ニュース

【必見! エンタメ特報】映画「ズートピア」“ありのままで”の真の意味とは?

子供にわからないギャグもたっぷり! 動物かわいすぎの都市ミステリー

4月23日 公開

 映画「アナと雪の女王」が記録的なヒットとなったディズニーにとって、「Let It Go」という言葉は喉につっかえた小骨のようものだったのではないかと思う。

 「アナと雪の女王」では実際のところ、作中の楽曲の1つである「Let It Go~ありのままで~」ばかりが話題に上り、作品全体のストーリーやテーマがそれ以上に語られることは少ない。

 この曲自体は、楽曲の良さに引っ張られてストーリーが改変されたとする逸話が残るほどの傑作だったわけだが、一方で「Let It Go」と自分に言い聞かせながら、“ありのまま”=本来の姿を解放したエルサの喜びだけが「アナと雪の女王」の印象として独り歩きしているのではないか。「アナと雪の女王」といえば「Let It Go」だが、この曲が作品全体を表わしているかというとまた違うのも、ディズニーとしては心苦しいところだろう。

 ゆえに言葉としての「Let It Go」は数ある流行語の1つ程度の存在でしかなかったわけだが、ではディズニーが伝えるべき「Let It Go」の真の意味とは何なのだろうか? この「アナと雪の女王」の置き土産に対する答えの1つが、今回紹介する映画「ズートピア」だ。

【『ズートピア』予告編】

明るく楽しいだけじゃない、理想都市で追う「夢」

左から、新米警官のジュディと詐欺師のニック。2人はズートピアで出会うことになる

 「ズートピア」の舞台は、動物たちの間に文明が発達し、種類を超えて社会を営む理想的世界を実現したタイトル同名の都市。動物たちは2足歩行で服を着て、草食動物と肉食動物が共に暮らし、ネズミからキリンまで、体格に合わせた施設やサービスが充実している。

 言うまでもなく、これは人間社会の投影だ。街中は様々な動物が混在しているが、ネズミにはネズミのコミュニティがあり、ウサギにはウサギのコミュニティがある。特に「人種のサラダボウル」と言われるニューヨークなどを反映した街だと考えるとわかりやすい。

 本作はこの人間社会を動物をキャラクターとして描くことで、コミカルなタッチにしながらも、種別を超えて暮らすことの難しさをより強調している。本作の主人公であるウサギの女性「ジュディ・ホップス」が“ウサギ初の警察官”として警察に初出勤する場面があるのだが、そこにいる動物はライオンやシロクマ、サイなど、体格からして圧倒的に違う種類ばかり。猛獣の中にウサギが迷い込んだようだ……というのは良くある例えだが、これを地で行っており、「ウサギの警察官」の異質さが良く感じられる場面だ。

ズートピア式トレイン。動物の体格に合わせたバリアフリーな作りだ
【「ズートピア」ZPD警察署受付 クロウハウザー】
ジュディ(上戸彩さん)と警察職員のクロウハウザー(サバンナの高橋茂雄さん)のやり取り。クロウハウザーはチーターだがドーナツ大好きのぽっちゃりさん。裏表のなさそうな好人物だ

 本作でのポイントは、ジュディがまっすぐに夢を追う一方で、「ウサギはウサギらしくあるべきだ」と考える人物もいるということ。ジュディの父親は夢をあきらめた人物で、「夢をあきらめたからこそ今の幸せがあるんだ」とジュディの大それた野心を諌めようとし、警察に合格した後も「田舎に戻ってこないか」と過度な心配をかけ続ける。

 また警察では、スイギュウで警察署長のボゴに目をつけられ、大事な捜査をさせてもらえない。どうせウサギに警官なんて無理なんだから、いいだろう、「ありのまま(Let It Go)で」(本当にそう言う)と腐す。ここでは意図的に「Let It Go」を悪用しているのだが、あらゆる障害をその機転と運動量で乗り越えていくジュディは、自分の夢に忠実という意味で「Let It Go」なキャラクターとして描かれている。「自分の本心に従って夢を追うこと」こそ「Let It Go」だというのが、本作第一のテーマだと言えるだろう。

【「ズートピア」警察署、見てみぬフリはできんゾウ!?】
ジュディ初出勤場面。体格の差が圧倒的過ぎる
ウサギで初の警察官に。本人は誇らしげだが、その快挙は「話題性込み」でもある

 しかしストーリーは、このズートピアで発生する連続行方不明事件を追うミステリーへと発展していく。捜査の途中で出会うキツネで詐欺師のニック(彼もまた夢をあきらめており、“キツネはずる賢いヤツ”というステレオタイプを受け入れ、その通りに生きている)も巻き込み、裏社会のボスにも関わることになり、段々と社会の暗部へと足を踏み入れていくことになる……。

 本作は、ジュディとニックが行方不明事件を追う相棒もの、いわゆるバディムービーでもある。最初はいがみ合う2人が、事件を追ううちにお互いの境遇に共感し、次第に最高のパートナーになっていく。恋愛にこそ発展しないが、生真面目なジュディと肩の力が抜けたニックの掛け合いは見ていて楽しく、茶化したり励まし合ったり、2人のコンビネーションが本作を活き活きとさせている。

動物たちの理想社会「ズートピア」で起こっている事件の真相とは……?

 画面全体がかわいらしい動物たちに彩られるので、もちろん子供も楽しめる作品なのだが、本作は大人向けのギャグも多い。印象的なのは怪しい建物の中で活動する「とあるサークル」が登場する場面で、このサークル内では動物たち全員が裸で過ごしている。これ、「人間でもみんなで裸になるサークルが存在する」前提のもと、人間だったら局部にモザイクがかかるところ、動物なのでモザイクなしの全年齢対象だよね! というギャグになっている(ある意味“ありのまま”だ……)。キリンがお尻を付き出して水を飲んでいたり、ゾウがV字開脚でヨガをしていたりとやりたい放題なのだが、これわかる子供がいるのだろうか(笑)?

 また調査中に出会うことになる裏社会のボス「Mr.ビッグ」は、まんま映画「ゴッド・ファーザー」のドン・コルレオーネである。Mr.ビッグの部屋の作りや喋り方を似せているだけでなく、面会人が手に口づけし、「娘の結婚式の日に重ねるなんて……」って、それ「ゴッド・ファーザー」冒頭の状況そのままだよ! その直後は映画「トレーニング・デイ」的な展開もあるし、マフィア映画、警察映画の名作からアイディアを引用しているのも“大人向け”であるし、面白い点だ。

 さらに本作が良いのは、上に書いたようなディズニーらしい前向きなテーマを描きながら、それでいて「社会の暗黒面」にも触れているということ。これはネタバレを含むので詳しくは触れないが、事件全体を通じては「人種差別」(映画では動物だが)という現実世界に直撃するような問題が浮上してくる。「平等な社会を作りましょう」と言いながら、心の奥では「生まれがこうだから本質はこうに違いない」と疑っている。そうした文明社会の脆さもジュディたちを襲うことになるし、「ウサギはウサギらしくあるべきだ」という考えの裏返しとしてもテーマに繋がってくる。明るく楽しいだけでないディズニー式バディ・ムービーとなっているので、特に大人にオススメの作品だ。

(安田俊亮)