EA Mobile/Chillingo、スマホ/タブレット向けの新作を一挙に発表

新たな進化を予感させる2Dアニメゲームなど独創性あふれるゲームを紹介


4月19日、20日開催

会場:Millbank London



「EA Showcase」の様子

 米Electronic Arts(EA)がロンドンでプレス向けに開催した自社ゲーム紹介イベント「EA Showcase」ではモバイル向けのゲームも多数紹介された。

 EAは、2009年にソーシャルゲーム大手のPlayfishを買収してFacebookにソーシャルゲームを提供しつつ、自社のゲームを通販していたデジタル配信プラットフォーム「Origin」にSNS的な要素を付加して、ここでもソーシャルゲームやフリー・トゥー・プレイゲームの配信を始めている。

 更に「アングリ―バード」をパブリッシングしたモバイルゲーム会社Chillingoを2010年に、「Zuma」などのカジュアルゲームを多数世に送り出しているカジュアルゲームメーカーPopcapを2011年に買収するなど、近年ライトユーザー向けのゲームのパブリッシングにも力を入れている。

 不思議なことに、今回のイベントにはPlayfishの姿がなかった。「The Sims Social」や「EA SPORTS FIFA Superstars」で大ヒットを記録したPlayfishは本社がロンドンにあるので、出展を期待していただけに少々残念だった。

 このレポートでは、会場で試遊することができたChillingoの新作3本をはじめとした、iOS向けと、Windows Phone 7向けのモバイルゲームを紹介したい。





■ Chillingoが発表した5つのiOSアプリ。次の時代を掴むのは?

Chillingoブースの様子

 Chillingoといえば、世界中で大ヒットしたiOS用ゲーム「アングリ―バード」を発売した会社として知られている。しかし知的財産権は開発したフィンランドの会社Rovio Entertainmentが持っているため、EAの買収後は袂を分かつことになった。そんな事情もあって、今回どんなゲームが発表されるのか想像がつかず、筆者個人はかなり好奇心を抱いていた。発表されたのは4本で、そのうち3本を試遊することができた。

 どの作品もiOSの特性を生かしながら、今までにない要素を盛り込んだ独創的で野心的なゲームに仕上がっている。また、今回はiOS向けのゲームはすべてiPad 3ことThe New iPadで展示されており、Retina Displayの性能を生かした細部まで美しく表現された高精細なグラフィックスを楽しむことができた。





■ カートゥーンアニメをそのままゲームにした「the Act」

キャラクターを左右に操作するだけで、カートゥーンアニメの物語を進めていく

 今回Chillingoブースにあったゲームの中で最も独創性にあふれていたゲームが、アニメーションとゲームを融合させた「the Act」だ。開発はReact Entertainment。“Act”はアメリカの口語で芝居を意味する。本作は、冴えない主人公エドガーを操作して、8つの章で構成されたアニメーションのストーリーを進めていく。

 本作は、もともと1990年代にアメリカで発売されたローラーボールゲーム(手のひらサイズのローラーボールを動かして遊ぶアーケードゲーム)に使われていたカートゥーンゲームをiOS用ゲームとして再利用したという異色の出自を持っている。操作は非常に単純で、画面上で指を左右に動かしてキャラクターが動く方向を決めるだけだ。画面下にカチンコのアイコンが3つあり、それがシーンを再生できる残り回数になる。つまり3回の間に、理想のシーンを完成させなければならない。

 最初に試したのは、椅子に座った女性を口説くというシチュエーション。エドガーを女性に向かって動かすのだが、勢いよく動かしすぎるといきなり女性に抱きついてアッというまにフられてしまう。時に前進して女性の注意を引きつつ、嫌われそうになればすぐに引くという駆け引きを続けていると、次第に女性の態度が変化していく。振り向いた女性の手を取ってダンスに持ち込めばクリアだ。

