PS3/Xbox360/Wiiゲームレビュー

サッカーの興奮、醍醐味を味わいつくせ!
選手育成も楽しみなサッカーゲームの決定版

「FIFA10 ワールドクラスサッカー」

  • ジャンル:サッカー
  • 開発元:Electronic Arts
  • 発売元:エレクトロニック・アーツ
  • 価格:PS3/Xbox360版 7,665円、Wii/PS2版 6,090円、PSP版 5,250円
  • プラットフォーム:PS3 / Xbox 360 / Wii / PS2 / PSP
  • 発売日:10月22日
  • プレイ人数:1~20人(PS3/Xbox360版)
  • レーティング:CERO:A (全年齢)

サッカーゲームの季節が今年もやってきた

 世界各国のサッカーリーグで新シーズンが開幕し、それに呼応する形でサッカーゲームの世界にも新たなサイクルが到来した。今回ご紹介する「FIFA10 ワールドクラスサッカー」は、世界最大手のゲームパブリッシャーElectronic Artsが送るサッカーゲームシリーズの最新作だ。

 EAの「FIFA」シリーズは毎年完成度を高めてきている。2007年にリリースされた「FIFA08」では総勢10人で対戦できるオンラインマッチ機能を搭載し、続く「FIFA09」ではゴールキーパー以外のフィールドプレーヤーを全て人間がプレイできる20人対戦機能を実現。さらにオンラインにクラブチームを作る機能など、多くの新要素が実現され、着実な進化を遂げてきた。

 最新作の「FIFA10」ではさらなる新機能の導入・完成度の向上が図られ、世界のサッカーゲームファンからの注目を集めている。10月2日に先行発売された欧州では、発売から1週間で170万本が販売され、初週の売り上げとしてはシリーズ最高を記録したという。内容への評価もすこぶる高く、ある欧州のゲームメディアに至っては「想像しうる限りで最高のサッカーゲーム」と手放しで褒めちぎっている。

 そして今回、その「FIFA10」が日本でも発売される。09/10シーズンのサッカーシーンをコンピューターゲーム上で堪能し、プレーヤーの分身となる仮想選手を育て上げ、オンラインクラブで世界中のチームと対戦する。そんな「FIFA10」の魅力を、本稿でお伝えしたい。



■ サッカーの醍醐味を味わいつくす。格段の進化を遂げたゲーム内容

スクリーンショットはXbox 360版のものをご紹介する
玉際の争いがより激しく、リアルに展開する

 「FIFA10 ワールドクラスサッカー」は、プレイステーション 3、Xbox 360、Wii、プレイステーション2、PSPの、全5機種にマルチプラットフォーム展開している。それぞれ機種の性能に応じて異なった内容になっているので、まず、ハイエンド機版であるPS3/Xbox 360向けのバージョンからご紹介していきたい。

 PS3/Xbox 360向けの「FIFA10」は、ハイエンド機種の能力をふんだんに活用した、まさに次世代のサッカーゲームと呼ぶにふさわしい内容だ。前作「FIFA09」のゲーム要素をベースに、さらなるアニメーション技術の強化、選手AIの改良、新たなアクションの導入などが行なわれており、これまでにないプレイ感覚を提供するものとなっている。

 欧州の有名リーグを中心に、世界20以上のリーグを実名で収録するというリアル志向の本作(Jリーグ、日本代表は未収録)。前作にも増して質感を増したグラフィックス、滑らかで矛盾のないアニメーション、レスポンスの良いゲームプレイ、ひとりから20人まで楽しめる多様なゲームモードの存在などなど、たくさんの見所がある。しかしやはり、サッカーゲームの中心は試合内容だ。

 その点を見ると、「FIFA10」の完成度は圧倒的だ。前作をプレイしたユーザーならば、1試合プレイしただけで、あらゆる面に改良が施されていることに気がつくだろう。

 まず、個人技に関係するところとしては、「360度ドリブル」、「スライドドリブル」といった新アクションが導入されたほか、様々なテクニックを繰り出す「スキルムーブ」の強化が図られた点がゲーム内容に大きな影響を与えている。さらに、ボールをめぐって選手達が体をぶつけ合うフィジカルプレイ要素が、まるで現実のサッカーで見られるような球際のせめぎあいを演出してくれる。

