「電遊道」~Way of the Gamer~ ジョン・カミナリの楽しいゲームライフ

ジョン・カミナリの楽しいゲームライフ【第35幕】

BORN TO BE GAMER~日本のゲームをこよなく愛するイタリア人ゲーマーを紹介!~

日本から10,000キロ離れたイタリアには、思ってもみなかった和ゲー好きなイタリア人が存在していた!毎回、彼らの自宅に訪問し、宝物を見せてもらいます!そして、インタビューでゲーマーとしての人物像を掘り下げます。ゲームの持つ本来の魅力を再発見しましょう!

【今回のゲーマー】
名前:マッシミリアーノ
年齢:35歳
職業:ITセキュリティー
好きなジャンル:アクションゲーム

 今回のゲーマーは、北イタリアの海の街ジェノバに住んでいるマッシミリアーノさんだ。子供の頃から日本のゲームが大好きで、大人になった今でも、過去の名作を忘れることができず、家庭用ゲーム機や業務用ゲームを収集している、イタリアではちょっと有名なゲームコレクターなのだ。マッシミリアーノさんの自宅には警察官をやっている奥さんさえも立ち入り禁止のエリアがある。それは、日本のあらゆるゲーム機、筐体が大切に保管されている“ゲーム部屋”だ。

 マッシミリアーノさんが特に愛している日本のゲーム機はPCエンジンだ。イタリアでも当時、日本版とアメリカ版が販売されていたが、スーパーファミコンやメガドライブほど浸透せず、少数のゲーマーだけが持っていた珍しいゲーム機というイメージだった。今回のインタビューでは、日本のゲームに近づいたきっかけや、PCエンジンが好きになった理由などについて聞いてみた。日本のゲームで育ってきたもう1人のイタリア人ゲーマー物語を覗いてみよう!

立ち入り禁止の秘密の部屋にカメラが進入。PCエンジンのコレクションは棚に大切に保管されていた
PCエンジンの本体と赤外線通信のパッドなどの周辺機器
当時の雑誌に付録されていたカタログ。体験版も付属していたという
欧米で神様のように崇められている作品「悪魔城ドラキュラX 血の輪廻」。ゲームよりもガイドブックのほうが、現在ネットオークションで高い値で落札されているそうだ
マッシミリアーノさんは、PCエンジンの「ストリートファイターII」の移植版のほうがスーパーファミコン版よりすごかったと思っている
PCエンジン用の傑作シューティングゲーム達。「ソルジャーブレード」が特に好きな作品だそうだ
「キアイダン」もお気に入りゲームの1つだ。ロボットアニメの素敵なオマージュだという
【これこそが日本のゲームを愛している証拠なのだ!】
便座に乗ってうんこを撃つ伝説のシューティングゲーム、「トイレキッズ」。正真正銘のクソゲー(笑)
イタリアではまったく知られていないような珍ゲームも収集している。この写真がそれを証明している
PCエンジンのちょっとエッチな麻雀ゲームも持っている。麻雀かガールか、どっちに興味があったのだろうか?

ゲーム愛を計るためのインタビュー開始!

テレビゲームとのファーストコンタクトはいつでしたか?

 1986年に両親からプレゼントで「ZX Spectrum+」をもらいました。それを妹と共有していて、毎日喧嘩していました(笑)。ファミリーコンピュータで業務用ゲームの移植版も作られていたけど、すべてはモノクロームだったし、クオリティはとても低かった!

 それより自分でプログラムするのが好きでした。あれから何年か後にインポートゲームの専門店ができたおかげで、失った貴重な時間を取り戻すために、ネオ・ジオ、PCエンジン、スーパーファミコンなど、日本のゲーム機を1つずつ買いました。そして、業務用ゲームの価格が下がったおかげで、2つの筐体と業務用ゲームを購入することができました。

あなたのゲーマー人生の中で最も印象的なエピソードを語ってくれますか?

 江古田にあるゲームセンター「えびせん」に初めて行った時の思い出ですね。そのゲームセンターに日本の最も強いゲーマーが集って、世界記録を更新していたことを知っていましたが、まるで道場のように壁にランキングがかけてあるなんて、思ってもみませんでした。とても印象的でした。えびせんの店長はとても親切な人で、日本に行く時は彼に再会するのがとても楽しみです。店長さん、イタリアからいつも応援していますよ!

あなたにとって最も大切なゲームはどれですか?

