★ PSPゲームレビュー★
伝統を受け継ぎながら新システムを搭載し
ストーリーも楽しめるダンジョンRPG!
「 円卓の生徒 The Eternal Legend」
ジャンル:
  • ファンタジー・ダンジョンRPG
発売元:
開発元:
  • エクスペリエンス
プラットフォーム:
  • PSP
価格:
6,090円
発売日:
2012年10月4日
プレイ人数:
1人
レーティング:
CERO:B(12歳以上対象)

 PSP「円卓の生徒 The Eternal Legend」を開発したエクスペリエンスは、PC向けに「ジェネレーション エクス」シリーズや「迷宮クロスブラッド」といったダンジョンRPG作品を主に開発・販売してきた会社。2011年8月には株式会社角川ゲームスとの協業が発表され、今年6月には両社による新プロジェクト「DRPG PROGRESS」が立ち上げられた。

 本作は、その新プロジェクト「DRPG PROGRESS」の第1弾タイトルという位置づけになるが、完全新作ではなく、エクスペリエンスから発売中のWindows/Xbox 360用「円卓の生徒 -Students of Round-」からの移植作となる。移植といっても、PSP版ではキャラクターグラフィックスの刷新をはじめ、喜多村英梨さんを始めとした声優陣によるパートボイスの追加、新アイテム「神村正」の実装、デフォルメキャラの搭載など、多数の新要素が追加されており、Windows版やXbox 360版をプレイした人も楽しめるゲームになっているという。

 ここでは、まだプレイしたことがない人のために、本作の魅力を1から紹介していこう。ちなみに、現在同社が開発中のPlayStation Vita用完全新作ファンタジー・ダンジョンRPG「デモンゲイズ」の世界観は「円卓の生徒 The Eternal Legend」の数百年後という設定だ。「円卓の生徒」の世界と共通のモンスター、アイテム、キャラクターも登場しそうなので、こちらをプレイして新作への想いを馳せるというのも良いだろう。



■ 伝統的なダンジョンRPGにひとひねりを加えた独特な世界観

主人公の容姿は6種類。名前だけではなく性別も選択できる

 ストーリーを簡単に紹介しておくと、光の騎士エクス・ランドライト率いる円卓の騎士たちは、闇の魔王オル・オーマに戦いを挑むものの、魔王の強力な攻撃の前に次々と倒されていき、聖なる武具も破壊されて敗れ去ってしまう。そして、円卓の騎士を失ったアルダの地は、魔王の狂気にかられた獣たちが跋扈する闇の世界へと変貌してしまうことになる……。

 それから100年あまりが流れたある日、戦うすべもなく彷徨っていたエクス・ランドライトの魂は、新たな肉体を得て甦る。それがエクス・ランドライトの生まれ変わりである主人公(名前は任意)。復活を果たした主人公は、新たに円卓の騎士となる仲間を集め、再び魔王へと戦いを挑むことになる。

ゲームを始めると、円卓の騎士のリーダーであるエクス・ランドライトとして、魔王オル・オーマに挑む直前のイベントシーンからスタートする
会話からエラステとピロス以外の騎士たちは魔王に魅了されるか、倒されるかしており、たった3人で魔王に対峙することになる。しかし、オーマの波動の前に聖なる武具も破壊され、倒れてしまう……
それから100年後、闇に覆われたアルダの地に、エクスの生まれ変わりである主人公が現われる

 ここまでなら、ありきたりの勇者物語といった感じだが、本作では主人公を“先生”に見立て、新たな仲間たちを“生徒”として騎士になるまで教え導いていくというユニークな設定が付け加えられ、「円卓の生徒」というタイトルの由来にもなっている。

 種族はヒューマン、エルフ、ドワーフのほか、ヴァリアント、妖精のフェアリー、背が低いミグミィ、半分猫のようなネイの6種類で、クラス(職業)もパラディン、ウィザード、ファイター、ヒーラー、レンジャー、アルケミスト、ドルイド、サムライの8種類。いずれもファンタジーRPGではなじみ深い名前(もしくは設定)が並んでおり、RPGファンであればすぐにゲームに集中できるし、ライトゲーマーにとっても非常にとっつきやすい世界観といえる。

オープンフィールドも3Dダンジョンの形式で表現。正面に見えるのがシンボルエンカウントのマーク

 ゲームシステムは、今となっては懐かしさを感じる1人称視点で描かれたオーソドックスなダンジョン探索型のRPG。1歩移動するたびに判定が行なわれるランダムエンカウントを基本に、ボスモンスターやイベントがある場所は視認できるシンボルエンカウントとなっているので、画面を注意して見ていれば、知らずにボス戦に突入して全滅という悲しい事態は避けられる。