 特に「360度ドリブル」は、8方向のデジタル的な動きに制限されていた「FIFA09」以前のサッカーゲームと本作を決定的に分かつ要素だ。自由なボール運びが可能になったことで、相手ディフェンスの狭い隙間を見つけて突破するような、効率的なドリブルができる。1度この味を覚えたら、もう以前のゲームには戻れない、そんな破壊力がある。

「360度ドリブル」やフィジカルプレーの強化により、試合展開がよりメリハリのあるものとなった。手ごたえ抜群のサッカー体験を楽しめる


飛び出す選手の動きを見逃さず、ボールを繋いでいこう
クロスからの得点は、本作でより重要な存在になった

 チームプレイ面では、アタッカー、ディフェンダー双方の選手AIが大きく進化した。実際にプレイして、味方や相手チームの選手が取るオフザボールの動きに注目してみれば、その違いがすぐわかる。

 オフェンスにおいては、中盤は細かく動いてボールホルダーをサポートし、適宜オーバーラップを仕掛ける。前線の選手は相手チームの最終ラインを良く見て、オフサイドを警戒しながら裏のスペースをうかがう。時折見せる斜め方向への飛び出しは、相手のディフェンスを混乱させ、しばしば決定機のきっかけとなる。これだけの動きが、プレーヤーが特に何もしなくても、有機的に展開していくのだ。

 ディフェンス面では、カバーリングの動きに顕著な進化が見られる。サイドバックをボールホルダーのチェックに走らせれば、中盤のプレーヤーが開いたスペースを埋めに走る。前がかりになったセンターバックが抜かれてしまったら、また別のポジションにいる選手がそのカバーに入るといった按配で、とにかく相手選手の簡単な突破を許さない。

 ディフェンス面のAIに唯一弱点があるとすれば、全体的にボールホルダーへのチェック、カバーリングを少々重視しすぎており、最終ラインが乱れ易いところだ。今後の課題として、それさえ目をつぶれば、これまでのサッカーゲームにありがちだった「ゲームっぽい、おかしな状況」は非常に少なくなっている。例えば、各ポジションの選手が「持ち場」を意識するあまり、プレーヤーがどう頑張っても膨大なスペースを相手に与えてしまうといった状況は、本作では見られない。

オフザボールの動きは大きく進化した。ディフェンスは容易に縦への突破を許さないので、バイタルエリアでボールを回しつつ、他の選手の飛び出しを利用してチャンスを伺おう。L1ボタン(Xbox 360ではLB)で近くの選手を走らせる「トリガーラン」機能も活用したい



ゴールが見えたらしっかり狙ってシュートを打とう
強引な突破はなかなか許してもらえない

 というわけで本作では、これまでのシリーズ作に比べてずっと、ディフェンスが硬くなった。その上でプレーヤーは、「360度ドリブル」や「スライドドリブル」、強化された「スキルムーブ」を使い、個人技で突破するか、あるいは周りの選手を上手に使って、コンビネーションで相手を崩すか、実にサッカー的な判断を要求されるわけだ。

 前作以前では有効だった「選手のスピードに依存した強引な突破」は、本作ではほとんど通用しない。低難易度ならともかく高難易度設定なら特に、ガツガツと体を入れられてボールコントロールを奪われてしまうし、中盤でサイドを突破してもカバーリングが入るから、バイタルエリアへ突入するまでに2重3重の壁が立ちはだかる。だから本作では、いかにもゲーム風の縦に急ぐ展開は脆い。ゴールを生み出すためには、しっかりと緩急をつけた展開が重要だ。

 そこで活きるのが「360度ドリブル」を生かしたボールキープであり、ディフェンスとの1対1をじっくり進められる「スライドドリブル」だ。スライドドリブルは、L2+R2ボタン(Xbox 360版ではLT+RT)で発動する、体の向きを変えずに足元で左右にボールを動かす動き。対面したディフェンダーは簡単に足を出せないので、左右に揺さぶってチャンスを作るわけだ。本作では鋭いロングパスを放てるようになったので、隙を見つけて最終ラインから一気に前線へ展開してみるのも効果的であり、面白い。

