーライフルなど、数々の武器種が追加されたおかげで、物足りなさは払拭されている。例えば両手にバズーカを装備して、相手に接近したと同時に左右のバズーカを同時発射して大ダメージを与えたり、マシンガンで相手を攻撃しつつ、グレネードでの一撃を狙うなど、戦術の幅も広がっていく。 また、エネルギーを廃したシールドが登場したのもポイント。今までは、シールドを構えると急激にエネルギーを消費していた。このため、シールドを安易に利用できなかった。だが、新タイプのシールドならエネルギー消費がないため、シールドの利用価値も高まっている。攻防共に武装の利用価値を高め、様々なプレイスタイルに対応できるようになったのが、パーツ追加による最大のメリットといえるだろう。 これらのパーツは、ショップで購入するものもあれば、ミッションクリア後に入手できるものもある。ミッションの依頼主はACパーツを提供する企業であり、各々の利益のためにレイヴンであるプレーヤーの力に頼っているのだ。よって、ミッションによって依頼主の信用を勝ち取っていけば、新パーツが開発された時に提供される。パーツを集めるためには、企業への貢献度も重要になってくるわけだ。何も考えず様々な企業の依頼を受けていると、パーツがなかなか手に入らないことが多い。できるだけ企業を絞っていくといいだろう。同様にアリーナでのランクアップごとにパーツが提供されるので、ミッションだけではなくアリーナのAC達とも戦っていくといい。中にはミッション中のフィールドに無造作に置かれているものもあるので、これらのパーツを見つけていく楽しみもある。 ちなみに、前作から引き続き登場するパーツは、前作のセーブデータをコンバートしてのプレイも可能となっている。パーツはそのままで、資金は1/10になるが、新規に始めるよりもはるかに序盤が楽になる。
相手の攻撃を受けた場合、被弾した部位によっては武器もダメージを受け、限界を超えれば破損して使用不能になる。前作までは、重装甲のACで相手の攻撃を堪え続け、強烈な銃器で逆転を狙う戦法が有効だった。だが、破損するリスクを考えるとこの戦法はは安易に使えない。逆に言えば、機動力を重視したACが小回りの効かない重量級ACと戦う場合、その機動力を生かし、相手の側面から腕を攻撃しつつ武器を破壊することが可能となる。ひたすら回避してジワジワとダメージを与えていくか、一気に接近してブレードで攻撃して離脱するなどの戦術しかなかった軽量級ACに、新たな戦略が加わったわけだ。 武器破損を防ぐことを考えた場合、まず、被弾を避けることが最も重要になるだろう。だが、相手の技量や武器の性能、そしてACの機動力などの要素を考えると、おのずと限界が見えてくる。となると、いかに武器に被弾する可能性を減らすかが勝負になってくるわけだ。機動力のない重量級ACなら、強制旋回を行なうパーツをつけて、素早く相手を向く。もしくはオーバーブーストで強引に逃れつつ、体勢を立て直していくといい。また向き合った状態での戦闘だと、攻撃時に武器を正面に突き出すために武器に被弾しやすくなる。このため相手の攻撃タイミングを見極めつつ、横移動で弾道を逸らしつつ攻撃するなどの工夫が必要になる。 このように、攻める側も守る側も被弾箇所や相手の向きを考えつつ戦うことになるので、今まで以上に頭を使うことになるだろう。
■ 新たな遊び方を提供してくれた「AI育成」 今回、特に筆者が注目(そしてはまった)のが、AIの育成。これは自分のカスタマイズしたACを登録しておき、アリーナで戦うことでプレーヤーの行動を学習していくというもの。このAIを対戦相手にしたり、チームバトルでのパートナーにしたりできるのだ。 育成の方法はいたって簡単。アリーナで勝利した相手に勝負を挑むと、AIのACでバトル可能となる。バトルは専用のフィールドで、AI登録時の機体をプレーヤーが操作することになる。その操作を逐一モニターして、AIの行動パターンとして記録していく。そのため、プレーヤーの悪い癖なども見事に再現してしまう。AI育成の過程で、自分では気づかない悪い癖を発見することもあり、結果的にプレーヤーのレベルも上げてくれることになる。 AIはプレーヤーの操作を毎回記録して、データに上書きしていくようだ。よって、強い相手になれば多くの操作(動作)を行なうことになるので、AIの育成スピードも格段に上がる。ただし、強い相手になればなるほど、自分の悪い癖が出てくるために、必ずしも強くなっていくわけではない。むしろ、特定の相手に対してのみに通じる動きとなり、融通の利かないAIに育つ可能性もある。このため、様々なタイプのACと戦い、学習後にAIの悪い部分を見極めて次の育成に生かしていくことになる。もし、動きが気に入らなければ再び、アリーナでAI機体を操作してAIデータを上書きしていけばいい。 なお、AIを登録できる機体は1機のみで、パーツや武器装備の変更をしたい場合は、新たにAIを育て直すことになる。