'99年3月の発売以来、常に3D MMORPG界の牽引役だった「Ever Quest」に、2000年12月4日、最新の拡張パック「Shadows of Luclin(SoL)」が発売された。ディスク3枚組みという大ボリュームで、ゾーン拡張以外にも高レベル者用の新しいスキルシステムが追加されたり、馬や新種族が追加されたりと、なかなか盛りだくさんな内容だ。さらに、グラフィックにも変化があり、これまでのポリゴンポリゴンしたキャラクタ像から、さらにリアルなものに変更されている。 |
■ ゾーンだけでない、さまざまな拡張がなされた最新の「Ever Quest」
「MMORPGにはラスボスもいないし物語の終わりもない」というのは、Ultima Onlineが出始めのころに良く使われた紹介文だが、さすがに発売から2年以上もすぎると、どんなにプレイに時間をとられるEver Questであっても、最高レベルに達したディープなファンがたまってくるものだ。だが、SoLでは、そういった高レベル層をひきつける、LV51以上で機能するスキルシステムなどが追加されており、いったんEverQuestを引退した高レベルプレーヤーでも、再び戻ってくる気になれそうな拡張がほどこされている。
今回追加されたのは、新しい世界である「Luclin」とその各ゾーン、新しい種族の「Vah Shir」と新しいクラスの「Beastlord」、そしてLV51以上で発動する新スキルシステムと各種新スキルだ。グラフィックエンジンも改良が加えられ、キャラクタのモデルが新しくなっている(オプションでオン/オフが可能)。また、乗ったまま戦闘も行える馬(8k~)や町へのBindを頼めるNPCのSoulbinderなども追加されている。
SoLをプレイするには、Ever Quest本体ソフトが別途必要だ。現在発売されているパッケージの中ではUBIソフトが出している代理店版の「Ever Quest: The Ruins of Kunark(本体ソフト&拡張パックのThe Ruins of Kunark)」か、それの直輸入版が最低限必要になるわけだ。Shadow of LuclinからEQを始めるのであれば、直輸入版の「Ever Quest Trilogyもしくは Deluxe Edition(本体ソフト&The Ruins of Kunark+The Scars of Velious)」がSoL以前の拡張パックすべてが含まれているのでお買い得だ。また、SoLにはUBIソフトの代理店版もあり(5,800円)、これには、インストールの仕方、拡張パックの新要素、今回のバックグラウンドストーリーと、NewbieゾーンであるShadow Havenの町マップ、Shar Vahlの町マップなどが日本語で書かれたミニマニュアルが同梱されているため、初心者に特にお勧めだ。
新クラスのBeastlordが召喚できるペット。新種族のVah Shirでこのクラスを選ぶと、猫人間が虎を操るといった風情になっている | Luclinの世界には新しいモンスターも多数。一風変わったMobが多い | 新種族のVah Shir。キャラクタグラフィックがより細やかになって、装備品などの見栄えもいい |
■ 新しい種族「Beastlord」と新しいクラス「Vah Shir」
新しいクラスの「Beastlord」は名前だけを聞くと勇ましいウォリアータイプのクラスを思い浮かべてしまうが、要は「動物マスター」といった感じの意味合いで、実際にはMonkとShamanのハイブリッドクラスという感じだ。ペット召還やペットへのBuffといったペット関連呪文のほかにHealingやBuffといったパーティへの回復&補助系の呪文も数多く持っている。Beastlordの目玉であるペットは虎型の大変可愛らしいもので、レベルが低いときのペットは子猫がじゃれ付いているようだ。 