 えっと……選ぶのが難しいですね。孤島で生活することになって、1つのゲームだけを持って行くとしたら……PCエンジンの「マージャン・ソード プリンセスクエスト」かな? いや、ちょっと待って! 迷いっちゃいますね。KONAMIの「エイリアン」のJAMMA基盤かな? 昔、いつもゲームセンターで遊んでいました。クリアしたら、もう1度最初から遊ぶほど大好きな作品でした。

日本のゲームは欧米のゲームに対して、どういう付加価値を持っていると思いますか?

 日本のゲームはいつもディテールやニュアンスに溢れていると思います。RPGだけでなく、他のジャンルでもストーリー要素が濃いです。西洋のゲームはそういう重要な要素を怠ったタイトルが多くて、グラフィックスだけを優先していると思います。アニメ、漫画、テレビゲームは共有している物が沢山あって、それぞれ日本のカルチャーと伝統を反映させています。日本のゲームで扱われるテーマは、子供だけでなく、大人にも向いている点がとても素晴らしいと思います。

現在のゲームは過去のゲームに比べて何を失ったと思いますか?

 現在、販売本数という目標がゲームの開発に深い影響を与えているでしょう。独創性にはもうスペースがないのかな。本当に残念なことだと思います。過去の作品は、ハードの技術的な制限をゲーマーの想像力で補っていたと思うんですね。その結果。少ないドット数でも、ユーザーを驚かせるような世界が実現していました。2Dのゲームは、ゲームデザイナーが自分を表現できていました。フォトリアルさが得策だとは思えません。アニメの分野でも同じことが言えますが、CGが手書きの絵を超えることはできないと思います。

日本のメーカーが、どんなゲームの続編・リメイクを作って欲しいですか?

 大友克洋監督の「AKIRA」をベースにしたアクションアドベンチャーを遊んでみたいですね。昔、ファミコンで発売されたビジュアルノベルより、もっと奥深いゲームを見てみたいです。あともう1つ。「重装機兵ヴァルケン」の続編を3DSで作って欲しいです!

PCエンジンの話題に入りましょう。PCエンジンに触れたきっかけは何だったんですか?

 当時のゲーム雑誌のレビュー記事を熱心に読んでいたし、友達の家でもPCエンジンで遊んでいました。自分もPCエンジンを買おうと決意したのは、とても不思議なシューティングゲームの記事を読んだ時でした。そのシューティングゲームでは、便座に乗って金色のうんこを撃つのが目標でした。そのゲームのタイトルはもちろん、「トイレキッズ」ですね。ところで、初めて日本のトイレの便座に座った時、離陸用のボタンが付いていることを願いましたね(笑)。

PCエンジンのゲームが好きになった理由は何ですか?

 大人向けのゲームが沢山あったからかな?(笑) 冗談はさておき、僕は日本の漫画とアニメで育ってきて(お母さんは仕事で出かけていたことが多くて、僕はテレビの前で長時間を過ごしていました)、SUPER CD-ROM2のゲームはアニメのようなゲームだったので、一目惚れでしたね。さらに業務用ゲームの移植版もプレイしていたし、独占タイトルも多かったです。とても表現豊かなゲーム機だったと思います。

特に好きなゲームシリーズやゲームソフトはありますか?

 「悪魔城ドラキュラX 血の輪廻」が最も気に入ったゲームの1つです。媒体がCD-ROMだったから、音楽は最高だったし、あらゆるディテールが細心の注意を払って作られていました。今でも、そのグラフィックスは十分に通用すると思います。8ビットのゲーム機だったから、それは本当にすごいレベルでした。「スナッチャー」も、とても夢中になった作品です。総合的には、宮下智氏の音楽は傑作です。特に「ウィンズ オブ サンダー」が好きです。

ハドソンソフトはPCエンジンのゲームを象徴するようなゲームメーカーでした。ハドソンソフトのゲームのどんな特徴が好きだったんですか?