 「FIFA10」では、そんな現実のサッカーでもよくある光景を、ゲーム内のピッチ上で効果的に展開することができる。ボール運びの緩急、ダイナミックな展開、ピリピリするような駆け引きがあるからこそ、サッカーは面白い。本作を手にするプレーヤーは、そういった醍醐味を存分に味わうことができるはずだ。


【新要素:プラクティスアリーナ】
自由に練習できる嬉しい新要素。敵味方の人数を設定可能な模擬戦や、好きな位置にボールを置いてのセットプレイ練習ができる。試合のプレッシャー抜きに、ドリブルやパス、フリーキックの精度を磨こう

【新要素:クリエイトセットプレイ】
プラクティスアリーナにて、セットプレイ時の作戦を作成できる。味方選手の初期配置、それぞれの選手がどのように動くかを自由にエディットすることができるので、走りこみとパスでゴールが狙えるパターンを探してみよう。ペナルティエリア付近の8つのゾーンについて、それぞれ4種類のパターンを設定し、試合中に呼び出すことが可能だ

【新要素:天候】
本作では雨、雪といった天候要素も組み込まれた。雨に濡れたピッチではボールが転がりにくく、パスが通ると思いきや、その手前で止まってしまうことも。凍ったピッチの上では逆にボールが長く転がってしまうので、ラインを割らないよう慎重にパスコースを選択しよう


■ ピッチに立ち、成長するのは「あなた自身」
 顔も自分そっくりにできる「バーチャルプロ」で世界デビュー!

「バーチャルプロ」。ゲームの中の自分自身という位置づけだ
作成した選手はソロプレイ、オンラインプレイの双方で使える

 試合内容がすこぶる面白くなったことで、試合外の要素がさらに価値を増すというものだ。「FIFA10」には前作同様に多数のゲームモードが搭載されており、監督として15シーズンを戦う「マネージャーモード」、1人の選手としてキャリアアップを目指す「Be A Proシーズン」などひとり用の遊びから、伝統的な1on1のオンラインマッチ、そして最大20人で対戦できるオンラインモード「オンラインチームプレイ」まで、サッカーの楽しみを様々な方法で味わうことができる。

 その中でも、本作で新たに追加された「バーチャルプロ」に注目しよう。「バーチャルプロ」は、プレーヤーの分身となる仮想選手を作り、オフライン・オンライン双方の試合を通じて成長させていくというシステムだ。これにともない、オンラインでクラブチームを作り、10対10の試合で戦績を記録していく「プロクラブチャンピオンシップ」は、実在の既存選手ではなく、「バーチャルプロ」選手でのみ参加する仕組みとなっている。

 「バーチャルプロ」の仮想選手は、プレイステーション 3、Xbox 360の双方で共通して、1つのオンラインアカウントにつき、1人の選手を作ることができる。まさにプレーヤーの分身というわけだ。仮想選手の名前、国籍、体格、ポジション適正といった特徴を自由にエディットすることが可能で、作成後でも変更可能なので、まずは気軽に自分の分身を作ってみよう。

 自らの分身である仮想選手の顔を文字通り自分そっくりにする仕組みもある。PCで「EA Sports GAME FACE」というサイトにアクセスし、必要なモジュールをダウンロード。そして自分の顔を正面、側面から取った写真をアップロードし、いくつかの特徴点を設定すると、数分の計算が行なわれ、自分そのままの3D顔が作られるのだ。後はこれをセーブし、ゲーム側でダウンロードすれば完成。自分そっくりの選手なら、気持ちも入りやすいというものだ。

EA Sports Game Faceで、自分そのままの3D顔データを作成、ゲーム側にダウンロードすれば自分自身の分身が完成だ。ゲームエンジンのクセのためか、少々目つきが悪くなったり、輪郭の印象が違ってくるなど、人によってはあまり似ない場合もあるかもしれない。筆者の場合は本物より精悍な顔つきになってしまった


選手の能力は調子によって変化することはない。緑色の部分がチャレンジクリアによって上乗せされた分だ
試合中に「チャレンジ」の条件を満たすと、対応する能力が向上するので、様々なプレイに挑戦してみよう

