G-Star 2009現地レポート

「ドラゴンボールオンライン」クリエイティブディレクター高宮孝治氏特別インタビュー
システム的な新しさではなく“原作感”の表現にこだわったMMORPG


11月26日~29日開催

会場:釜山国際展示場(BEXCO)

入場料:大人4,000ウォン(前売り2,000ウォン) 学生2,000ウォン(前売り1,000ウォン)


 2009年の韓国オンラインゲーム業界のトピックのひとつは、2007年3月の日韓での正式発表以降、長らく音沙汰がなかった「ドラゴンボールオンライン(以下、『DBO』)」のβテストが運営元であるCJ Internetのもとでスタートしたことだ。

 今年の9月と11月に2度実施され、1次テストではチュートリアルを含むレベル1からのゲーム序盤が披露され、2次テストでは、レベル30で解禁される“カリン様”から受けられる子どもから大人になるためのクエスト「成人式」と、大人になったキャラクターの最初の試練となるマスタークラスになるための転職クエストが体験できた。

 満を持して初出展されたG-Starでは、レベル50のキャラクタを用意し、過去2回のβテストの次のステップとなるレベル50から解禁される「変身スキル」が披露された。人間族はスーパーサイヤ人に、ナメック族は巨人化し、魔人族は純粋魔人へと姿を変え、圧倒的かつ止めどない攻撃を敵にたたき込むことができる。変身スキルの圧倒的な破壊力は、まさに「DBO」のハイライトシーンといった印象だ。下記にCJ Internetより提供を受けた各種族の変身後のアクションシーンを収録したムービーを掲載するのでぜひ自身の目で確認してみて欲しい。

 さて、2度のβテストにより、おぼろげながら輪郭がつかめてきた「DBO」だが、まだまだわからないことだらけだ。そこで今回はG-Starへのプレイアブル出展に合わせて「DBO」クリエイティブディレクターの高宮孝治氏へのインタビューを行なった。


【人間族変身ムービー(スーパーサイヤ人)】

【ナメック族変身ムービー(巨身術)】

【魔人族変身ムービー(純粋魔人)】



■ 日韓共同開発ありきでスタートした「DBO」開発プロジェクト

NTLのCOOで、「ドラゴンボールオンライン」のクリエイティブディレクターを務める高宮孝治氏
貴方もスーパーサイヤ人になれる! 「DBO」は、「ドラゴンボール」ファンの願望を叶えてくれるMMORPGだ

編集部: まずは高宮さんのキャリアを教えてください。

高宮孝治氏: 私は元々テクモにおりまして、新卒から10年ほど勤めました。「モンスターファーム」の1から3までを作ったところで退職いたしました。その後フリーランスでやってきたのですが、2004年からNTLに参加しまして、「DBO」のクリエイティブディレクターをやっているという経緯です。

編: これまでのキャリアと「DBO」プロジェクトは直接結びつきませんが、どのような経緯でこのプロジェクトに関わることになったのですか?

高宮氏: NTLの社長(NTL代表取締役社長 玉舎 直人氏)とは元々別件で知っておりまして、そこからの経緯です。私自身も元々「ドラゴンボール」が大好きですし、参加したかったこともあります。

編: そもそも「DBO」の企画自体はどこから始まっているのでしょうか。

高宮氏: 私共のほうから企画のご提案をバンダイさんに行なったのがきっかけです。社長とバンダイのとある方と知り合いでその仲からの話です。なかなか我々のようなところが単独でやろうと思ってもできないわけですが、バンダイさんの力をお借りすることでご提案することはできるかなと思いました。それとは別に、社長の個人的なものですが、韓国に知人が多く、ゲーム開発者との繋がりが多かったことも影響しています。日本だとなかなかオンラインゲームの開発者は人数が少ないですが、韓国であれば人数をそろえることも可能であろうと。日本のキャラクタである「ドラゴンボール」でゲームを作ろうという企画を立てて相談しました。

編: 「ドラゴンボール」のオンラインゲームを作るという話と、韓国に人脈があるという2つの話が合わさったんですね。

高宮氏: そうですね。NTLはそれ以前に韓国で何か開発していたわけではなく、「DBO」が初めてのタイトルといっても申し分ないです。ご提案する際から韓国との共同開発が前提でご提案申し上げました。

編: 共同開発を前提にした理由はなんですか?

