Electronic Entertainment Expo 2009現地レポート
米Microsoft、「Xbox 360 E309 Media Briefing」を開催
コントローラ不要の新エンタメシステム「Project Natal」、小島プロの最新作「METAL GEAR SOLID: RISING」の展開などを発表
米Microsoftは、E3前日にあたる現地時間の6月1日、ロサンゼルスのGalen Centerにおいて「Xbox 360 E309 Media Briefing」を開催した。単一メーカーのプレスカンファレンスとしては類を見ない2時間強に渡る長時間のイベントとなったが、その長さに見合う実に盛りだくさんの内容が発表された。
本稿では取り急ぎ、MicrosoftがXbox 360を通じて行なっていく新サービスとサプライズ発表を中心にご紹介していく。また、喝采を持って迎えられたXbox 360が誇る魅惑の新作ラインナップ「10 World PREMIERES」については別稿にて詳しくお伝えしたい。
【Galen Center】 | ||
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「Xbox 360 E309 Media Briefing」の会場となったGalen Center。ダウンタウン南部の南カリフォルニア大学の隣にある。カンファレンス会場としては大規模であり、ここにもメガショウへの復古の影響が感じられる |
■ 大いなる収穫の時期を迎えたXbox 360プラットフォーム。「MGS」がついにXbox 360へ
マイクロソフト インタラクティブエンターテイメント LIVE、ソフトウェア、スタジオ担当コーポレートバイスプレジデントのジョン・シャパート氏。昨年、東京ゲームショウでも基調講演を努めた人物だ |
プレゼンターを務めたマイクロソフト インタラクティブエンターテイメント LIVE、ソフトウェア、スタジオ担当コーポレートバイスプレジデントのジョン・シャパート氏はカンファレンスの冒頭で「我々は不況下でも順調だった。人々は不況だからこそ楽しみを求めるのです」と切り出し、「今回は売り上げのチャートやグラフは見せません。10本の未発表のゲームタイトルをお見せします」と切り出し、拍手喝采を受けた。
近年のE3で各プラットフォーマーが、自社にとって都合の良い数字やグラフだけを見せて、いかにも自社のプラットフォームが勢いがあるかをアピールすることが恒例となっているが、シャパート氏の発言は、そうした過去の“数字合戦”を揶揄した表現であり、Xbox 360はそのようなアピールをしなくても優位なポジションにいるのは自明だというわけだ。
実際に、Xbox 360の優位性はエクスクルーシブ(独占)タイトルの多さでも感じることができた。今回発表されたXbox 360の新作ラインナップ「10 World PREMIERES」では、12タイトル中、実に9タイトルがXbox 360独占配信となっている。マルチプラットフォームタイトルについても「Xbox 360はどのようなジャンルのブロックバスタータイトルも遊ぶことができる」(シャパート氏)と、タイトルの獲得に絶対的な自信を覗かせた。
毎年恒例のビッグサプライズタイトルは、2006年の「Grand Theft Auto IV」、昨年の「ファイナルファンタジー XIII」に続いて、PSフランチャイズのキラータイトルの最後の砦だった「MGS」シリーズの最新作「METAL GEAR SOLID: RISING」だった。いずれも前作はPSフランチャイズ独占あるいは先行配信のタイトルばかりであり、もはやサードパーティーに聖域はないと言えそうだ。
そのほかにも、マルチプラットフォームタイトルの多くが、発売後にリリースされるダウンロードコンテンツ(DLC)の一部あるいはすべてが独占や先行だったりするほか、今回新たに動画/音楽配信サービスの強化や、Twitter、Facebookといったソーシャルサービスへの対応が発表されるなど、Xbox 360はコンテンツの囲い込みをあらゆる領域で広げつつある。こうした動きに対して、SCEや任天堂はどのような取り組みで対応を行なっていくのか、明日以降の各社のプレスカンファレンスが楽しみだ。
■ コントローラーなしでゲームが遊べる画期的な新インターフェイス「Project Natal」
さて、今回の「Xbox 360 E309 Media Briefing」では、久々にハードウェア方面の発表が行なわれた。といってもXbox 360の次期バージョンや、噂が絶えない携帯型ゲーム機ではなく、Xbox 360用のまったく新しいインターフェイスという意外なところだった。
「Project Natal(ナタル)」と名付けられた新インターフェイスは、ハードウェア的にはきわめて高機能なセンサーであり、機能としてはRGBセンサー、深度センサー、マイクロフォン、専用タイトルと情報をやりとりするためのプロセッサで構成されている。Wiiのモーションセンサーと同じように、テレビの上部か下部の中央に取り付けるタイプのデバイスだ。
マイクロソフト インタラクティブ エンターテイメント ビジネス シニア バイスプレジデントのドン マトリック氏は、ビッグサプライズだった「MGS: RISING」のプレゼンターを務めた小島氏を見送った後、おもむろに「むしろゲームコントローラーがあるからゲームをやらないという人がいる。我々はゲームコントローラーを超えるデバイスを考えていくうちに、自分自身がゲームコントローラーになればいいということに気がついた」と謎かけを行ない、まだ何か発表があることを促した。
その後に流された「新しい遊び方の紹介」と称したプロモーションムービーでは、画面の相手に、蹴り技を繰り出したかと思いきや、素手でハンドル操作を真似るだけでレースゲームがプレイできたり、体の動きのとおりに画面上のキャラクタが動いたりなど、まったく新しいゲームシーンが実現されていた。ダッシュボードでは、手を左右に動かすだけで項目を操作できたり、音声でコマンドを入力できたりなど、まさに体そのものがインターフェイスになっている。
