★PS3/Xbox 360ゲームレビュー★

ぶち抜け、燃やせ、ぶっ飛ばせ!
ハチャメチャレースついに開幕

「ブラーレーサーズ」

  • ジャンル:レース
  • 開発元:Bizarre Creations
  • 発売元:スクウェア・エニックス
  • 価格:7,980円
  • プラットフォーム:PS3/Xbox 360
  • 発売日:7月22日
  • プレイ人数:1~4人/オンライン2~20人
  • CEROレーティング:A(全年齢)

 「ブラーレーサーズ」はスクウェア・エニックスが発売したハチャメチャなレースゲームだ。本作の車はパワーアップを取ることで火の玉のようなミサイルを撃ったり、マシンの周りに衝撃波を出して敵車を吹っ飛ばすことができる。20台もの車が、ぶつかり、爆発し、吹っ飛んでいく。そのレースシーンのド派手な迫力はプレーヤーを強く魅了する。

 コース上のパワーアップを取り、相手を邪魔し合いながらレースを繰り広げるというコンセプトのレースゲームでは任天堂の「マリオカート」シリーズがあるが、「ブラーレーサーズ」は実在の車種、実際の都市をイメージしたコースを使っているところに大きな違いがある。そのリアルな車達がリアルな風景の中で、理屈無用のハチャメチャレースを繰り広げるところに本作の楽しさがある。本稿では、シングルプレイ、マルチプレイの各要素を紹介していきたい。



■ 車が舞い、弾が行き交い、エネルギーがスパークする。激しく過激なレース開催!

シングルプレイの「Career」モード。次々と現われるライバルに挑戦していく
様々なパワーアップで激しい光がフラッシュし、弾が飛び交い、そして車が大破していく。ド派手なレースシーンは一瞬でプレーヤーを魅了する

 「ブラーレーサーズ」の開発スタジオは「プロジェクトゴッサムレーシング」シリーズ等のレースゲームを数多く手掛けてきた英Bizarre Creationsだ。「プロジェクトゴッサムレーシング」はシミュレーション性よりもゲーム性、爽快感を重視した作風のレースゲームだが、本作ではさそこからさらに一歩踏み出し、目の前の敵を破壊し、後続をぶっとばすというインパクトの強いレースゲームとなっている。

 「ブラーレーサーズ」の最大の魅力はそのハチャメチャなレースシーンにある。レースがスタートした瞬間周りの車がガンガンぶつかり合い、“パワーアップ”が置かれている場所を通過すれば、バリアを張ったり、ミサイルを撃ったり、電撃を放出したりと、車の集団が様々なエフェクトに包まれ、何台かの車は吹っ飛んでいく。

 つぶし合い、壊し合いを繰り返す敵車の中を駆け抜け、自分もまた敵を撃ち、シールドで敵を防御していく、スピード感溢れる駆け引きが楽しい。公式ページのムービーでは端的に本作の魅力を表現している。ゲーム操作はアクセルとブレーキ、そしてサイドブレーキとパワーアップ使用のボタンでほとんどオッケーという、間口が広く、楽しいゲームだ。

 最初に「ブラーレーサーズ」のシングルプレイのルールを紹介する。シングルプレイは「Career」というモードにまとめられており、「Career」で様々なレースに挑戦し、メイン目標やサブ目標を達成することで、新たなレースがアンロックされていく。レースはステージごとにテーマが決められており、条件をクリアするとステーわジのライバルに挑戦できる。新たなコースをアンロックし、ライバルを倒していくことがシングルプレイの目的だ。

 レースには最大20台で走り、3位入賞を目指す「Race」、前方に弾を発射するパワーアップ「ボルト」を使って前方に現れる敵を撃破してポイントを稼ぐ「Destruction」、猛スピードでダッシュする「ニトロ」やタイムボーナスを稼げるパワーアップを取って制限時間内にゴールを目指す「Checkpoint」といった種類がある。