高宮氏: 開発者の量を考えた場合に、日本では難しいということがありました。

編: 韓国には日本の有力IPを使ったオンラインゲームが結構ありますが、実態は丸投げに近いケースが多い。しかし、「DBO」は開発中のゲームを見る限り、明らかにそうではないですよね。

高宮氏: 日韓共同プロジェクトの開発パターンとしては、日本側の開発会社さんが企画を立てて、韓国の開発会社さんに作っていただく形になると思うのですが、私たちも最初はいくつか枠組みをトライしてみて変更したこともありました。その中で会社対会社、日韓になるとどうしても同じ目標を共有しにくいということがありました。今は完全に名前も同じNTLで、日韓にそれぞれ会社が存在しますが、チームとしては完全に1つで、韓国の方のNTLを立ち上げる際にも、このタイトルに興味がある人を集めていった経緯があります。最初のコアメンバーはバンダイさんにご提案にいったときには、私と日本側の社長の2人と韓国の2人の計4人でご提案にいったのです。その後、プロトタイプを出させていただいた際には十数名でうかがわせていただきました。そこから本開発に入り、韓国で人材を集めていきました。

編: 日韓2つの開発チームでの役割分担はどのようになっていますか?

高宮氏: NTL自体が開発タイトルを発表したことのない会社で、「DBO」が初めての作品です。会社組織自体は日本と韓国でそれぞれ持っていますが、NTLという会社全体が完全に「DBO」にオールインしている状態です。日本と韓国が1つのチームとして制作を行なっています。人数比としては韓国側で60人、日本側で10人強という割合です。韓国のオンラインゲームの開発力と日本のクリエイティビティで世界をターゲットにした作品を作りたいというのが基本ポリシーです。

 役割分担としては、プログラミングはすべて韓国側で行なっていまして、日本側では原作キャラクタやアバターなどのグラフィックスを担当しています。マップやNPCやモンスターの制作は韓国側で行なっています。企画面では日本側で企画に特化した人間が2、3人おりまして、詳細の企画は韓国側で十数名立てています。ディレクターがゲームディレクターと、2Dと3Dのアートディレクタで3名、そして私はクリエイティブディレクターになります。原作ぽいかどうかのジャッジであったり、版元さんへの確認等の仲立ちを日本側のディレクターが中心となって行なっています。



■ 「ドラゴンボールオンライン」の世界設定と基本的なゲームシステムについて

「システム的にはかなりオーソドックスなMMORPGだと思います」という高宮氏
トランクスを通じてタイムマシンクエストを受ける
タイトルの由来であるドラゴンボールは、「DBO」では比較的ポピュラーな存在になっており、全ユーザーが同時並行して7つ集めることができるようだ
天下一武道会の様子。観戦システムをどうするか検討中のようだ

編: 現在の開発の進捗状況を教えてください。

高宮氏: クローズドβテストが11月で2回目が終了しまして、遠からずオープンβテストのお知らせができるのではないかと思います。開発に関してOBTの範囲は完了していまして、クローズドβテストで出てきた問題のチューニングを対応しています。

編: 2007年の3月に、日本でバンダイナムコゲームスさんがリリースを出しました。日本のゲームファンはそれからの開発経緯を知りたがっていると思います。

高宮氏: 私共の力量不足ということもありますが、オンラインゲーム市場がCBTに求めるものが、プロジェクトを始めた5年前と今では変わってきていることもあります。CJIさんに運営会社が決まってから、CBTはもはやテストではなく、商用化に向けたプロモーション段階として、ある程度のボリュームがある段階で臨まなければ市場で勝てない状態になっています。そのための作り溜めが求められたため時間が掛かりました。

編: 率直にお伺いしますが、「DBO」とはどのようなオンラインゲームなのでしょうか?

