「電遊道」~Way of the Gamer~ ジョン・カミナリの楽しいゲームライフ
ジョン・カミナリの楽しいゲームライフ【第29幕】
Report / manga:ジョン・カミナリ
logo design:フランチェスコ・アッカッターティス(2013/3/8 00:00)
電遊。辞書に載っていない造語である。電気的な遊び。いわゆる、テレビゲーム。道。その道を、自分の価値観だけを信じて最後まで歩むのが、侍精神である。電遊道は、妥協を許さないサムライゲーマーが歩むべき道。他人に影響されることなく、自分のゲーマーとしての信念を貫き通せばいい。たとえ、ゲームが別の道に進んでも、自分の好きな道をずっと信じ続けるのみ。たとえ、“これこそがゲームの未来形だ!”と言われても、自分の好きなゲームライフを思う存分楽しむのみ。
「電遊道」は、RPGのようにレベルアップする。これまでの「一刀両断」や「イタヲタのレトロなゲームライフ」などの人気コーナーを提供しつつ、新しいコーナーをスタート!「みんなのGAME SHOP」では毎月、イタリアのゲームショップの1日を体験していく。期待作が発売された日のお客さんの反応とは?イタリア人の買い物を覗いたり、店長のコメントを訊きながら、ゲームショップの1日を密着取材!
そして、「BORN TO BE GAMER」(和訳:ゲーマーになる為に生まれた)では、日本のゲームを愛するイタリア人ゲーマーを紹介していきたいと思う。ゲームとのファーストコンタクトは?日本のゲームを愛する理由とは?その人物像を掘り下げたいと思う!これからも「電遊道」はレベルアップしていく。サプライズたっぷりの連載を目指しているので、末永くこのページの中で付き合って欲しい!
イタリアで6年間テレビゲーム雑誌の編集部員として働いたあと、新しい刺激を求めて2005年に大好きな日本へ。子供の頃から夢見ていた役者の仕事を本格的に始める。堤幸彦監督の「銀幕版スシ王子!」で個性的なマフィアのボス、ぺぺロンチーノを熱演。現在もTVドラマやTVゲームなどで、俳優・声優として活躍中。日本語を勉強し始めたのは23歳のとき。理由は「ファイナルファンタジーVII」や「ゼノギアス」などのRPGの文章を理解するため。好きなジャンルはRPGと音楽ゲーム。「リモココロン」のような個性的なゲームも大歓迎。お気に入りのゲームは「ゲームセンターCX」と「ワンダと巨像」。芸名はイタリア人の友達に、本人が雷のように予想不可能なタイミングで現われるからという理由で付けられた。将来の夢は、「侍戦隊シンケンジャー」に出演した時から大好きになった戦隊モノにまた出演すること。
もくじ
一刀両断~話題のゲームニュースについて鋭くコメントしちゃうぞ!~
話題のゲームニュースや注目のゲームイベントをピックアップして、僕の正直な感想を述べたいと思う。また、現在のゲームが抱えている問題を解決するアイディアや提案も、このコーナーを通じて考えてみたいと思う。ゲーマーの皆が納得できる未来の為に!
