■ FINAL FANTASY X VOCAL COLLECTION
「FINAL FANTASY」シリーズといえば、今や知らぬ者はない超ビッグタイトルのRPGです。昨年夏に発売された「FINAL
FANTASY X(FFX)」も280万本を越える大ヒットとなり、これまでにその使用音楽を収録したサウンドトラックCDなども多数リリースされてきました。
今回紹介するのは、「FFX」の声優陣が一同に集結、決戦を前にしたキャラクタたちの想いを歌とトークで綴ったアルバム、「FINAL
FANTASY X VOCAL COLLECTION」です。
このアルバムは、主人公ティーダをはじめ、ヒロインのユウナ、彼等を取り巻くルールー、ワッカ、リュック、キマリ、アーロンのメインキャラクタが登場、シンとの決戦を控えてさまざまな想いを抱えるキャラクタたちがその心情を語るシナリオトラックと、キャラクター自ら歌うイメージソングのヴォーカルトラックの2つで構成されています。
シナリオトラックは「FFX」ゲームシナリオ担当の野島一成氏と渡辺大祐氏の書き下ろしとなっており、登場キャラクタの想いが細部にわたり表現されているのは、さすが本編のシナリオ担当の方が書かれたものだな、という感じです。
ヴォーカルトラックは、平井堅やDOUBLE等を手掛けたMaestro-T氏など、ポップスの巨匠たちが多数プロデューサーとして参加。クオリティの高いサウンドの提供に一役かっています。
このアルバムのおもしろいな、と思ったところは、役の声優さんのCDではなく、あくまでキャラクタが語り、そして歌うという試みで制作されているというコンセプトです。
昨今の、声優さんによるドラマとイメージソングのゲームCDは、ドラマパートはともかく、歌のほうになると、どうしても声優さんのカラーが色濃く表面に出てしまって、そのゲームの世界に浸りきれないものがあったのですが、このアルバムの場合、曲作りも脚本も、キャラクタのイメージを最も重視して作成されているので、すんなり「FFX」の世界に入り込め、自分も召喚師ユウナのガード(護衛)の一員のような気分にさせてくれます。
私が「FINAL FANTASY X
VOCAL COLLECTION」を聴いて驚いたことは、声優さんたちが思いのほか(失礼ですが)歌唱力が高かったことです。
特にティーダ役の森田成一さんは、ソロの曲「A
Ray of Hope」ではハードに、ワッカ役の中井和哉さんとのデュオ「And
On We Go」ではビサイドの海が目に浮かぶようなのびやかさで各曲を歌い上げ、その表現力も素晴らしいものがあります。楽曲の質の高さもあり、ただのゲームのヴォーカルCDとあなどることなかれ、ポップスのアルバムとしても強くおすすめできる1枚だと想います。なによりキャラクタのイメージが100%表現されているところが、一番のポイントですね。
CDのラストのトラックに、ユウナ役の青木麻由子さんが歌う「feel」という曲がボーナストラックとして収録されていますが、これは「FFX」の祈り子の間で流れる「祈りの歌」のリミックスです。原曲はコーラスのみの荘厳な曲でしたが、リミックスはまったく路線を変えてドラムンベースになっています。リズムとユウナの歌声が不思議に融合していて、原曲とはまた違った透明感があり、どちらが祈り子の間で流れていても、違和感がないような気がします。この辺りも「FFX」サウンドのいろいろな可能性を想像できて、楽しみなところです。
また、それ以上にシナリオトラックもヴォーカルトラックも、キャラクタのイメージが存分に表現されていることが素晴らしいですね。ゲームプレーヤーとして、好きなゲームのイメージが崩れるのはどうにも堪え難いものがあるのです。その点、このアルバムは大満足の出来で、ぜひとも「FF」ファンに聴いてもらいたい1枚です。
[Text : 遠藤 美幸]
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