今回紹介する「ダイナソア~リザレクション~」は、'90年の末に発売されたPC-88シリーズ用「ダイナソア」のリメイク版……というより、ほぼ完全な移植版だ。 '90年。当時筆者はPCゲーム雑誌の編集者として、ファルコムに足しげく通っていた。新作情報をいち早く仕入れるためなのだが、そこで開発途中だった「ダイナソア」を目撃し、あまりに古典的なダンジョン型RPGであること、そして「ファルコムらしからぬ」作品であることに驚いた記憶がある。ファルコムといえば「イース」、「イース2」、「ソーサリアン」、「ロマンシア」と、いわゆるアクション系のRPGが人気の柱だったし、「イース2」のオープニングが示すようにアニメやキャラクタ性を意識した作りになっていたからだ。 これは筆者の勝手な想像だが、当時のファルコムは「ファルコム=リアルタイムRPG」、もっとはっきりいってしまえば「ファルコム=イース」という固定観念からの脱却を考えていたのではないだろうか? その動きのひとつが、「イース」と似て非なる作品「英雄伝説」であり、「ダイナソア」だったのではないかと思う。 誤解がないように、ひとつはっきりさせておきたいことがある。「ダイナソア~リザレクション~」は「ウィザードリィ」に似た古典的なダンジョン型RPGだが、それは「12年前のデザインだから」という単純な話ではない。というのも、そのころすでにダンジョン型RPGは一部の海外作品を除いて滅びつつあり、日本国内では「ドラゴンクエストIII」や「ファイナルファンタジーIV」のような2D俯瞰型のRPGが中心になっていたからだ。 廃れつつあったダンジョン型RPGに新しい魅力を持たせることはできないか、そしてもっと遊びやすくすることはできないかという発想が、「ダイナソア」の出発点に違いないと筆者は理解している。それは「ダイナソア(=恐竜)」というタイトルからも推し量ることができるだろう。
■ テーマは人生なのか? ゲームの話に入ろう。「ダイナソア~リザレクション~」の主人公は、アッシュという流れ者の傭兵だ。アッシュは何者かに導かれるように「ザムハン」の街を訪れ、なにも説明されないまま街外れにそびえ立つ「アーケディア城」に向かえと命じられる。あまりに理不尽なスタートに戸惑いすら感じるが、ようするに「なぜ自分はここにいるのか?」、「なにをすればいいのか?」の答を探すことが、このゲームの目的となっている。 12年前にプレイしたときは気がつかなかったが、人生も折り返し地点を過ぎたいまなら理解できる。このふたつの問いは、すべての人間が背負う根本的な疑問なのだ。「なぜ自分はここにいるのか?」「なにをすればいいのか?」の答を見つけることこそ人の一生であり、いわば“究極のRPG”ということになるまいか? 主人公アッシュの冒険は人生のレトリックであり、だからこそすべての冒険を終えた後に彼が呟くセリフに重みを感じさせる。またゲームの中で彼を導く蝶の存在も、荘子の「胡蝶の夢」をほうふつさせる。 パーティはアッシュを含めた5人で編成され、メンバーは選べない。ゲーム前半で僧侶(モンク)のオルリックと魔法使いのエリスが合流し、その後中盤の手前あたりで吟遊詩人のヒースと盗賊のワッツが加わる。彼らとの合流が遅れると最初から戦っているアッシュとのレベル差が大きくなってしまうので、まずその点に注意してほしい。 キャラクタにはレベルとは別にスキルレベルがあり、こちらも戦闘を繰り返すほど伸びるようになっている。たとえばアッシュの場合は剣で攻撃するたびに剣のスキルが少しずつアップし、エリスの場合は魔法を使うたびに魔法のスキルが少しずつアップするという具合だ。
ゲーム後半、強い敵と連戦を余儀なくされる状況では、キャラクタのレベルはもちろん、スキルレベルが勝敗を左右する。とくに回復を担当するオルリックと、パーティの戦力を底上げするヒース、そして強烈な魔法攻撃を放つエリスのスキルが重要だ。楽に勝てる相手と戦う場合でも、彼ら3人のスキルが伸びるような戦い方を考えよう。
■ プレイはこんな感じ マップは場所によって広さがまちまちで、単純な場所も複雑な場所もある。ただしサイズは小ぶりで、もっとも広い場所でも27×19マス程度。16×16マスぐらいが標準だ。 戦闘はマップ内を移動していると、もしくは留まって回復していると、突然発生(遭遇)する。現れるモンスターとその数は場所によってだいたい決まっているが、遭遇するかどうかはあくまでも運次第。歩けど歩けど遭遇しない場合もある一方で、戦闘終了後ヨレヨレの状態なのに連戦を余儀なくされることもある。 とくに厳しいのが、要所要所で待ち構えているボスキャラ(=ゲーム進行のカギとなるアイテムを落とす)との戦闘直後。ギリギリ生き残って、[Enter]キーを押して回復を始めたとたんに次の敵に遭遇→なす術もなくそのまま全滅というパターンもよくあることなので、キツい戦いが済んだ後は必ずセーブしておくことをお忘れなく。 戦闘終了後は経験値とお金を得ることができるほか、ごくまれに宝箱が出現することもある。罠を解除して開けることができれば、武器や防具、アイテムなどが手に入る。
