DSゲームレビュー

やればやるほど楽しさが増していくサッカーSLG
「サカつくDS ワールドチャレンジ2010」

  • ジャンル:スポーツシミュレーション
  • 発売元:株式会社セガ
  • 開発元:株式会社セガ
  • 価格:5,500円
  • プラットフォーム:ニンテンドーDS
  • 発売日:発売中(5月27日発売)
  • プレイ人数:1人(ワイヤレス通信プレイ時最大2人)
  • CEROレーティング:A(全年齢対象)


 プレーヤーは自分だけのオリジナルサッカークラブを作り、クラブ施設の経営や選手、監督と契約をしたり、試合中には采配を振るいながら世界一のクラブを目指す、おなじみ「サカつく」シリーズの最新作。本作にはメインとなる「サカつくモード」をはじめ、日本または世界各国の代表チームを率いて戦う「インターナショナルモード」、強豪クラブを倒して段位を取得していく「チャレンジモード」、Wi-Fi通信を利用して他のプレーヤーと対戦プレイやすれ違い通信などが楽しめる「つうしんモード」の4種類のゲームモードが用意されている。

 なお本記事を作成するにあたり、筆者は「サカつくモード」を5シーズン分プレイしたうえで執筆している。また、筆者は以前にPS2用ソフトとして発売された「サカつく3」および「サカつく4」を遊んだ経験はあるが、DS版のシリーズをプレイするのは今回が初めて。メインの「サカつくモード」を中心として、DS版ならではの魅力はどこにあるのかを探りながら執筆せていただいた。サッカーおよびサッカーゲームファンはもちろん、「サカつく」未経験者もぜひご一読いただきたい。



■ タッチペンによる簡単操作と、計算が苦手な人でもすぐに遊べるマネジメントシステムを実現

 まずは「サカつくモード」の基本的なマネジメント(経営)に関するシステムの説明と、プレイしたうえで気づいたことなどを書いていくことにしよう。

 メインメニュー画面には、「編成」「人事」「施設」「スケジュール」の4種類のメニューがあり、いずれもタッチペンでだけで選択および操作が可能。ボタンを使用する際は、十字キーでカーソル移動、Aボタンで選択・決定、Bボタンでキャンセルの3種類の操作でほぼすべてのメニューが実行できる。これなら「サカつく」シリーズ初心者であっても操作面で困ることはまずないだろう。

 「編成」は、試合に出場させる選手やフォーメーションなどを決める際に使用する。チームに所属する全選手の中からスタメン11名と控えの5名、さらには采配を振るう監督を選択する。フォーメーションはプレーヤーが自由に決められるが、起用した監督によって試合中に使用できる「チームスキル」(※詳しくは後述)の種類が変化する特徴がある。「人事」は選手の契約延長をはじめ、海外チームへの期限付き移籍、レベルアップ時に新たに修得したスキルをセットする際に使用する。「施設」ではオフィス、スタジアム、クラブハウスの各施設に、それぞれ売店やトレーニングルームなどの施設を建設および増築することができる。そして「スケジュール」は文字通り試合日程などを確認するためのメニューである。いずれのメニューとも、画面中央にあるチケットの絵を選択して試合に進む前であれば何回でも実行することが可能だ。

 また上記メニューとは別に、毎月1度だけセールスマンがやって来てアイテム類が購入できるイベントが発生する。アイテムには各種施設を建設する権利を得るものをはじめ、選手や監督の契約を延長したり、選手を海外のチームに期限付き移籍(※移籍させることで能力をアップさせる効果がある)させるための提携ができる効果を持つものなど、実に多くの種類が存在する。本作では施設の建設や契約延長の際は直接現金を支払うのではなく、アイテムとして購入するシステムになっているのが大きな特徴である。

 このように、プレーヤーは単に試合中の監督やコーチ役をするのではなく、資金繰りを考えつつ選手との契約や施設の拡充をしながらプレイする「サカつく」シリーズ伝統のシステムは本作でも健在だ。また、タッチおよびボタンのどちらでも操作レスポンスは良好で、メニューを切り替えた際にかかるデータロードの時間もほんのわずかしなく、実にテンポよくゲームが進むのも嬉しいところだ。

