★ PCゲームレビュー★


“走る”快感を追求したラリーゲーム
ラリースポーツ チャレンジ


 「ラリースポーツ チャレンジ」(以下、RSC)は、「Motorhead」や「Rally Masters」といったラリーゲームの開発で、レースゲームの世界では一大ブランドといっていいスウェーデンの開発チームDigital Illusionsが制作したラリーゲーム。元々Xbox向けのタイトルとしてアメリカでは2月、日本では6月にリリースされている。


■ 29種のラリーカーを操り、4タイプのレース、48種のコースを駆け抜けろ!

内部のロールバーまでしっかり作りこまれた車種ばかり、外見のステッカーもラリーらしいものがベタベタ張られて、雰囲気を盛り上げる
 本ゲームでは、トヨタ、フォルクスワーゲン、三菱、フォード、アウディといったラリーレースではおなじみのメーカーからライセンスを受け、最新ラリーマシンからグループBの往年の名車、ヒルクライム専用のモンスターマシンまで、正式ライセンスを受けた 29種(24種類+5種の隠し車種)のラリーカーを操ることができる。具体的な車種名は以下のとおりだ。

 ・Ford Escort Cosworth Rally
 ・Volkswagen Beetle
 ・Castrol Toyota Corolla
 ・Peugeot 306
 ・Mitsubishi Lancer EVO VI
 ・Subaru Impreza WRX
 ・Ford Focus Cosworth
 ・Peugeot 206
 ・Saab 9-3 T16 4x4
 ・Opel Astra T16 4x4
 ・Ford Focus Rallycross
 ・Citroen Xsara Rallycross
 ・Mitsubishi Lancer EVO 6.5
 ・Subaru Impreza Hill Climb
 ・Lancia Delta Integrale
 ・Nissan Skyline
 ・Metro 6R4
 ・Peugeot 205 T16
 ・Audi Quattro S1
 ・Lancia Delta S4
 ・Peugeot 405 T16 Hill Climb
 ・Audi Quattro S1 Hill Climb
 ・Suzuki Escudo PP Special
 ・Toyota Tacoma Hill Climb

 いずれのラリーカーもラリーのTV中継などで一度は目にしたことがあるような車種ばかりだ。当然、ラリーカーのお約束とも言える各種スポンサーステッカーもバリバリ貼り込まれ、「自分がラリーを走るんだ」という気分を盛り上げてくれる。

コース路面や周囲の描画にも手を抜いていない。特にアイスコースの路面などは非常に綺麗に描画されており、いかにも滑りそうだなぁといった感じだ
 さて、これらのラリーカーで走るラリーコースは4タイプ、48種類のコースが用意されている。

・ラリー
広大なサバンナや砂漠の決められたコースを走り、そのコース通過時間によって順位を競うモード。荒れた砂地を走ることが多く、ハンドルを切った瞬間に車体が滑ることが多い。適切なアクセルワークと、ハンドリングがキーとなるレースタイプだ。

・ヒルクライム
急角度の山岳道路を使い、頂上へ向かって上って行くレースタイプ。常にアクセルをベタ踏みで上ることになるが、坂を上りきった瞬間に300R以上の急カーブが存在しているということもあるので、コース全体を頭に叩き込んで走ることが重要だ。これとは逆に、山岳道路を下るダウンヒル形式のコースタイプもある。当然山を降りるわけだから、スピードはダウンヒルよりも格段に出やすいが、カーブの角度はヒルクライムと同様なので、ヒルクライムとは逆にブレーキングが重要になってくる。

・ラリークロス
こちらは整地されたコンクリートの市街コースと、ラリーコースの混合コース。市街コースとラリーコースでは車のセッティングがかなり違ってくるのだが、この二つが混合されているということで、車のセッティングバランスと路面状況に合わせて運転スタイルをリアルタイムに変えて行くことが重要となってくる。