呪文はLV9から習得し始め、ほかのキャスター同様、順次、新しいスペルを覚えていく。装備はLeatherまで、戦闘では片手か両手持ちのBluntまたはPierceを装備できる。ただし、ダブルアタックはなし。なお、Beastlordを選択できるのは、Barbarian、Troll、Ogre、Iksar、Vah Shirの5種族となっている。どうせならWarriorとのハイブリッドにしてもらいたかった感じだが、それだと強すぎてしまうだろうか。Buffをたくさん持っているので、その辺をパーティプレイでペット関連呪文と共にどう活用するかが肝。やや通好みなクラスといえる。
一方、新しい種族の「Vah Shir」は今回の拡張パックのテーマとなっている月の世界Luclinの住人である。猫型ヒューマノイドで、顔の模様は豹やシャム猫、チーターなどが用意されている。体はかなり大きいほうで鎧類はLarge品しか身につけられない。イメージ的にはBarbarianに近いが、初期値ではAGIがBarbarianよりやや高めに設定されている。
これがBeastlordが召喚する虎型ペット | Luclin周辺では虎と猫の集団が狩りをしている | レベルが低いとペット自体の大きさも小さい |
手足に爪の生えているVah Shir。Luclinにある町ゾーンでは実にさまざまなタイプのVah Shirを見ることができる |
■ 月の世界「Luclin」
ノラスを地球とすれば、Luclinは空に浮かぶ月だ。拡張パックではこの月の世界での冒険を堪能できる。各ゾーンは難度の高いもの低いもの取り合わせてバラエティに富んでおり、ダンジョンは概ね高レベル者向けのものが多い。
ノラスとLuclinはポータルでつながっており、G.FaydwerなどからLuclinのNexusに向かうことができる。だが、キャラクタを持ったばかりの初心者が助けなしに気軽に行かれる場所ではないため、もしSoLからEverQuestを始めたプレーヤーならば、Vah Shirでキャラクタを作って最初からLuclinに降り立ったほうが、すぐに拡張パックの新しい世界を堪能できるだろう。
ノラスが空に大きく浮かんでいる光景はなかなかのもの。アップダウンのきつい地形が多い。またEB必須のThe Greyなどユニークなゾーンも存在する |
■ 新しいスキルシステム
SoLの一番の目玉は高レベル者用の新スキルシステムだ。これはLV51以上のキャラクタに発動するシステムで、特殊なスキルポイントをためて、用意されているスキルの中から好きなものを習得していくというもの。スキルポイントは、戦闘で手に入る経験値を通常のレベリング用と今回導入される新システムAlternative Advancement System(以下AAシステム)で使用できるスキルのトレーニングポイント用に好きなように割り振ることで手に入り、スキルポイント用のバーが経験値でいっぱいになると、スキルポイントを1ポイント得ることができる。レベリング用に80%、スキルポイント用に20%を割り振ったりするわけだ。これら新スキルを習得したあと、さらにそれをスキルポイントを消費してレベルアップさせることができる。
スキルポイントで習得できるものは以下の3種類があり、各クラスごとに適したスキルが用意されている。
General Ability
LV51以上であれば誰でもスキルポイントを消費して習得できる。基礎体力アップ系の効果が多い。
Archetype Ability
Generalに6ポイント以上を消費し、かつLV55以上のキャラクタが習得できる。Caster用、Melee用、Priest用の3種がある
Class Abilitiy
Archetypeに12ポイント以上を消費し、かつLV59以上のキャラクタが習得できる。
また、各段階ごとに称号も用意されていて、GeneralだったらBaronやBaroness、Acchetypeだったらクラスや性別でSisterやLadyがついたりする。
