【特別インタビュー】

「5分でできるRPGもアリ!」
携帯電話のゲームが、いま面白い
宮路 武氏インタビュー

【宮路武氏】
~ ジー・モードのオフィスにて ~

 1月からサービスが開始されたJava搭載iモード「iアプリ」。開始当初から数多くのゲームがリリースされ、かなりの人気を集めている。大手ゲームメーカーから個人で作り上げられたものまで、数多くのゲームがネット上で公開されている。
 そんな中でも個性的なゲームラインナップと、作り込みで人気の高いゲームサイト「ゲームで遊ぼ!」などを運営しているのが、アトラス、ゲームアーツが出資してできたジー・モードだ。
 今回は、古くは「シルフィード」や「ぎゅわんぶらあ自己中心派」、最近では「グランディア」、「ガングリフォン」といった硬派なゲームを作り続けてきたゲームアーツで活躍され、現在ジー・モードで副社長を務めながらiアプリのゲームを制作しておられる宮路 武氏にお話を伺った。


■ ゲームには“独創性”が必要

 iアプリのゲームがスタートして3カ月が経ちますが、ユーザーの反応はどうですか?

ガンシューティング「SHOOTING RANGE」。単純なだけに熱い!
宮路 武氏 すごく良いですね。会員数の伸びが止まりませんから。ジー・モードのユーザーは10歳代から20歳代が中心ではあるんですが、ユーザー層が広いのが特徴ですね。30歳代が少なくて、40歳代以降がまた多いんです。対戦ゲームは若い人達が多いし、40歳代の方は「Get!!プチアプリ」などで遊ばれる方が多いですね。

 「対戦ぐるじゃむ」と「Get!!プチアプリ」の人気を比べると、「Get!!プチアプリ」のほうが人気ありますね。これは値段によるものだと思います。値段は大きいですよ。でも、その理由は我々にはよくわからない部分もあるんですが、傾向として、パケット代には3,000円使ってもコンテンツにはお金を使いたくないと言う人は多いですね。でも、「Get!!プチアプリ」のゲームはパケット料金はほとんどかからないんですよ。ほかのiアプリなんかだとダウンロードしても、遊ぶたびに色々と接続したりするときがあるんですが、「Get!!プチアプリ」のゲームは1回ダウンロードすれば、あとはほとんどパケット代はかからないですからね。

 ゲームのラインナップは何人かで会議で決めているんですが、まず、自分たちが楽しいかどうかが重要ですね。ゲームとしての楽しさは大前提としてあって、その上で、いろんな人に“想い入れ”を感じてもらえるものを選択しています。例えば「電卓インベーダー」であれば30歳代の人にノスタルジックなものを感じてもらえるし、逆に10歳代の人には「20年前の電卓を使ったゲーム……?」として好奇心が沸くと思うんです。想い入れを喚起するという点が重要で、面白いだけのゲームだったらたくさんあると思うんですけど、独創的なものでなければ現代では通用しないんですよ。独創的でなければ、ユーザーさんの記憶には残らないですから。

 ただ、新作を楽しみたいという層も最近では増えてきていて、もちろんそういったラインナップも拡充していて、ユーザーさんのダウンロード数も (古い作品と) 拮抗している感じですね。例えばガンシューティングの「SHOOTING RANGE」などは面白いですよ。画面に現われる敵を、対応する数字キーを押すことで仕留めていくんです。もちろん民間人も現われて、間違えて撃てば即ゲームオーバー。システムとしては基本的に数字押しゲームだけど、ガンシューティングならではの演出を入れていかなければガンシューティングにならないわけです。たとえば、移動する敵とかニセチャイナ服の敵とか出てくるんですが、そういった要素を盛り込んでいます。


■ ユーザーがiアプリゲームに殺到する時間帯は?

 僕などはゲーム好きですから、携帯電話よりゲームボーイを選択するのですが、携帯電話でゲームをするという感覚はユーザーに定着しつつあるのでしょうか?