 仮想選手の基本能力に影響する要素は「身長」、「体重」という体格要素と、ポジション適正のふたつだ。体格要素は身体能力パラメーターに影響する。例えば背を高くしたり、体重を増やすとフィジカルやボディバランスが向上する代わりに、敏捷性やスピード、スタミナが低くなる。身長2メートル、体重110kgの巨漢を作ってフィジカルでゴリ押しても良いし、170cm / 60kg程度の小兵を作り、敏捷性で勝負するのもいい。

 ポジション適正はFW、MF、DFの3種類に分かれており、指定したポジションに適したスキルが高く設定され、そのほかのスキルが低く設定される仕組み。これら基本要素のエディットにより、初期状態では総合能力値70弱ほどの選手ができあがるようになっている。

 こうして作成した仮想選手は、「マネージャーモード」、「Be A Proシーズン」といったひとり用のゲームモード、あるいはオンラインの「プロクラブチャンピオンシップ」で試合経験を積むことで、グングン成長していく。その成長の仕組みが面白い。単に試合をするだけで成長するわけではなく、仮想選手がどんなプレーをしたかによって、対応する能力が伸びていくのだ。

 仮想選手の能力を向上させる条件は、「FOOTBALL WORLD チャレンジ」として、冊子のような形で管理されている。その中には「ボールスキル」、「ディフェンス」、「メンタル」、「パス」、「フィジカル」、「シュート」といった8カテゴリ、総計216の「チャレンジ」が用意されている。それぞれのチャレンジは、下記のような按配だ。

    ・スキルムーブを使って25人の選手を抜く:ドリブル+3
    ・2試合連続でタックルで3回ボールを奪う:タックル+2
    ・味方GKにヘディングでボールを戻す:戦術理解+2
    ・1試合に、クロスを挙げて2ゴールをアシスト:クロス+3
    ・5試合で3,500ヤード走る:スタミナ+2
    ・利き足ではない方の足でボレーシュートを決める:ボレー+3
200以上も用意された「チャレンジ」の例。簡単なものから非常に難しいものまで大量に用意されているが、半分くらいは普通に試合をしていれば自然に達成できることだろう。その先を目指すならば、意識的にプレイの幅を広げていく必要もある



「バーチャルプロ」選手としてオンラインプレイに参戦。経験のあるディフェンダーは重宝がられる
ポジション適正は選手作成後も変更できる。チームの要請に応じて変えよう

 チャレンジには、1試合プレイすれば簡単に達成できるものから、根気良く試合を重ねれば必ず達成できるもの、あるいは、とてつもない強運に恵まれなければとても達成できないものまで、本当に多種多様なものが用意されている。当然、プレイするポジションに応じて達成しやすいチャレンジは変わってくるので、ひとつのポジションを長くプレイすれば、それに関連した能力が伸びていきやすい。

 ちなみに筆者の場合、半分ほどのチャレンジを達成したあたりから伸び悩みの時期がやってきた。いつもと同じようなプレーでは、「数を稼ぐタイプのチャレンジ」以外は達成できなくなってくるのだ。そんなときに、非常な幸運に恵まれて、ゴール前2メートルほどの位置から、クロスに合わせて逆足でバックヒールでボレーシュートを決めた。その瞬間、取りたくても取れなかったチャレンジが、まとめて4つ、5つほど解除されて、思わず爆笑してしまった。現実のサッカーにもそんな奇跡の瞬間がやってくるものだが、まさにそんな感じだった。

 全てのチャレンジをクリアすれば最強の選手を作ることができるが、そのためには本当に長い時間がかかる。少なくとも300試合以上を、濃密にプレイする必要があるだろう。そうして育て上げた仮想選手を、「プロクラブチャンピオンシップ」のクラブチームに参加させれば、試合への気持ちは益々高まりそうだ。

 そうして集う、個性的な選手達による仮想クラブチームは、まるでリアルの草サッカーのようだ。「Game Face」でそろえたクラブチームなら、顔もリアルそのまま。それぞれ、自分の得意なポジションに関連する「チャレンジ」をクリアし、能力も個性的に成長しているはず。まるでMMORPGのようなゲーム空間が、サッカーゲームの上で実現してしまう。これは大いにハマってしまいそうだ。


自分の「バーチャルプロ」で参戦する「プロクラブチャンピオンシップ」の試合。クラブに所属していなくても、その場で集まってプレイするタイプのゲームモードもあるので大丈夫だ。人数が10人に満たない場合、空いたポジションはAI操作の架空選手が担当する。実在選手による10対10がプレイしたい場合は「オンラインチームプレイ」モードを利用しよう