このため本格的にAIを育てるなら、各種パーツを一通り揃えておくといい。ゲーム序盤だと揃えているパーツも少ないはずなので、ACのカスタマイズに融通が利きにくいはず。使いやすいパーツを見つけ出して、AC操作に戸惑うことなく育成できるようにすることだ。 こうして育成したAIを活用するモードがしっかりと用意されている。それは「AI ARENA」というモード。育成したAIを登録していくことで、独自のアリーナを作ることができる。知り合いの育てたAIを登録していき、各々のAIを披露していくといった楽しみもできる。モード自体は通常のアリーナと同じなので、純粋にAIとの対戦が楽しみたい人にはうってつけだ。もし、AIアリーナでは物足りないという人には、「VS MODE」でAIを交えたバトルロイヤルやチームバトルを試してみよう。こちらでも知り合いを交えて、お互いのAIをパートナーにしたりすると面白さが増す。ちなみに、AIを参加させる場合、通常では対戦フィールドは育成時のフィールドしか選べない。iLink、モデムによる対戦の場合は、ほかにもフィールドが用意される。 ミッションのクリアや対戦だけではなく、いかにAIを強く育てていくという楽しみも増えたのは非常に嬉しい。こっちの思惑とは違ったことを覚え、もどかしい思いをしつつもついつい育成に熱中してしまう。
■ ゲームはコアだが、是非とも遊んでもらいたい作品 新作が発売されるたびプレイしている著者だが、今作は間違いなくシリーズ最高の出来だと思っている。好みの問題はあると思うが、パーツの豊富さ、AI育成など、ただ戦闘するだけではない部分が気に入った。また、基本システムを損なわずに新要素を取り入れていこうとする配慮にも、これまでのユーザーに対してしっかりとした答えを出していると思う。また、前回では裏技であったコックピットビューも今回で正式に採用するなど、よいものもドンドン取り入れている点も嬉しい。 ただ、新規に始めようとする人にとっては、あまりにも敷居の高いゲームなのは事実。特に操作系が面倒で、R3やL3といったアナログスティックを押し込むところまでボタンアサインされているほど。だが、そこまで無理に使わなくとも普通に遊べる柔軟性もこのゲームにはある。攻撃やダッシュ&ジャンプに使う○×△□ボタンと、移動系の左スティックとL1・R1ボタン。通常攻撃するだけならば右手武器を使用する□ボタンなどに絞って使っていくだけでいい。まずは、移動と基本的な攻撃をアリーナで学んでいこう。低ランクの相手ならそれほど強くもないし、負けたとしても修理費もかからないので練習にはうってつけだ。こうしてゲームの操作やシステムを掴めば、これから出るであろう続編にもその知識が活かせる。また、覚えることもそれほど多くなくなるはずだ。知という財産がそのまま生かせるのが、このゲームの特徴なのだ。 初心者には取っつきにくいのはシリーズを通して言えること。しかし、コンスタントに新作が発表され、ファン主催の大会などが開催されているほどの人気を誇る作品。この魅力はなんといっても、ACのカスタマイズと洗練されたゲームバランスにあると思う。カスタマイズひとつにしても、機動性を取るには装甲や重装備を犠牲にする必要があり、逆に重装備で固めるには機動性を犠牲にする。全てにおいて万能なACを作ることはまず不可能なため、その制約の中でやりくりする楽しさがある。特に今作では、パーツごとのバランスが非常によい(と筆者は思う)。さらに武器破損というシステムが導入されたことによって、被弾のリスクを今まで以上に考えて戦術を考える必要がある。その上でACのカスタマイズによって千差万別の戦術が存在し、戦うことの奥深さを実感できるのだ。この点が、このゲームの最大の魅力であり、プレーヤーを虜にするところでもある。 もし、このゲームに興味があるけど難しそうで…と思っている人がいたら、迷わず買ってみることを勧める。ゲームは何よりも「慣れる」ことから始まるのだから。このゲームに慣れた時に初めてカスタマイズや戦闘などの奥深さを知り、その魅力にとりつかれるはずだ。
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□フロム・ソフトウェアのホームページ (2003年2月5日) [Reported by 渡辺洋二]また、弊誌に掲載された写真、文章の無許諾での転載、使用に関しましては一切お断わりいたします ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp Copyright (c) 2003 Impress Corporation All rights reserved. |
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