モンスターとの戦闘があるシンボル左がNPCとのイベント、右がトラップポイントのシンボル

 マップはオートマッピングで移動したマスが自動的に埋まっていくほか、画面上部にも自分を中心にミニマップがリアルタイムで表示されるので、3Dダンジョンが苦手な人でも迷うことは少ないだろう。

遺跡や洞窟といったいかにもダンジョンといった場所だけではなく、森や集落、城砦、墓地、さらには海底など、さまざまな場所が冒険の舞台となっている
オートマッピングにより移動したマスが表示される一方通行の扉や回転床、ワープポイントなど、おなじみのギミックも登場するミニマップが使えなくなるエリアもあるが店で売っている「魔水晶」を使うと見えるようになる

 パーティーのメンバーは、前衛と後衛に3人ずつの最大6人編成。ターンの最初にメンバー全員にコマンドで指示するターン制のバトルシステムと、このあたりも伝統的なシステムを採用している。

各ターンの最初に左のアイコンを回して各キャラクターのコマンドを選択ランダムに多少前後するものの、敏捷性の高いキャラクターから順番にアクションする戦闘終了時の戦闘評価画面。右上の評価が高いほどソウルゲージがアップする



■ 魔王に対抗するための“絆”が生み出すユニークなシステム

ユニオンスキルは魅了攻撃を防ぐ以外にも強力なスキルが用意されている
キャラクターのプロフィール画面では好物などをチェックできる

 100年前に円卓の騎士たちが敗れ去るもっとも大きな要因となったのが、魔王オル・オーマが放つ「オーマの波動」と呼ばれる魅了攻撃。「オーマの波動」をくらって魅了されたキャラクターは、当然ながら味方を攻撃するようになってしまう。これに対抗するには仲間との絆の強さが重要になる。絆が強いほど、魅了状態から早く回復できるほか、絆を強くすることで、オーマの波動を打ち消す特別なスキルが使えるようになるのだ。そのため、主人公は冒険の中で生徒たちとの絆を強くしていくことになる。

 ゲーム中では絆の強さは「ソウルゲージ」と「ソウルランク」として表現される。絆を強めていくと、生徒たちのソウルランクの合計に応じて「ユニオンスキル」という強力なスキルが使用可能になる。ユニオンスキルには、前述したオーマの波動を打ち消すもののほか、敵から受けるあらゆるダメージを軽減するものや全員の魔法攻撃を強化するもの、さらには全員一丸となっての突撃攻撃や戦闘から確実に逃げ出す(ボス戦や固定のイベント戦を除く)など、非常に強力な効果が得られる。このユニオンスキルを使いこなすことが攻略の最重要ポイントとなっている。

 ソウルゲージは、戦闘に勝利するとその評価に応じてちょっとずつ増えるほか、生徒との個人面談や食事をすることで大きく増やすことができる。特に食事は一定期間に実行できる回数こそ制限されているものの、生徒の好物を選ぶと大きく増えるので、材料が余っているときは積極的に食事を行なっていくと冒険が楽になる。

 また、ソウルランクが5になると、その生徒はサブクラスを持つことができるようになる。サブクラスを持つと、戦闘時の獲得経験値がサブクラスにも振り分けられてベースクラスのレベルアップが遅くなる代わりに、そのクラスの魔法やスキルが習得できるほか、レベルアップ時のステータスアップも受けられる。異なるクラスのスキルを組み合わせることで、破壊力抜群の攻撃を繰り出せたり、防御力を大幅にアップさせることもできるので、物理攻撃力重視や魔法攻撃力重視、防御力重視など、自分好みの方針でパーティーの編成を考えることができる。


主人公と面談したいキャラクターにはマークが表示される面談では選択肢があり、その答えによってソウルゲージが増減することがあるソウルランクが5になると他のキャラが持っているベースクラスをサブクラスとして持つことができる


■ 装備品の収集や強化にも独自のシステムを搭載

 武器や防具などの装備品は、モンスターのドロップと店での購入が基本となるが、もっと有効な手段として「トラップエンカウント」システムが用意されている。これは、マップ上に「T」と表示されたトラップポイントに適切なエサを置くと、必ず宝箱を持ったモンスターが出現するというもの。この宝箱からはいい装備品が高確率で入手できる上、置くエサによってはレアなモンスターが出現することもある。このシステムにより、延々歩き回ってエンカウントを探すことなく、効率的に装備品を揃えることができるようになっている。