一石二鳥のPS4。ゲーマーとデベロッパーの両方を喜ばせるマシンが誕生
欧米ではずっと話題になっていた。あの日、絶対に「プレイステーション 4」が公開されると。様々な想像の中、フェイク写真がネット上で注目を集めた。そして、みんなの予想が的中した。ニューヨークで開催された「PlayStation Meeting 2013」では新しいプレイステーションが初公開された。いや、正確に言うと、プロセッサーなどの基本的な性能は明らかになったものの、本体は公開されなかった。
今回のイベントの主人公は、PS4が掲げるゲーム体験の中心になる新コントローラー「DUALSHOCK 4」だった。PS4の本体デザインは気になるが、よく考えればゲーム機の形はそれほど重要ではない。それより大切なのはゲーム機の性能やコンセプトだ。その面において今回のプレゼンテーションは、ゲーマーとデベロッパーの誰もが納得した内容になったと思う。ここで、欧米ゲーマーの反応を交えながら、僕の感想を述べたいと思う。
本体は公開されなかったが、基本的な性能が明らかにされたPS4。「DUALSHOCK 4」を握ったまま登壇した、システムアーキテクチャー担当のマーク・サーニー氏によると、今回の次世代プレイステーションは遊びやすさ・快適さをコンセプトに作られているという。
本体ではなく、ユーザーとゲームとの接点を担うコントローラーがアピールされたことは、任天堂のWii Uのプレゼンテーションの仕方に共通していると思った。性能だけを上げたら、確かにグラフィックスが美麗になり、喜ぶユーザーもいるかもしれないが、それはゲーム開発費の高騰に繋がる恐れがある。それより今、開発側が求めているのは妥協だ。つまり、十分パワフルでありながら、非常にプログラミングしやすい環境・システムのほうが大切なのだ。
マーク・サーニー氏が今回明らかにしたように、PS4の環境は高性能なパソコンに例えられるもので、最初から即戦力になっていると言える。確かに、PS3の中核だったCELLは独自に作られたもので、高性能であったと同時に、そのプロセッサーのポテンシャルを発揮するには、長い時間が必要だった。今でもCELLの強さを十分に引き出せないゲームメーカーもある。
逆に、5年以上試行錯誤して研究してきたからこそ、「The Last of Us」が示唆するように、すごい成果が出せた例もある。プログラミングの過程でのハードルは、ゲーム開発への大きな問題になっていると考えられる。パソコンのようなシステムは確かに独自性に欠けるかもしれないが、そのおかげで最初から安定したクオリティーを持つゲームが開発できるようになると思っている。
極端な言い方をすれば、現在のゲーム市場は、全く異なる仕様の複数のゲーム機が共存することを好まないと言えるかもしれない。何故なら、制作費を押さえる為には、お互いのシステムが似ているほうが、ゲームを開発しやすくなるし、移植するにしても少ない作業で済むことになる。操作についても、Xbox 360の次世代機も、やはり、似たようなものになったほうがいいと思っている。
例えば、今回の「DUALSHOCK 4」にはタッチパッドが追加された。これにより、スティックでは難しいズームなどの操作が快適にできるるようになる。Microsoftの次世代機のコントローラーにも同じような機能が付いていれば、開発者達は新しいゲームや操作方法を作る際、1つのハードを意識しなくてもよくなる。
僕は、複数のゲーム機よりも世界の全てのゲームをプレイできる1台の“万能ゲーム機”が欲しい。大事なのは面白いゲームが遊べること。そして、価格がリーズナブルであること。グローバル化が進めば進むほど、ゲーム機の数は減っていくだろう。最終的にはソニー・コンピュータエンタテインメント、マイクロソフト、任天堂などが最高のゲームを提供する1つのゲーム機が誕生するだろう。それは僕の、ずっと以前からの願望である。いずれ、その未来が実現すると確信している。
ワンタッチで世界と繋がる便利なSHAREボタン
PS4のもう1つのキーワードはソーシャルだ。Wii Uもソーシャルを前面に押し出しているように、PS4もソーシャルという形容詞の上に成り立っていると主張できる。ソーシャル。つまり、ゲームを通じて友達が作れるし、他のユーザーとの会話や様々なサービスを共有できるという意味だ。「DUALSHOCK 4」に「SHARE」というボタンが追加されたことが、ソーシャル性の重要性を物語っているだろう。
