任天堂、ゲームキューブの今後の展望を一部公開
「トライフォース」第1弾はセガの制作する「F-ZERO AC (仮称)」

3月28日 発表

 任天堂株式会社は都内で記者会見を開催し、ニンテンドーゲームキューブの今後一年間のソフトラインナップの概要を一部発表した。2002年度 (2002年4月から2003年3月) に関しては13本から14本のリリースを予定しており、月平均1本程度を発売していくのだという。

 まず最も注目されるのは「マリオサンシャイン」で発売が7月19日を予定しており、価格は6,800円。「ゼルダ」シリーズの新作と「マリオパーティ」の新作、「コロコロカービィ」、制作が進められているディズニーのソフトはすべて2002年内に発売する予定だという。カナダのスタジオが制作中の「エターナルダークネス」については秋を予定。
 逆に5月31日に発売が予定されていた「スターフォックスアドベンチャー」については2002年秋に延期された。ゲーム内容を練り直すのがその理由。時間にして2カ月あれば大丈夫と言うことだが、「今後再延期はないよう絶対大丈夫な時間」と言うことで“秋”との発表となった。

 サードパーティからのゲームキューブタイトルの発売に関しては、「我々の発表するべきことではない」としながらも、「任天堂の発売するソフトの10倍とは言わないが、5倍は年末までにリリースされる」という。


 細かいゲーム内容については5月に開催されるE3で公開されるが、今回、発表会に出席した宮本茂氏の口から短いムービーとともに、ほんのすこしだけ解説された。

 「マリオサンシャイン」は基本的にニンテンドウ64版の延長線上にある作品で、アクションの王道となる作品だという。マリオはハンマー以外の武器として水鉄砲を背中にしょっている。これにゲーム的な仕掛けがあり、何種類か登場するのだという。ステージのボリュームもアップしているほか、アクションにプラスアルファがあるため、宮本氏曰く「少し難しくなるかもしれないが、誰でもクリアできるよう調節していく」と締めくくった。
 ムービーの雰囲気ではパックンフラワーが黒い油のようなものをまき散らし、それをマリオが水鉄砲で消していくシーンが描かれていた。

 次に公開されたのが「METROID PRIME」。基本的に1人称視点だが、FPS (1人称視点のアクションシューティング) ではないと言う。宮本氏は「『メトロイド』はフィールドを冒険、探検するゲームだ。その要素は変わっていない。ではなぜ1人称視点にしたのかというと、『メトロイド』で描かれる地形はパイプだったり狭いところが多い。こういったところでは3人称視点にするとカメラの位置が難しく遊びにくくなる。このため1人称視点にしただけでゲームの本質は変わっていない」と説明。ムービーでは画面の表示方法が変わっていったのだが、「画面が変わるのはサムスのバイザーが数種類あってそれが変わっているため。バイザーをうまく使い分けてゲームを進めていくことになる」ということで、ゲームシステムに深く結びついていると思われる。
 ムービーではトラクタービームのようなものを腕から発射しメトロイド独特のワイヤーアクションを行なっていた。また、くるっと丸くなるシーンも含まれていたが、丸くなると少し引いた3人称視点となっていた。もちろんこれが決定したわけではなく、違ってくる可能性はある。

 「スターフォックスアドベンチャー」については宮本氏が「重厚長大になってはいけないと思ってはいるが、『スターフォックスアドベンチャー』のシナリオがかなり大きく、ゲームを練り直すために延期する」とコメント。かなり膨大なゲームとなっている模様。

 「エターナルダークネス」については、「任天堂は子供向けのソフトばかり扱っていると思われているが、ゲームキューブでは多彩かつ粒選りな作品を提供するという思いがあった。『エターナルダークネス』は大人向けであり、これまでに任天堂が手がけていない作品で、任天堂の多彩な一面を認識してもらえると思う」と同席した岩田氏がコメント。かなり凝ったシナリオになっており、作家性の強い作品となっているという。


 このほかに、2月にヨーロッパや米国で行なわれたプレスツアーに関する発表があった。そのひとつが、ネットワークについての見解。これによると、「ネガティブではないが、ビジネスのリアリティとして難しい。もちろんチャレンジは必要だが、ゲームがすべてネットワークに向かっていくのはおかしい」と岩田氏がコメント。「フランスなどはネット環境が遅れているようで、世界規模でソフトを売ることを考えるとユーザー本位ではないと思う」と続けた。

