開発元 Microids
Microidsの新作アドベンチャー「Syberia」のPlayable Demo。突然だが、いまやフランスは国家的なゲーム産業育成政策により、Vivendi Universal、Ubi Soft、Infogramesなど世界的なメーカーを数多く擁するヨーロッパ最大のゲーム産業国家に成長している。そうした巨大なメーカーの影で、自国フランスを含め、ヨーロッパを中心に展開しているメーカーも数多く存在する。
Microids、Wanadoo Edition、Cyro Interactiveなどがそうだが、おもしろいのはこれらメーカーのほとんどはアドベンチャーゲームを十八番にしていることだ。そのMicroidsの最新作が「Syberia」。タイトルどおりヨーロッパからシベリアへの大陸横断の旅を行ない、その旅の過程でさまざまな不思議な体験をする正統派のアドベンチャーゲームである。6月発売予定で、年末にはPS2版も登場する。
なお、本Demoの唯一にして最大の問題は、言語が「フランス語」のみというところ。本来なら英語版の登場まで待つつもりだったが、アドベンチャー大国フランスならではの非常に質感の高い映像表現に目が開かれる思いがしたので、取り急ぎご紹介しておきたい。
Demoでは、オープニングシーンと序盤のホテルのシーンがプレイできる。主人公はニューヨークで仕事している弁護士Kate Walkerで、ゼンマイ仕掛けのおもちゃを製作する工場の買収契約のためにヨーロッパのとある国を訪れる。オープニングシーンはちょうどそのシーンからスタートする。
オープニングは、主人公のいるすぐ手前の坂からゼンマイ仕掛けの太鼓打ち人形を先頭に1台の馬車がやってくるところから始まる。馬車の中までは見通せないが、手綱持ちや後ろからやってくる従員たちはみなゼンマイ仕掛けの人形で、しとしと降り続ける雨音に混じって太鼓の音を寂しく響かせつつ主人公の前を通り過ぎていく。
ゼンマイ仕掛けの一行が見えなくなったあと、再び歩き始める主人公。橋を越え、中世的な建物をいくつも通り過ぎて、目的のホテルまでたどり着いたところでふたたび機械音が聞こえ、思わず顔を上げる主人公。そこには屋根のへりにせり出してきたお迎え用のぜんまい人形がいて、主人公に向けてお辞儀をしてくれる。まさにゼンマイ仕掛け人形だらけの街であり、不思議な感慨を胸に主人公はホテルのドアを開けて中に入っていく。
実に印象に残るオープニングシーンだが、驚くのはこれが全編リアルタイム処理で行なわれているところだ。対象までの距離に応じて複数枚に張りわけられた静止画の背景にプリレンダリングされた3Dアニメーションを融合させ、実写顔負けのリアリティを生み出している。内容、テクニックともに素晴らしいオープニングだ。
ホテルに入ると、アドベンチャーゲーム本編がスタートする。操作はマウスを用い、任意の箇所を直接クリックして、主人公の移動やオブジェクトのチェック、アイテムのピックアップなどを行なっていく。会話シーンは音声とテキストの両方で展開し、調査を進めていくごとに主人公のメモに新たなキーワードが書き加えられていく。そのキーワードを選択すれば、相手がそのことについて話してくれる仕組み。実にわかりやすい。
日本人が敦煌莫高窟やモンゴル高原に対して漠然とかき立てられる旅情のようなものを、フランス人がシベリアに対して感じているかどうかはよくわからないが、序盤からぐいぐい引き込んでいく独特の映像表現と、壊れかけのゼンマイ仕掛けの人形たちを軸にしたオリジナルストーリーが実に魅力的だ。確かな旅情と失われた時代への追慕をそこはかとなく感じさせてくれる作品。言葉の壁は高いが、ぜひお勧めしておきたい。
(c) 2002 Microids.
ダウンロードはこちら(BonusWeb)