 これらに挑戦することでプレーヤーはファンを獲得する。このファン数がいわゆる「経験値」となっており、レベルを上げていくことで新たな車を入手できる。また、各ステージにはレースのクリア条件以外に、ライバルに挑戦するための条件が設定されている。この条件を満たすと、ライバルと1対1で戦うことができる。

 ライバルとの戦い「One on One」は、同じ車を使った真剣勝負だ。どのパワーアップをどこで使うか、そのタイミングが重要となる。また、「ブラーレーサーズ」では場所によってコースが分岐することもある。どのコースを使えば効率が良いか、対戦に有利なパワーアップの配置はどうか、練習を繰り返し、試行錯誤を繰り返しながらゲームを進めていく必要がある。

 「ブラーレーサーズ」のゲーム性はかなりカジュアル寄りだ。初めてのコースで、いきなりの急カーブに出会ってもそこで再開不可能になったりはしない。敵車もプレーヤーだけに的を絞って攻撃してくるようなことはなく、全員で足を引っ張り合い、つぶし合うため、団子状態の激しいゲームプレイが体験できる。操作もシンプルであるため、友人の家でコントローラーを借りて遊んでも、初回から夢中になって楽しめるだろう。


上位入賞を目指す「Race」。最もスタンダードなルールだが、攻撃、コーナー、コース選びなど駆け引きの要素は多い
タイムボーナスとニトロで制限時間内の走破を目指す「Checkpoint」
ボルトで前方の敵を破壊してポイントを稼ぐ「Destruction」
「One on One」では同じ車に乗り込んでのタイマンだ。パワーアップの使い方が重要になる


■ 撃て、はじき飛ばせ、ぶち抜け! パワーアップによる激しいレース展開

前方に並べられたパワーアップ。どれを取るか?
衝撃波を発生させるブラスト。敵を吹っ飛ばせ!

 次に「ブラーレーサーズ」に登場するパワーアップを紹介したい。これらのパワーアップは3個までストック可能で、使い方を考える戦略性も求められる。本作には、前方に3発弾を発射する「ボルト」、急加速できる「ニトロ」以外にも複数のパワーアップが存在する。

 「ショック」は視界外のはるか前方にいくつもの電磁波のドームを設置するパワーアップ。このドームに触れると車はダメージを受ける。差がついている敵を足止めするのに有効だ。

 「リペア」は耐久力を回復させるパワーアップ。敵車から与えられる攻撃や、コーナーで壁にぶつかっると耐久力が減り、0になるとクラッシュして大幅に遅れてしまう。リペアはそんなときに頼れるパワーアップだ。「マイン」はコースに地雷を設置するパワーアップ。「シャント」は火の玉のようなミサイルを発射する。シャントはある程度は敵を追尾してくれる。

 「ブラスト」は車体の周りに衝撃波を発生させる。触れた敵ははじかれるだけでなく一定時間スピードダウンする。また衝撃波を当てることで近付いてくるシャントや設置してあるマインを消し去ることも可能だ。「シールド」はシャント、マイン、サンダー、ボルトなどあらゆる攻撃を防ぐことができる。

 シャントやマイン、ボルトは発射の際、方向レバーを前方や後ろに倒すことで望んだ方向に発射できる。これにより後方の敵を牽制したり、マインを直接当てるといった使い方も可能だ。ニトロは急加速中に追突することで「ニトロラム攻撃」になり敵車にダメージを与えられる。また、方向キーの下を押して使えば急ブレーキをかけることも可能だ。

 この他コースには「Fan Demands」や「Fan Run」のアイコンが出現する。「Fan Demands」は「ニトロラムを決めろ」、「シャントを当てろ」など条件が提示され、一定時間以内で成功させることでボーナスのファンを獲得できる。「Fan Run」を取ることで光のゲートが出現し、これを次々とくぐりゴールのゲームとまで完走することでボーナスがもらえる。これらのターゲットがボスの挑戦への条件になっている場合も多い。なによりもファンの獲得は上位の車をアンロックするために必要であり、積極的に狙っていきたいところだ。

