「キングダム ハーツIII」レビュー

キングダムハーツIII

13の闇と7つの光、圧倒的な表現力で魅せる「ダークシーカー編」クライマックス

ジャンル:
  • RPG
発売元:
  • スクウェア・エニックス
開発元:
  • スクウェア・エニックス
プラットフォーム:
  • PS4
  • Xbox One
価格:
8,800円(税別)
発売日:
2019年1月25日

 “夢を実現したゲームといえば?”と聞かれると、思い浮かぶのが「キングダム ハーツ」だ。

 2002年に誕生した「キングダム ハーツ」は、ディズニー作品の世界やキャラクターがスクウェア作品のキャラクターと共に登場する夢の作品として登場した。そして、それ以降、2005年に発売された「キングダム ハーツII」をはじめシリーズ8作品が登場。壮大な物語を描き続け、世界中のディズニーファンやゲームファンを魅了してきた。

 そして今、長く描かれてきた「ダークシーカー編」の完結編となる「キングダム ハーツIII」が、いよいよ発売された。ナンバリング作品としては、初代「キングダム ハーツ」より17年、「キングダム ハーツII」より13年ぶりとなる。

 ついに描かれる繋がる心の物語の行き先。その長き旅の終わり。

 本稿では、その「キングダム ハーツIII」のレビューをお届けしていこう。なお、約30分のプレイ動画も掲載しているので、そちらもお楽しみ頂ければ幸いだ。

【ストーリー】

ある日“キーブレード”という鍵型の剣を手にした少年ソラは、
離ればなれになってしまった親友のリクとカイリを取り戻すため、
王様(ミッキー)の命を受けたドナルドとグーフィーと共に旅に出た。
世界を救う為には光と闇の両方の世界から鍵をかける必要があり、
親友のリクは闇の世界に残る選択をした。

世界で暗躍する“XIII機関”という組織は、
世界の心、人の心の集合体ともいわれている“キングダムハーツ”の完成のために必要な
“キーブレード”を持つソラの前に何度となく立ちはだかり、様々な戦いを引き起こしてきた。

これまでの“キングダムハーツ”をめぐる戦いが、
キーブレード戦争を引き起こそうと目論む
マスター・ゼアノートの意のままに進んでいたことを知ったソラ達は、
闇に対抗する、7人の光の守護者を揃えようとしていた。

王様とリクは歴戦のキーブレード使いの居場所を探し始め、
ソラ、ドナルド、グーフィーの3人は「目覚めの力」を取り戻すため、
再び様々なディズニーのワールドを駆け巡って行くのだった。

美しいグラフィックスで、ディズニーのワールドの魅力も過去最高のものに

 「キングダム ハーツ」は、主人公の少年ソラを中心にしたひとつの物語を描いてきた作品だ。ナンバリング作品をはじめとしたシリーズの全8作品では主に、“ソラの物語”、“ロクサスの物語”、“テラ、ヴェントゥス、アクアの物語”など、様々な時代、異なる視点の物語が描かれてきた。

 それらエピソードの全てに関わり、キーブレード戦争を再現しようと企むマスター・ゼアノートとの戦いの物語全体を通して、光と闇の戦いである「ダークシーカー編」と呼ばれるものとなっている。

ソラ、ロクサス、ヴェントゥス、それぞれの仲間たちと共に物語を経て、失われたものも多い。「キングダム ハーツIII」は、それら「ダークシーカー編」の全ての完結を迎える作品だ

 「キングダム ハーツIII」はこれまでの多くの物語を経た後から始まっていく。ソラ、ドナルド、グーフィーは失ってしまった「目覚めの力」を取り戻すために、王様とリクは闇に消えたアクアを探しに、リアとカイリはキーブレード使いになるためマーリンの元へと旅立つ。

失ってしまった「目覚めの力」を取り戻すため、再び旅立つソラ、ドナルド、グーフィー!