まだ成長しきっていない「バーチャルプロ」で強豪と試合をするための救済措置として、ゲーム内からアクセスできるショップには期間限定で選手の能力をブーストする小額アイテムが用意されている。「対象能力を85まで上げる」というのが効果内容なので、育ちきった選手にはあまり効果がない。このほか、ゲーム内ストアでは「ライブシーズン2.0」の利用権や他国語の実況音声が購入できる。筆者はスペイン語の実況がお気に入り。ゴールするたびに「ゴルゴルゴルゴル、ゴルーーーーーー!」という実況が聞ける


■ 「FIFA」ならではの要素を生かしつつ、ビギナーでもサクサク遊べるWii版

コミカルな色調で表現されるWii版のグラフィックス
リモコンのみのプレイでは、パスボタンだけでもプレイできてしまう
ヌンチャク、あるいはクラシックコントローラを使えば選手の全てをコントロール可能
ブルッとリモコンを振ると、強烈シュートが決まる

 5機種に展開する「FIFA10」の中から、ここで特徴的なWii版をピックアップしてにご紹介しておこう。Wii向けに提供される「FIFA10 ワールドクラスサッカー」は、収録チーム・選手などの面でプレイステーション 3/Xbox 360と共通のものを利用しながら、よりプレイしやすい、親しみやすいゲームプレイを提供するものになっている。

 Wii版に登場する選手達は、「BattleField Heroes」のように柔らかなカートゥーン風グラフィックスで表現。試合内容はというと、これが意外ときちんと「FIFA10」らしく、ディフェンス時に選手がしっかりカバーリングに入る動きなど、PS3/Xbox 360版と比べても遜色のない演出が実装されている。

 ゲームモードとしては、ひとり用の「マネージャーモード」と、コントローラーを複数使ってプレイするパーティプレイ用のクイックマッチモードがメインだ。ワールドワイドのオンラインプレイにも対応しており、世界中の対戦相手と1on1マッチを楽しむこともできる。

 Wii版最大の特徴は、複数の操作方法が用意されていることだ。これにより「FIFA」シリーズのファンから、まったくの初心者まであらゆる層が楽しむことが可能となっている。具体的にはWiiリモコンだけでプレイするモードなら選手を動かす必要もない。放っておけばAIが自動的に判断して勝手にドリブルしたり、ディフェンスして試合を進めていく。プレーヤーはAボタンを押してパスを出したり、チャンスになったらWiiリモコンを振ってシュートするだけだ。動きはかなりコミカライズされていて、音速に近い弾丸シュートが空気を切り裂きながら「ズドン」と決まる。これなら非ゲーマーでも簡単に対戦を楽しめそうだ。

 Wiiリモコンにヌンチャクを接続すれば、自動的に「ヌンチャクプレイ」モードの操作設定になる。ヌンチャクのアナログスティックを使って選手を直接操作、Wiiリモコンのボタン類を使ってパス、スルーパス、ロブパス、あるいは選手の切り替えやセカンドプレスを指示できる。いきなり操作が複雑になるので、完璧にコントロールするのは結構大変だ。Wiiリモコンだけの簡単モードでプレイする相手と対戦したら、相当上手でないと負けてしまうかもしれない。

 そんな硬派なゲーマーには、クラシックコントローラを接続して利用する「クラシックプレイ」モードの操作がオススメ。このモードではハイエンド機版とほぼ同じ操作形態でゲームをコントロールできる。PS2やPSP版とも近い操作体系になる。これらのプラットフォーム版の経験者にお勧めのモードだ。

 というわけで、Wii版ではリモコンだけの簡単操作から、クラシックコントローラでの本格操作まで、好きなスタイルでゲームをプレイできる。それでいて、リモコンだけでも自動操縦される選手のAIが結構しっかりしているので、互いの対戦が成り立ってしまうのだ。ゲームに慣れていない人を交えてのパーティプレイでも、ゲーマー側が気兼ねすることなく盛り上がりそう。

