G-Star 2011レポート

【G-Star 2011】BIGSPOON、「Red Blood」プレビュー&インタビュー
新進気鋭のパブリッシャーによる正統派の大作オンラインアクション


11月10日~13日開催

会場:釜山国際展示場(BEXCO)

入場料:大人5,000ウォン
学生/子供2,000ウォン


 今年のG-Starで初出展にして高い注目を集めていたのが、2009年に設立されたばかりという独立系パブリッシャーのBIGSPOON Corporationである。創業者のパク・ジェウ氏は、YD Onlineで「オーディション」と「プリストンテール」を成功させた実績を持つパブリッシャー畑の人間で、韓国ゲーム業界の人脈も深いことから、久々の大物によるゲームメーカーの創業ということで注目を集めている。

ブースを視察していたBIGSPOON Corporation CEOのパク・ジェウ氏

 メインの出展タイトルは「Red Blood」で、パートナーである開発元Gorilla Banana Studioが5年掛けて開発した大作MMORPGとなっている。BIGSPOONでは同作を足がかりに、一気に韓国での足場を構築したい考えだ。今回はGorilla Banana StudioでCDO(Chief Development Officer)を務め、「Red Blood」の開発総指揮を執るジョン・ムシク氏に話を伺うことができた。

 もうひとつはオンラインフリーランニングアクションゲーム「Free Jack」。オンラインゲームファンならご存じのように、同作は日本ではハンビットユビキタスエンターテインメントを通じてサービスされているが、つい先日、サービスの一時中断を発表したばかり。韓国では12月にβテスト実施予定となっている。もともと同作は海外展開を先行させ、海外で実績を付けた後に韓国で始めるという目算だったが、予定通りにはいっていないようだ。

 なお、同社担当者からは「Free Jack」の開発チームの次回作として「Free Jack」のエンジンを使ったFPS「Crazy Trigger」のトレーラーも見せてもらうことができた。こちらのスケジュールはまだまったくの未定ということで、具体的な発表は来年以降に行なうようだ。


【BIGSPOON Corporation】
ブースは、「Red Blood」と「Free Jack」の2タイトルを出展。試遊台は「Red Blood」だけで30台以上を用意し、韓国のゲームファンにじっくり触らせていた

【「Crazy Trigger」トレーラー】
「Crazy Trigger」はBIGSPOONブースでは一切出展されていなかった未発表タイトル。基本的なゲーム性は「Free Jack」のテイストとゲーム性を活かしたフリーランニングスタイルのFPSとなっている



■ ハックアンドスラッシュの醍醐味にこだわったアクションMMO「Red Blood」

「Red Blood」のゲーム画面。パーティーを組まずにプレイしていたこともありそうだが、常に1対多の戦いとなった

 「Red Blood」の試遊台では、レベル20のウォリアー、ナイト、エレメンタリストから1人を選択して、雑魚モンスターやボスモンスターを相手に、同作が目指すノンターゲッティングアクションをたっぷり堪能することができた。ステージは、確認できた限りでは荒廃した炭鉱からスタートして、敵の本拠地らしき拠点に攻め込むマップと、鍾乳洞から始まり、荒廃しきった鉄道の駐機場らしきところで戦うマップの2つが用意されていた。

 グラフィックスは、ライティングとシャドウイングをしっかり付けたメリハリの効いた絵作りとなっており、フィールドのオブジェクトも非常に質感が高く、奥までしっかり描かれているなど、全体的にグレードが高い。気になっていたのはモンスターが大量に登場した際のパフォーマンスだが、試遊した限りでは特に大きな遅延などは感じられず、常に良好なプレイフィールを得られた。

 このゲームが重視するノンターゲッティングシステムは、「TERA」(NHN)、「C9」(NHN)など、現在の韓国産MMORPGの主流となっているが、「Red Blood」は開発がスタートしたのが5年前ということで後追いではない。彼らライバルとの大きな違いは、1対多の戦いが前提になっているところだ。