高宮氏: システムだけでいくとかなりオーソドックスなMMORPGだと思います。タイトルを紹介する際にこういう新規システムがあることを謳うタイトルがあると思いますが、そこは敢えて謳わないつもりです。主要となる3つのコンテンツもかなりオーソドックスなMMOの遊びだと思いますので、今回集英社さんや作者の鳥山先生のご理解のおかげで、新しい「ドラゴンボール」の世界がありますので、ちゃんとシステムとミックスすることで、普通にPvPをやるよりも天下一武道会でやったほうが数倍面白いわけです。例えばディズニーランドに行ったときのようにワールド自体にのめりこむことができます。そこが1番の売りになります。

編: 「主要となる3つのコンテンツ」とは何でしょうか。

高宮氏: 1つはタイムマシンです。原作の世界をパーティー単位でプレイするというものです。もう1つは「ドラゴンボール」収集です。特定のMOBを倒すことで「ドラゴンボール」をドロップすることがあります。7種類集めることで「シェンロン」を呼び出すことができます。原作では世の中に7つしかありませんので、ユーザーさんは中々楽しむことができない。そこも年月が経ってそれぞれのユーザーさんが7つ集めることができるようになっています。

 もう1つは「天下一武道会」です。PvPモードになります。原作では1対1が基本ですが、本作ではパーティー戦も用意しています。最大で5対5まで戦うことができます。これら3つに共通するのは原作性が高いということです。「ドラゴンボール」をベースにしているということで、日本でもMMORPGに普段なじみのない方が参加される可能性があるということです。そういった方が序盤をクエストで遊んでいただいて、タイムリープクエストで原作を感じていただき、そろそろというところでいわゆるマルチプレイに参加してもらい、そこから先に長くゲームを遊んでいただける流れを想定しています。

編: ちなみにドラゴンボールを集めて「シェンロン」を呼び出すとどういったものが貰えるのでしょうか。

高宮氏: 検討中です。原作にもあった“ギャルのパンツ”は入れたいなと思っています(笑)。

編: なるほど(笑)。新作のMMORPGは新しいゲームデザインやシステムにこだわっていますが、「DBO」はまずは素材を活かしていこうということですね。

高宮氏: オンラインゲームをプレイしていて思うことですが、プレイしているうちにどれがどの世界観かわからなくなってしまうということがあると思うのです。「DBO」においてはあきらかにそれはないですし、純粋に「DBO」をイメージしたドラゴンボール収集や天下一武道会など入る前からイメージしやすい遊びがあるのが強みだと思っています。

編: “集英社さんや鳥山先生のご理解のおかげで新しい「ドラゴンボール」の世界が用意できた”ということですが、「ドラゴンボール」の原作はかなり長い物語です。題材として使われているのはどのあたりになるのでしょうか。

高宮氏: 今回原作の時代として使わせていただいているのはサイヤ人編の部分です。ナッパとベジータが始めて地球にやってくるところの戦いを中心にしています。

編: テレビで何度も放映されている作品を代表する部分ですね。

高宮氏: ユーザーさんが素直にプレイしたい部分だと思いますので、今後パッチにあわせてタイムマシンクエストを追加していくことになると思います。題材的にも原作で1番わくわくした戦いの部分を使っていきたいなと思います。

編: 「ドラゴンボール」に限らず、「Dr.スランプ アラレちゃん」の頃から鳥山先生の漫画には、笑えるネタがふんだんにちりばめられています。こうしたエッセンスはどのようにゲームに盛り込まれるのでしょうか。

