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【特別企画】“キッズ”の枠を越える熱い戦い、「データカードダス マジンボーン」

筐体ならでは、カードゲームならではの楽しさを“フルコース”で味わって欲しい!

筐体ならでは、カードゲームならではの楽しさを“フルコース”で味わって欲しい!

プロジェクトのリーダーを務めるバンダイカード事業部デピュティゼネラルマネージャーの原田真史氏
ゲーム制作担当のカード事業部カードダスチームリーダー林幸人氏
様々なメディアミックスを行なっていく
CGキャラクター原案の石川ヒデキ氏描き下ろしのイラスト。今回のための特別なイラストだ

――まず最初に質問したいのは、マジンボーン」は従来のデータカードダスと差別化を図った要素はどこか、ということです。

原田氏: “やりこみ要素”と、徹底的なメディアミックスです。キャラクターや、派手なバトル、魔神など間口は広げつつも、属性、ラインのパワーアップや、攻撃を集中するタイミングなど、ゲーム性を深くしています。いくらでもやり込めるというところが、「マジンボーン」のセールスポイントであり、チャレンジしている部分と言えます。

 これまでのデータカードダスはカードに描かれたキャラクター達がゲーム画面に現われて戦うという形ですが、「マジンボーン」はカードの裏面にアイテムとしての特性を持っている。アイテムを装着するマイファイターが絡むことでカードの意味が変わってきます。単にキャラクターの強さだけでなく、マイファイターをどう強化していくかもカードを組み合わせる選択肢になります。

――このゲーム要素の盛り込みは、「マジンボーン」を従来のデジタルキッズカードゲームからより高年齢、ゲーム好きのユーザーに向けて幅を広げたいという戦略からなのでしょうか?

原田氏: そうですね、そこは狙うところであり、ゲームは奥が深いものにしています。ただ、アーケードゲームで考えていきたいのは「初心者向けの配慮」です。アーケードゲームは“アトラクション”であり、やり込んだ人も、はじめてプレイする人も、投入した100円で同じくらい楽しんで欲しい。初心者でも楽しんでもらえる要素は充分気を使っています。

 年齢層なのですが、実は小学生くらいのユーザーさんもかなり高度なゲームプレイをしているというのが、こちらの経験でわかってきたんです。お父さん世代のユーザーさんもいますが、やはりメインは小学生中~高学年です。データカードダスの全国大会に出てくるユーザーさん達の戦略は非常に高度で、開発者達も苦戦するほどです。低年齢層でもより深いゲーム性が楽しめるんじゃないかというのが、今回のチャレンジです。

 データカードダスの面白いところは、ただ単に強いカードを持っているだけで勝てるわけではない、というところです。カードをどう組み合わせるか、どんな順番で使うか、という戦略。そしてボタンを押すタイミングという“腕”も必要となる。全国大会の年齢制限なしのクラスでも小学生が優勝することがある。様々な要素が絡み合ったゲームジャンルなんです。勝つためには、どこまでこのゲームをやり込んだか、ゲームに力を傾けたが重要になります。

――データカードダスは昨今では非常に人気で、デパートなどの玩具売り場はデジタルキッズカードゲームが並んでいます。データカードダスはいつ頃生まれたのでしょうか。

原田氏: データカードダスが生まれたのは2005年です。これまで「ドラゴンボール」や「ガンダム」、「仮面ライダー」などキャラクターを扱ってきており、女児向けで「アイカツ!」が初のオリジナルキャラクタータイトルとなり、「マジンボーン」も9年のデータカードダスの歴史の中で、男児向け作品としては初めてのオリジナルキャラクターの投入になります。

――あえてオリジナルキャラクターを投入した狙いを教えてください。

原田氏: オリジナルキャラクターを投入し、データカードダス本来の面白さを引き出すことで新IPを作り出したい、というのが狙いです。色々な作戦を考えてカードを選び、カードを並べ、戦略を考えていくこの面白さを100%楽しんで欲しい。データカードダス、そしてカードゲーム本来の面白さをとことんまで追求したい、というのが「マジンボーン」が生まれた最初のきっかけです。

 もう1つ他の原作のある作品と違うところは、「マジンボーン」の世界観やコンセプトはゲーム主導ではありますが、アニメやコミックなど“全てを原作”としているところです。「マジンボーン」はメディア展開として、低年齢層に向けて集英社様の「最強ジャンプ」でコミックを連載しており、TVアニメの放映も行なっています。アニメも、コミックスも、面白い設定や、エピソードが出てきたら、積極的にお互いのメディアに取り入れていきます。こういった他メディアとの連携も面白いところだと思います。

 逆に、「そちらがこうならこちらはこうだ」というようにクリエイターがお互いで高めていける。これはすでに「アイカツ!」で実現しています。お客様も、様々なメディアに触れることでどんどんIPを好きになってもらえることを目指しています。

――オリジナルキャラクターの投入は、「アイカツ!」の成功を受けてのものでしょうか?