 実際にプレイしてみて感じたのは、とにかく群がるように敵が集まってくるため、1体ずつ相手していてはすぐ囲まれてやられてしまうというところだ。ヒットアンドアウェイを繰り返し、敵がある程度一方向に集まってきたところで、なぎ払い的な範囲攻撃を起点に、お好みの連続攻撃をたたき込む。こうした基本的なバトルの展開は「真・三國無双」シリーズ的でもあるし、MMORPGのレイドバトル的でもあり、絶え間ない慌ただしさが本作の魅力のようだ。

 ただ、攻撃スピードは、“クリックゲー”にありがちな、現実を無視したスピードではなく、描写のリアリティと、プレーヤーに考えるゆとりを持たせた形になっており、ある程度ゆったりしている。連続攻撃の途中で盾でよけたり、スキルを入れたりといったアクションを挟むこともできそうだ。ただ、いかんせん短時間のプレイでは不明な部分もいろいろ出てきたため、インタビューではその部分を中心に話を向けてみた。


【Red Blood】
女性ナイトの戦い。キャラクターの動きはやや堅いが、武器を振るうモーションはかなり丁寧に描かれ、ヒットした際の打撃感もよく伝わってくる



■ 5年の歳月を掛けて開発された正統派オンラインアクション「Red Blood」

Gorilla Banana Studio CDOのジョン・ムシク氏

編: まず、BIGSPOON CorporationとGorilla Bananaの関係について教えてください

ジョン氏: BIGSPOON Corporationがパブリッシャー、Gorilla Bananaは「Red Blood」のデベロッパーです。BIGSPOON Corporationのパク・ジェウ氏とは、長い付き合いで、お互い信頼できるパートナーです。私の場合は、ゲーム開発を16年間続いておりまして、BIGSPOON Corporationのパク氏も以前はYD Onlineでパブリッシングしていた経歴を持つ、お互い開発とパブリッシングのプロたちです。設立はBIGSPOON Corporationは2009年に、Gorilla Bananaは2006年です。

編: ジョンさんは、これまでどのようなキャリアを積んできたのでしょうか?

ジョン氏: 今はGravityに合併されたTrigger Softというデベロッパーで、PCパッケージゲームを10作ほど、開発しました。そして、ncsoftでオンラインゲームのディレクターを務めて、そのあとncsoftの仲間たちと一緒に立ち上げたのが、Gorilla Bananaです。

編: Gorilla Bananaが設立されてから、5年間も「Red Blood」の開発をしていますが、ずいぶん長いですね。

ジョン氏: MMORPGのように、多様なコンテンツが盛り込まれるゲームは、短い開発期間では無理だと思います。最低でも3年以上の準備期間は必要ですね。本作の場合、1990年代の韓国でヒットしたコミックスをベースにしていて、その原作者であるキム・テヒョン氏もアートディレクターとして、本作の開発に参加しています。ゲームのコンセプトに掛けた歳月が長かったですね。

編: 「Red Blood」の現在の開発状況を教えて下さい。

ジョン氏: 今回のG-Star 2011が初めての出展になります。また、先月には既に第1次クローズドβテストを5,000人の規模で実施しました。

編: 現在の完成度と、計画しているサービススケジュールは?

ジョン氏: もうゲームの9割は完成したと思います。正式サービスは来年の上半期を予定しています。それまでは、クローズドβテストや、内部テストのフィードバックを見て、微調整していくつもりです。

編: 第1次クローズドβテストでは、ユーザーさんからどういう意見を貰いましたか。

ジョン氏: 第1時クローズドβテストでは、戦闘を重点的にテストしましたが、ユーザーさんからは“本当に面白かった”という意見を貰い、海外のパブリッシャーからも良い評判を貰いました。

編: 「Red Blood」の原作は、どういうストーリーですか?