ソニー・コンピュータエンタテインメントが買収したGAIKAIの技術によって、ワンタッチで自分のプレイ映像をリアルタイムに配信して他のユーザーと共有できるし、PlayStation Storeの体験版がストリーミングプレイできるようになる。つまり、ダウンロードや待ち時間という言葉が、ゲーム機の辞書から消えるということになる。言うまでもなく、それを実現させるには高速のネット環境が不可欠になる。
ソニー・コンピュータエンタテインメントは、PS4はオフラインでも楽しめるということをアピールしているが、Wii Uのように、ゲームの領域を拡大させるにはオンライン環境が重要な役割を担っている。PS4の強みの1つであるGAIKAIの技術によるソーシャルサービスを楽しむには、オンラインが絶対条件になっている。
GAIKAIの技術に関する欧米ユーザーの反応を調べてみたが、やはり、ストリーミングで新作を試したり遊んだりできる特徴を高く評価している。一方でユーザーは、インターネット環境の必要条件を懸念している。先進国のアメリカや日本では高速なインターネット通信が当たり前になっているが、果たしてイタリアのような国でも、GAIKAIというサービスが十分に堪能できるかどうかについて不安な声が相次いでいる。
PS Vitaが、PS4の補助的な端末として使用されるということに関しても、欧米ユーザーから指摘があった。もちろん、PS Vitaの使い方が増えるのは良いことだが、その前にPS Vitaのラインナップを増やし、1台の独立した携帯ゲーム機として成長させて欲しいというのは共通の意見だ。確かに、僕もそう思う。
今回のプレゼンテーションでPS Vitaは、Wii U GamePadのような端末に例えられていたようだ。とても良い発想だと思うが、PS Vitaは生まれたばかりの、ポテンシャルのすごい携帯ゲーム機だ。これからもどんどんすごいゲームを開発して、PS Vitaの活躍の幅を広げて欲しい。
ソーシャルというコンセプトに疑問を感じるユーザーも多くいるようだ。現在のゲーム機が掲げるソーシャルというのは、本当のソーシャルではなく、生身の人間とつき合う回数を減らそうとしているバーチャルな世界、というイメージに近い。ネットを通じてMMORPGやFPSなどで対戦・協力プレイを楽しむのがソーシャルと言えるかもしれないが、同じ部屋の中で友達と一緒にテレビの前でゲームを楽しむことのほうが、ソーシャルだと僕は思う。
だから、ソーシャルという言葉の意味は不適切だと僕は強く感じる。よくWiiのCMで見る、家族でゲームを楽しむ様子こそが、本当のソーシャルなのではないだろうか。スーパーファミコンやメガドライブの時代にネットが存在しなかったからこそ、同じ部屋の中で友達とゲームで盛り上がっていたが、今、その部屋はお互いの姿が確認できないバーチャルな空間になっている。それは、今のゲームが歩もうとしている取り返しのつかない道だと思っている。少し悲しい気分を味わいながら、自分もその道を歩むしかないと、受け止めざるを得ないのだろう。
世界のゲームメーカーが参入。PS4のラインナップはすごい!
ゲーム機の命はゲームソフトだ。今回のイベントでは既に世界の有名なゲームメーカーの参入が決定し、すごい新作が製作中であることが判明した。その中で、特に欧米ユーザー(もちろん僕も)が興味を示したゲームは、カプコンの新ゲームエンジン「Panta Rhei」を使って制作される「deep down(-working title-)」だ。「Dark Souls」を連想させる西洋ファンタジー的な雰囲気を醸し出した映像には完全に心を打たれた。
欧米人は「これは『ドラゴンズドグマ』の続編ではないか」と思っているようだ。確かに「deep down」の頭文字は「ドラゴンズドグマ(Dragon's Dogma)」と同じく「DD」だから、続編であることを推測できる。だが、全体的な雰囲気は大きく違うと思う。もちろん「Dragon’s Dogma」や「Monster Hunter」という前提がなかったら、「deep down」といプロジェクトが存在しなかったと言えるのかもしれない。上記のゲームシリーズを通して培った技術が結晶されたものは、「deep down」だと、僕は感じた。
マーク・サーニー氏自身がディレクターを勤めた、「KNACK」というゲームもとても面白そうだと思った。PS4用の独占ラインナップを代表するメジャータイトルとして選ばれたことに対しては、欧米ユーザーは疑問を感じたようだが、僕はアメリカのアニメと日本のアニメの良さを融合させた「KNACK」というキャラクターにはとてつもない魅力を感じた。
キャラクターモデリングはPS3のスタンダードとはそれほど変わらないように見えたが、KNACKが欠片を纏め、巨大化していくシーンが、PS4ならではのパワーを窺わせた。これからの続報で、そのユニークなゲーム性がもっと伝わってくるのだろうと思う。そして、どの部分で現代機との差を付けるかについても、もっとはっきりわかるのだろう。