・アイスレース
凍結した路面や、雪の積もった路面状況でのレース。ラリーコースより、さらに挙動が敏感になるために、ハンドル操作とブレーキワークには細心の注意が必要となってくる。一度路面でコントロールを失ってしまえば、立て直す手はほとんどないといっていいほどで、走っている間、常に極度の緊張を強いられるコースだ。だが、逆にこのコースで自由に車体をコントロールできるようになれば、どのコースでも思ったとおりに車をコントロールすることができるだろう。

 ちなみに、これらのコースははっきりわかれているわけではなく、ダウンヒルでアイスコースといった具合に、ある程度の状況が混じることもある。コース状況はナビゲーターが逐一声に出して教えてくれる。そういった報告と車のセッティングを考え、リアルタイムに運転スタイルを切り替えてプレイしていこう。

コースの状況は、画面に表示されるマークとナビゲーターの声で教えてくれる。この写真だと「前方コブあり、その後普通の右カーブ」ということになる
自分の走行データを記録し、そのゴーストと競い合うこともできる
 お次はゲームモード。RSCには4つのゲームモードが用意されている。レースに出場しポイントを稼ぐことで上位ステージに進んで行く「キャリアモード」、キャリアモードのコースを使って最速タイムに挑戦する「タイムアタック」、コンピューターの運転する3台のライバルカーと対戦する「シングルモード」、オンライン経由で4人まで同時対戦ができる「マルチプレイモード」の4つだ。

 この中でも特に注目したいのがキャリアモード。決められたコースを完走したタイムで順位が決まっていくのだが、レースで上位をキープしてポイントを溜めていくことで、プロ→エキスパート(1万4千ポイント)→クラシック(4万ポイント)→アンリミテッド(7万ポイント)というようにステージが上がっていく。

 1回のコースで1位を取ると約400ポイント加算され、いくつかのコースを走りその最終結果によって追加ポイントが加算されていく。ただ、ステージが進むにつれてコンマ1秒の争いになってくるので、上位コースへの道は果てしなく遠い。ストイックにタイムを縮めていきたい人にとっては相当のやり応えがあるゲームモードといえるだろう。

 ちなみにCPUを相手にレースを行なうシングルモードは敵車の動きがかなりイヤラシイ。横をすり抜けようとするとブロックして邪魔してくるのは当然として、スタートの瞬間に自車の前に飛び出しあからさまに車をぶつけてきたり、コーナー進入時にリアに体当たりをしてスピンを誘発したりとかなり過激な妨害行動をしてくる。

 正直ここまで来るとデイトナ(ストックカーレースのひとつで結構接触やスピンが頻発する)じゃないかと思うぐらいだ。ただ、こういったアルゴリズムのCPUはある意味人間らしいとも言えるわけで、コーナー進入時に隙を見つけてコーナーへ突入し、コーナー出口で一気に抜き去ったりすると、全身を突き抜けるような快感が得られる。マルチプレイの練習としてだけではなく、爽快感を得たい向きにもオススメだ。

走り終わった後はリプレイにて自分の走りを確認。走行ラインやブレーキのポイントなどをチェックしよう。加えてカメラ視点もいろいろ設定されているので、レースムービーとしてみても楽しめるだろう


■ “ゲーム”と“シミュレーション”、エンターテインメントとしてどちらを重要視したか

滑る車体を上手く制御し、コーナーを抜けていこう。コーナーへの進入角度、ハンドリング、アクセルワーク、その全てが合致したときに美しいコーナリングをすることができる
 レースゲームというと“Colin MacRae Rally”や“グランツーリスモ”シリーズのように、「実在する車種に実在するパーツを組み込み、その挙動は物理計算によって行われる」といったシミュレーション的要素の強いタイプと、“リッジレーサー”のようにゲームとしての爽快感が強いタイプ、2種類に大きく分類することができる。

 RSCは、車の挙動やカーセッティング、事故時のペナルティなどを考えると、両者の真ん中くらい、セッティング面などの難しいことはあまり考えず、運転する楽しさだけを楽しめる美味しいとこ取りなゲーム設計となっている。