 このほかWii版では、試合中に選手の能力が急激に向上する「モーメンタム」というシステムがある。モーメンタムのゲージが満タンになった状態では無茶な姿勢からも強烈シュートが打ててしまったり、ドリブル突破をガツガツ仕掛けられるようになるなど、コミカルで極端なエフェクトが付与される。

 そもそもWii版の試合時間は、2分ハーフという短いものなので、ゲーム展開は本当に速い。基本、シュートはPA内で打てば入るという状態だし、コーナーキックがどんどん得点につながる。セットプレーでは、選手がシュートモーションに入ったら適切なタイミングでリモコンを振るだけで、華麗なフリーキックが決まる。

 家族や友達、身近な人々にサッカーゲームの面白さを伝えたい、だけどハイエンド機版は複雑すぎて無理。という方は、是非Wii版を手にとって、皆でプレイしてみよう。Wii版ならではの要素が組み込まれた「マネージャーモード」もあるのでひとりでも遊ぶことができ、クラシックコントローラでプレイすれば歯ごたえのある試合ができる。そうそう無駄にならない投資になりそうだ。


「FIFA」シリーズとしての基本を備えつつ、様々な面が単純化されて遊びやすくなっている。とはいえオンライン対戦やマネージャーモードなど、ゲーマーがしっかりやり込める要素も備えているので、どのようなプレーヤーでも楽しくプレイできそうだ



■ ワールドカップイヤーを前に、「FIFA」が傑作であることの意義





キラ星のような選手達。彼らの活躍をゲームの中でも楽しみたい

 さて、最後に余談となるが、ここでちょっと現実世界に目を移してみよう。09/10シーズンに入り、世界のサッカー界は益々盛り上がりを見せている。

 歴史的な超大型補強を敢行し「新銀河系」と呼ばれるレアル・マドリー、史上最高とも評されるパスサッカーを展開してUEFAチャンピオンズリーグ連覇を狙うバルセロナ、トップ選手を多数獲得してビッグ4の一角を狙うマンチェスター・シティ、クリスチアーノ・ロナウドが去った今、真価を問われるマンチェスター・ユナイテッド。カカーを失い低調なACミランだが、ロナウジーニョは往時の輝きを取り戻せるだろうか。

 そして、それぞれのクラブチームで戦うスーパースター達は来年のワールドカップに備え、さらなる活躍を期待されている。ブラジル、スペインの2強が早々に本戦進出を決める間、マラドーナ率いるアルゼンチンはあわや予選敗退か、という波乱に見舞われた。その一方で我らが日本代表は、オシム時代のベースを引き継ぎつつ、本作の解説音声を担当している岡田監督のもと、若い血を入れて本戦に向けたチーム作りに取り組んでいる。

 来年には「2010 FIFAワールドカップ 南アフリカ大会」が開催され、サッカーゲームの世界も益々盛り上がることだろう。FIFAの公式ライセンスを持つElectronic Artsは、毎回のワールドカップにあわせてFIFAシリーズのワールドカップ版をリリースしているから、2010年「FIFA」シリーズが例年にない注目を集めることは明らかだ。

 前回の例を思い返すと、「2006 FIFAワールドカップ ドイツ大会」時にリリースされた「FIFA 06 ロード・トゥ・FIFAワールドカップ」および「2006 FIFA ワールドカップ ドイツ大会」は、当時の海外ゲームとしては例外的に良く売れたが、ゲームエンジンが新世代機に移行した直後の作品であり、中身はまだまだ荒削りだった。そのため国内にFIFAシリーズの定評を確立するには至らず、その後の「FIFA 07」は結局、PSP版を除き日本未発売という結果だった。

 そんな過去もあるが、今回の「FIFA10」はほとんど死角無しの良いゲームに仕上がった。おそらく今後リリースされるワールドカップバージョンは、当然のこと「FIFA10」をベースにするはずなので、その面白さは保証されたも同然だ。リアルもゲームも存分に楽しめるということはサッカーファンとして嬉しいことだし、ワールドカップを契機にサッカーゲームのファンそのものを増やすことにつながるかもしれない。

 そんなことを考えつつ、当面は欧州サッカーの展開を見守り、その醍醐味が味わえる「FIFA10」を楽しんでいきたい。


【スクリーンショット】

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(2009年 10月 20日)

[Reported by 佐藤カフジ ]