Nintendo Switch版「DOOM」レビュー

DOOM(R)

これこそがFPS、これこそが戦いだ!
開発者の魂の叫びを実感できる激しい戦いを体感せよ

ジャンル:
  • FPS
発売元:
  • ベセスダ・ソフトワークス
開発元:
  • id Software
プラットフォーム:
  • Nintendo Switch
価格:
6,980円(税別)
発売日:
2018年3月1日

 「DOOM」はFPSの元祖ともいうべきタイトルの名を受け継ぐファーストパーソンシューターだ。Nintendo Switch版「DOOM」は2016年にPS4/Xbox One/Windows版で発売された作品と内容は同じでありながら、ハードの特性を活かした要素をプラスした作品である。

 筆者は実は、「DOOM」の名前がつくゲームをプレイするのは初めてだ。しかし本作で開発者がどのようなプレイ体験をユーザーに与えようとしているか、開発者の考える「DOOMらしさ」とはどのようなものなのか? などの開発者の想いは本作を通じて強く伝わってきたと思う。今回のレビューではこういった要素をピックアップしていきたい。

 Nintendo Switch版「DOOM」はもちろん筆者のように「DOOM」に触れるのが初めてという人にも楽しめる、そしてユニークな体験ができるゲームだ。このエグイ世界観は好き嫌いで分かれるだろうが、自分がものすごく強くなり、デーモン達を片っ端から“粉砕”できる、とてもマッチョな気分に浸れるゲームである。興味があればぜひ触って欲しい。

【DOOM Launch Trailer - Nintendo Switch】

地獄と繋がった火星。怒りを秘めた戦士の血みどろの戦いが始まる

 「DOOM」では“アージャント”という存在が重要な鍵を握っている。「アージャントの裂け目」と呼ばれる次元の裂け目を人類が火星で見つけたことで、火星のテラフォーミング、地球上のエネルギー問題への取り組みは一気に進んだ。別世界からもたらされるエネルギー、それは様々な問題を解決する夢の技術に思えた。

 しかしその「アージャントの裂け目」は“地獄へと繋がる門”だったのである。オリビア・ピアスという科学者はその門を解放、この世界に現われたデーモン達は火星の施設にいる人々を次々と虐殺、謎の儀式の生け贄に捧げ、地獄へと繋がる「ゴアネスト」と呼ばれる門をあちこちに作り始めた。

 プレーヤーは台の上で鎖に繋がれていた謎の男だ。彼は遺物として発見された古代の戦闘服「プラエトリスーツ」を身にまとい、事態の収拾を図ろうとする責任者サミュエル・ハイデンの助言を受けながらも、彼の思惑を超えたデーモンへの怒りと共に、地獄との繋がりを断ち切るためにデーモンの返り血で血みどろになりながら戦いを繰り広げていく。

 「DOOM」においては細かいストーリーは語られない。本作はそのエキサイティングなゲーム性を前面に出しており、ストーリーはあくまでゲームの中心ではなく、次々と提示されるマップの中でのデーモンとの戦いをメインとしている。しかし背景やキャラクターは綿密に設定されており、収集物である「コーデックス」で一部は見ることができるが、かなりの裏設定がありそうである。主人公は何も語らないが、その怒りと破壊衝動は凄まじく、ファンの間では様々な考察も行なわれている。

台に縛り付けられたところから目覚める男。彼は発掘されたアーマーを身にまとい戦う

 「DOOM」はその戦いこそが大きなテーマだ。火星の施設はデーモン達に占拠されており、主人公は様々な火器とその腕力でデーモンを粉砕していく。その激しい戦いは本作ならではのシステムにある。

 本作ではプレーヤーの体力回復は、デーモンに接近戦攻撃で“とどめ”をさすことで現われる回復アイテムで行なうのだ。一定のダメージを受けたデーモンは体が光りよろめいた状態になる。この時に接近してとどめを刺すと青い回復アイテムを落とすのである。