 クリアするとそのままアニメーションが続いて次のシーンまで物語が進んでいく。アニメーションのつなぎ目はなめらかでキャラクターの表情も多彩、インタラクティブな操作の中にも少しずつ違うパターンのモーションが組み込まれていて、プレイ中にも話が進んでいくため、見ているだけでも楽しい。作業の報酬としてムービーを見るという従来型のアニメーション作品とは一線を画した、タブレットゲームらしい作品だ。

 発売は、2012年夏の予定。

 

【「The Act」プロモーショントレーラー】

 

【スクリーンショット】
90年代に作られたアメリカのローラーボールゲーム用カートゥーンを再利用しているため、アニメーションのクオリティがとても高く、かつ懐かしいアメリカンカートゥーンの味わいを楽しめる




■ 要素満載! 美麗なグラフィックスのタワーディフェンス「Commando Jack」

FPS視点やアクションゲーム要素まであるボリュームたっぷりのタワーディフェンスゲーム

 ロンドン、NY、パリ、カイロ、東京の5都市に攻めてくるエイリアンを撃退する、iOS向けのタワーディフェンスゲーム。開発はcolossal Games。一般的なタワーディフェンスゲームとの違いは、マップに防衛用の兵器を設置する傍ら、Jackというキャラクターを操作してFPS画面で敵を攻撃したり、「UAB」という兵器を使って空から敵を攻撃したりと多彩な攻撃方法と視点を楽しめることだ。

 一般的なタワーディフェンスゲームは、一本道の両側に防衛兵器を設置して、並んで行進してくる敵を撃破するが、本作はマップがグリッドになっている。敵は何もしないと最短距離を通って攻撃してくるので、そのルート上に兵器を設置して迂回させ、なるべく遠回りになるようなルートをプレーヤーが構築することができる。

 兵器には大砲や敵の動きを遅くするもの、一定時間敵を足止めする土嚢や、空を飛んでくる敵も撃ち落としてくれるレーザーなどがある。UAB兵器は、使用した後敵をタップすると画面上空からその敵めがけて爆弾が降り注ぐ。どの兵器もアップグレードすることで威力や射程が伸びる。

 設置した兵器が打ち漏らしたエイリアンや、兵器では倒せない装甲を持ったエイリアン、砲台の弾が届かない空中から攻めてくる円盤や空飛ぶサメなどは、奥に陣取っているJackをFPS視点で操作して撃つことができる。Jackはグレネードや火炎放射など複数の攻撃方法を持っていて、設置した兵器同様アップグレードで強くすることができる。

 強さはイージー、ノーマル、ハード、エクストリームの4段階で、範囲度が高くなるとエイリアンが攻めてくる襲撃の回数が増えるとともに、ルート上に障害物が増えてジャックが攻撃しづらくなっていく。

 タワーディフェンスゲームはタブレットの操作に特化した面白いゲームだが、時に手持無沙汰になることがある。本作ではエイリアンが出てくるまでのインターミッションをスキップしたり、設置するためのお金が貯まるのを待つ間にJackで攻撃したりと、1回のプレイを無駄なく遊ぶことができるという点が他のゲームにはない特徴になっている。

 発売は2012年4月の予定。

 

【「Commando Jack」プロモーショントレーラー】

 

【スクリーンショット】
エイリアンが攻めてくるルートに防衛用の武器や障害を設置する。それでも止めきれない場合は、Jackを操作してFPS操作で銃撃。Jackだけではなく、設置した武器の中にもプレーヤーが操作できるものがある




■ 少年時代の夢を思い出させてくれる幻想的な飛行機ゲーム「Air Mail」

 フライトシミュレーションタイプのiOSゲーム。飛行機を操作して、郵便配達に関係したミッションをこなしていく。開発はN-Fusion Interactive。

 モードは3つ。「ミッションモード」は25レベルに分かれた様々な課題をクリアしていくというもの。「エクスプレスモード」はタイムトライアル。「エクスプローラーモード」は自由な空中散歩を楽しみながら、点々と配置されたスクロールを見つけていくというものだ。

