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「ダライアスバースト クロニクルセイバーズ」インタビュー
「ダライアス」の歴史を収録。音楽からコイン音まで収録した愛の詰まった集大成!
(2016/1/15 20:00)
- 1月14日 発売
- 価格:
- PS Vitaダウンロード版 4,800円(税別)
- PS Vita通常版 5,800円(税別)
- PS Vitaショップ限定版 9,800円(税別)
- PS4版 6,800円(税別)
- Windows版 6,800円(税別)
- CEROレーティング:A(全年齢対象)
- プレイ人数:1人~4人
キャラアニはプレイステーション 4/PlayStation Vita/Windows用シューティング「ダライアスバースト クロニクルセイバーズ」を2016年1月14日に発売した。CEROレーティングはA(全年齢対象)。
2015年7月に発表され、弊誌でも大きな反響を呼んだ「ダライアスバースト クロニクルセイバーズ」。弊誌の記事にも多くのファンからコメントが寄せられた。海洋生物をモチーフにした独特な敵ボスのデザイン、タイトーの音楽集団・ZUNTATAによる唯一無二の音楽など、他にはないシューティングゲームのシリーズとして、多くのプレーヤーを惹きつけてきた。
これまで6年間にわたって各プラットフォームで制作されてきた「ダライアスバースト」シリーズの集大成として、今回その全貌が明らかになった。「ダライアスバースト」の歴史を収めたとも言える壮大な「CSモード」を収録したことで、グラフィックス、音楽共に最大級のものとなっている。
今回、制作を手がけたピラミッドの柏木准一氏、パブリッシャーのキャラアニ・小金澤力プロデューサー、これまでシリーズを手がけてきたタイトーの針谷 真氏、ZUNTATAの石川勝久氏、土屋昇平氏にお話を伺うことができた。壮大なボリュームからその全貌を捉えることが難しかった今回の「ダライアスバースト クロニクルセイバーズ」について核心に迫ってみた。
「ダライアスバースト クロニクルセイバーズ」はいかにして生まれたか?
――まずお伺いしたいのは、たくさん「ダライアス」のシリーズがある中で、なぜ「ダライアスバースト」の移植を手がけようと思ったのかというところからお伺いしたいのですが。
柏木氏:まず「移植しよう」と言い始めたのは私です。最初はPS Vitaで動かしたいなと考えまして、社内でテスト版を作りながら「商品化したい」とタイトーの針谷さんのところに打診したんです。初めはこっそりと話をしていて、「そのうちきちんと動くようになったら正式にお願いに上がります」と話して作り始めたんです。
もともと「最後はコンシューマーで出したいよね」と話していました。「ダライアスバースト」はPSPでスタートした作品ですし、新しい携帯機であるPS Vitaが発売されたので、PS Vitaに移植したいという想いがあって始めたという経緯があります。
針谷氏:柏木さんからお話しを頂いたのは、「PS Vitaでぜひ出したい」と言うことだったので、そこがスタートですね。どちらかと言えば、自分たちで遊びたいものが作りたかったと言う感じだったと思います。
柏木さんとは業務用から一緒にやらせていただいていたのですが、そのころからずっと「(コンシューマー版を)やりたいよね」という話をしていたんです。ただ、実際に発売するにあたってはハードルが大きかったので、そこをいかにクリアするかが難しかったですね。
柏木氏:作り始めてある程度動くようになった段階で、タイトーさんの方から「(タイトーがコンシューマー事業を移管しているため、自社で)売るのはちょっと難しい」という話が出ました。そこで、何社かとお話しさせていただいて、そんな中で最終的にキャラアニさんにお願いしましょうとなり、さらに「やるならPS4もやろうよ」という話になったんです。
ここで、スマートフォン版「ダライアスバースト セカンドプロローグ」を手がけた弊社のジェームス・ラグから「Steam版(Windows PC版)をやりたい」という話が上がってたのですが、それまではアーケード版が稼働中だったので「ある程度期間をおいてやりましょう」と言うことになっていたのです。でも、今回はコンシューマー版をやることになったので、マルチプラットフォームでやりましょうとなったんです。
――最初はPS Vitaということですけど、画面比率など少し厳しくないでしょうか?
