1対多人数のアクションゲームの金字塔として、不動のネームバリューを持つ「真・三國無双」シリーズ。その世界観を引き継ぎつつも、まったく新しいマルチプレイアクションとして再構築されたのが、今回紹介する「真・三國無双 MULTI RAID」だ。シリーズの血脈を受け継ぎつつも、よりスピーディーに、より立体的に展開するノンストップアクションは、まさしく新世代の「真・三國無双」タイトルといえる。
今回のレビューでは、従来のシリーズから変化を遂げた「システム」の紹介と、本作の売りである「マルチプレイ」の楽しさをメインに紹介していこう。「既存のシリーズは遊んだけど、本作はどんな内容なの?」と、購入に二の足を踏んでいる方はぜひとも参考にして頂きたい。
■ 黄天すでに死す! 諸国群雄、決起の刻!
ゲームの下敷きとなっているのは、中国の後漢時代。「黄巾の乱」から魏・呉・蜀の三国が鼎立するまでを描いた、いわゆる「三国時代」である。乱世を駆け抜けた一騎当千の英雄たちの活躍を、コーエー風味に味付けしたのが「真・三國無双」シリーズであり、本作のストーリー展開も従来のシリーズのものを踏襲している。
本作に登場するキャラクターたちは、これまでのシリーズで活躍したお馴染みの人気武将たち。乱世の奸雄、曹操をはじめとして、人徳の将・劉備、揚子江の下流に一大勢力を築いた孫子の末裔・孫権と、希代の英雄がズラリと勢揃いしている。
ゲーム開始時には魏・呉・蜀から勢力をひとつ選び、その中から使用する「無双武将」を選択。最初に決定した武将を使ってゲームを進めていくと、同勢力の異なる武将に変更できる「転生」が可能となる。ひとりの武将を徹底的にやり込んで育て上げるか、所属勢力の武将たちをまんべんなく育てるか……多様なプレイスタイルで楽しめるのも、本作の特徴だ。
孫堅、孫策、孫権の三代に渡って建国された「呉」。赤壁の戦い最大の功労者である周瑜や、孫権の妹の孫尚香や、その美しさで”江東の二喬”と呼ばれた小喬など、キレイどころが多いのも特徴 | 中国全土に広がった新興宗教「太平道」。その指導者である「張角」が引き起こしたのが、世にいう黄巾の乱である。今回も例によって、黄巾党鎮圧からストーリーは展開していく |
■ もはや人間を超えた!? 超絶アクションを体得した無双武将たち
ダッシュは地上だけでなく、空中でも行える。敵をロックオンして自動追尾するホーミングダッシュといったアクションも可能 |
本作が従来のシリーズと一線を画するポイント──それはズバリ、人間離れした武将が繰り広げるハイスピードアクションにある。登場する武将たちは常人を遙かに凌駕する身体能力を有しており、スーパージャンプによる大迫力の空中戦や、瞬間移動さながらの神速ダッシュなどが行える。もはや「真・三國無双」よりも、同社が手がけた人気シリーズである「ガンダム無双」に出演したほうがいいのでは……と思ってしまうほどに、登場武将たちは圧倒的な機動性を有しているのだ。
機動性の向上に伴い、地上・空中を問わずに立体的な攻防が展開されるため、地上戦がメインである従来のシリーズとは違うノリで楽しめるのは、本作ならではの特徴といえよう。さらに、各武将には「真・無双覚醒」というパワーアップが用意されている点にも注目したい。「真・無双覚醒」を行なうと、武将は超絶闘気を有した鬼神へと変貌。ビジュアルも一変し、怒濤のパワーで敵を圧殺できるのだ。
地上、空中を問わずに自由自在に駆けるスピード感と、「真・無双覚醒」による規格外の爽快感。この2本の柱が「真・三國無双 MULTI RAID」のゲーム性を支えるポイントとなっている。
■ シリーズならではの爽快さと、カスタマイズによる自由度の高さに注目!
最もスタンダードな武器である「剣」。扱いやすく、初心者にオススメの武器 |
ジャンプやダッシュを多用する立体的なアクションが軸となっているものの、「真・三國無双」シリーズのセールスポイントである、一騎当千の爽快感は本作でも健在。押し寄せる敵兵をちぎっては投げちぎっては投げる大立ち回りは、本作でもバッチリ再現されている。
武将たちが振るう武器には、剣、槍、戟、棍、弓、術の6つの系統に分かれ、全部で23の武器タイプが存在している。武将によって武器の得意不得意はあるものの、基本的にすべての武器を装備できる。装備した武器は個々にカスタマイズを行なうことが可能で、武将の特性に合わせた細かな調整を施せる。
武器のカスタマイズは最初に特性を選択し、まずは方向性を決定。攻撃属性の付加効果が高い「気」、戦玉と呼ばれるアイテムを多数装備できる「技」、攻撃力が高い「力」、以上の3タイプの中からひとつを選択できる。これをどう使うかはプレーヤー次第で、長所を伸ばすもよし、弱点を補うもよしだ。
例えば、動きが鈍重な武将には「技」タイプを選び、攻撃速度が上昇する戦玉「軽快玉」をはめ込めむことで弱点をカバーできる。攻撃範囲を広げる「真空玉」をはめ込めば、1度の攻撃で多くの敵を巻き込める。……といった具合に、武将の性能や自分のプレイスタイルに合わせてオリジナルの武器を作成できるのだ。
また、カスタマイズと同様に、武将のアクション性能を変化させる「武幻」と呼ばれるアイテムも重要な存在。武幻は右手、左手、右足、左足の4ヵ所に装備可能で、ジャンプ力を大幅に向上させたり無双乱舞を強化したりと、さまざまな恩恵を与えてくれる非常に便利なシロモノ。武幻の有無によって、まったく別のゲームと言ってもいいほどに難易度が変わるため、最初のうちはカスタマイズよりも武幻の入手を優先して行なうといいだろう。ジャンプ回数が増える「連続跳躍」シリーズと、ダッシュ回数が増える「連続突撃」シリーズは特に使い勝手がいいので、早めに入手しておきたい。
■ 乱世に覇を唱えるべく、数々のクエストを踏破せよ!