 ラリーゲームでは、路面状況が車体に大きな影響を及ぼす。実際にプレーヤーが運転する路面はラリーコースであり、高速道路のように滑らかに整備された路面ではない。直線道路だとしても路面のゆがみや路面横のコブがいくつも存在しており、これらの障害を越えるたびに車体が暴れる。それを立て直したり、暴れないようにコースを走るのがプレーヤーの腕の見せ所、というわけだ。

 そして、ラリーゲーム最大の楽しみは「滑り出した車体を上手く制御し、綺麗にカーブを抜ける」ところにある。ラリースポーツでは、現実の車に比べてかなり簡単に車体が流れ始めるようになっており、滑る車体を制御する楽しみを十二分に味わうことができる。たとえば右カーブなら、右に多めにハンドルを切ってカーブに侵入する前から車体を滑らし、車体コントロールを失わないようにアクセルをコントロールしながらコーナーを抜けていく。カーブ出口に頭が向いた時点で左にちょっとハンドルを切って、カウンターを当て車体を建て直す。そこで一気にアクセルを踏みカーブを抜けて行くわけだ。

 正直言ってコレがかなり面白い。適正な角度で車体を滑らし、その角度を維持したままカーブを抜けた瞬間の快感といったら筆舌に尽くしがたいものがある。そして、コレができて初めてタイムを縮めるといったストイックなレースゲームの世界が展開していく。

 運転がレースゲームのメインだとすれば、プレーヤーが操る車体のセッティングはもうひとつの楽しみといえる。だが、組み込んだパーツが車体にどのような影響が出るのかは非常にわかりづらく、素人が思ったとおりに車体をセッティングするのは非常に難しい。かといって車体セッティングをおろそかにしてはゲームを十二分に楽しむことは難しい。コースにあわせた車体セッティングができないと、せっかくの運転技術を無駄に浪費してしまうことになる。

 その点に関し、RSCはひとつの回答を出している。セッティング項目をある程度まで絞り、その項目の設定内容を数値ではなく「どのように変えたいか」というようにあいまいに設定するようにしたのだ。パワーレシオの設定だとリアに振るのかフロントに振るのか、それとも前後同バランスにするのかを選択できる。ユーザーはこれから走るコースや路面、天気の状況に合わせて大まかにセッティング内容を選択すれば、ユーザーの望む車体セッティングになるというわけだ。

 たとえば、ヒルクライムの場合はパワーレシオをリアに振れば車体を押し上げる格好になり、エンジンのパワーを純粋に路面に伝えることもできる。ちょっとのハンドル操作が大きく挙動に影響するようなアイス路面だったらハンドルの反応をルーズにしてやればいい。先ほど路面状況が車体に与える影響を書いたが、200km/hを超える高速域で運転をしている場合は特に顕著になってくる。この反動を抑えたいならサスペンションをやわらかくして、路面のがたを吸収してやればいい。運転の腕と絶妙なセッティング、この両輪が揃ってこそ勝利への道が開けるというものだ。

 さて、シミュレーター的要素の強いレースゲームの場合、一度でも事故やクラッシュを起こしてしまうと、フレームがゆがんでまっすぐ走らなかったり、ブレーキの効きが悪くなったり、最高速度が出せなくなるといったことが日常茶飯事に起こる。そういった事故に対するペナルティは、プレーヤーに対してコーナーへの進入速度やブレーキングに多大な注意を払うことを強制する。

 シミュレーター的なアプローチで作ったゲームの場合はこれで大正解なのだが、車をハイスピードで運転し、コースを駆け抜けていくという爽快感とは程遠くなってしまうし、コレだと車好きな人間だけのゲームとなってしまう。個人的にはブレーキやアクセルワークといった小難しいことを考えずにコースを疾走することこそがレースゲームの面白さの根本的な部分だと思う。

 ラリースポーツの場合、カジュアル層にもレースゲームの楽しさをわかってもらうため、事故に対するペナルティを車体外見の変化とタイムへの悪影響だけに抑え、走行性能へのペナルティを無くしている。これなら、プレーヤーは思う存分ハイスピードを楽しむことができるというわけだ。