ジョン氏: SFとファンタジーのジャンルを併せたもので、世界が滅亡しファンタジー世界として再建される内容です。未来の世界が滅亡して、長い歳月が過ぎた世界ですね。未来の風景がまだ残っていて、中世の風景と混ざってます。

編: 原作コミックスとオンラインゲームとの関係を教えてください。

ジョン氏: コミックスより前の世界を描いています。ゲームで登場する家門の後世が、コミックスの主人公に繋がっていくという設定です。ちなみに、主人公の家門はプレーヤーキャラクターではなく、登場するNPCの家門です。原作を知る人には、すぐわかる内容となっています。

編: 「Red Blood」はメリハリの効いた美しいグラフィックスが印象的ですが、ゲームエンジンは何を使用しているのですか?

ジョン氏: Gamebryoです。韓国では多くのゲームがGamebryoを使用していて、我々としても上手く使いこなせる自信があったゲームエンジンです。また、エンジンのデベロッパーからも積極的なサポートがありました。Gamebryoの代表的なタイトルとして「Red Blood」が告知されているほどです。

編: ブースで体験した限りでは、全体的に動きがモッサリしているという印象を受けましたが、これは意図的なものですか?

ジョン氏: 意図的なものです。実は内部でも意見が分かれました。素早くて精錬された動きが好きな人もいれば、この動きを好きな人もいます。両方を検討してみての結果が、今の「Red Blood」です。ちなみに、すばやくて洗練された動きが好きな地域には、そういう風にモーションを変えてローカライズできるシステムも整っています。


【スクリーンショット】



■ 大勢の敵をなぎ倒す爽快感と、継続的な目標を提供してくれる「家門システム」

ジョン氏がもっとも説明に時間を割いてくれたのは家門システム。プレイの継続性を飛躍的に高めてくれるシステムとして期待しているようだ

編: このゲームの魅力となる要素を教えて下さい。

ジョン氏: 戦闘が楽しいゲームです。ダイナミックで迫力がある戦闘を作ったと自負します。また、MMORPGはプレイを継続するためのコンテンツが必要だと思いますが、本作ではそれが「家門」システムですね。「家門」システムの中に、攻城戦、無限に戦闘が続く「メビウスタワー」が盛り込まれています。

編: 「Red Blood」における戦闘の魅力について教えて下さい?

ジョン氏: 「C9」や「マビノギ英雄伝」みたいに1対1の戦闘が楽しいゲームは目指していません。「Diablo」シリーズのような、ハックアンドスラッシュで、多数のモンスターを一気に倒すことが楽しいゲームです。

編: バトルについては最終的にどのようなゲーム性を目指しているのか教えて下さい。

ジョン氏: ノンターゲッティングシステムを採用したゲームは戦闘は面白いのですが、長くプレイし続くと疲れます。本作は疲れないように設計され、家門のボーナスで、プレーヤーが常に上を目指していけるゲームになっています。家門を強くしていく、シミュレーションの楽しさと、ノンターゲッティングによるアクション性を、併せ持つゲームです。

編: 「家門」というと「グラナド・エスパダ」にも同名のシステムがありますが、「Red Blood」の「家門」システムは何が違うのですか。

ジョン氏: 1人のキャラクターだけではなく、幾つかのキャラクターを同時に成長させて家門を強くしていくことが、このゲームの目標です。「GE」の場合、3人のキャラクターを同時にプレイするものですが、「Red Blood」では、1つのキャラクターをプレイして、他のキャラクターはブラウザゲームのように、命令しておいてシミュレーションで結果が出るシステムになっています。

編: 「家門」を強くしていくとは?

ジョン氏: 全体のキャラクターたちが成長することによって、家門ポイントが獲得でき、家門ポイントを使用して、家門のスキルや、専用のダンジョン利用などの、家門専用のコンテンツが用意されています。家門が強くなると、能力の高い強いキャラクターが生まれて、傭兵として他のプレーヤーに貸すこともできます。

編: 家門には何人までキャラクターを持つことができますか?