■ ハイスペックマシンが要求される新グラフィックオプション
左が前作までのwooodelf、右がSoL。単独で見ればそこそこに可愛らしい新モデルだが、以前のグラフィックと比べると好みが分かれてしまいそうだ |
1600×1200ドットにも対応したSoLだが、新しいキャラクタグラフィックを有効にするには、ある程度スペックの高いマシンが必要となる。新しいキャラクタモデルをオンにするかどうかをキャラクタ別に選べるので、新モデルを使おうとしさえしなければ低スペックの人でも何の問題なくプレイはできるのだが、全部のモデルをオンにして、しかも高解像度でプレイしようすると、やはりそれなりのスペックが必要になる。
そこでまずは、
CPU:Athlon 1GHz
ビデオカード:GeForce2 GTS
メモリ:256MB
という、中の下といったスペックのマシンでプレイしてみた。すると、キャラクタのモデルオプションをオンにできたのは14種中、6種というありさまである。また、このスペックでゲーム側に推奨されたのは640×480の画面と中クラスのテクスチャクオリティだった。
一応、すべてのキャラクタモデルオプションをオンにしてもプレイできるのだが、かなり不安定な動作になり、ゲームが突然終了したり、起動しなかったりといった場合が多かった。ゲーム側の推奨設定通りにプレイしている分には問題ないのだが、すべてのキャラクタモデルを新しいものでプレイできないのは、やはり不満が残った。
そこで、グラフィックとメモリをアップグレードして、
CPU:Athlon 1GHz
ビデオカード:Radeon8500LE
メモリ:768MB
というマシンスペックで再チャレンジ。さすがに、これだとすべてのオプションが何の問題なくオンにでき、最高1600×1200の解像度でも警告メッセージがでなかった。CPUパワーはある程度までで良いので、SoLをプレイしたい人は、ビデオカードとハイスペックなものに変えて、十分なメモリを増設してほしい。現在、公式サイトでは対応ビデオカードとドライバ一覧が掲載されているので参照してほしい。
さて、キャラクタの新グラフィックだが、これに関しては賛否両論で、それまで可愛い&かっこいいと思えていた特定種族の顔が、突如としてかなり可愛くない&かっこよくないグラフィックになったという声が多い。これは、リアルさを増したための弊害なのだが、特に美人キャラクタとして名高かったHigh Elf、Woodelfの女性モデルの変化を嘆く人が多いようだ。
ただし、グラフィックアップグレードに関しては良い面もあって、これまでは固定だった顔グラフィックを自分で自由に組み合わせるようになった。髪型、毛の色、顔グラフィック、目の色を好きなように組み合わせられるので、かなりプレーヤーキャラクタのバリエーションが増えることになる。現在は、ゲーム中いつでもどこでも自由に顔を変更できるようになっている(ただし、将来的には複数回変更はできなくなるとアナウンスされている)。
Barbarian(男) | Barbarian(女) | Dark Elf(男) | Dark Elf(女) | Dwarf(男) | Dwarf(女) |
Erudite(男) | Erudite(女) | Gnome(男) | Gnome(女) | Half Elf(男) | Half Elf(女) |
Halfling(男) | Halfling(女) | High Elf(男) | High Elf(女) | Human(男) | Human(女) |
Iksar(男) | Iksar(女) | Ogre(男) | Ogre(女) | Troll(男) | Troll(女) |
Vah Shir(男) | Vah Shir(女) | Wood Elf(男) | Wood Elf(女) |
■ まるっきりの初心者でも始められる?