 そういった意味では、ラリースポーツは運転技術を十二分に試したい玄人向けのシミュレーション的要素から、レースゲームとは親しみの薄い一般層に向けたゲーム要素まで、幅広い層の人々がレースゲームの醍醐味を味わえるようなゲームになっているといえる。

クラッシュ! 事故を起こすとガラスは割れ、車体はゆがみ、といった具合に非常にド派手に壊れてくれる。でも、走行性能に問題は無いので気にせずガンガン走ろう。事故を恐れずにコーナーを攻めることが上達への近道だ

セッティング内容は非常に簡単、設定できる項目も少ないのである程度試行錯誤してコースにぴったりのマシン設定を見つけよう


■ やっぱりハンドルコントローラーは欲しい!!

 さて、レースゲームというとハンドルコントローラーの話は必ず出てくるわけだが、正直な話を言うと「絶対買ったほうがいい」という結論一択。上でも書いた「コーナーをハイスピードで滑って抜ける」快感を味わいたいならハンドルコントローラーは必須である。キーボードだと、コーナー内を滑っている最中にタイヤ方向を固定させることができないので車体制御がひたすら困難で、なおかつコーナー進入時にある程度アクセルは踏んでいないとコーナー脱出時の速度が稼げないという事態に陥る。

 基本的にキーボードはオンオフの区別しかないわけで、キーボードを押している間、ハンドルを等間隔で回すことになる。当然、コーナー進入時にハンドルをある一定量、ガシ! ガシ! と回していたのでは、車体が暴れだしてしまうわけで、運転が困難なことこの上ない。さらに問題なのが、アクセルの問題。ベタ踏みか踏んでいないかのどちらかになってしまうため、コーナー進入時にアクセルをベタ踏みしようものなら、タイヤは一気にグリップを失い車体は一回転する羽目になってしまう。ならば、アクセルを切った状態でコーナーへ侵入すると、今度はコーナーの脱出速度が上がらず、これならブレーキをちゃんと踏んで曲がったほうがいいような感じになってしまう。

 要はアナログ入力ができればこれらの問題は全て解決するわけだが、だからといってアナログ入力が可能なゲームパッドを使うのもちょっとさびしいものがある。さいわいRSCと合わせてMicrosoft SideWinder Force Feedback Wheel USBを買うと5,000円のキャッシュバックがあるキャンペーンが行なわれている。市販価格が15,000円程度であることを考えると、10,000円でハンドルコントローラーが手に入ることになる。1万円の投資でゲーム自体の面白さが数倍に広がり、骨の髄までゲームを楽しめるというならハンドルコントローラーは買っておいて損は無いだろう。

 RSCは、大自然の中のコースを高速で車を走らすラリーの醍醐味が十二分に再現され、なおかつシミュレーター的要素が強いレースゲームのように、事故を起こしても車を失ったり、ゲームオーバーになったりすることも無いので、レースゲーム初心者の方も十分楽しめるゲームといえる。ちなみに12月7日と8日に、東京秋葉原のアソビットシティでRSCのタイムトライアル大会が開かれる。興味のある方はぜひ参加してみるといいだろう。

(C) 2002 Microsoft Corporation. All rights reserved.


【ラリースポーツチャレンジ】
  • CPU:Pentium III 733MHz以上(Pentium 4 1.4GHz以上を推奨)
  • メモリ:128MB以上
  • HDD:2GB以上
  • ビデオカード:VRAM 32MB以上


□「ラリースポーツ チャレンジ」公式ホームページ
http://www.microsoft.com/japan/games/rsc/default.asp
□関連情報
【11月20日】「RalliSport Challenge」Playable Demo
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20021120/demo1120.htm

(2002年12月6日)

[Reported by tyokuta]


Q&A、ゲームの攻略などに関する質問はお受けしておりません
また、弊誌に掲載された写真、文章の無許諾での転載、使用に関しましては一切お断わりいたします

ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp

Copyright (c) 2002 Impress Corporation All rights reserved.