 「ブラーレーサーズ」が面白いのは、通常のレースゲームのように最適なライン、ブレーキングポイントを追求するだけでなく、時には危険を冒しても望みのパワーアップを取ったり、「Fan Run」を成功するために指定された道をすすむ必要があるという部分だ。プレーヤーはスマートな走りだけでなく戦略的なコース選びも求められる。パワーアップによっては意地悪なところに配置されていて、気を取られすぎるとコースに激突してしまう場合もある。

 パワーアップは敵車に取られてしまうと、取ることができない。敵車がちょうど自分と同じパワーアップを取りに来て奪われてしまったりと、駆け引きも楽しい。ブラストを使おうとして近寄ったときに逆に撃たれてしまったり様々なシーンが生まれる。本作では敵車がどんなパワーアップを持っているか車の上に表示されている。この機能は特にボスとの1対1の戦いで重要だ。敵のパワーアップを考えて行動する「決闘」の様な緊張感は、ぜひ体験して欲しい。


左から、シャント、ボルト、リペア。パワーアップは3個までストックできる。どう使うかでレース展開に大きな影響を及ぼす
左からニトロ、マイン、サンダー。マインやサンダーは敵の妨害に有効だ
ゲートを通ることで、より多くのファンを得られるFan Run、提示された条件をクリアすることでボーナスファンを得られるFan Demands


■ やりこみが必要なゲームバランス。成長しつつ、敵をねじ伏せる楽しさ

条件をクリアすることでライバルに挑戦できる。ファンを増やして使用車を増やすのが近道だ

 「ブラーレーサーズ」は日本語吹き替え版で、ゲーム内の表記はもちろん、チュートリアルムービーも日本語音声で収録されている。このためマニュアルをほとんど見なくてもレースのルールやコツなどを覚えることができる。ゲームの説明は女性が親しげな口調でしてくれるのだが、そのトーンが海外の製品を扱う通販番組の様でちょっと面白い。

 ゲームのルールはわかりやすく、ゲームシーンは派手で間口が広い「ブラーレーサーズ」だが、シングルプレイのゲームの難易度はなかなか硬派だ。ステージ2からはゲームをやりこみ、ファンを増やしてよりよい車を入手することが求められる。RPGの「経験値集め」のような繰り返しプレイが必要なプレイスタイルは、最初はちょっと意外に感じた。ライバルと戦うための条件はより高めで、まず先のコースをアンロックしてファンを増やし、手に入った高性能の車でコースの記録をよりよいものに塗り替えてライバル挑戦のための条件を満たす必要がある。

 条件の厳しさでまず感じるのは、デフォルトで敵車が自分より速いところだ。特にライバルは同じ車で戦っているはずなのに直線で差がつけられる。このバランスは多少理不尽に感じた。しかしだからこそ、挑戦心が盛り上がるという側面もある。いかに相手を足止めするか、どう戦えば有利になるか、その試行錯誤は楽しい。この難易度はデフォルトのミディアムのもので、試しにイージーにしてみたら拍子抜けする程簡単になってしまった。クリアだけを目指すならば難易度を変えるのもありかとも思うが、この逆境はなかなか心を掻き立てるものがある。

 本作はレースゲームが得意な人ならばこのハードルの高さもものともせずに進めるかもしれない。筆者のようにそれほど腕が高くないプレーヤーも、くじけずファンを集め、よりよい車をアンロックさせて挑戦していけば突破口が見えてくる。このバランスは、夏休み気合いを入れて取り組むのにちょうどいいと感じた。これからもこの開発者の挑戦に立ち向かっていきたい。


ライバルは同じ車を乗っているのだが、スピードが速くかなり有利な印象だ。理不尽さも感じるが、それをはね除けようとファイトがわいてくる
敵車同士が足を引っ張り合い、デッドヒートを繰り広げる「ブラーレーサーズ」のレースシーンは強いインパクトと魅力がある。シングルプレイでは繰り返しプレイし条件をクリアしていく楽しさがある