 また、トラップエンカウントにはもう1つの役割がある。マップ上にあるすべてのトラップポイントでモンスターを釣り出して宝箱を獲得すると、そのエリアを「制圧」することができる。マップによっては制圧しなければ先に進めない場面も出てくるので、トラップ用のエサを忘れずに持っていくことが重要になる。

トラップエンカウントすると宝箱を持った敵が出現。一定ターン以内に宝箱を持った敵を倒さないと逃げられてしまう宝箱は呪われており、強引に開くと大変なことも……エリア内の全てのトラップポイントで敵を釣り出して倒すと、そのエリアを制圧できる

いらなくなった装備品は「魔法の炉」に投入するのが基本

 装備品の強化は、装備品を「魔法の炉」に溶かすことで行なう。例えば、短剣の1種であるダガーを溶かすと、短剣の強化ゲージが上昇し、ゲージがいっぱいになるごとにすべての短剣に+1、+2……とボーナスが付くようになる。


拠点にある「調合釜」では、戦闘や宝箱から拾った材料をもとに、トラップ用のエサや生徒との食事を作ることができるモンスターを倒した数に応じて討伐ランクが上がり、該当モンスターへのダメージがアップする


■ やり込み要素も満載し、やりごたえのあるダンジョンRPG

メインクエストは“作戦”、サブクエストは“課題”と分類されている。このあたりも“先生と生徒”という設定を意識してのネーミングだろう

 筆者にとってダンジョンRPGというと、古くは「Wizardry」などに代表されるように、ダンジョンの奥深くにいるラスボスを倒すといった目的が示されているものの、どちらかというと、ダンジョンに繰り返し潜ってモンスターを倒すことで、経験値を稼ぎ、レアアイテムを集めてパーティーを強化していくことがメインになった、手段が目的になっている“やり込みゲーム”というイメージを持っていた。

 ところが本作では、随所に盛り込まれたイベント演出やキャラクターごとに用意されたサブクエスト、生徒との面談や食事など、ストーリーやキャラクターの魅力を引き出すことに、フォーカスを当てていることが強く感じられた。中でもサブクエストは、各キャラクターの出生の秘密や心の内面などに深く切り込んだものが多く、感情移入をより深くさせられた。

 ゲームシステム面では、根幹部分については伝統的なダンジョンRPGのシステムを受け継ぎながら、“絆”やトラップエンカウントといった新たなシステムを搭載することでただダンジョンに潜るだけではない新たな遊びの要素が追加され、単調になりがちなゲームプレイに変化が加えられている。

 また、実際にプレイしていても、RPGにありがちな、何度も同じ場所を往復して戦闘を繰り返して経験値やアイテムを集めるといった、いわゆる“やり込みプレイ”をしなくても、トラップエンカウントを数回繰り返して装備品を集める程度でラスボスまで到達できるくらいのバランスになっていて、ストーリーをちょうどいいペースで楽しむことができた。

戦闘のコマンド選択でも逐一効果説明が表示されるなど、プレイをしやすくする配慮が随所に感じられる

タイトル画面。MASTERモードは最初から選べるが、通常モードをクリアしておくと一部のデータを引き継げる

 このように、通常モードは敷居が低めに設定されているが、やり込み派のための「MASTERモード」も収録されている。このゲームモードは全てのモンスターが格段に強くなっているほか、セーブ場所が拠点に制限されるなど、上級者向けのモードになっている。このモードでしか手に入らない強力なアイテムもあるので、腕に自信のある方はぜひ挑戦していただきたいモードだ。


拠点の城にある円卓の間では「円卓辞典」でゲームの説明やプレイデータなど、さまざまな情報が参照できる
アイテム辞典とモンスター辞典を全て埋めることを目指すのもやり込み要素の1つ

 エクスペリエンスはダンジョンRPGを何本も開発しているメーカーだけあって、プレーヤーがストレスに感じる部分を極力排除しようという配慮が随所に感じられる作品というのが、クリアまでプレイしての感想だ。また、最後まで飽きずにプレイできるようなゲームバランスに配慮しながら、クリア後もやり込める要素もそつなく盛り込まれており、ダンジョンRPGに興味のある方はもちろん、このジャンルをプレイしたことがない人の入門用としてもオススメしたい作品だ。

 最後にちょっとだけ個人的な要望を言わせていただくと、せっかく“先生と生徒”というユニークな設定を盛り込んだのなら、“学校”や“授業”など、もっとその設定に深く踏み込んでも良かったかなと思う。

ローディング画面では攻略に役立つさまざまなTIPSが表示される文字を入力して答えを求められるイベントも存在するドルイドの「魅了」スキルはかなり使えるスキルだ

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(2012年 11月 30日)

[Reported by 滝沢修 ]