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海賊版最後の秘境を発見!? ジャカルタゲームショップレポート
そしてついにたどり着いた海賊版の“秘境”
(2015/6/11 00:00)
そしてついにたどり着いた海賊版の“秘境”
今回のジャカルタ取材で最も驚いたのは、海賊版ディスクの生産工場が、海賊版で埋め尽くされたショッピングモールのすぐ近くにあったことだ。JEC Electronicは、ゲームショップ専門のショッピングモールPasar Glodokのすぐ隣に位置し、密かにやるわけでもなく、門番を立てるわけでもなく、大っぴらに展開している。今回筆者は彼らに不信感を与えないようにバリバリの観光客スタイルで侵入してみたが、特に怪しまれる様子もなく、客引きのおっさん達に「買わないか?」と次々に声を掛けられる始末だった。これひとつ見てもインドネシアが海賊版を取り締まる意思がまったくないことがわかる。
施設は複数棟のプレハブに屋根を付けた急ごしらえ感溢れる空間になっており、200平米ほどの空間に、何十店舗がすし詰め状態で入居している。そして各店舗の軒先では、老若男女、あらゆるタイプの人々が小さな座椅子に座って海賊版ディスクのシュリンク作業を手慣れた手つきで行なっている。その数、何百人という規模だ。休憩中なのか笑顔で雑談しているおばさんや、飯を急いでかっ込んでいる青年もいて、ピリピリした雰囲気はまったくない。
販売しているディスクは、主にインドネシア語のDVD、CD、ゲームで、ゲームについてはコンソール、PCの両方があった。ここは卸売市場も兼ねており、店の軒先には品定めするバイヤーらしき人物も目につく。外では何千枚ものディスクが段ボールに箱詰めされた状態で次々にバンに積み込まれていた。ここからジャカルタ各地の海賊版ショップや、バンドン、スラバヤ、そしてバリなどのディスクショップに運ばれていくのだろう。
そのディスクの行き先を求めて、ジャカルタにあるいくつかのITモールに足を踏み入れてみたが、探すまでもなくすぐ見つけることができた。何千、何万枚もの大量の海賊版ディスクがぶら下げられ、統一された価格設定、正規品はアンチウィルスソフトだけ。いずれも判を押したように同じ構成になっている。
中国では、2012年の時点で、海賊版ディスクはPC上、あるいはクラウド上で管理され、カタログで選んだゲームをディスクに焼いて渡すという形式だったが、ジャカルタでは業者を通じて海賊版ディスクを仕入れているわけだ。
バンドンとの違いは、海賊版の粗悪品(!?)の被害を防ぐためか、購入したディスクをインストールしてきちんと動作するかどうかを確認できるPCが設置されていることだ。これはすなわち、バンドンと違って、それだけ海賊版の利用者が多く、詐欺被害も出ていることを意味している。
海賊版ショップで売られているディスクはPC版がメインで、すぐ側に生産工場があるためか、「Grand Theft Auto V」や「MORTAL KOMBAT X」、「Farcry4」など、最新のPCタイトルの海賊版が売られている。価格は、通常の海賊版が100円から150円相当なのに対して、300円から500円と、若干のプレミアムが付けられている。海賊版ショップには、Steamのデモ機も設置されていたが、こうした現状では、さしものValveも市場に食い込むのは難しいだろう。
ちなみに、モバイルアプリのディスクも数多く販売されていた。他のアジア地域でも、モバイルアプリが詰め込まれたディスクが販売されているが、その多くは脱獄したAndroidやiPhoneにインストールする有料アプリの海賊版だ。こちらでは、回線速度が致命的に遅いことから、基本プレイ無料のアプリもディスクで販売されているところがおもしろいし、そこに商機を見いだす業者のたくましさにも感心させられた。