 宮本氏は「ネットワークに対して興味がないわけではない。しかし、エンタテインメントの世界では1番か2番以外は生き残ることはできない。みんながネットワークに殺到しても勝ち残るのは1つか2つ。負けた人はどうするのか。任天堂はネットワークはコミュニケーションと位置づけている。我々はこれまでにもコミュニケーションを重視してきた。やろうと思えばいつでもできる。どんなソフトを載せるのか? 継続的にしていくためには? と言った論議がされていない」と自説を展開。
 また、「ネットワークのいい面ばかり語られている。もちろんそれは大切だけど「いつ終わるのか? 終わる責任を考えていないのではないか。1万人しかいない会員でもそれは大切なことだ。任天堂もこれまで何度か苦労してきている」と自社の何度かのチャレンジを引き合いに出しコメントした。

任天堂の宮本茂氏 同じく任天堂の岩田聡氏



今回公開されたイメージイラスト
 発表会の後半では、ニンテンドーゲームキューブのアーケード展開としてすでに発表されている「トライフォース」につての発表があった。基本的には速報で報道したとおり、2002年末にトライフォース版の「F-ZERO AC(仮称)」とGC用「F-ZERO GC(仮称)」の2タイトルをリリースするというもの。企画・制作はアミューズメントヴィジョンが行ない、トライフォース版についてはセガが販売し、ゲームキューブ版は任天堂が販売する。アーケードとコンシューマの連動については、データのやり取りが中心になる予定だという。データの連動については「メモリーカード59」を使用することになりそうだ。

 岩田氏によれば「ゲームキューブの技術のアーケードへの転用はセガとナムコの両社からそれぞれあったが、それぞれバラバラにやるよりもいっしょにやった方がよいのではと提案したところ、両者も快諾してくれたのでこの企画が2001年の夏頃からスタートした」と説明。話はトップダウンではなく、技術者側からボトムアップで進められたという。

 発表会に出席したアミューズメントヴィジョンの名越稔洋氏は「ゲーム業界に入って1年目に『F-ZERO』に出会った。スーパーファミコンと同時発売ソフトはひととおり購入したが、一番粘っこく遊んだのが『F-ZERO』だった。その後自分でレースゲームを制作する上で参考にもした」と語った。

 「F-ZERO」の魅力については「『F-ZERO』はドライブゲームではなく、レースゲーム。それもスピードレース。スピードが出てそれをコントロースし、敵車とのせめぎ合いを楽しむ」と表現。「現在、これが必要で、これが必要ではないと要素の選別を楽しく行なっている」という。宮本氏もこの意見に賛同し、「快適に運転でき、まるで意のままに操っているかのごとく走っている。そんな中でガンガンぶつけたり、ぶっちぎったり、ゲームキューブではもっと気持ちいいシーンを描けると思う」とコメントした。

 最後に宮本氏は「『F-ZERO』はアーケードに向いていると思う。この作品で、みんなの目がアーケードに向いていくきっかけとなればいいと思う。名越さんは、ゲームが遊びこむ以外に楽しみ方はもっとあることを知っていらっしゃる。名越さんが制作することにはわりと安心している」と期待感を語った。

 それを受けるかたちで名越氏は「気が付くと最近レースゲームは制作していなかった。機会があれば作りたいなぁと思っていた。セガとやってよかったと思われるようなゲームにしたい」と抱負を語った。ちなみに筐体など細かいことについては決定していないが、コンテンツを最大限に活かせるように色々と考えていきたいという。

アミューズメントヴィジョンの名越氏 (右) とセガでアミューズメント系の編成を担当されている杉野氏 (左) 「F-ZERO X」を手がけた今村孝矢氏。「F-ZEROはバカレースゲーム。比較的ゲームクリエイターの好きなようにできる」とコメント


(C)2002 Nintendo
表記されているタイトルはすべて仮称です

□任天堂のホームページ
http://www.nintendo.co.jp/
□ニュースリリース(任天堂)
http://www.nintendo.co.jp/n10/news/020328.html
□ニュースリリース(セガ)
http://sega.jp/release/nr020328_1.html
□関連情報
【3月2日】パネルディスカッションに任天堂の宮本、岩田両氏が登場
ワールドワイドに受け入れられるゲーム制作の秘密
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020302/nintendo.htm

(2002年3月28日)

[Reported by 船津稔]

I
【Watch記事検索】
最新ニュース
【11月30日】
【11月29日】
【11月28日】
【11月27日】
【11月26日】


ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

Copyright (c) 2002 impress corporation All rights reserved.