最後に特筆するべきはQuantic DreamのDavid Cage氏が公開した新ゲームエンジンの映像。画面に老人の顔が映り、様々な表情を見せる映像だった。PS4だからこそ、演技や感情表現がリアルになり、たとえ台詞がなくても、表情だけで、キャラクターのエモーションをよりダイレクトに表現できるようになる。映画と遜色のないほど細かい演出にこだわるDavide Cage氏らしいデモンストレーションだった。
賛否両論のPS4。欧米ユーザーの本音を調査
最後に欧米ユーザーの反応を、僕のコメントを交えながら、まとめたいと思う。まず、最も高く評価されているのは、PS4の約束するプレイという体験をよりスムーズにする快適な環境だ。特に絶賛されたのは、ダウンロード中のゲームが、ダウンロード完了を待たずに遊び始められるという、PS4の斬新な機能だ。
PS3などで最もフラストレーションを感じさせるのは、ソフトをダウンロード・インストールする際の必要時間。それを無くせば、どれだけプレイが楽になるのだろうと、ずっと思っていた。PS4はその大きな課題をクリアすることになるので、本当に素晴らしいことだと思った。
既に言ったように、PS4の持つソーシャル性に関しては賛否両論だ。PS4ではソファーから動かずに全てができるようになる。新作も購入できるし、他のユーザーとの協力・対戦プレイも楽しめる。さらに、体験会やゲームショウに足を運ばずに、ストリーミングで新作がプレイ・試遊できるようになる。とても便利で素晴らしいという見方ができるが、逆に「ゲーマーは怠惰な生き物である」というイメージを強調することにならないだろうか。
ゲームショップでの買い物やゲームショウでの体験会は、ゲーマーにとって不可欠なイベントであるはずだ。友達を家に呼んで一緒にプレイすることも、ゲームのイメージを良くするために必要なことの1つといえるだろう。だからこそ、出かけずに、人と会わずに、全てが可能になるということに対して根本的に疑問が沸いてくるのだ。
他に話題になったのは、中古ソフトが利用できるかどうかというテーマだった。今回のイベントが行なわれる前までは、「もしかしたらPS4では中古ソフトがプレイできなくなるのでは?」という心配の声が多かったようだ。特にヨーロッパでは中古ソフトの存在が大きい。
欧州のゲーム市場は、「新作を購入→1週間でクリア→それを売却→差額を払って新作を購入」という循環で成り立っていると言っても過言ではない。その循環が無くなれば、ゲーム市場も崩れるのではないかと、僕は懸念している。ゲームソフトにプロテクトをかけ、中古ソフトの存在を無くしたい場合、ゲームソフトの価格を完全に見直す必要がある。
例えば、今の半額だったら、ユーザーが納得できるのかもしれない。しかし、中古ソフトを購入できなくなり、ダウンロード版が今の価格で販売されていれば、10時間前後でクリアできるようなアクションゲーム(今のゲームの大半)はもう買わないのだろうと、多くのユーザーが思っているようだ。
最後に、PS4の価格や発売時期に関した欧米ユーザーの予想をまとめたいと思う。ネット上で最も現実的で、納得できる価格は499ユーロ(約59,000円)だ。590ユーロ(約69,000円)だったら、すぐ買わないだろうという声が多い。最初は赤字でも、やはり399ユーロ(約47,000円)で売って欲しいというコメントもあった。
Wii Uのように2つのバージョンが販売される可能性もある。その場合、1番安いバージョンは399ユーロ(約47,000円)、あるいは349ユーロ(約42,000円)だったら、非常に魅力的な商品になると、僕も思う。新ゲーム機の価格設定はゲーム機の成功を決定する、最も重要な要素だと確信している。
発売時期に関しては、おそらく欧州でのローンチは2013年のクリスマス商戦ではなく、2014年の春頃ではないかと欧州ユーザーは懸念している。おそらく、日本やアメリカでの発売が先になり、欧州では様子を見てから発売されることになるかもしれない。僕はやはりヨーロッパでも、2週間ぐらい遅れてもいいから同じ時期に発売して欲しい。
PS4。本体のデザインはまだ不明のまま。しかし、「DUALSHOCK 4」から、PS4の持つ魅力が十分に伝わってきた。フラストレーションという言葉が辞書から無くなるほどプレイ環境がスムーズになるという快適さ・遊びやすさを可能にした次世代ゲーム機。ゲーマーだけでなく、開発者達も喜ぶような、とてもプログラムしやすいアーキテクチャーを実現させたゲーム機でもある。まさに一石二鳥のPS4。今後の続報から目が離せない!