物語は全6章から成り立っており、それぞれの章は複数の「クエスト」で構成されている。ストーリーを大きく進める「合戦クエスト」と、サブクエストともいえる「依頼クエスト」、このふたつを交互に進めて、乱世の物語を追体験していくことになる。
合戦クエストと依頼クエストのいずれも、クリアの目的は多岐に渡る。特定の武将を倒す「討伐」や拠点を敵から護る「拠点防衛」、その逆である「拠点奪取」、フィールドに散らばる宝物を集める「回収」などなど、目的はさまざま。各クエストには、一定の特殊条件を満たすとボーナスが収得できる「特殊目標」が設定されているので、常に緊張感を持ってプレイすることができるのもうれしい点だ。
クエストクリア後は、報酬や武器の合成に使用する素材が手に入り、武将を成長させる経験値も加算される。クエストの成功、失敗に関わらずに経験値は入手できるため、壁にぶつかったら何度もリトライして経験値を稼ぎ、武将のレベルを上げてリベンジするといいだろう。
■ これぞ醍醐味! マルチプレイで連携せよ!
マルチプレイでは協力することでコンボ数を格段に増やすことができる。互いの死角をカバーしながら戦うのが得策 |
本作のすべてのクエストは、PSPのアドホック通信を利用して、最大4人までのマルチプレイが可能となっている。苦手なクエストを協力してクリアしたり、クエストごとに設定された特殊目標を満たすために共闘したりと、遊びの幅が大きく広がるのはマルチプレイならではの醍醐味だ。
特に、広いフィールドの中から指定された宝物を探索するクエストや、複数のエリアにいる敵武将を倒すクエストなどは、マルチプレイの方が圧倒的に有利に進められる。単純に戦力が人数分倍加されるうえに、相方と同時に「無双乱舞」を出すことで発動できる「激・無双乱舞」は絶大な威力を誇る。ゲームテンポが早いせいもあり、敵味方が入り乱れてのマルチプレイは、シングルプレイとは別次元の楽しさがあり、ハイテンションで盛り上がれること請け合いだ。
また、マルチプレイ時に「対戦」を選択すると、2チームに分かれて遊ぶ「チームバトル」や、拠点を奪い合う「争奪戦」などで対人戦を楽しめる。こちらの方も、純粋な「対戦アクション」として熱くなれるナイスな仕様となっているので、クエストと平行して遊んでみてほしい。
手分けして敵を討伐すれば、クリアするための時間を短縮できることも。分散と集中、このふたつをうまく使いわける必要がある | マルチプレイに参加しているプレーヤーが「無双乱舞」を同時に出すことで、フィールド全体を攻撃する「激・無双乱舞」を放てるのだ | プレーヤー同士で戦う白熱の対戦プレイ。クエストとはまた違ったキャラカスタマイズが必要となってくる |
■ 「マルチアクション」が提示する、シリーズの新たな息吹を感じよう
1クエストのプレイ時間は短いもので10分、長いもので30分程度。テンポよくゲームを進められるため、まとまった時間が取りにくいプレーヤーにもオススメできる。通勤・通学途中の電車の中や、ちょっとした暇を見つけてクエストをこなせるので、気軽にゲームを立ち上げられるのはかなり好感触。武器を作成するための「素材集め」や、都市の「施設拡充」などのやり込み要素もあるので、じっくり腰を据えて楽しめるのも本作の魅力だ。
だが、クエストの中には「地形の把握」が難しく、初プレイ時は敵に近づくことすらままならないことも……。これはトライアンドエラーで克服できるものの、慣れないうちはそれがストレスに感じる場合があるかもしれない。ほかに気になった点としては、敵に囲まれた際に連続攻撃を受けると、その状況を脱出できずに倒されてしまうことがあった。後者に関しては「ガード」をうまく使ったり、ステージに合わせた「武幻」のチョイスで打開できるので、根気強くチャレンジしてみてほしい。
「戦玉」や「武幻」の組み合わせによる、バリエーション豊かなキャラクターカスタマイズや、ダウンロードコンテンツの取得による新クエストの追加など、プレーヤーの要求に幅広く応えてくれる「間口の広さ」も特徴。どちらかというと「緻密に戦略を練って遊ぶ」よりも、マルチプレイで盛り上がって「勢いで押し切る遊び方」の方が楽しくプレイできるという印象だ。
従来の「真・三國無双」シリーズの延長線にあるのではなく、その遺伝子を受け継ぎつつ、マルチアクションという新分野を開拓した本作。まだ未プレイの方は、友人知人を誘って、マルチプレイにて「桃園の誓い」を実践してみてはいかがだろうか?
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□「真・三國無双 MULTI RAID」のページ
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(2009年 4月 13日)