高宮氏: 基本的には「ドラゴンボール」のバックボーンがないものは登場させないことがポリシーとしてありますので、ちょっとしたクエストの小ネタやNPCなどとして細かいネタとしてたくさん登場していると思います。

編: 例えば「ミスターサタン」に関連したクエストなどはあるのでしょうか。

高宮氏: あります。今のところは「ミスターサタン」というNPCは登場してきません。当然時代が異なるといったこともありますが、タイムマシンクエストを通じて彼が登場するクエストもありえます。例えば原作上では彼は地球の英雄として生きていましたので、彼の足跡がわかるようなオブジェクトや建物があったりします。彼をリスペクトした映画の看板などを見ることができます。

編: タイムマシンという要素を世界観に取り入れると、なし崩し的に何でもありになってしまいそうですが、どのようにリミットを掛けていくつもりですか?

高宮氏: タイムマシンというもの自体は、原作でトランクスが使用していますので、ある意味原作に基づいた要素ではあります。ただ、おっしゃるとおり無尽蔵に使ってしまいますとどんどん原作からかけ離れてしまいます。あくまで行き先は原作の時代としています。ベースになる世界は原作より未来という構図は崩さないようにしています。

編: タイムマシンを利用して原作の時代に行くということは、原作に登場する人物は軒並み登場すると考えていいですか?

高宮氏: なるべく出していきたいと思っています。そのまま登場させるのはタイムマシンクエストの中だけになりますので、他のフィールドでは長生きして問題ないキャラクタや、そのキャラクタのもしかしたら子孫なのかなというNPCが登場したりします。設定やキャラクタについても逐次確認を取ってもらっています。

編: 最近のメディアミックスですと、漫画やアニメの続編が、映画やゲームで出るという展開がありますよね。「DBO」と原作との関係性についてですが、本作は原作から見た場合、正史にあたるものなのでしょうか。或いは外伝にあたるものなのでしょうか。

高宮氏: 版権的にはコミックの版権に基づく契約でやらせていただいています。原作に基づいたストーリー展開という考えでいけば続編的なものと考えていただいてよろしいと思います。と僕が言ってしまってよいのかどうか(笑)。我々としては亜流ではなく、本物の「ドラゴンボール」をお預かりしている気持ちで作っております。

編: 日本では指数関数的に強くなるような状態を俗に「ドラゴンボール状態」などと表現したりすることもありますが、「ドラゴンボール」の原作は、一部の登場キャラクターがまさに指数関数的に強くなります。原作における強さのインフレを、ゲームの中ではどのように制御していくのでしょうか。

高宮氏: それも1つの問題です。原作を元にMMO化するときの問題だったのです。実はそれを解消するために設定時代をずらしているのです。彼らがそのままプレーヤーキャラクターの場合だと、原作どおりの戦闘力の上昇がなければならないのですが、「DBO」の時代設定は未来になりますので、元々キャラクタ自体に潜在能力はあるけれどもそれが覚醒していない状態になります。

編: 「元気玉」といった特定の技なども実装されていくつもりなのでしょうか。

高宮氏: 今のところ実装されていないのですが、ニーズの強いものになりますので検討していきたいと思います。

編: プレスリリースによれば原作者の鳥山明さんご本人がゲームの監修をされているとのことでしたが、具体的にどこまでチェックされているるのでしょうか?

高宮氏: 例えばグラフィックスに関して言えば、すべて目を通していただいています。グラフィックス自体をご本人に描いていただいているものもあります。

編: 今回CJIのブースで色々なポスターが出ていましたが、あれすべてが鳥山先生が描いた絵というわけではなさそうですね。

高宮氏: コメントしづらいところですが、すべて集英社さんに承認していただいたものです。



■ G-Starで初公開された新種族「魔人」など、βテストの最新情報を聞く!

