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爽快シューター「Halo 5: Guardians」のゲームデザインは合理性を重視

343 Industries現場開発者が明かす「Halo 5: Guardians」の場合

3月14日~18日開催



会場:San Francisco Moscone Convention Center

343 IndustriesのSystems Designer、Ryan Darcey氏

 GDC4日目の17日、Ryan Darcey氏が登壇して、「Halo 5: Guardians」のスパルタンアビリティのデザインに関するセッションが行なわれた。TERMINAL REALITY、LUCAS ARTSを経て、現在のDarcey氏は343 IndustriesでSystems Designerを担当している。ゲームシステムの企画立案、設計の担当だが、レベルデザイナーとしてのキャリアも長い。

 Darcey氏のセッションから得たものは、大きくふたつある。ひとつ目は、前作からの変更点を決める際に、競合するシューターと自分たちの作品とを比較して、ポジションを見直していることだ。Darcey氏は、典型的なシューターとして、「Call of Duty: Advanced Warfare」を引き合いに出し、戦闘が長時間にわたって続くこと、ゲームプレイがスピードチェイスであること、フェイントや陽動といった行動が勝利につながること、攻撃が最大の防御であることといった、「Halo」シリーズの特徴をさらに強調する方向に舵を切ることに決めた。

 この結果が、移動速度の向上やクランバー、スライド、スタビライザー、スラスターパック、インフィニットスプリントといったモビリティの追加につながっている。いずれもスピーディーに敵を倒す爽快感を向上させるための施策だ。

【競合比較】

 5作目ということで過去からの継承もあり、また343 Industriesにとっても2作目の続編であり、ある程度ゲームデザインが確立していることもあってか、きちんと考察を踏まえて合理的に決定しており、決して手なり進行ではない。

 もうひとつは、アビリティ発動の操作コマンドの決定プロセスだ。決定の評価項目は、リスクとリターンのバランス、簡単に発動でき爽快感を体感できるか、プレーヤーの意図通りの動作をするか、の3つの項目について、すべて満たしているかを問うというものだ。

 評価の結果、スパルタンチャージについては、当初起案した、スラスターを使用した状態からの殴りで発動する操作はバランス上の問題が大きくて導入できるものにはならなかった。その改善策として考案したフルスプリントからの殴りは問題点をクリアした。

 同様に、グラウンドパウンドでは、当初フルスピードの状態で落下して普通に殴りを出せば発動する操作を考えたが、その場合、プレーヤーの意図が、敵を殴りたいのか地面を殴りたいのか特的できない。そこで、ジャンプ後に0.25秒以上押しっぱなしの状態のとき、グラウンドパウンドを発動するようにした。

 こういった検討と改善を重ねるなかで、採用に至らなかった操作コマンドもあるが、プレーヤーが楽しめないような操作を要求したところで、本作の良いところを体感してもらえないのだから、当然だというわけだ。

 こうして決定した操作コマンドに基づいて、プレイテストを行ない、時間や距離などを調整していくわけだが、この調整フェイズの目的がぶれないように、あらかじめしっかりゴールを定めている。

【スパルタンチャージの決定プロセス】

【グラウンドパウンドの決定プロセス】

 Darcey氏のスライドからは、どこまで定量的的に捉えられているか、ちょっと読み取れなかったが、少なくとも考課すべき重要項目を洗い出し、レビューの結果、各項目ごとに機銃を満たしていなければ、いくら起案段階で可能性のあるアイディアだと思っても実装しないという方針には共感できる。

 そればかりか、爽快感というプレーヤーの情緒的満足を追いかける項目ですら、合理的に判断するための指標を定めている。何をゴールに置くか明確に定めず、何事もセンスの一言で片付けたり、個々の作業担当者のフィールに委ねてしまっていると、いつまでたっても一定の質と量を揃えることができないということだろう。ひとりのメンバーが単独でできることではないから、なかなか実践できないプロジェクトもあるだろう。1度、自らのプロジェクトの開発手法を点検してみる必要があるかもしれない。

(谷川ハジメ)