会場ではその後、「Project Natal」の実機を使ったデモンストレーションが行なわれた。1つ目のデモはダッシュボード。「Project Natal」のクリエイティブディレクターを務めるクドー・ツノダ氏が自らモニタの前に立って、ダッシュボードにログインを行ない、四肢を前後に動かしたり、回転する動作がそのままモニタ内のアバターに反映することをアピール。その後、上下左右への手振り操作でダッシュボードを自由自在に操れることを実証すると、会場からは驚きの声が上がった。
続いてのデモでは、スカッシュのような限られた室内空間で、四肢を使って複数のボールを素早く打ち返して、奥のパネルを倒していくというスポーツ系のゲームと、四肢を筆に見立てて、特大のキャンバスに絵を掛ける「おえかきパーティー」と呼ばれるデザインツールが披露された。
デモでは実演者が体を大きく動かしてゲームの操作を行ない、その見事なリンクぶりに場内からたびたび驚きの声が上がった。センサーを使ったエンターテインメントは、SCEには「EYE TOY」、任天堂にはWiiリモコン&ヌンチャクなどがあるが、「Project Natal」は手や体に何も身につける必要がなく、それでいてきわめて高解像度の認識が可能というところが新しい。
「Project Natal」に関しては、発売時期や価格、対応タイトルの開発状況などについては一切明らかにされなかったが、Xbox 360というプラットフォームの可能性を広げる魅力的な新提案だ。続報に期待したい。
【「Project Natal」デモ】 | ||
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会場で行なわれた2つのデモンストレーション。体に何も付けなくていいため自由な動きが可能な上、2つのモーションセンサーにより高い精度で動きを検知できる。「おえかきパーティー」は、巨大なキャンバスに、絵の具をぶちまけて絵を描くということをNatalで再現しようとしたその発想そのものが素晴らしい。「Natal」ではこうした予期せぬエンターテインメントが生まれそうだ |
■ 非ゲーム系のサービスも続々拡充! ただし日本は依然として未対応
Xbox Live担当のシャパート氏からは、Xbox Liveの拡張プランが次々と発表された。今回特に重点が置かれたのは動画関連のサービスだが、音楽配信やコミュニティ支援なども充実し、リビングにXbox 360が1台あれば、あらゆるデジタルエンターテインメントにアクセスできるという環境が整いつつある。唯一にして致命的な欠点なのが、「日本展開の予定はない」という1点だが、E3レポートと言うことで、MicrosoftがXbox 360を通じて何をしようとしているのか紹介しよう。
・1080p、5.1chサラウンド映像の配信開始Zune Videoで提供されている動画が、今秋からXbox 360でもHDクオリティで再生できるように。
・映像配信地域の拡大Xbox 360を通じて映像が視聴できるサービスの対応地域が8カ国から18カ国へ。新たな対応地域はオーストラリア、オーストリア、ベルギー、デンマーク、フィンランド、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、スウェーデン、スイス。これらの地域では既存地域と同様に1080pのHDクオリティで映像を楽しめる。日本は依然として対象外。
Netflixのサービスを強化動画配信サービスのNetflixにおいて、新たにストリーミング再生に対応し、待たずに視聴できるように。Xbox Liveパーティーを通じて最大7名と同じ動画視聴を共有できるようになる。
・BSkyB Ltd.によるライブ番組の視聴が可能にSkyを新たなパートナーに加え、英国とアイルランド限定で、ライブ放送を視聴可能に。こちらも最大7名による共同視聴が可能。
Facebook、Twitterへの対応Xbox 360を通じて、欧米でメジャーなソーシャルネットワークサービス(SNS)であるFacebook、Twitterのサービスを利用できるようになる。Facebook Connectを利用すれば、Facebookにゲームの情報やスクリーンショットをアップロードでき、ゲーム体験を多くのユーザーと共有できる。
Last.fmをゴールドメンバーに対し無料提供CBS Interactive Music Groupが提供する音楽配信サービス「Last.fm」を、Xbox Liveゴールドメンバーシップのユーザーに対して、無料で利用できるようにする。
最後に、今回、動画配信サービスの展開地域に新たに10カ国が加わり、全18カ国になることが発表されたが、日本市場は依然として含まれていないのが気になった。リージョンや著作権の問題など、様々な要素がネックとなっていることは理解できるが、だとすれば日本独自のサービスを企画すべきであり、不公平感はぬぐいがたい。今回の発表により、サービスレベルの格差はまた一段と広がってしまった印象が強いが、これ以上地域によるサービスの格差が広がらないことを願うばかりだ。【SKY】 | ||
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BSkyB Ltdが提供するSkyのライブ放送またはオンデマンドTVがXbox 360で視聴可能に。「ビデオマーケットプレイス」は、もはやセットトップボックス的なサービスとしては並ぶものはいない |
【FacebookとTwitterに対応】 | ||
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ゲーム、映像、音楽に続く領域はコミュニティサービスだった。FacebookとTwitterユーザーのゲームファンにとっては嬉しいニュースだろうし、これをきっかけにより一層ゲームコミュニティが盛り上がりそうだ |
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□Electronic Entertainment Expo(英語)のホームページ
http://www.e3expo.com/
(2009年 6月 2日)