「DBO」ならではの解釈を語る高宮氏。オリジナルストーリーを作る以上、完全に頭にたたき込んでいるといった印象だ
オリジナル種族である「魔人」。画面は、レベル50以上の魔人が変身できる「純粋魔人」
カリン様。「DBO」では、子どもから成人になって、マスタークラスへと転職を誘う重要な役割を担う。ちなみに原作から200年以上が経過しているためカリン様も年を召したということで老眼鏡を掛けている

編: クローズドβテストには未実装で、今回G-Starで登場した種族に「魔人」がありますが、魔人にはどういった種族なのでしょうか。

高宮氏: 原作には魔人という種族はそもそも存在しませんでした。魔人ブウという1人のキャラクターしか登場しません。我々がテーマにしたのは原作とMMORPGをちゃんと融合させて、本物の「DBO」を作ろうというのがテーマでした。見てくれだけ似せただけのMMORPGではなく、ちゃんと原作がMMORPGの要素に絡んだ形にしたいという気持ちがありました。原作にはないアバター制をとりたかったのです。アバターの種族を人間だけで構成しようとするとどうしてもバリエーションが限られてしまうので少なかったのです。それでナメック星人や魔人を設けたのが発端です。

 原作から見ると元々無い設定ですので、ハードルの高い企画になりました。MMORPGとして必要かつ、そこの設定に至るまでの原作から200数十年後のご説明であったり、時代の経緯やその間にどういうことが起こったという新たなストーリーだったり、とにかくたくさん作りまして集英社さんと一緒に企画をもませていただいた結果、認めていただけることになったのです。

編: その原作からゲームの舞台であるAGE1,000年までの間にどういったことが起きて、ナメック星人と魔人族がオンラインゲームに登場するようになったのでしょうか。

高宮氏: ゲームの中で語られることはないのですが、ナメック星人については、原作では新ナメック星というところに彼らが移住して設定としては終わっているはずです。原作後に新ナメック星が新たな敵に襲われて、地球に移住してきているという設定になっています。魔人の種族は原作では魔人ブウが地球に住んで終わっています。彼が地球で暮らしている中で、人間の暮らしにあこがれて自分も女の子に恋をしてという気持ちから自分が分裂して種族が生まれて子孫が繁栄していったという設定です。

編: 魔人族はゲームの中でどういう役割になりますか。

高宮氏: 魔人の中にもいくつか職業があってそれでも異なるのですが、基本的にはタンカー的な役割です。外見的にもそういったものが合っているキャラクタですし、それで魔人の種族を考えたところなのです。今クラスが大魔神とイ魔人というものに分かれていて、さらにマスタークラスとして2つずつ細分化していきます。それによって、若干位置づけが異なってきます。その他については2つあるうちの1つが攻撃型で、1つがサポート型になっています。どの種族を選んでもソロでもそこそこ遊べるようにはできています。同種族のなかでパーティーを組んでプレイもできるようにしました。

編: 1次クローズドβテストではレベル1からスタートして、2次クローズベータではレベル30からでした。その間にはどういったコンテンツが用意される予定ですか?

高宮氏: おそらく1次に参加された方で、早い方では15レベルくらいまではアップすることができたと思います。2次のときにレベル30から始めましたが、始めた村がカリン島のある地域でした。だいたいあのあたりにレベル20からもう少し上くらいで到達できます。1次クローズドβテストと2次クローズドβテストの間にそれほどの大きな開きはないものと思っています。1次テストを普通にプレイしていると最初の地域の後半くらいで終わってしまったのですが、そこからカリン島のある次の地域まで、ストーリー的には「マスタークラスの鍵になるカリン島へ向かえ」という展開で進むことになります。

編: タイムマシンについてですが、レベル5と10と15のときにクエストが受けられ、レベル20からは自由に利用できるようになるコンテンツだと伺っておりますが、最終的にはどのような形での実装を予定しているのでしょうか?