 また、チェーンソーを使って倒すことでデーモンは弾丸をばらまいて倒れる。このチェーンソーは燃料が限られるためここぞというときにしか使えない必殺武器だが、やっかいな敵も一撃で倒せるためとても強力だ。どこでどの敵に使うかを考えると、戦いをかなり有利に進められる。

 「DOOM」はエキサイティングな戦いがたっぷり楽しめるゲームである。ステージは細かくチェックポイントが設定されており、ある場所にプレーヤーが踏み入れるとデーモンが現われる。デーモンは波状攻撃を行なってくるし、どこへ逃げてもテレポートしてくる。どこでデーモンを待ち構えるか、どの敵にどの武器を使うか、プレーヤーは瞬時に判断し立ち向かっていく。

デーモン達は人間の死体を積み重ね、地獄へと繋がる「ゴアネスト」と呼ばれる門を作っている
テラフォーミングされた火星の大地。ここが戦いの舞台だ

 本作の難易度は高い。アーマーは瞬時に削られてしまうし、敵からのダメージは大きい。そしてダメージを回復させるのは敵を接近戦で倒すしかない。弾の所持数は少なく、敵は素早く動き回るため弾が足りなくなることもしょっちゅうだ。どこでどう敵を待ち構え、どう倒していくか? 何度も倒されチェックポイントからやり直して戦う事となる。

 「DOOM」はそのBGMがいい。特に戦いの時のアップテンポな曲は目の前のピンチの状況と相まって、心拍数が上がるような興奮が味わえる。体力低下で真っ赤な画面の中、逃げ回りながらも敵にダメージを与え、よろめいた敵から回復アイテムを得て復活する爽快感、後一体で敵が全滅なのに倒されてしまった悔しい気持ち……様々な感情が速いテンポで交差する。

 敵は倒されると血をまき散らしながら四散する。特に接近攻撃でのフィニッシュはデーモンの頭をたたきつぶし、腕を引っこ抜き、胴体を引きちぎるなどバイオレンス溢れるものだ。ゲーム内のテンションに乗せられて興奮する気持ちがドンドン盛り上がっていく。「FPSとは、戦いとはこういうものだろう?」という開発者の強い叫びがしっかりと伝わってくるゲームなのである。

近接攻撃で敵を粉砕。回復アイテムが得られる
地獄へと世界を繋げてしまったオリビア・ピアス。彼女の目的とは?
戦いは激しく、そして血まみれだ

多彩なパワーアップ、充実した探索要素

 この「DOOM」の高いテンションを支えるのが様々なシステムだ。Nintendo Switch版「DOOM」ならではの要素としては「加速度センサーへの対応」がある。エイムの時、コントローラ全体を動かすことで照準を補正できるのだ。「スプラトゥーン」などで慣れているプレーヤーにはこの補正はかなり役立つだろう。ちなみに、加速度センサーへの対応はデフォルトではOFFになっているので、使う場合はオプションでチェックを入れる必要がある。

 この加速度センサーによる照準は本体を手に持つ「携帯モード」だとより効果的だ。筆者はちょっと不慣れなためうまく使いこなせなかったが、練習することでうまく使えこなせそうだ。「DOOM」の敵は素早く動く。この時に補正ができればかなりうまく戦えるようになるだろう。もう少し練習を積みたいところだ。

武器には様々なパワーアップMODが用意されている。アサルトライフルは狙撃用のスコープをつけるか、ミサイルを発射する機能がつけられる

 「DOOM」では様々な武器のパワーアップがある。本作はスタートの武器であるピストル、からショットガン、アサルトライフル、プラズマライフルなど様々な武器を使いこなす。これらの武器を駆使して様々なデーモンと戦うのが本作の面白さだが、パワーアップ要素も細かく設定されている。

 アサルトライフルでは爆発するマイクロミサイルか、狙撃可能のスコープのどちらかを選択する。スコープにするとデーモンの弱点である頭を狙いやすい。接近戦主体の敵の場合、距離を取って狙いやすい反面、回復アイテムの回収はしにくくなる。どういった武器をどう組み合わせて戦うか、考えて選択していくと良いだろう。また、次のプレイではパワーアップを変えてみるという遊び方も可能だ。