拡張パックが出たからといって「ちょっとこれからEver Questを始めてみようかなあ」といったEQ初心者プレーヤーにこれをお勧めできるかというと、「うーむ」となってしまう。
というのも、Ever Qusetではキャラクタを成長させるにはそれなりにコツや地理を知らなくてはならず、キャラクターの育成がネットワークゲーム初心者には難しいからだ。しかも、現状では画面内のメニューはすべて英語、他国のプレーヤーとの会話もすべて英会話、アカウント登録から実際のゲームプレイにいたるまでなんでもかんでも英語が存在するため、この時点で、もうかなり敷居が高くなってしまっている。
さらに初心者プレーヤーを悩ますのは略語。EQには独特の略語が星の数ほど存在し(ネットワークゲームではチャットの打つ手間や意思疎通の速度アップのために略語ができやすくなる)、どれもがきちんと意味を把握していないとわからないものばかりだ。EQ以外の海外ネットゲームを経験したことがある人でも、いきなり「bub」だの「dub」だの「mob」だの言われてもさっぱりわからないはずだ。そこですでに「お勉強しなくちゃ」と構えてしまうかもしれない。
ただし、ここまでいろいろと初心者には困難なことがあるEQだが、MMORPGのメインストリームを作った「始まりのゲーム」という意味では、「Ultima Online」同様ぜひプレイしておいてほしいタイトルなのは確かだ。発売から3年近く経った今からでもプレイするに足る内容は持ち合わせている。
「Ever Quest」ほど広大な世界を持ち、豊富なクエストやアイテムがあり、複数パーティプレイを満喫でき、長く接続していればいるほどゲーム内の世界と一体化できるゲームは、これ以前にもこれ以降にもないだろう。先日紹介した「Asheron's Call」と比べると、さいわい日本語のファンサイトも数多く存在するので、最新ニュースなどの和訳に困ることはない。ぜひEQ未体験者もプレイしてみてほしい。
EverQuest and You're in Our World Now are registered trademarks and The Shadows of Luclin is a trademark of Sony Online Entertainment Inc. Verant Interactive and Verant Interactive logo are registered trademarks of Verant Interactive, Inc. (c)2001 Sony Online Entertainment, Inc. All other trademarks are properties of their respective owners. All rights reserved.
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■ 今週の気になる直輸入ソフト
今週見かけたソフトはやや小粒なものが多い。でかいタイトルはどどーんと11月から12月頭にかけてでてしまったためか、とりあえずのところはヨーロッパ系メーカーのそれほどメジャーではないタイトルをいくつか見かけた。たまには、こういった一期一会的なソフトを思い切って買ってしまうのもいいかも。
アクションRPGに多いクォータービューのグラフィックだが、これは同じアクションでもややシューティング寄りという変り種。冒険野郎Zaxとなって不時着した異星で特殊な鉱石やクリスタルを求めつつ、エイリアン達との激しい銃撃戦をかいくぐりながら各マップをクリアしていく。移動は矢印キーで、マウスで照準を合わせてクリックで銃をぶっ放す。銃による撃ちあいが主体なのでNOXのウィザード同士の対戦を思い出させる。矛盾した言い方なのだが、クォータービューFPSというか、FPSのアクションにクォータービューを掛け合わせたような感じ。
何も考えないシューティングかと思いきや、ところどころに仕掛けてあるトラップや謎を解かないと先に進めないので頭も使わせられる。キャラクタをシューティングの自機のように動かしながらピシュンピシュン銃を撃ちまくる小気味よさと、マップ内の謎とがうまくミックスされている。マップは100以上ということなので、気楽に長く遊べそうだ。ちなみに、完全日本語版がメディアクエストからすでに8,800円で発売されている。
(C)2001 by JoWooD Productions Software AG.
Overtopで見かけた、ヨーロッパ系メーカーのMicroidsが販売しているホラーアドベンチャー。Microidsは、「Empire of the Ants」や「Road to India: Between Hell and Nirvana」といった、聞いただけなら面白そうなのに実際の内容は「ううーむ、ううーむ」という、なんだか往年の「Southpeaks」あたりを思い出させるゲームが多い。「Druuna」は海外の成年コミックが元になったもので、セクシーな女性Druunaを救うホラーアドベンチャーだ。
コールドスリープによって植物状態になっているDruunaの脳に直結しているコンピュータで脳内世界に飛び込み、彼女を操作して悪夢の中の問題を解決しながら現状から脱出するというストーリー。MicroidsのアドベンチャーというとAmerzone(フリールックのミストタイプADG)のいまいちなグラフィックの記憶が強いが、今回は主人公を完全3Dで描写したアローン・イン・ザ・ダーク系の内容となっている。「Drunna」の暗くて汚くて謎めいた世界設定やグラフィックは、アドベンチャー好きの心を刺激する。PhantasmagoriaやSanitariumなどにも通じるダークでグロテスクな部分に惹かれてしまう人は、サイトでムービーなどをチェックしてほしい。
Microids(c) 2001
(2001年12月28日)
[Reported by 西尾ゆき]
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