 ミッションモードは7つのチャプターに分かれていて、空中都市や溶岩地帯などそれぞれ異なるテーマのマップが用意されている。最初のステージはチュートリアルになっていて、空中に浮かぶリングを通過して得点を競う。

 操作方法は、両手を操縦桿のように使うチルト操作、十字キーとボタンのバーチャルキーで操作するもの、両脇にあるボタンをスライドさせて角度を調整するものの3つから選べる。視点も、一人称、背後、俯瞰の3つから選択可能だ。

 ファンタジックな風景の中を自由に飛べるエクスプローラーモードは開発スタッフのおすすめ。発売は2012年春の予定。

 

【「Air Mail」プロモーショントレーラー】

【スクリーンショット】
7つのテーマに分かれたフル3Dの美しいマップを、レシプロ機でのんびりと探索できる。

【Smash-a-lot】
騎士となってドラゴンからプリンセスを守るiOSアプリ。開発はWicked Witch Software。投石器を使って石や木でできた要塞を崩していく、「アングリ―バード」タイプのフル3Dゲーム。発売は2012年春の予定

 

【「Smash-a-lot」プロモーショントレーラー】

【Fleece Lightning】
イギリスの子供向けTVアニメの人気キャラクター「ひつじのショーン」を使ったiOSのレースゲーム。10種類のレースに、それぞれ8つのコースがある。子どもでも簡単に遊べる可愛いゲームだ。発売は2012年春の予定


【「Fleece Lightning」プロモーショントレーラー】

 




■ EA Mobileからはコンソールでもおなじみの大作、名作が続々スマホアプリ化!

・「Burnout Crash」

 交差点でどれだけ激しいクラッシュ事故を起こせるかで得点を競うという、いかにも洋ゲーらしいゲーム。元々はレースゲーム「バーンアウト」から生まれたスピンオフ作品で、プレイステーション 3とXbox 360用のダウンロード専用コンテンツとして発売されたもの。

 「バーンアウト」はクラッシュシーンの派手さが特徴のリアルな3Dのレースゲームだが、こちらはカリカチュアライズされた交差点を俯瞰して、流れてくる自動車に無差別にマイカーをぶつけていく。iOS版ではフリック操作でマイカーを引きずり、次々と事故を拡大させていくように操作方法が変更されている。

 プレイのモードは3つある。「RUSH HOUR!」は混み合う交差点に突撃して、90秒間の間になるべく多くの車を巻き込んだ大事故を起こすタイムアタック。「ROAD BLOCK!」は近づいてくる車を1台も逃がすことなく事故に巻き込むパズル的なモード。「PILE-UP!」はOriginのフレンドと点数を競ったり、人のプレイを再現プレイで見ることができるモード。陽気なサウンドに乗って破壊王を狙うという豪快なゲームだ。

 iOS版はすでに配信中で、価格は450円。

【スクリーンショット】
豪快に車をぶつけてストレスを解消できる。短時間で遊べる気軽なゲーム。全体的にポップな雰囲気だが、タイヤ痕と焼けたアスファルトの描写はとてもリアル




かわいいイラストが女性にも大人気のタワーディフェンスゲーム。タイトルの謎さに首をひねる人でも、1度遊べばすぐに意味が分かるシンプルなゲームだ

・「Plants vs. Zombies」

 海外のPCゲーム市場で2011年にヒットした、Popcapの異色タワーディフェンスゲーム「Plants vs. Zombies」がWindows Phone 7向けに発売された。

 本作は家に向かって襲ってくる26種類のゾンビを、植物を植えて撃退するというタワーディフェンスゲーム。植物にはエネルギーを貯めるためのひまわりや、設置型の爆弾、ゾンビを食べる食人植物、水中で進行を妨害するハスの葉など49種類があり、1回のプレイではその中から7つを使用できる。

 すでに発売中で、価格は4.99ドル。




HDMIを使ってテレビモニターに表示して遊ぶと、まるでコンソール用のようにも思える。多彩な操作方法と対戦モードで、リアルなレースゲームを楽しめる

・「Real Racing 2」

 リアリティを追求したiOS版のレーシングシミュレーターゲーム。HDMI端子でテレビにつないでiPadをハンドルとしてチルト操作したりと、7つの操作方法から自分に合った動かし方を選べる。

