3DSゲームレビュー

レイトン教授VS逆転裁判

「裁判パート」
現代の常識が通用せず
魔法が中心になる絶体絶命の法廷!

「裁判パート」 ~現代の常識が通用せず魔法が中心になる絶体絶命の法廷!

現代社会の裁判とは全く異なる、“魔女裁判”に成歩堂が挑む!“ゆさぶる”や“つきつける”など、「逆転裁判」でおなじみの要素で追求していくが、この作品ならではのハチャメチャな展開がたっぷりと待っている

 続いて、「裁判パート」の魅力に入っていこう。

 ナゾを解きつつ情報を集めたあとは、いよいよ「裁判パート」だ。こちらは言うまでもなく「逆転裁判」シリーズでおなじみの要素になるわけだが、この世界の裁判は“魔女裁判”であり、シリーズ作で展開されてきたような現代の裁判とは全く様子が異なる。

 民衆も、検事も、そして裁判長も、基本的に捕らえられた被告人を魔女であると決めつけていて、それを疑いもしていない。魔女裁判の場というのは言わば、処刑前の最後のけじめのようなものだ。それを弁護するというのは“魔女の味方”をするようなもの。雰囲気は最悪だ。

 裁判の焦点になるのは“魔法を使った”というものだ。現実にはない“魔法”の存在が認められている世界であり、「魔法を使える=魔女」ということになる。被告人が魔法を使ったという証言をいかに覆せるかが判決の分かれ目になるというわけだ。

 逆に、この世界には科学捜査の類いが一切ない。指紋を調べると言っても「指紋とは何だ!?」という話にしかならない。

 このように、これまでシリーズ作の裁判で成歩堂が使ってきたような基礎はまるで役に立たず、逆に理解を超えたものの中にムジュンを見つけていかなければならない。まさに、状況も、裁判所の雰囲気も、そして有罪となれば火刑に処される被告人の命も。全てが全て、絶体絶命だ。

 また、この魔女裁判では証言者が1人ではない。証言をしたい町の民衆が1度に4人も5人も証言台に立って、好き放題に証言をしていくのだ。まさに数の暴力とも言える状態で、重要な証言もあれば、まるで関係ないただの目立ちたがり(?)のような証言も混じってくる。非常に厄介だ。だが、ここに1つ今作ならではの活路がある。

 それは「といつめる」という尋問だ。他人の証言を聞いている最中に、別の証人がリアクションを示す場面がある。自分が思っている事と、今されている話に食い違いがあるのだ。その隙を見逃さず、他人の証言中に突然、別の人に「ちょっと!」と問い詰めるというわけだ。

 さらに、なんと傍聴人が乱入して新たな証言をするという事態まで起きる。まさになんでもありで“魔女と疑わしい者を処刑せん”とする勢いだ。これまでにない事が立て続けに起きる、まさに「そんなのってあり!?」と、頭を抱えてしまうような出来事の連続。成歩堂はこの異世界でも無罪を勝ち取れるのか……?

魔法にも使うためのルールがあり、魔法使用ルールと証言のムジュンがポイントになっていく。検察士のジーケンなど、この世界感ならではな個性的なキャラクターが登場する
傍聴人が突然証人として飛び入り参加するという事態も!現代社会の裁判ではあり得なかった面白みがたくさんあるのが魅力だ

 魔女裁判はこのように苦労とハチャメチャな展開の連続ではあるが、プレーヤーとしては新鮮さに溢れていて、非常に楽しい。

 現代を舞台にしている「逆転裁判」とはルールが全く異なっていて、だからこそ一風変わった展開が楽しめる良さがある。この世界感でなければやれないような“現代的な制限がない楽しませ方”が、存分に詰め込まれていた。

 目の前に起きる出来事の連続に、驚き悩み、その中から細い糸を辿るように、真実へと突き進んでいく成歩堂の姿も魅力だ。絶体絶命の状況から逆転していくシリーズ本来の魅力は、異世界でもしっかりとあり、むしろハチャメチャな展開なぶんだけ輝いている。本作だからこそできた、本作でしかできないような魅力がたっぷりと楽しめた。

 まさに、こういう世界だからこそ“これまでやりたくてもできなかったことが存分にやれた”かのような、はじけたコミカルさや面白さがある。そして、それを作っているのが他ならぬ巧舟氏であり、その新しいテイストもまさに本物の魅力。コラボレーションによるスペシャルな作品でもありつつ、ユーモアのセンスや言葉選び、そしてどんでん返しが連続する裁判の行方と、いずれも本家シリーズに引けを取らない。

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(山村智美)