 “「キングダム ハーツIII」本編中のストーリーは過去作品を知らずとも楽しめるか?”が気になるという人も多いと思うので、まずはそこに触れておくが、なにしろ多数の作品で描かれてきた物語を踏まえた先の物語だけに、知っておくべき背景は膨大。正直なところ予備知識を何もなしにでは難しい。

 今作の物語は、過去の出来事についてある程度の補完はしてくれているものの、基本的にシリーズ作の出来事を知っていることを前提にしたやり取りとなっている。知らずとも後から理解していくという楽しみ方もできるとは思うが、やはり、ある程度の物語や出来事を把握しておくのが望ましい。

 そこで役立つのが、公式サイトで公開されている“KINGDOM HEARTS 「IIIに繋がる物語たち」”だ。

 これは、シリーズ作品の物語を5つの動画にまとめたもの。細部まではさすがに厳しいが、物語のおおまかなところを把握したり、思い出すのに非常に役立つ。シリーズ作に詳しくない人でも、これを見てから始めるのと、なにも見ないでプレイしていくのとではかなり違ってくると思うので、プレイ前に予習として見ておくのがオススメだ。

 なお、「IIIに繋がる物語たち」はゲーム中のタイトル画面からも閲覧できるように収録されているので、そちらから見ることもできる。

公式サイトおよびゲーム内のメモリーアーカイブから観られる「IIIに繋がる物語たち」

 「キングダム ハーツ」シリーズの基本的な構成は、ディズニー作品のワールドを巡っていき、ソラ達と各作品のキャラクターたちとの出会いがあり、そこで起きるストーリーを楽しみ、そして次のワールドへと進んでいくというもの。それは今作「キングダム ハーツIII」でも同様だ。

 今作では公式に公開されているワールドだけでも、「塔の上のラプンツェル」、「ベイマックス」、「トイ・ストーリー」、「モンスターズ・インク」、「アナと雪の女王」、「パイレーツ・オブ・カリビアン」といった新規のディズニー作品のワールドが多数存在している。

 それら今作の新規ワールドになっている作品には、皆様もご存じのようにフルCGアニメーション作品や実写のものもあり、ディズニー作品としてもいわば新世代のものが揃っている。

 「キングダム ハーツIII」はPS4/Xbox Oneのハードウェアスペックを活かして、それら原作のテイストを十分に表現できているのが大きな魅力だ。

 いずれのワールドも原作さながらの映像技術で作られていて、ソラたちがそこに自然と溶け込んでいる。それぞれの作品特有の動きや華やかなエフェクトなどもそのままに、もしくは原作を越える勢いで再現されていて、ゲームに落とし込むにあたってのチープさのようなものは全く感じさせない。原作に連なる新しい映像作品を楽しんでいるかのようなクオリティだ。

新規ワールドのひとつ、「トイ・ストーリー」より「トイボックス」
「塔の上のラプンツェル」より「キングダム・オブ・コロナ」
「ヘラクレス」より「オリンポス」

 各ワールドでのストーリーも、そうした豊かな映像表現が魅力を高めているのがポイント。

 それぞれのワールドの主人公たちとソラたちの出会いがあり、彼らが抱える問題や直面する事件があり、プレーヤーがそれを助けて乗り越えていく。そのストーリーのひとつひとつにも、原作の魅力を凝縮したような感動があるのも「キングダム ハーツ」シリーズの魅力だが、「キングダム ハーツIII」での各ワールドのストーリーも非常に魅力的なものになっていた。

 ストーリー中にキャラクターたちが見せる表情であったり動きであったり、特に表情をはじめとしたキャラクターの感情を表現する描写のクオリティが高い。そうしたハイクオリティな映像で楽しめるストーリーは、プレーヤーに感動を伝えられるしっかりとした強さのあるものとなっていた。

 実際にプレイすると、待ちに待ったぶん、最新世代のディズニー作品を最新世代のグラフィックスで楽しめることの良さを実感できるはずだ。

顔の表情もコミカルに、豊かに表現されて、原作さながらに活き活きとディズニーキャラクターが動く。それによって伝わってくる感情も豊かになっていて、物語により引き込む力を与えている