 マネジメント面において筆者が特に好感を持ったのは、投資をする際にかかる費用の計算がとても簡単なこと。過去の「サカつく」シリーズでは、毎月末に施設の維持費や人件費が支払われるシステムになっていることが多く、このためプレーヤーが計算をうっかり間違えて途中で破産、すなわちゲームオーバーになるリスクが少なからず存在した(※筆者も何度も失敗した経験あり)。だが、こと本作に関しては月末に定期支払が発生するシステムは存在しないためその心配はほとんどない。よって、プレーヤーは現在手持ちの資金をゼロにさえしなければ、いつでも自分の好きなタイミングで安心して買い物ができる。このマネジメントにおけるお手軽さは、ちょっとした空き時間を利用して遊ぶことの多い携帯ゲーム機ユーザー向けには非常に適したシステムであると言えるだろう。

「サカつくモード」のマネジメントの様子。画面中央のチケットを選択すると試合に進む。時間は試合の前後で1週間単位で経過するようになっている
毎月1回やって来るセールスマンからさまざまなアイテムが購入できる。本作ではスタジアムやオフィスに建設する施設もアイテム扱いとなる
費用が発生するのはアイテム類を購入したり設置する時点の1回のみ。毎月末に人件費や施設の維持費を支払う必要がなく、資金計画を立てるのは比較的簡単だ


 選手および監督、コーチ、スカウトの各スタッフを雇用する方法も実にユニーク。本作では新しい選手を獲得する際にはお金を一切使わず、フレンドリーマッチ(親善試合)またはカップ戦終了後に出現するスクラッチカードを削ることによって、対戦相手の中から獲得候補のリストにあがった選手のいずれかがランダムで1人獲得できるようになっている。さらに特殊なアイテムを使用すれば、意中の選手を高確率で当てられるようになったりもするのだ。

 監督はいろいろなチームと試合をこなしていくことで、ある条件を満たすと雇用できる人数が増えていく。複数の監督と同時に契約して、1試合ごとに指揮をとる監督を変えながらプレイするという変わった遊び方もできてしまうのも本作ならではの斬新なシステムだ。コーチおよびスカウトについては、セールスマンからアイテムを購入することで雇用できる人数が増加する。またコーチを起用する際は、チーム全体に効果を及ぼす「基礎トレーニング」と、個別に能力を強化する「個別トレーニング」の2人のコーチを毎回リーグ戦を行なうたびに設定する必要がある。前者は試合に45分以上出場した全選手の「自信」のパラメーターをアップさせる効果があり、後者は既定の条件を満たすことで、試合後にプレーヤーが指定した選手の能力がアップする。「自信」はシュート、パスなどの各能力ごとに分かれて各選手に設定されている要素で、この値が一定以上に達していないと「個別トレーニング」を受けられない仕組みになっている。

 なお、監督には給料を支払う必要はないが、コーチとスカウトについては毎試合ごとに一定のギャランティーを払う必要がある(※お金を使いたくないときは雇用せずに試合をすることも可能)。また1度契約切れになった選手や監督は、そのままチームを退団することなく、契約延長アイテムを使用すればいつでも再雇用ができるのも面白いシステムだ。同時に保有できる選手の上限は60人だが、3、4シーズンほど試合をこなせばすぐに上限に達するため、余剰人員が発生した場合はその都度誰かを解雇して人数を調整する必要が生じる。大所帯でありながら、メンバーの入れ替わりがひんぱんに発生するところにも、本作ならではの独特の楽しさがある。

スクラッチカードで当たった選手が新たにクラブに加入する個性的なシステムは、他では味わうことのできない本作ならではのもの
複数の監督およびコーチ、スカウトを併用できるのもユニークなところ。コーチはチーム全体に効果を及ぼす基礎トレーニングと、個別に強化する個別トレーニングの2人を別々に起用することも可能




■ 試合における面白さのキモは、「チームスキル」の使用法と2種類のレギュレーションの存在にあり

 ここからは「サカつくモード」、「インターナショナルモード」、「チャレンジモード」の各モードの試合形式について見ていくことにしよう。

 「サカつくモード」の試合スケジュールは、毎シーズンごとに1年間戦い続けるリーグ戦と、数試合程度の短期間で終了するカップ戦の2種類のレギュレーションを常時並行しながらプレイするシステムになっている。初プレイ時はリーグ戦がJ2リーグ、カップ戦は「フレンドリーシリーズ」と呼ばれる大会にエントリーされ、奇数の週にはリーグ戦を、偶数の週ではカップ戦というように毎週交互に異なるレギュレーションの大会を戦うスケジュールとなる(※たまに日程が若干変わる場合もある)。