原田氏: 実は、「マジンボーン」の方が企画としては早いんです。後に企画された「アイカツ!」の方が先に世に出て、幸いにも人気を博しました。「マジンボーン」は結果として開発期間が長くなり、“当時の企画”と“今あるべき形”がずれてしまい、そこをすりあわせるのにも苦労しました。

 その中で強くアピールする部分としては、「キャラクター」です。どうかっこいいと思ってもらうか、キャラクターを好きになってもらうか、バンダイはやはりキャラクター性を前面に押し出すのが得意なメーカーですから、キャラクター性は特に強くアピールしています。このため「マジンボーン」の世界観や設定は、キャラクターを印象づける、好きになって貰うことから逆算して設定しています。

 アニメやストーリーものだと、どうしても主役、主要キャラクター、そしてそれ以外、というようにキャラクターへの思いに比重が生まれてしまうところがあります。データカードダスでは入手したキャラクターが、主役を倒してしまうこともある。キャラクタープロモーションという意味では、幅広いキャラクターをアピールできるところも強みです。

 カードの数値の強さ、弱さはありますが、オリジナルのキャラクターであるからこそ、キャラクターの幅も原作に囚われない設定が可能でした。さらにカードの裏面で武器アイテムとしての特性も持たせているので、プレーヤーが重視する部分が変わったりするため、カードの価値、キャラクターの特性は従来以上に広いものになっています。

 数値が高くなくても、アビリティが魅力だったりする。「ドラゴンボール」や「仮面ライダー」だと、「こいつはこいつより強いというのは違う」といった形で原作の縛りがあります。そちらも魅力的ですが、「マジンボーン」はオリジナルなのでより自由度を高くカードのバランスを工夫できます。

 筐体では5枚しかカードは使わない、戦うのは5人の戦士のみですが、色々なキャラクターを使ってデッキを組んで欲しい。そこを考えアビリティを工夫したり、バランスを調節しています。実際に筐体で遊ぶだけでなく、家でカードの組み合わせを何度も考えてもらうようなゲーム性を目指しています。

――アミューズメント施設など、アーケードゲームは以前は大きな人気がありましたが、今はユーザーが限られている印象があります。一方でキッズ向けは非常に人気がありますね。人気を得るために気をつけている部分はどこでしょうか。

原田氏: 「見ているとやりたくなる」というところは、かなり気をつけています。筐体の工夫ですね。カードを配置して属性が反応すると筐体のパネル部分が光りますし、カードを動かすとリアルタイムでゲーム画面も変化する。プレーヤーがどういったことをやっているかを観客にもわかるようにしているんです。筐体の設計そのものが、「見られること」を意識しています。

 実は、キャラクターのアピールの場所、としても全国に設置する筐体の力というものはすごいんじゃないかと思うんですよ。比較対象としては的確ではないかもしれませんが、現在日本には映画用のスクリーンって3,300スクリーンくらいしかないそうです。一方で、バンダイの「ドラゴンボール ヒーローズ」は4,800台日本で稼働しているんです。キャラクターをアピールするシアターとしては、かなりの数ですよね。これはインフラとしてもかなり効果のあるものだと考えています。

――アーケードゲームは、家庭用とは違い、「ここでしか体験できない」というところが魅力的だと思います。そこに関してはどのような工夫をしていますか。

原田氏: 「ここでしか体験できない」という要素がなくなったら、デジタルキッズカードゲームというビジネスは終わると思っています。カードは筐体からしか得られないですし、ゲーム大会などイベント会場としての魅力も増やしていきます。

 プレイステーション 3くらいから、アーケードよりもコンシューマー機の方が高性能になりました。かつてファミリーコンピュータでは「ドンキーコング」の“50m”や、「ゼビウス」のアンドアジェネシスが再現できなかったのですが、今はそういうことはない。大画面テレビも安価になって、アーケードのモニターのすごさもなくなってしまいました。そういう意味でアーケードの優位性は弱くなってきたかもしれません。

 しかしデータカードダスは筐体でしか遊べない。家では筐体での“本番”に備えて、持っているカードでよりよい組み合わせや、ラインの作り方などをずっとシミュレーションできる。この家で試行錯誤してもらうというのも、大事なセールスポイントだと思います。さらに友達同士でのカードの交換も楽しい。私達カード事業部はトレーディングカードゲームもやっており、そのこだわりもあるのですが、「マジンボーン」に関しては、筐体ならではの楽しさも重視しています。

――原田さんが個人的に「マジンボーン」で好きな部分はどこですか?

