PS Vitaゲームレビュー

SOUL SACRIFICE

スピーディーで爽快感重視のバトルには戦術性を高める要素もたくさん。独特の“救済か生贄か”

スピーディーで爽快感重視のバトルには戦術性を高める要素もたくさん。独特の“救済か生贄か”

右手で魔法を操り戦う、魔法バトル! 魔法にはたくさんの種類があり、そのどれを使うのかがポイントになる

 本作は“超魔法バトル”とキャッチフレーズにあるとおり“魔法”を駆使して戦うスタイルが大きな特徴。魔法の種類には様々なものがあり、攻撃魔法(近距離、遠距離、追尾など様々)、間接魔法(盾を作ったりゴーレムを召喚する)、回復魔法など非常に多彩。それらを6つ選びセットして戦っていく。

 操作としては、左アナログスティックで移動、右アナログスティックで視点操作、□、△、○ボタンでそれぞれセットした魔法の発動、×ボタンでダッシュや回避、Rボタンで魔法セットの切替、Lボタンでターゲットロック、下ボタンで「心眼」という、通常は見えない魔物の弱点や体力、隠された供物を見つけ出す能力もある。

 魔法は発動後に発動したボタンで使うという操作になっていて、例えば○ボタンに氷の剣を作る「氷刃」の魔法をセットしているなら、○ボタンで発動して剣ができあがった後に、○ボタンで斬る(連続攻撃)、長押しでタメ斬りという操作になる。魔法の種類にもよるが、発動に時間を要するものもあるので魔法の特徴を掴んでおくというのが重要だ。

 スタンダードな剣や拳といった近距離攻撃のほかに、弾を撃ち出す遠距離攻撃や追尾弾、盾を作り出して攻撃を防ぎ魔物の突進はじき返すカウンターといった、魔物の攻撃パターンに合わせて上手く使うと効果的なものも数多くある。属性の概念もあり、それも重要になる。複数のプレーヤーで一緒に発動する結界といった強大かつ特殊なものもある。

 こうした魔法のどれを愛用するかで、戦い方が人それぞれ大きく変わるのが本作の醍醐味だろう。近距離重視でも遠距離重視でも、両方をバランスよく取り入れたものでも、自由に構成できる。特徴のある特殊なものを中心にセットして使いこなすような、自分流というのを突き詰めてみてもいいだろう。

魔法は大きくわけると、攻撃魔法、間接魔法、回復魔法となるが、その中身は非常に多彩。攻撃だけでも近距離、遠距離、追尾弾など豊富で、特殊なものも数多くある
キャラクターの準備画面。バトルに持ち込める6つの魔法をセットしたり、基礎能力を高める「右腕の刻印」、自らに大きな犠牲を伴う「禁術」などを変更できる。容姿の変更も可能で、服装やカラーはクエストをやりこむと増えていく
上のスクリーンショットはスライム、下はクラーケン。おぞましいビジュアルは得体の知れない恐怖すら与えてくる。闘いの最中に想いを喋るのも、元が人間だったのを感じさせる

 プレイ感はとてもスピーディーで、そして激しい。適度な重量感は出しつつも、速めなリズムで爽快感を重視した手触りだ。雑魚敵であれば、攻撃してくるタイミングにカウンターを決めると派手に吹き飛び、一撃で倒せる。魔法のエフェクトや効果音もズバッ! バシュッ! とキレのいいものになっていて、こちらも気持ちいい。上達するごとに気持ちよくなっていく、キビキビした良さがある。

 フィールドマップについては、クエストによっては広いところもあるが、基本的にはターゲットの強大な魔物と戦うアリーナ(闘技場)的なサイズだ。「狩りゲー」とは言っても、魔物が逃げたり、それを探して見つけるといったような要素は取り入れていない。クエスト開始から即ボスバトルに入るという作りで、ここは好みがわかれるかもしれないが、筆者的にはすぐに本題に入れるようなサクサク感があって好印象だ。欲を言えば、戦っている最中にロケーションが変わっていくようなステージギミックがあったら、よりバラエティ感が出たかもしれない。

 魔物のビジュアルのおぞましさは本作の大きな特徴だろう。著名な魔物が数多く登場するが、これまでのゲームシーンで培われてきたようなイメージではなく、良い意味でそれを裏切るようなえぐいデザイン揃いだ。生理的な嫌悪感が呼び起こされそうなおぞましさとも思えるが、それだけに迫力がある。魔物が迫ってきた時、捕らわれて食べられそうになった時、思わず声の出るような怖さがある。

 また、ゲームとしても魔物の攻撃はスレスレで回避できるような、ちょうどよいシビアさがあり、気が抜けない。例えば突進にしても、ただ距離を取れば簡単に避けられるようなものではなく、迂回したり、フィールドのオブジェを利用したりと、一工夫しないと危ないものが多い。