 試合中は全選手がパスやドリブル、シュートなどを自動で行なうので、放っておいても試合はどんどん進んでいく。プレーヤーはタッチペンで選手のアイコンを直接動かすことで、いつでもポジションやフォーメーションを自由に変更することが可能。選手交代時も、リザーブメンバーのアイコンをドラッグして代えたい選手のいる位置に重ねるだけで簡単にできる。また、選手およびボールが動くスピードを3段階に設定することも可能なので、時間を節約したいときはスピードを通常の2倍または3倍にアップさせてしまうといい(※ただし最高の3倍速にすると、ボールを目で追うのがかなり難しくなる)。

 操作方法やグラフィックスのクオリティについては特に不満はなかったが、演出面において筆者が唯一気になったのはPKまたは直接FK時のカメラアングル。ときどきボールの軌道が選手の頭に隠れて見えにくくなってしまうことがあり、ホイッスルが鳴るまでゴールに入ったかどうかが非常に判別しにくいケースが散見された。ここはカメラアングルを一時的にボールが見やすいように変更するなどして、ハッキリと結果がわかるような配慮がほしかったところだ。

 リーグ、カップ戦を問わず勝敗を分ける大きなポイントは、個々の監督が持つ「チームスキル」を状況に応じていかに使いこなせるかである。「チームスキル」とは、試合中に一定時間ごとにたまっていく「指示力」のゲージを消費することで発動できる能力のことで、サイド攻撃時の攻撃力をアップさせる「サイド攻撃」や、サイドの守備力が上がる「サイド守備」、全員のシュート意識が高まる「シュート重視」、指定した選手の体力を全回復する「体力温存」などさまざまな種類が存在する。どの「チームスキル」が使用できるかは各監督ごとにあらかじめ決まっているが、「チームスキル」をセットして試合に行くことでゲージを増やし、満タンにすれば監督交代時に新しい監督にそのまま引き継いで使用することもできる。

 たとえば相手が「サイド攻撃」を使ってきたら、これに対抗すべく「サイド守備」を発動させて攻撃を封じたり、逆に相手が「サイド守備」を使用したらその逆を突いて「中央突破」を使うなど、「チームスキル」によって相手監督との駆け引きを楽しみながら試合ができるのも本作の面白いところである。

 さらにユニークなのが、ドリブルやパスを成功させるごとにボールが光り出す「チャージ」というシステムを導入していること。ボールがより光っているときほどシュートを撃った際にゴールが決まりやすくなるので、各選手の基本能力や相性などによって決まる連携を向上させることでボールポゼッションを高めれば、必然的にゴールが決まりやすくなる。ただし、ボールが光るのは相手チームも同じなので、相手がボールを回しているときは失点のリスクが高まることになる。攻撃時はいかにボールを光らせ、逆に守備のときは相手のボールを奪い取るかを考えつつ、監督の「チームスキル」の使用法や味方選手のフォーメーションおよび連携などを考慮した戦略性も本作では求められることとなる。

「指示力」を消費することでさまざまな「チームスキル」が使用できる。スキル使用時は、スキルをドラッグしてピッチまたは使いたい選手カーソル上に重ねてから離すだけで自動的に発動する
ボールを回し続けるとボールが光り出し、まぶしくなるほどゴールが決まりやすくなる。試合に使う選手は、パスの能力以外にも選手間の相性(連携)を考えながら選ぶようにしたい

 そして本作における最もユニークなシステムは、同じサッカーという競技でありながらリーグ戦とカップ戦とではまったくレギュレーションが異なること。リーグ戦に出場した選手は、活躍に応じた経験値を得ることでレベルアップしてパスやドリブルなどの基本能力がアップしたり、一定条件を満たすと「ループシュート」や「パワータックル」、「高速パス」など、試合中に自動的に発動する「選手スキル」が獲得できる。一方、カップ戦に出場した選手は経験値が一切入らないが、試合終了後には相手クラブの選手をスカウトして自分のチームに入団させるイベントが毎回必ず発生する。

 レギュレーションをガラリと変えたことにより、たとえばレベルが低い選手はリーグ戦でじっくりと育てつつ、ある程度のレベルまでアップした選手は「カップ戦要員」としてとことん勝ちにこだわるなどといったように、試合によってメンバー構成を変えながら戦う戦略性が生じる。また、両方のレギュレーションを同じメンバーで戦い続けると選手たちの疲労がたまってコンディションが低下するので、シーズンを通してレギュラーを固定して戦うのは得策ではない。なので、本作では必然的に選手のレベルやコンディションを考慮した起用法を編み出す戦略性も発生する仕組みになっているのがこれまた面白い。