 シングルプレイとマルチプレイが可能で、マルチプレイは通信対戦やネット経由の対戦、アップルTVを経由して最大4人までの同時対戦も可能だ。

 車は実在するスポーツカーやセダン、コンパクトカーなど。キャリアモードでは、安い車でレースに出て賞金を稼ぎ、そのお金でさらにいい車を買うことができる。車のカスタマイズパーツも、ゲーム内で稼いだお金で購入でき、車をアップデートできる。

 すでに発売中で、価格はiPhone版が450円、iPad版が600円。




単純ながらかなりハマるパズルゲーム。60年代風のポップなノリで、デザイン的にもオシャレ

・「Flight Control Rocket」

 画面の四方から現れる赤、緑、黄色のロケットを、画面中央にいる母艦まで導いてやるiOS向けのパズルゲーム。

 ロケットにタッチしてそのまま指で母艦までの軌跡をなぞると、それが細いラインとして残り、ロケットは種類によって異なるスピードで軌跡にそって動いていく。プレーヤーはロケット同士がぶつからないように、奇跡の形や長さを調整して、次々に現れるロケットを無事に母艦に帰還させる。

 軌跡に乗ると突然スピードが速くなるロケットや、編隊を組んでいるもの、途中にコインをはさんだボーナスロケットなど、形もスピードも多様で、大丈夫だと思っていても思わぬ場所で衝突事故が起こる。

 コインを貯めて、プレーヤーを補佐してくれるロボットを買えば、プレーヤーの目が行き届かない場所をロボットが補佐してくれるようになる。自由に軌跡を引けるのが楽しく、ついついハマってしまうゲームだ。

 発売は発売中(3月16日)で、iPhone版、iPad版とも価格は85円。

・「Mass Effect Infiltrator」

 言わずと知れた大ヒットフランチャイズの世界感を受け継いだiOS向けゲーム。プレーヤーは「マスエフェクト」に登場する秘密組織「サーベラス」のエージェントRandall Eznoとなって、組織の目的を遂行する。ミッションで獲得したインテルは、「マスエフェクト 3」の銀河戦争システムで評価を高めるために使うことができる。

 iPad3の画面は非常に美しく、PS3にも遜色ないほどだ。効果も派手で、スクリーンショットを見ただけでは即座にモバイルのゲームだと分からない人が多いのではないだろうか。

 TPSのアクションゲームで、コアゲーマーが多い「マスエフェクト」ファン向けのゲームだけに、操作の難易度は他のゲームより高めで、かなりの慣れが必要だ。しかし、迫力のある画面は一見の価値ありだ。

 すでに発売中で、iPhone版、iPad版ともに450円。

【スクリーンショット】
コンソール版マスエフェクトのプレイを有利にするインテルが手に入る。コアゲーマー向けだけに、難易度が高めの本格アクションが楽しめる




・「Solitaire Blitz」

 今回唯一展示されていたFacebook向けゲーム。3月6日にすでにサービスを開始しており、現在のアクティブユーザー数は280万人。

 トランプゲームのソリティアにパズル的な要素を組み合わせたゲーム。ソリティアのように下に並べたトランプの束から一番上のカードをめくって数字を並べていく。基本はソリティアだが、制限時間があったりゲームを進めやすくするボーナス要素、鍵カードを使ったアンロックなどパズル的な要素が強いゲームになっている。

 プレーヤーには、カードを吹き飛ばす爆弾や、連番になった下のカードが見えるスキルなど14種類のスキルから3種類を1回のゲームで使うことができる。アンロックしていないスキルは、アイテムショップで購入することもできる。

【スクリーンショット】
ソリティアなので、場にあるカードをすべて開けばクリアになる。すべてのカードの山が黄色いラインよりも下に下がると、残りタイムにボーナスがつく

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(2012年 4月 20日)

[Reported by 石井聡]