高宮氏: タイムマシンを使って時間移動を伴うクエストは2種類ありまして、1つは「タイムマシンクエスト」というもので、レベル20くらいからプレイ可能になっています。もう1つは序盤に配置され、1人で行なうクエストで「タイムリープクエスト」と呼んでいます。

 我々はタイムマシンクエストをメインコンテンツとして考えていまして、そこでパーティー単位で原作のストーリーをたくさん遊んでいただきます。レベル20以降に4話分の内容が含まれています。しかし、レベル20からということになると、原作の話に触れるタイミングが若干後ろになっています。そこで導線といいますかユーザーの心の欲求を満たすために、タイムマシンクエストに繋がる小さな時間クエストをタイムリープクエストとして追加していった経緯があります。

 チュートリアルでトランクスとの出会いのシーンがあるのですが、お話としてはそれとつながっています。ユーザーの方からすると原作とまったく異なる設定ですので、チュートリアルから3つのクエストを通じて、タイムマシンで移動しながら原作の世界とリンクさせていきます。ここの場所は原作から見ると未来の世界なのだということをだんだんとわかっていくことになります。

編: タイムマシンクエストはパーティーを組んでクリアするとのことですが、1度クリアした人の扱いはどうなるのでしょうか。

高宮氏: タイムマシンクエスト自体はタイムアタック制にしています。ですからタイムを競っていただく遊びもできると思います。1度クリアした人でも再度プレイすることができます。

編: 人間族は「スーパーサイヤ人」になれますが、あれはどういう設定になっているのですか?

高宮氏: 原作では人間の種族とは別に「孫悟空」や「べジータ」といった「サイヤ人」が登場しましたが、年月を経て彼らの血が人間種族の間で広がっているというイメージです。長い年月を経て平和な時代が続いているのでみんな意識はしなくなってしまっています。修行することによってそれが覚醒してスーパーサイヤ人になれるということです。

編: つまりプレーヤーキャラクターは皆彼らの子孫だという設定なのでしょうか。

高宮氏: そうかもしれません。純粋に年月を計算するとそれくらいで拡散するのかということはあるかもしれません。

編: ゲームマスターのアナウンスの際にふきだしのところに「鳥山ロボット」が登場するのがおもしろいですね。

高宮氏: 「DBO」で気を遣っているのは、ゲームの中のものをすべて「ドラゴンボール」の設定に基づいた設計や表現にしたいということです。GMのメッセージはゲームのプレイからするとちょっと上のレイヤーになります。それを表現するときに適切なものを考えると、作者の方が語るというやり方はフィットするのではないかと考えました。集英社様と相談してああいった形を取らせていただきました。

編: 「天下一武道会」は定期的に行なわれるのでしょうか。

高宮氏: 定期的に開催されます。天下一武道会が始まると予選が始まります。予選に参加する条件は、普段参加できるPvPのランクバトルの戦績上位者となります。

編: 観戦のシステムはどうなっていますか。

高宮氏: 現在調整しています。多人数が会場に集まることは想定していないので、別の手段を検討中です。

編: 会場に何百人も座りこまれると困りますよね。

高宮氏: そうなのです。それで重くなってしまっては選手として戦うプレーヤーが困ります。特にイベント的なものにも応用がきくような、映像を出して観戦するシステムは仮ですが作ってはいます。とりあえず出せる形では作りましたが、実際そうするかは未定です。



■ 「DBO」のメインストーリーと今後の展開予定について

サービススケジュールや日本展開に関してはかなり苦しい答弁となった。日本上陸はいつになるだろうか
「DBO」の世界で、新たな敵として立ちふさがる謎の勢力のシルエット。彼らとの戦いを描いたストーリー展開がアップデートの軸のひとつになるようだ

編: 「DBO」の基本的なゲーム展開はどのような形を想定されていますか。

高宮氏: 序盤に関してはクエストベースのシナリオを追っていただくことである程度のレベルアップができるようなバランスにしています。レベル30で発生する大人になるためのマスタークラスへの転職まではクエストベースでレベルアップが可能な調整を行なっています。

編: 本作には基本的なストーリーのようなものは存在するのでしょうか。

高宮氏: 「DBO」独自の大きな敵が存在しています。

編: 動画の最後に黒いシルエットで登場する人物ですね。

高宮氏: そうです。それが原作には登場しない敵になります。彼らがメインの舞台となるAGE1,000年にも攻撃していますし、原作の時代である過去にも攻撃をしています。それはなぜなのか、それが誰なのかということを追っていくのがメインストーリーになります。

編: メインストーリーは、クエストという形で提供されるのですか?