書き遅れたが、「ダイナソア~リザレクション~」では登場する全てのキャラ……モンスターを含めて……がカードとして描かれている。当時流行った「モンスターメーカー」のようなカードゲームの影響を受けたのか、それともタロットカードをイメージしてデザインされたのかどうかはわからないが、これもまた「ダイナソア~リザレクション~」の雰囲気を重く、シリアスなものにしている原因のひとつだろう。
■ 遊びやすいデザイン。ゲームバランスも良好 キャラクタのレベルは50がMAXだ。筆者は以前にプレイしたことがあるので寄り道することなく最短ルートで進むことができたが、それでも50時間強。通常はクリアまで60~70時間程度掛かるだろう。一日6時間プレイしたとしても、たっぷり10日は楽しめる計算になる。画面右上に3×3スクエアのマップが表示されること、また特殊なアイテムや魔法を使うことによってより広範囲のマップを見ることができるので、ダンジョン型RPGとしては比較的ライトな仕上がりだと思う。少なくとも「ウィザードリィ」よりは楽に感じた。 とはいえ、ゲーム後半に訪れる「フォルナの塔」や「精霊の塔」には落とし穴やワープゾーンがあるので、最低限のマッピングは欠かせない。5mm方眼紙のご用意を。 ゲームバランスもかなり良好で、行くべき場所を行くべき順番で訪れれば、経験値・お金(GEM)とも十分稼げるようになっている。プレイ中に「いったん城に戻ったほうがいい」などとメッセージが表示された場合は、素直にそれに従い、装備とアイテムを買い揃えよう。戦闘中以外は自由にセーブできるので、細かく保存することも忘れないように。 そういえば、オリジナル版ではモンスターとの遭遇率がもっと高く感じたのだが、多少調整されたのだろうか? しかし、その一方でいまひとつこなれていないように感じた点もある。まずひとつは、戦闘後稀に出現する宝箱。「ウィザードリィ」と同じようにキャラクタを指定して開錠させるのだが、選ばせたところで開けるのは盗賊のワッツに決まっているし、だとすれば単にプレーヤーの手間を増やしているだけのように思う。戦闘終了後に、直接アイテムをゲットさせてもよかったのではないか? もうひとつは、戦闘のフォーメーション。たしかに最初は目新しく感じたが、戦士であるアッシュが前衛になること、また魔法使いのエリスと吟遊詩人のヒースが後衛になるのは自然な成り行きだ。よほど自虐的なプレーヤー以外は、常識的な配置を選ぶだろう。選択肢が多いように見えるが実は限られているわけで、せっかくのアイデアが空振りしてしまっているところが惜しい。
ネタバレになる可能性もあるので、念のためご注意を。最期に待ち構える敵ダリウス、そして真の敵“軍神”との戦いに勝利すると、アッシュたち5人の冒険は一応の結末を迎える。この終わり方に納得できるかどうかはプレーヤーであるあなた次第だが、筆者はかなり意味深な、そして荘子的な結末ではないかと感じた。ぜひ、ご自身の手で確かめていただきたい。
その後再びプレイを始めると、違うキャラが登場する“裏モード”に入ることができる。基本的な流れは同じだが、キャラが変わることによって“表モード”とは一味違った戦闘が楽しめるはずだ。“裏モード”の最期の最期、“裏アナザー”と呼ぶべき「違った結末」があることも補足しておきたい。
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□日本ファルコムのホームページ http://www.falcom.co.jp/ □「ダイナソア~リザレクション~」のホームページ http://www.falcom.co.jp/dino/index.html □関連情報 【2002年11月21日】PCゲームファーストインプレッション「ダイナソア~リザレクション~」 http://game.watch.impress.co.jp/docs/20021128/dinosaur.htm (2002年12月20日)
[Reported by 駒沢丈治]
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