 ただし、能力の高い選手ばかりをかき集めればいいかというと必ずしもそうではない。なぜなら個々の選手にはあらかじめコスト値が決められており、スタメンおよびリザーブの全選手のコストの合計がチームの上限を超えてはいけないルールになっているからだ。選手1人あたりの最低コストは1だが、日本代表クラスの選手ともなると1人で4、5ポイント分を消費してしまうので、ゲームを始めてから当分の間は同時に何人もの代表クラスを起用するのは実質不可能。なおコストの上限は、リーグやカップ戦で上位に入賞したりチームの「世界クラブランキング」をアップさせることで増やせるので、どうしても使いたい選手は上限が増えるまでずっとストックしたまま我慢するかしない。選手を放っておくのがもったいないという場合は、海外に期限付き移籍をさせて能力アップを図るといいだろう。

 どんどん新しい選手が獲得できるのはとても嬉しいが、筆者が唯一不満だったのはときどき同じ選手が重複してリストアップされてしまうケースがあること。特にゲームを始めて間もないうちから早々に「ダブり」を引いてしまったときは、せっかくの貴重な機会をフイにしてしまった感が非常に強く正直がっかりしてしまう。しかもダブッた選手を引き当ててしまうと、それぞれ同じ選手でも基本能力が異なるため、2人のリストが別個に登録されるので編成の作業がややこしくなってしまう(※当然、同じ選手を2人同時に試合では使えない)。まれに出現する、能力が非常に高い状態で出現する「レア」バージョンのカードがダブッて引けた場合はこの限りではないが、初心者にとってはゲームシステムがよりわかりにくくなってしまった感は否めない。

 同じ選手でもカードが異なると基本能力や適性ポジションが違う別バージョンになっているアイデアは確かに面白いが、混乱を避けるために初めの数シーズンのうちは選手が重複しないようにプログラムしたほうがよかったように思われる。

 なおリーグおよびカップ戦における順位の決定方法は、前者が各チームの総当たり戦で、後者はホーム&アウェー方式だったり1発勝負のトーナメントだったりというように、その都度エントリーした大会によって異なっている。またカップ戦については、勝ち続けることで新しい別の大会がどんどん出現するので、全部でいくつの大会を制覇できるかにチャレンジするやり込みの要素も存在する。各大会に優勝または上位入賞すれば賞金がもらえるのはもちろん、カップ戦では賞品としてアイテムが入手できることもあるので、アイテムをコレクションする目的でカップ戦を戦うのもまた一興だ。

リーグ戦は総当り方式でシーズンを通して開催される。試合終了後に経験値が加算され、レベルアップすると個人能力がアップしたり「選手スキル」が修得できる
カップ戦は各大会ごとにルールが異なる。選手の経験値は増えないが、試合後に新たな選手を獲得したり、上位に入賞すると賞品が手に入る特典がある

 「インターナショナルモード」の「日本代表チャレンジ」では、日本代表を選択するとアジア地区の最終予選からゲームが始まる。6カ国による総当たり戦で上位2位以内に入れば世界大会への出場権が獲得できる。「ワールドチャレンジ」では、他の国を選択すると、最初から世界大会のグループリーグ(4チームによる総当たり戦)からスタートする。本モードで使用するチームのメンバーは、あらかじめ決まっている選手に加えて「サカつくモード」でプレーヤーが保有している選手をミックスさせてプレイできるのが1番のミソ。自分だけの日本代表チームを編成して世界一に挑んだり、あるいは自分で育てたお気に入りの外国人選手がいる国を選んでプレイするといった楽しみ方が可能だ。

 筆者が試した限りでは、5シーズンかけて育てた選手を加えて作った日本代表は地区予選こそ危なげなく突破できたものの、本戦は決勝トーナメント(ベスト16)まで進出するのもひと苦労で、世界一になるのは至難の業であるという印象。まずは「サカつく」モードで多くの有能な選手を集めてじっくり育ててから、本気でタイトル獲得に取り組むのがベストだろう。

 「チャレンジモード」は、「サカつくモード」で作ったチームを率いて初段~九段および球聖まで各3チームずつ、全30チームの強豪クラブと戦うゲームモード。最初は初段の3チームとしか対戦できないが、3チームすべてに勝利することで、新たに二段のチームと試合ができるようになる(※以下、三段以降の出現条件も同様)。初段からJリーグのレベルを超越したかなり強いチームが登場するので、自チームの実力を測る指標として利用できるのはもちろん、試合に勝つと報酬として「サカつく」モードで使用できるアイテムが入手できることもあるので、お金を節約したいときにチャレンジするといった楽しみ方もできる。