宮路 武氏 iアプリのゲームが一番遊ばれているピークの時間帯は何時かわかりますか? 一番多いのは実は夜の11時から深夜の1時頃なんです。これは家に帰って、自分の部屋でプレイしてるんですよ。家に帰れば普通コンシューマゲーム機があるじゃないですか? でも、プレイしているのは携帯電話のゲームなんです。携帯電話のゲームって、気軽に遊べると思うんですよ。ちょっと遊ぼうと思ったときに、携帯電話のゲームだと5分から10分で終わるじゃないですか。でも、ゲーム機のゲームは1時間くらいはかかってしまい、終わらないですよね。サクっとできないのが辛いですね。

 では、携帯電話のゲームを作る上でのキーポイントは、短時間で楽しめるという点がキーポイントですか?

宮路 武氏 5分から20分というのがキーポイントじゃないですかね。ですから我々が作るときも、それを目安にして作っています。

 では、その時間を超えるプレイスタイルとなるRPGなどは制作される予定はないのですか?

宮路 武氏 ありませんね。もし、20分以上かかるのであれば、20分以内に収まるように作ります。RPGを作るのなら5分から20分で終わるRPGにしようとします。

 5分で終わるRPGって面白そうですね。それをRPGと呼べるかどうかわからないですけど

宮路 武氏 でも、あり得ると思うんですよ。発想を逆転させるだけでいいわけですから。今までのコンシューマゲーム機用RPGだったら50時間遊ばせなければならないとか、100時間遊ばせなければならないとか考えて作りますから。そういったものをカットしていけばもっと短くなりますしね。


■ ユーザー層の違いによるアプローチの難しさ

自ら制作した「対戦雀荘ぐるじゃむ (二人用)」を楽しむ宮路副社長
 これまでコンシューマゲーム機でゲームを作るときは、ゲームハードという枠組みの中でより一般層に受け入れるゲーム作りをしていたと思うんですが、iアプリでは、携帯電話という一般層が使っているハードの中でどうやってゲームを遊んでもらえるかと言うことで、ゲームの制作に対するアプローチが変わってきていると思うのですが?

宮路 武氏 う~ん…………コンシューマゲーム機の場合は、一般の人にアプローチするのは無理だと思うんですよ。ゲームを通常する層以外のユーザーを開拓したソフトって「ドラゴンクエスト」、「ファイナルファンタジー」、「グランツーリスモ」、「みんなのゴルフ」、あと任天堂のソフトぐらいじゃないですか? いわゆる200万本以上売れたソフトですよね。ゲームをまったく知らない人まで振り向かせたソフトはこれくらいじゃないかと思うんです。やはり、社会現象になるまでいかなければ、一般的とは言えないと思うので。

 逆に携帯電話のゲームに関して言えば、ゲームのヘビーユーザーは遊んでいないんですよ。携帯ゲームの難しさは、この楽しさをどうやって広めるかのほうが難しいですね。携帯ゲームを紹介する一般層向けへのメディアがありませんし、今ひとつピンとこない。どんなに面白いゲームがあっても、どんなに新しいゲームがあっても、それをどうやってユーザーに知らせるのかが一番難しいんです。

 iアプリの場合、「iアプリってなに?」というユーザーまでいて、わからずに使っている場合も多いですよね。そういったユーザーはゲーム機ユーザーでは少ないと思うのですが。そういったユーザーに対して、麻雀とかは受け入れやすいでしょうね

宮路 武氏 やっぱりわかりやすいものでなければダメなんですよ。たとえば、RPGを作るじゃないですか。RPGを知らない人にRPGのルールを見ないでゲームをプレイしてもらうことは不可能ですよ。シューティングですら無理です。例えばシューティングゲームをプレイしてもらうじゃないですか? なにも知らないでぶつかってゲームオーバーですよ。そしたらもう2度とゲームをやってくれませんよ。

 そこには、ものすごく多くの“お約束”が存在するんです。RPGでしたら、敵と戦って装備を拡充して……といったルールですね。それを理解してもらうには長い時間が必要なんです。我々が単純に売れているから、じゃRPGを作ろう……といった風にならない理由はそこにあるんです。逆に、いかに体感的にプレイできるRPGを作るかがポイントですね。なにせ、RPGをやったことのないユーザーのほうがこの世の中には圧倒的に多いわけですから。「ファイナルファンタジー」がいくら売れたからと言っても300万~400万本の話で、全国の1億人以上の人達はプレイしていないわけですから。




■ ゲームの面白さはコミュニケーション。それはチャットだけではない

 今後、iアプリでどういったゲームをリリースしたいですか?