原田氏: プロジェクトそのものに強い思い入れがあります。かなり紆余曲折のあったものになりました。このプロジェクトが実現するのに5年かかっているんです。特に、ゲーム性の部分は最初に考えたものとは比べものにならないほどに進化しています。

 また、IPとしての魅力部分は思い入れも深い。そして、メディアミックスとして現在の形に「マジンボーン」のプロジェクトそのものの、今の形にかなり充実感を持ってます。実際に連携し、推進していくのが難しい部分もありましたが、このプロジェクトの形に達成感を持っています。

 そして、これからですよね。コミック、アニメが始まり、そしてついにアーケードゲームが始動します。各メディアのクリエイター達の作品が世に出て、一気に加速していきます。期待して欲しいですね。このプロジェクトがどこに向かっていくかは、私自身も楽しみです。

――「データカードダス マジンボーン」として今後のアップデートの頻度や、スケジュールを教えてください。

林氏: アニメに合わせたスケジュールでのイベントなども取り入れていきます。アニメで強大な敵と戦っているときは実際にお店でその敵と戦えたりします。また、「経験値2倍イベント」なども行なっていきます。ソーシャルゲームの手法を取り入れた要素です。

 大規模なアップデートは筐体に手を加えなくてはいけませんが、イベントや、バージョンアップはオンラインでできるというのが「データカードダス マジンボーン」の強みです。そして、現在4月24日からスタートするのは“1弾”なのです。2カ月に1度のペースで新しいカードが投入されます。定期的にカードを切り替えることで、常に新しい“感動”を提供していきたいです。

原田氏: コレクションも「マジンボーン」の魅力です。確率として「日本に持っているのは数人」というほどに極端にレアなものはないですが、魅力的なカードが版を重ねるごとに出てきます。集めて楽しい、という部分はキチンと強調していきたい。1弾でレアなカードの魅力が、その後すぐ薄れてしまう、ということはありませんので、ご安心ください。

――原田さんが5年以上関わった「マジンボーン」がいよいよ世に出ます。感想を改めて聞かせてください。そして次なる課題とはどのようなものでしょうか?

原田氏: 面白いものを作りたい、カード事業部が持つノウハウによって作り出された筐体で、最高に面白いものを作りたいというスタッフ一同の思いで完成させた作品です。筐体、カードゲームとしての駆け引き、キャラクターと世界観、様々なところを突き詰めました。

 その上で今後の課題は、“人と人を繋げたい”ということです。対戦や、コミュニティ要素をオンラインでフォローしていますから、やはり隣にいる友達と繋がったり、カードを貸して貰うなど、より繋げる方法や、“共闘”の実現はさらに突き詰めていきたい。

 子供って、何で遊ぶかよりも、誰と遊ぶか、というのが大事だったと思うんです。みんなで遊べるツールとなってもらえるやり方を考えていきたいと思っています。「マジンボーン」で友達ができる、友達が増えるというゲームにできるか、というのは1つの夢です。

――最後にユーザーへのメッセージをお願いします。

原田氏: ゲーマーの方にもたっぷり遊んでもらえるように作りました。そしてゲームだけではなく、世界観やキャラクターなど、“食えば食うほど”楽しい作品ができたと思います。我々が作り上げたメディアミックスの「マジンボーン」を、“フルコース”で、ぜひたっぷり楽しんでください。

林氏: 私は「ガンバライド」や「トライエイジ」の立ち上げに関わりました。そこで学んだのは、子供達が筐体の前で遊んだ記憶ってちゃんと思い出になって、いつまでも残るということなんです。彼らに「あのときは面白かったなあ」という感動体験を得てもらえる作品を作っていきたいと思っています。そのときの記憶、そのとき考えたことをずっと覚えてもらえる作品に「マジンボーン」はなって欲しいと思います。

 「この敵つええな!」、「この組み合わせすげえな!」、「この演出すげえ」……。そういったプレイの記憶が強烈に刻まれる要素を盛り込んだつもりです。ぜひ、楽しんでくれればと思います。

(勝田哲也)