 「ボンバーマン」、「PC原人」、「ニュートピア」、「天外魔境」などのハドソンソフトのゲームシリーズは、続編が作られる度にゲーム性やグラフィックスのクオリティが向上していたし、それがユーザーの好感を得ていました。そのほとんどは明るいゲームで、作品に注がれた開発者達の愛情やパッションをいっぱい感じますね。

 ハドソンソフトと同じぐらいゲーム作りに愛情を注いだのは任天堂だけだと思います。当時のハドソンソフトのイベント、全国キャラバンのアイデアは本当に素晴らしかった。僕も参加してみたかったです。フェイスブックで最近ファンページが新設されたと聞いて、早速見てみたら感動しました。

あなたはイタリアであまり知られていないPCエンジンのマイナーなゲームでも遊んでいると聞きましたが……。

 偶然、RIOTの「キアイダン」を発見しました。PCエンジンのゲームの中で、とても重要な位置を占めていると思います。ゲーム性も良いし、沢山の武器を使えるし、ロボットアニメへの素敵なオマージュだと思いますね。そう言った意味で、「スプリガンMARK2」もアニメーションとゲームの完璧な融合ですね。

 さっきお話したスーパーファミコン用の「重装機兵ヴァルケン」との類似点も多かったですしね。さらに好きだったのは、麻雀ゲームです。西洋では誰も知らないかもしれませんが、僕は麻雀ゲームだけしかプレイできなかったとしても、PCエンジンを購入して良かったと思いますよ。

日本版のゲームだけを遊んでいると聞きましたが、それは何故ですか?

 当時、日本の発売日とほぼ同時に新作で遊ぶためには、イタリアの輸入ゲーム専門店に頼る必要がありました。欧州版の発売は1年以上かかっていたので、僕は待てませんでした。日本の良いゲーム(特にRPG)を最大限に楽しむためには日本語を知る必要がありました。そのために、日本語を勉強し始めたし、定期的に日本を旅していました。

 今言えることは、テレビゲーム、特にPCエンジンのおかげで、沢山の素敵な出会いや体験を果たすことができました。今でも友達と再会するため、美味しいご飯を食べるためによく日本に行きますよ。テレビゲームは外国語を勉強するための最高に楽しい教科書だと思いますね!

あなたはイタリアで有名なゲームコレクターとしても知られています。ゲームコレクターとして自分のことをどう見ていますか? あなたのルールやタブーを教えて下さい。

 基本的なルールは原版のゲームを収集することですね。ゲームコレクターのミッションは過去の作品を保存することだと思います。例えばネオ・ジオのコレクションに関しては、非売品も含めて全ての作品を持っています。PCエンジンと他のゲーム機に関しては多くのタイトルを持っていますが、完全制覇は特に目指していません。目標がないほうが、コレクターの人生は楽しいと思いますよ。

 ただコレクションしているわけではなく、それぞれのゲームは実際に遊んでいて、日本語を勉強するためにも楽しく利用しています。この貴重な機会に、今日までサポートして、我慢してくれた奥さんに感謝の気持ちを送りたいです。日本語、わからないと思うんですけどね……(笑)。

PCエンジンのゲームは現在、デジタル版を様々なゲーム機でプレイできるようになりました。それは良いことだと思いますか?

 僕の意見ですが、デジタルコンテンツという形でレトロゲームを提供することには意味があると思いますね。ただ、携帯ゲーム機だけにして欲しいです。近いうちに3DSでもPCエンジンのゲームが遊べることを願っています。正確に言うと、1990年にPCエンジンGTの導入で既に電車の中でHU Cardで遊ぶことができました。今、ちゃんと稼働するPCエンジンGTを見つけるのはとても難しいです。見つけたとしても、価格が高いですしね。3DSだったらずっと安いですね(笑)。

PCエンジンというブランドが蘇ることを期待していますか? カプコンの「ロックマン」シリーズのように、昔懐かしいドットグラフィックスで新作や続編が作られることを願っていますか?

 2009年に「ネクタリス」シリーズの新作、「ミリタリーマッドネス:ネオ・ネクタリス」が様々なプラットフォームで発売されました。「ボンバーマン」の新作も、定期的に発売され続けています。現在ハドソンソフトはKONAMIに吸収されていますが、だからこそPCエンジンに繋がりを持った新作や続編の提供に期待大です。「ロックマン」のような、ドットなグラフィックスで作られていたら、大成功すると思います。

最後に、あなたの最もリスペクトする日本のゲームクリエーターへのメッセージをお願いします!

 特定のゲームメーカーやゲームデザイナーよりも、ゲーム業界全体にメッセージを送りたいですね。ゲームセンターをサポートし続けて下さい! 最近、日本でもその数が減ってきていると聞いて、とても悲しくなりました。ゲームセンターが無くなるということは、素敵な時代が終わるのと同じ意味です。よろしくお願いします!

マッシミリアーノさん、今日は本当にありがとうございました!これからも日本の大好きなPCエンジンで遊び続けてね!!