高宮氏: 主にストーリーを語るのはタイムマシンクエストになりますね。後は一般のクエストにそういったエッセンスがちりばめられてあります。

編: 最終的には解決するのでしょうか。

高宮氏: メインストーリーのアップデートも考えていますので、すぐには完全解決ということにはなりませんが、大規模アップデートのタイミングで話が進展することは考えています。

編: アップデート計画については、どのようなプランを検討していますか?

高宮氏: まだそのあたりは検討中です。

編: ビジネスモデルはいかがですか。

高宮氏: 基本無料ベースのアイテム課金制になります。

編: 有料アイテムについてはどのような企画を立てていますか?

高宮氏: 現在CJ Internetさんと協議しているところです。

編: サービススケジュールはいかがでしょうか。

高宮氏: まだフィックスはしていません。

編: 2010年には見ることができますか。

高宮氏: ノーコメントで(笑)。1開発会社としてがんばります。

編: 日本の運営会社は決まっているのでしょうか。

高宮氏: 聞いておりません。

編: 高宮さんが考える理想のオンラインゲーム像はどのように考えられているのでしょうか。

高宮氏: オンラインゲームは開発だけで回るものではなく、運営と一体となって取り組んでいくものと思っています。今回開発の中ではMMORPGのシステムと、原作のストーリーというところでミックスしたものができたと思うのですが、これから運営していくにあたり、運営のかたがたともちゃんと世界観を共有して良いクオリティでお客さんに提供するのが目指すところになります。あくまでサービスの場と考えて、居心地の良い楽しいところを目指すところだと思います。

編: 日本人のクリエイターさんの意見としては若干高宮さんは控えめな印象を受けます。そこはこれまでの日韓共同開発の中で学んだということなのでしょうか。

高宮氏: 新規システムを主張したオンラインゲームは軒並み失敗に終わっています。私はオンラインゲームはむしろサービスとして捉えるべきだという気持ちです。

編: 土台を作ってからクリエイターとしてやりたいことをやろうかなということでしょうか。

高宮氏: 実際、その上でなければへんな主張をしても意味がないと思っています。また、変な主張をすることで原作を傷つけるようなことはしたくないと思っています。

編: 将来的に「DBO」の中でやってみたいことはありますか。

高宮氏: これまでコンソールゲームではたくさん「ドラゴンボール」タイトルが出ていて非常に素晴らしいタイトルが多いのですが、バトルの部分だけになりがちです。「DBO」ではバトルばかりではない「ドラゴンボール」やオリジナル世界、ストーリーの魅力などを表現できる場になればなと思います。その場でプレーヤーの皆さんがアバターとして「ドラゴンボール」ごっこを楽しんでいただければなと思います。

編: 日本のユーザーさんにメッセージをお願いします。

高宮氏: 現段階では日本では何も始まっておりませんので申し上げにくいところではありますが(笑)、いつの日か日本でサービスするときに、日本の方の「ドラゴンボール」愛のお眼鏡にかなわないようなものは作りません。がんばって開発していきますのでお待ちいただければと思います。

編: 期待しております。ありがとうございました。

COPYRIGHT BY (C)AKIRA TORIYAMA・BIRD STUDIO/SHUEISYA INC. (C)DBO PROJECT CREATED & DEVELOPED BY NTL, PUBLISHED BY CJ Internet

(2009年 11月 30日)

[Reported by 中村聖司 ]