 ご参考までに、筆者が5シーズンかけて作ったチームで戦ったところ、初段の相手でも0対3で完敗を喫することもしばしばで、初段および二段の全チームを倒すまでにかなり時間がかかってしまった。さらに二段以降になると、あのベッカムをはじめとするワールドクラスの選手が所属するチームが次々と登場し、三段のチームを出現させるのが正直精一杯だった。本モードは10年、20年と長いスパンをかけて日本代表あるいはワールドクラスの選手をじっくり育てたうえで、実力相応の相手と少しずつ戦いながら気長に楽しむようにしたい。

自分で育てた選手を代表選手として召集できるのが嬉しい「インターナショナルモード」。サポーターの声に応えることで「スピリッツ」を集め、チームを強化するユニークなシステムもある
初段から強豪クラブがズラリと並ぶ「チャレンジモード」は上級者向けのゲームモード。どこまで勝ち進めるか、自らの実力の限界にチャレンジしてみよう



■ ゲームバランス考察:1年目の試練を耐え切れるかが評価を分ける最大のポイント

 ここからは「サカつくモード」のゲーム全体の難易度やバランス面について考察していく。

 ゲームをスタートしてから行なう最初の試合(フレンドリーマッチ)では既存のJリーグのクラブと対戦することになるが、どこと戦っても自クラブとは実力差が相当あるため勝つのは極めて難しい。ここでは、あくまで操作方法や試合の流れなどをつかんでもらうための用意された機会だと割り切って遊ぶのが賢明だ。勝敗は度外視してあえて強いクラブを対戦相手に選び、勝敗よりも試合後に相手クラブの有力な選手を獲得するのに利用したい。

 ちなみに筆者は(実際の)J1リーグで3連覇中の鹿島アントラーズと戦ったところ、試合は0対4で惨敗した。だが、試合後のスクラッチカードで日本代表DFの岩政選手の獲得に成功すると、以後チーム不動のレギュラーとして大活躍することとなった。負けること自体はけっしてハッピーなことではないが、大物選手がいきなり引き抜けるお楽しみの存在が、そのマイナス分を補って余りあるほどに嬉しかった。

 しかし、シーズン1年目はまさに茨の道である。これまで筆者が過去にプレイしてきた「サカつく」シリーズと同様、戦力が絶対的に不足しているのでリーグ戦でもカップ戦でもほとんど勝つことができなかった(年間での勝ち星はわずかに5勝だった)。上位チームとの試合になると勝ち点を取るどころかシュートチャンスの機会もほとんど作れず、たまにシュートが撃てても枠の外へ飛んでいってしまう場面が多く、シリーズ作品に慣れていない人はかなりストレスがたまると思われる。しかも連敗するとチーム全体のコンディションが下がるイベントが発生することもあるので、ますます負のスパイラルにハマッてしまう。

 さらに試合システムにおいて問題となるのが、1年目のうちは操作やゲームシステムを少しずつ覚えながら進めていくこともあって、プレーヤーの敗因がどこにあるのかが遊んでいていまひとつわかりにくいこと。選手や監督の能力不足が主因なのは何となく察しがつくものの、「チームスキル」がどれだけ有効に機能したのか、それとも選手のコンディションの低下が問題なのか、あるいは敵と味方とのフォーメーションの相性が悪かったのかなど、プレーヤーが画面を見て勝敗を分けた理由を客観的に分析できるヒントがつかみにくいというのが筆者の率直な印象だ。たとえば、試合後に監督やコーチが「フォーメーションが有効に機能していなかった」、「スタミナ不足です」などというように、何かヒントとなるアドバイスが聞けるような配慮があってもよかったのかもしれない。

 「サカつく」シリーズに慣れている人であれば、初めはほとんど勝てないことに対する免疫がすでについているので特に問題はないだろうが、「サカつく」初心者がはたしてこのストレスに耐えられるかどうか? 数シーズンプレイし続ければ、選手の成長ととも多くの有能な新加入選手がどんどん集まるので自然と勝率がアップするが、そこまで我慢できるかどうかが本作におけるプレーヤーの評価を大きく分けるポイントになるのは間違いないだろう。