 対するこちらは、魔法が攻撃手段であり、唯一の手札。その魔法には使用回数に限りがある。フィールドには供物を補給できるポイントが何カ所かあるほか、点在している石や植物を供物にして魔法を発動できる現地調達ポイントのような場所もあるので、闘いつつ残りの手数タイミングを見て供物を補充する。魔法の残り使用回数が減ってくるとやはり心細さや焦りが出てくるし、そこからどうするかで、闘いの流れに動きも生まれる。補充している時の隙で一気に崩れるなんていうことも起こりうる。展開のアクセントであり、戦術的に動くことになる要素だ。

 「心眼」という魔物・仲間を問わず体力を見ることのできる要素も、戦術性を高めている。魔法の使用回数と、それに対しての魔物の残り体力を見て、どう動くかを自然と考えていくことになるし、体力が見えることで「あと少し!」と思うこともあれば、「まだ体力があんなにあるのか……」と焦らされることもある。魔物には部位破壊の要素もあって、心眼でそのポイントを確認できるというのも、やはり戦術性を高めてくれている。

魔法は供物を消費して発動するので、使用回数には限りがある。使い切ってしまうとそのクエスト中には供物の補充もできなくなるので、残り回数に気を配りつつ適度に補充するのがポイントだ
方向キーの下を押すと、通常では見えないものが見えるようになる「心眼」に。魔物の残り体力や部位破壊の箇所も見えるようになる
瀕死の者を“救済するか生贄にするか”という選択が常に求められる。それによってクエスト解放の分岐も起こる

 ボス、雑魚を問わず、倒した後には「選択」の機会が訪れる。それは、魔物になっていた動物なり人間なりを“救済するのか生贄にするのか”だ。瀕死のものに近づくと画面には左手と右手が現われる。左手は人間のままの手であり救いの手をさしのべる“救済”で、右手は魔法使いの手であり相手を犠牲に代償を得る“生贄”だ。

 救済すると、生命レベルが高まり、生贄にすれば魔力レベルが高まっていく。生命レベルは防御力と体力回復魔法の回復量を上昇させ、魔力レベルは攻撃力を上昇させる。前述のステータスアップの要素だ。

 それだけに留まらず、人間を救済した場合は仲間になる場合がある。シングルプレイ時にNPCを2人連れて行けるので、その同行者にできるわけだ。だが、生贄にする場合はその命を奪うわけで、当然仲間にはならない。その代償として、力を手に入れる。この選択によって、フリークエストの解放されるクエストも変化していく。選択による分岐だ。また、同行者のNPCにもそれぞれに性格があり、救済か生贄かのどちらを好むというものもある。例えば残忍な者であれば、プレーヤーが救済ばかりするのを見て離れていくこともある。

 NPCの動きについて書くと、全方位に吹き飛ばし効果のある魔法を多様する同行者だと、それによって自分のキャラクターも吹き飛ばされてしまうのでストレスになる。ただ、魔法による巻き添えというのは、マルチプレイで誰かと一緒に遊ぶ時にも配慮すべきところがあって、NPCの動きからそれを反面教師的に学べるともいえる。それを理解した上で、ある程度カスタマイズできると良かったかもしれないが、そこは次回作に期待というところだろう。

救済した元魔法使いが同行者に。シングルプレイ時のフリークエストでは2人の同行者と共に戦える。だが、救済か生贄かの選択次第では同行者がいなくなってしまうことも

 さて、この“救済か生贄か”の選択は、魔物ばかりではなくプレーヤー自身や同行者にも求められる。瀕死になった仲間に近づくと、倒した魔物と同じように画面に左手と右手が現われるのだ。救済すれば体力を分け与えて仲間は戦線復帰するが、生贄にするとその命と引き替えに強大な代償魔法を発動できる。ただし、仲間はもう戦えなくなる。

 仲間の命を犠牲にしてでも、禁術による強大な一撃を決めるべきか、そうすれば勝てると判断するのか。いや、それにはまだ早いと判断するのか。そこには“選択と覚悟”がある。クエストの分岐もそうだが、プレイの根底にあるものとしても、この“救済か生贄か”、それに伴う“選択と覚悟”は本作の特徴と言っていいだろう。プレーヤーは常に求められるし、それは自由度とも言える。選択の自由があるなかで判断をすることは、その先に起こる結果への覚悟が必要。そうした概念が、ゲームにきっちり反映される作品となっている。

 そして少しオブラートに包んで隠した言い方をするが、“選択をする側が常に自分”とは限らない。プレイする中で驚かされることも起こる。それはぜひ、実際にプレイして体験してもらいたい。

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(山村智美)