■ プレーヤーとの戦いだからこそより盛り上がるマルチプレイ

プレーヤーとの対戦は、シングルプレイとは違った感触がある。マルチプレイの人口も多く、楽しく対戦できそうだ

 「ブラーレーサーズ」のオンラインマルチプレイではPlayStation Network やXbox Liveを通じて日本や海外のプレーヤーと対戦できる。「ブラーレーサーズ」は欧米では2010年5月に発売されており、現在もたくさんのプレーヤーが対戦に参加している。この他にも、ローカル環境で画面分割やシステムリンクでの対戦も可能だ。

 マルチプレイではプレーヤーにはシングルプレイとは独立したマルチプレイ用のステータスがあり、プレイを重ねることでランクが上がっていく。最初に挑戦できるのは、最大10人のシンプルなコースで遊べる「ドライビングスクール」、最大10人でやや難しいコースも登場する「スカーミッシュレース」、最大20人で挑戦できるコース制限のない「パワーアップレース」の3つだ。この3つの中では、対戦人数が多いパワーアップレースが人気だ。

 プレーヤーのランクが上がると一定時間の間にどこまで敵を攻撃したかを競う「マッシュ」やチームで対戦する「チームレース」、パワーアップが登場せず純粋に走りの腕を競う「ハードコアレース」といったより多彩なルールに挑戦できる。マルチプレーヤーでもランクが増えることで使える車種が増える。ランクが高ければより強力な車に乗ることができる。

 ランクが上がれば車種に加え「Module」をつけることができる。Moduleはシングルプレイでもあるが、マルチプレイでは3種類つけることができ、よりプレイスタイルにあったカスタマイズが可能だ。Moduleには衝突力を上げる「バッティングラム」や、シールドに攻撃を受けると耐久力が増す「セーフティーネット」等多彩なものが用意されている。まだ解放していないが、パワーアップが取りやすくなるものなども用意されており、かなりレースが有利になる感じだ。

 オンラインのマルチプレイでは2カ月のタイムラグのためか、50を超えるランクのプレーヤーが参加しており、最初から挑戦できる3つのレースでは参加できる車が制限されてはいるものの、やはり基本的な差が大きく、参加してすぐに1番を取る、というのは難しい。彼らと肩を並べるためには、かなりのやり込みが必要なようだ。また、各人の通信環境にもよるところが大きいと思うが、対戦時にラグが発生する状況もあった。

 しかし、筆者は「ブラーレーサーズ」はマルチプレイの方がより楽しいと感じた。シングルプレイでは細かい条件が設定されていたり、敵が妙に早くゲーム的に「デッドヒートを演出しよう」という、ある意味不自然さを感じたが、マルチプレイはシンプルに戦っているという雰囲気がある。他の車の挙動から、パワーアップを取るためにムキになったり、カーブに苦労したりと、他プレーヤーの気持ちも伝わってくる。やはり「生身の相手と戦っている」という感覚が何よりも楽しい。

 また、下位のプレーヤーにはブーストがかかる仕様のようで、性能の低い車でもうまく走りさえすれば下位集団に追いつけ、ずっと最下位のまま敵車も見えない、という状況は少ない。初期ステータスでもトップはとれなくても中盤くらいまでは食い込めるのだ。

 「ブラーレーサーズ」はつぶし合い、壊し合いの中運良く抜け出すこともできる。この「幸運」がプレイの意慾を後押しする。良い車が手に入り、Moduleをうまく使いこなせばさらに有利になる。カジュアルで楽しい「ブラーレーサーズ」のコンセプトは、マルチプレイで一層輝く。だからこそ海外のプレーヤーも続けているのだと思う。現在XboxLiveでは海外版ではあるが体験版が配信されており、マルチプレイでの対戦も体験できる。この楽しさと興奮は、ぜひプレイして確かめて欲しい。


ロビーからコースを投票で選び対戦開始。様々な項目のランキングも用意されている
カーブの攻防、パワーアップの使い方、Moduleの特性……使いこなしてより上位を目指す。コースのこつもつかみたいところだ

(C)2010 Activision Publishing, Inc. Activision is a registered trademark and BLUR RACERZ is a trademark of Activision Publishing, Inc. All rights reserved.
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(2010年 7月 21日)

[Reported by 勝田哲也 ]