多彩なバトルギミックの数々に、マップ内にも隠された要素が盛りだくさん

 「キングダム ハーツIII」の、バトルをはじめとした操作やプレイ部分について触れていこう。

 各ワールドのフィールドを探索しつつ、途中に出現するハートレスやノーバディと戦いつつも目的地を目指して進んでいき、その先で物語が進んで行くという基本的な流れは、「キングダム ハーツIII」もシリーズ同様だ。

 だが、「キングダム ハーツIII」では、マップが広く高低差のあるマップも多い。規模やクオリティがこれまでのシリーズから大きくジャンプアップしている。隠れた道にアイテムなどが隠されていたり、リアルタイムに変化したり動いたりする仕掛けも豊富にあり、探索の楽しみも多く用意されている。

 同行する各ワールドのキャラクターの動きや、ところどころで見せる会話やリアクションも豊かで、いわゆるマップを移動していくという場面であっても、たくさんの魅力的な演出が入って、楽しめるようになっている。

 シームレスな演出の数々で飽きさせない工夫がされているところも、最新ハードでの作り込みによって、これまでのシリーズ作以上に魅力が高まったことを実感できるところだ。

 加えて、マップを丸ごと読み込んでいるため、プレイのリズムを崩すようなタイミングの読み込みがなく快適なところもポイント。さすがにまったく読み込みがないわけではなくて、カットシーンに入ったり、ワールド内でも異なるマップへと移り変わるときなどには読み込みが出るが、それでも、読み込みの回数自体は少なめで、プレイのテンポが良い。

広く高低差もあって立体的なマップが多い。そこかしこに仕掛けがあったり、隠されたアイテムがあったりで探索も重要になる

 今作では「バトル」にも非常に多くの新しい要素が入っていて、見た目にも派手で多彩な戦い方ができるところがポイントだ。

 各ワールドで手に入る「キーブレード」にはそれぞれに特徴があり、キーブレードを変形させて攻撃ができたり、ド派手なフィニッシュ技を繰り出せたり。3つのキーブレードを装備していつでも持ち変えることもできるので、自分のプレイスタイルに合わせて、敵に合わせて、または気分に合わせて、好きなものを使っていける。

 魔法も、ただ単純に魔法を使うだけでなく、キーブレードの種類や状態によってその性能や攻撃範囲や動きが変化するようになっているところが特徴的。キーブレードを色々と試して使うなかに、魔法の変化もあるというわけだ。また、例えばブリザドで足場を凍らせてレールスライド移動したりと、バトル以外にも使い方があったりもする。

 それらキーブレードや魔法の特徴は、いろいろと試してみると新たな発見があったりして、作り込みに驚けるのが嬉しいところだ。効率良くシンプルに戦うのでももちろんいいが、プレイに慣れてきたらよりスタイリッシュな自分なりの戦い方を探してみるのをオススメしたい。

 仲間との「連携技」も見所だ。ドナルド、グーフィーとの技ももちろんだが、各ワールドのキャラクターとの連携技は、それぞれのキャラクターの特徴を活かした、見た目も楽しいものになっている。

 また、ワールド以外のキャラクターも、「リンク」という魔法で呼び出して特殊な攻撃をしてくれる。

 さらに派手なのが、テーマパークにあるアトラクションをモチーフにした乗り物に乗って戦う「アトラクションフロー」だ。戦っている場所に合わせて様々な種類のアトラクションが出現する。

 基本攻撃や魔法以外にも、こうしたいろいろな特殊アクションがあるが、いずれもL2(LT)ボタンでセレクトして、△(Y)ボタンで発動するだけと非常にお手軽。複雑さのないわかりやすい操作にまとまっている。

 実際のアクションの操作感、いわゆる手触りの方はというと、これは意外なほどにシリーズ作の感触を踏襲している。空中を飛び回るようなエアリアルな動きを中心に、全体にふわっとした軽めの動きで、あまり重量感を感じさせない独特なものになっている。