宮路 武氏 いろいろなジャンルのゲームを作りたいですね。それこそ先ほどの話じゃないですが、5分でできるRPGからシミュレーション、アクション、テーブルゲームも全てやりたいですね。できないことはないんです。全てやろうと思えばできるんです。

 あとはクオリティをどこまで上げることができるかですね。たとえば4月24日にリリースした「対戦雀荘ぐるじゃむ」でしたら麻雀の本質の楽しさを損なわずにいかにパッケージングできるかに本当にこだわってます。それは僕自身が「麻雀」に愛があるから作ってるんですよ。ゲーム業界で1、2位を争うほど麻雀を知り尽くしているからこそ愛を込めて、携帯電話のユーザーさんにでも麻雀を快適に楽しんでもらおうと、僕自身がプログラムしたんです。

 たとえば、「対戦雀荘ぐるじゃむ」は2人打ちなんですが、4人打ちにもできたんです。でもそうすると、1巡するのに普通に打つ倍くらいの時間がかかってしまう。そこで2人打ちにしたんです。グラフィックのクオリティも、リーチすればきちんと点棒が表示されるし、ゲームボーイと比べても遜色ない感じです。音楽も入ってるんですよ。東風戦の飛びありの13,000点なんで、1プレイが短くて5分、長くて10分から20分で終了します。平均プレイ時間が11分から15分程度なんです。あんまり長いと緊張感が切れてしまいますから。麻雀としての楽しさを失わないギリギリの線まで切りつめて時間短縮を図っていますが、そのボーダーラインがわかってる人じゃないと作れないとおもうんです。普通の麻雀と同じですから。人間と打ってる気がするし、一発逆転もある。すごく面白いですよ。

 音楽からグラフィックまで、これだけ入って10KB (iアプリは10KBに収めなければならない) に収めています。圧縮しなければ1カ月前に完成しているんですがね。ここまで詰め込むとプログラムも難しいですね。

 聞いた話では、iアプリのプログラムはソースコードで命令の順番を変えるだけで、スピードが速くなったりするらしいですね。

宮路 武氏 プログラムを何度も書き直すので大変なんですよね。あとパケット料金についても1週間ほど悩みましたね。いろいろなパラメータいじりながら。ここをいじれば0.2%削減できるとか。できればパケット料とか考えないで作りたいです。でも、それをやっちゃうとものすごく料金がかかってしまうので。理屈上、もうこれ以上切りつめることはできないと言うところまで切り詰めています。

 ゲームの楽しさの本質ってコミュニケーションだと思うんです。コミュニケーションと言えば、通信でチャットしてといったイメージですが、それだけでなく、ゲームの話をしているときもゲームの楽しさの一部なんですよ。友達と「あのゲームプレイしてみた?」っていう会話があるだけでちょっと嬉しいじゃないですか? ゲームがそういった人のコミュニケーションをかき立てるものの一助になれば、ある程度の役目を果たしたと思うんです。iアプリでそういったゲームを作っていきたいですね。

グラフィックだけでなく、牌を打つ音や負けたときのBGM、ポンなど鳴いたときの音声などかなりの要素が10KB詰め込まれている




(C) G-mode

□ジー・モードのホームページ
http://www.g-mode.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.g-mode.co.jp/press/mainC09.htm
□関連情報
【4月24日】ジー・モード、iアプリにここまで詰め込んだ「対戦雀荘ぐるじゃむ」のサービス開始
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20010424/gmode.htm

(2001年5月1日)

[Reported by 船津稔]


ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

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