ジョン氏: 最初は8スロットですが、アイテム課金などで、スロットを拡張させることもできます。また、スロットにあるキャラクターは、1つ選択して操作することができます。切り替えも可能ですね。

編: 操作しないキャラクターには、どのような命令ができますか?

ジョン氏: 経験値やキャラクターの能力地をアップすることができる「訓練」と、アイテムやお金を探してくる探索などがあります。こちらはユーザーたちのフィードバックを見て、どういう命令を用意するのか、検討していく予定です。命令に失敗することもありますが、失敗しても損失は無いです。

編: 「家門」システムを取り入れた理由を教えてください。

ジョン氏: プレイの持続性を高めるためです。激しいアクションが広げられるゲームは、戦闘は楽しいですが、長くプレイすると疲れます。それを克服するために、命令だけでも成長できる「家門」システムを採用しました。実は日本のゲームを参考しまして、「三国志」や「ファイアーエムブレム」が良い参考になりました。

編: 複数のキャラクターを同時に操作することもできますか?

ジョン氏: できます。ただ、それが可能なのは家門専用のダンジョンだけですね。その場合、1つのキャラクターだけ操作して、他のキャラクターはAIで動きます。

編: AIはどういう風に実現されていますか?

ジョン氏: 各キャラクターの簡単な役割を設定するだけで、後は全自動です。

編: 家門専用のダンジョンと「メビウスタワー」は別物ですか?

ジョン氏: 別物です。家門専用のダンジョンはボーナスステージみたいなもので、「メビウスタワー」は無限に狩りを続けて、よりアイテムを獲得することが目標のシステムになっています。「メビウスタワー」の周辺には「メビウスタワー」の所有権を掛けて戦う攻城戦のゾーンになっていて、攻める側は「メビウスタワー」の外で攻めていくもので、守る側は「メビウスタワー」の中で守るようになっています。2週に1回のイベントです。また、「メビウスタワー」の周辺には「無法地帯」というPvPゾーンが用意されています。

編: 「メビウスタワー」では、どういうアイテムを獲得できますか?

ジョン氏: 能力値の高いレアアイテムです。また、アイテムを強化できる強化石も手に入れることができます。

編: 「メビウスタワー」の周辺にあるというPvPゾーン「無法地帯」はどのようなエリアになっているのですか?

ジョン氏: 自分とパーティメンバー以外は全て敵です。敵を倒すことで、カルマポイントという点数を獲得できますが、カルマポイントでしか変えないアイテムが存在します。ユーザーたちは、そのアイテムを買うために、PvPを繰り返すというシステムです。また、「無法地帯」にはモンスターもいて、PvEもできます。

編: ログイン画面で見られた空中船は何でしょうか

ジョン氏: 「ディケ」という兵器ですね。「メビウスタワー」の所有権を持つと、「ディケ」を使用できます。原作のコミックスにも登場するものですね。選択したフィールドに攻撃するとかできますが、どういうときに使えるかはまだ未定です。

編: 日本展開の予定は?

ジョン氏: MMORPGは開発も重要ですが、サービスも重要です。Gorilla Bananaの開発チームは皆、開発とサービスに長い経験を持っています。韓国では、BIGSPOON Corporationが運営しますが、日本のサービスの時には、Gorilla Bananaの社内に日本向けのチームを作って、全力でサポートするつもりです。現在、色んなパブリッシャーと話し合いをしています。多分、近い内にパブリッシャーが決定して発表できると思います。

編: 最後に日本のユーザーにメッセージをお願いします。

ジョン氏: 日本のゲームはメガドライブ時代から好きでした。日本のユーザーさんからの意見をちゃんと聞いて、積極的に実現していきたいと思います。今後、「Red Blood」をご期待ください。

編: ありがとうございました。


【「Red Blood」メイントレーラー】

【「Red Blood」フィールド】

(2011年 11月 13日)

[Reported by 中村聖司]