 サクサクと気持ちよく連続攻撃を決めていたものの、不意に敵の攻撃を喰らったら、その硬直中にさらに連続で攻撃をもらってしまって大ダメージを受けるときがあったりと、どこか気の抜けないエッジの効いたバランス感をしている。

 特にボス戦ではそれが顕著で、ボスの動きにしっかりと対応したり、攻撃しつつも回避や回復を意識しておくのが必要だったりする。そのあたりもまた、シリーズ作同様のものを感じた。

 マップを探索していると、細かな発見や作り込みを楽しめるのも、今作の魅力。ソラは「モバイルポータル」というスマートフォンのような端末機を持っていて、それのカメラで写真を撮ったりできる。

 そのカメラで、マップ中のいろんな場所に隠されている、王様そっくりの「幸運のマーク」を撮影したり。

 現実の自撮りさながらにソラと一緒に撮影することも可能で、カメラを向けられたキャラクターたちは、例えば「トイ・ストーリー」のウッディなら「写真を撮るのかい?」と聞いたあとポーズを取ってくれたりと、しっかりと反応してくれる。

 こういう細かなリアクションなども作り込まれていて、じっくりと時間をかけて楽しむ人であればあるほどに、楽しめるところがある。

「モバイルポータル」でいろいろな場所に隠れている幸運のマークを撮影! 自撮り風の写真も撮れるし、写真を撮ろうとするとそれぞれに反応もしてくれる

 また、モバイルポータルでは、「クラシックキングダム」という1980年代あたりによくあったLSIゲームも楽しめるのだが、そのゲームはマップ中の隠れた宝箱の中にあったりする。そうした隠されたものを探してコンプリートを目指すのも、やりこみ方面の楽しみ方のひとつだ。

LSIゲーム風のミニゲーム「クラシックキングダム」。マップ内の隠された宝箱に入っていたりするコレクション要素のひとつとなっている
集めた食材を使って、レミーと一緒にクッキング!

時間を忘れて夢中になれるクオリティの高い“楽しさ”に満ちた「キングダム ハーツIII」

 ファンにとって待ちに待った「キングダム ハーツIII」は、最新作の登場を待ったぶんだけ、その時間のぶんだけ、魅力を増しているのを実感できる作品に仕上がっている。

 “ディズニーの世界をゲームとして表現する”という魅力は、最新世代のハードと作り込まれたグラフィックスによって、圧倒的な表現力となって、原作さながらかそれに並ぶほどの良さを手に入れている。その表現力で楽しめるストーリーには、プレーヤーの心を揺さぶる強さがある。

 特筆すべきは、本作がとにかく“遊びやすく”、いつまでも“遊び続けてしまう”ぐらいの引力のある作品に仕上がっていることだ。作品の性質上、映像を見るカットシーンも多いのだが、ゲームプレイのシーンとカットシーンが交互にくるバランスが良く、どちらも長すぎたりすることもなくて、リズムが良い。

 サクサクと進む展開のひとつひとつにクオリティの高い“楽しさ”が宿っている。楽しく過ごしていると時間が経つのを忘れてしまうが、「キングダム ハーツIII」をプレイしている時間はまさにそれそのもの。加えて、楽しい時間は疲れ知らずなものだが、それも同じ。

 今作で完結を迎える「ダークシーカー編」、ソラの物語に待つものについてはこのレビューでは多くを語らないが、暗示めいた言葉の多くとシリーズの膨大な積み重ねからの断片を、プレイ序盤には困惑のままに辿っていくことになるが、それが頭の中でだんだんと繋がっていく。それがプレイのモチベーションをより高める引力になっている。

 “繋がる心の物語”の終焉には何があるのか。そして、1月26日の0時頃に配信されるという本編エンディング後に楽しめる「エピローグ映像」、さらに、1月31日の19時頃に配信される「シークレット映像」でプレーヤーは一体何を見ることになるのか。

 このレビューの先にもあるそうした楽しみも含めて、物語を追い続けたファンの心を掴んで離さない、強い魅力を持った完結作だ。

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