マップにはアイテムやチャレンジポイントも表示できる。探索するほどキャラクターを強化できる
倒れた味方のアーマーからチップを抜くことで、アーマーを強化できる
収集アイテムの人形

 激しい戦いをたっぷり楽しめる「DOOM」だが、それだけではなく探索要素も充実している。マップにはコレクタブル要素である人形や、パワーアップポイントを得られるガジェットがある。敵と戦う前にこれらを集めることで戦力を充実させるのも大事な要素だ。マップはまだ行ってないところが表示されるので、未探索の地域でアイテムを集めるのも良いだろう。

 また「ルーントライアル」という要素があり、これをクリアするとキャラクターを強化するルーンを入手できる。厳しいクリア条件を達成するためには工夫が必要で、戦略性と正確なキャラクター操作が求められる。他にも「チャレンジ」や昔の「DOOM」風のステージをプレイできるミニゲームなど多彩な要素が盛り込まれている。探索も楽しいゲームなのだ。

キャラクターを強化するルーンを入手できる「ルーントライアル」
ポッドを見つける事で武器にMODをつけられる

独特の雰囲気の中、強い人の観戦も楽しいマルチプレイ

 そして「マルチプレイヤー」である。「チームデスマッチ」や「フリーフォーオール」で多彩なルールで戦う事ができる。「DOOM」は高低差の激しいマップ、おどろおどろしい雰囲気、特殊な武器と、独特の雰囲気がそのままマルチプレイでも活かされている。マップを動き回り、激しく撃ち合うのが楽しい。

 バランス的には武器のダメージは少なめで体力が多いので見つかった瞬間倒されるということは少ない。それでも実力差ははっきり出るので、初心者は大人数のチームデスマッチで戦うのが良いだろう。本作には最初からいくつかの武器セットがあり、ロケットランチャーとプラズマライフルのセットはオススメだ。自爆しないように気をつけて乱射しまくれば援護攻撃になる。

マルチプレイは様々な対戦ルールが用意されている
プラズマライフルは速射性が高く、弾がばらまける

 今回数時間プレイした中で特に楽しかったのがフリーフォーオールの「ブラッドラッシュ」というルール。全てのキャラクターが敵というバトルロイヤル形式の戦いの中、一定数殺されるとリスポーンできなくなる。いかに生き残るか、そして生き残ったプレーヤーのうまさを実感できるルールだった。

 3ラウンドで行なわれ、参加者そのものも減っていく。運の要素も大きく、見つからなければある程度生き残れるし、他の人と戦い瀕死になった人ならば勝てる。そして自分が倒された場合はうまいプレーヤーの戦い方をしっかり見れるのだ。チーム戦とは一味違うプレーヤースキルを駆使しての上級者の戦いはとても見応えがある。eスポーツとしても人気を得られそうなルールだと感じた。

 「DOOM」はエキサイティングなキャンペーンをまずオススメしたい。「敵との戦いは、FPSの楽しさとはこういうものだ」という開発者の主張が良く出ている本作の戦闘は本当に興奮させられる。他のFPSとは一味違うこの戦いはぜひ挑戦して欲しい。そしてある程度プレーヤーを選ぶとは思うが、この「血まみれの戦い」も大きな魅力だ。自分が「狂戦士」になったかのような熱い戦いは、独特の爽快感がある。やりこみ要素もたっぷりで、しっかり楽しめると思う。

 そしてマルチプレイはカジュアルに楽しめる間口の広さと、奥深い駆け引きが味わえるやり込み要素がある。加速度センサーの補正なども駆使して素晴らしいエイムで戦うプレーヤーも活躍している。上級者の戦いなどは実況プレイでも見てみたい。

 この世界に興味を持った人は、ぜひ飛び込んで欲しい。興奮できる戦いが待っている。

プレイを重ねることでアーマーをカスタマイズできる
フリーフォーオールの「ブラッドラッシュ」は上級者同士の駆け引きを観戦できる
【スクリーンショット】
マルチプレイでは多彩なドラマが繰り広げられる