 ご参考までに、筆者がJ2からJ1に昇格できたのは5シーズン目から。レベルの高い選手をリーグ戦に優先して起用すればもっと早く上がれたかもしれないが、采配や選手起用などをいろいろ試してみた結果であることを考えれば、このぐらいの難易度調整は筆者としても十分に納得できるものであった。「サカつく」の初心者対策という面から考えると、マネジメント画面では秘書の女性キャラクタが各種メニューの使用方法を丁寧に解説してくれるのに比べて、試合に関する説明がやや不足気味であったことが惜しまれる。

開始当初からデフォルトで所属するコスト1の選手でも、頑張って育てればJ2レベルなら十分に戦力として計算が立つ。だが、1年目の負け続けている間のストレスに耐えられるかは評価が分かれるだろう

 1年目こそ困難の連続だが、2年目以降になった途端にゲームが劇的に面白くなる。たとえコスト1の選手であっても使い続ければどんどん強くなるので、個々の能力と同時にチームのレベルが上がっていることが実感できるのが1番の大きな理由である。また、2年目以降はたくさんのお金をくれるスポンサーが毎年登場し、さらにスタジアムに「売店」などの施設を建てていけば運転資金がどんどん増えていく。お金をためれば当然ながら有能なコーチやスカウトが招聘できるようになるので、選手を効率よく強化しながら試合の勝率をさらに高めることができるようになる。

 さらに2年目以降になると、各種メニューやコマンドなどを覚えるためのチュートリアルを兼ねた「サポートミッション」や、試合中に特定の条件を満たせばクリアとなる「クエスト」などのイベントが次々と発生するようになる(※前者は1年目からも登場する)。「サポートミッション」は、決まったタイミングで「スカウト施設を育てよう!」、「マッサージルームを建てよう!」「世界ランキングを上げよう!」などといった目標達成を目指すイベントで、期限は特に設定されていない。プレーヤーの技量を高めるためというよりは、ゲーム中に覚えておくと役立つメニューやアイテムなどの操作および利用法を覚えるためのチュートリアルにゲーム性を持たせた意味合いの強いイベントである。対照的に「クエスト」はゲーム中に突発的に発生して、「次の試合で2ゴール決める」「シュートを10本撃つ」などというように、プレーヤーおよび個々の選手の技量にチャレンジすることを目的としたイベントである。

 これらのイベントに成功すれば、もちろん成功報酬として賞金やアイテムなどが入手できる。ゲームを進めるにつれて、選手の育成以外にもイベントをどれだけクリアできるかという楽しみも加味されるのでますます面白くなるのだ。

2年目以降は「サポートミッション」、「クエスト」がどんどん発生し、面白さが加速度的に増していく。これらのイベントの完全制覇を目指すのもひとつの楽しみ方だ



■ やればやるほど遊べる要素が豊富になる良作、サッカーゲームファンなら遊んでおいて損はナシ

 くどいようで恐縮だが、本作は最低でも「サカつくモード」を2年以上プレイしなければ本当の面白さを体感することはできない。シリーズ初心者にとっては勝てるようになるまで厳しい試練が続くかもしれないが、そこは各自の持つ「サッカー愛」でぜひとも吹き飛ばしていただきたい。無事試練を乗り越えたならば、そこにはきっと極上の喜びが待っていることだろう。

 チームの勝敗や順位にこだわるもよし、自分の好きな実在の選手をコレクションしたり「クエスト」にチャレンジするのもまたよし。本編では触れなかったが、本作には4,000人もの選手が登場し、さらにはすでに引退した往年の名選手などが登場する「レジェンド」というカテゴリーが存在するので、これらの選手をコレクションするのもゲームを遊ぶうえで大きなモチベーションになることだろう。

 あるいは別モードの「インターナショナルモード」や「チャレンジモード」の完全クリアを目指してみるなど、遊びの要素はとにかく盛りだくさん。とりわけ、どのモードでも保有選手の中からレギュレーションに応じて最適なメンバー構成を考えたり、刻一刻と状況が変化する試合展開を読みつつ「チームスキル」の使うタイミングを瞬時に判断するところは実に面白い。また、いずれのモードの試合でも(スピードを倍速にすれば)約3分程度で終了するので、通勤・通学途中の空き時間を利用して気軽に遊べるのものいいところである。

 個々のプレーヤーのペースに合わせて長期間楽しめるところが、「サカつくDS ワールドチャレンジ2010」の1番の醍醐味である。噛めば噛むほど味が出るスルメのような本作を、ぜひとことんまで味わいつくしていただきたい。

(C) SEGA
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(2010年5月27日)

[Reported by 鴫原盛之 ]