柏木氏:1番最初にCSモードを作り始めたときはPSPと全く同じ画角、画面サイズ(16:9)で作り始めたんです。そのテスト版をPS Vitaの実機で見ても「PSP版とだいたい同じだよね」という話をしていたんです。でもその時はまだPS4版が遅れていて、PS4に移さずにレベルデザインを進めていたんです。その後開発が進みPS4版を出したら、タイトーさん、キャラアニさんに大変不評でして、「格好悪いから作り直せ」と言われまして(笑)。
理由は、PS Vitaで割と最適に見えるように調整をしていたのですが、PS4で見るとサイズなど調整されていなかったので、ガチャガチャした画面になっていたんですよね。そこで、みんなが考えるイメージ・サイズにしましょうという話し合いを行ないまして、16:9で作っていたものを20:9に調整して、そもそもアーケード版も上下に帯がありますから、「(今回も)上下に帯を入れましょう」と話をつけて開発し直したんです。ですから見え方自体は途中で1回大きく変更されてますね。
――たしかに携帯機で作っていたものを大きな画面で見ると違って見えますよね。
柏木氏:でもPS Vitaはいろいろとくっきりと表示されるので、最終的にPS4向けに調整したバージョンをPS Vitaで動かしてみてもしっくりきたので、作業に時間が掛かったり、モーションを全部作り直したりして大変だったんですけど、やって良かったなと思いました。現状は、全てのプラットフォーム同じデータで動いていますので、敵の位置とかは全て一緒です。
パーティクルですとかテクスチャの解像度などはさすがに違うものが使われているのですが、ゲームのデータはほぼ同じです。ですから、同じようなプレイ感覚で遊べると思います。ただ、PS Vita版は若干処理落ちがしますね。無理矢理(処理落ちを)取ることができたところもあるのですが、カウンターバーストの瞬間の処理落ちはそのまま残してあります。
実は、処理落ちをしないように調整したバージョンもあるのですが……シューティングゲームをプレイしているときに「気持ちのいい処理落ち」ってあるじゃないですか? 「おぉ、止まって見える!」みたいなコンセントレーションが高まる一瞬というか。その辺の感覚が、PS Vita版では(処理落ちすることで)すごく良い感じで表現されていたので、開発内部で両方プレイしてみて検討して、「これはあった方がいいだろう」と残してあります。
――先ほどの話ですと、キャラアニさんに決まるまでに何社さんかとお話しがあったと言うことですが、キャラアニさんに決まった理由は?
針谷氏:読者の皆さんもご存じだと思うのですが、今の時代、シューティングゲーム自体なかなかコンシューマーで展開するのは難しいと思うのです。当初、柏木さんからお話しを頂いたとき、タイトー社内でなんとかできないかとも思ったのですが、残念ながら事業を移管しているのでなかなかできなくて、他社さんといろいろとお話しさせていただく中で、「ぜひやりたい」と手を上げていただいたのが、キャラアニさんでした。今回のプロジェクトは、パブリッシャー、開発、そしてライセンス元の協力態勢が整わなければできなかったことだと思います。
やはりユーザーさんからも「コンシューマーをやりたい」という声も根強いんです。その声はなんとか拾いたいと思いましたね。
――キャラアニさんとしてはなぜ「ダライアスバースト クロニクルセイバーズ」をやりたいと思ったのですか?
小金澤氏:キャラアニでは、「英雄伝説」の“軌跡”シリーズの「Evolution」を4本リリースさせてもらっているのですが、それ以外にソフトを出していないんですね。でもキャラアニは別に“軌跡”シリーズの「Evolution」化のための会社ではなく、いろいろなゲームをやりたいと結構前から社内で話が出ていたんです。
そんな状況の中でちょうどいいタイミングでピラミッドさんからお声がけいただいたのでやらせていただくことになりました。
――移植にあたって1番重要視したところはどういったところでしょうか?
柏木氏:「ダライアスバースト」シリーズというのは、最初はPSP版があって、そのあとアーケード版に逆移植していて、そのさらに後にスマートフォン版というものもあり、その各移植の時に、毎回毎回新しい要素、レベルデザインというか、遊びの感覚を変えているんですよ。普通のシューティングゲームだったら“作り直し”に近いような感じで、特にアーケード化の時は画面もサイズが全然違うし、ほぼ違うゲームを作る感じでコンシューマーからアーケードに逆移植されているんですね。
スマートフォンに移植するときは、操作感の調整などにすごく時間をかけました。タイトーさんから「SPACE INVADERS InfinityGene」という凄い作品があって、手触りというか、プレイ感覚をすごく大切にされていた作品だったんです。同じスマートフォンでリリースされるので、SP版ではプレイ感にすごく気を遣いましたし、レベルやゲームシステムなど変えたりしたんですね。
今回も、またアーケードから再度移植するにあたって、完全移植はやりましょう。できればオマケのゲームモードを付けたいという話がありました。ところが「オマケ」の部分がどんどん肥大化していって、アーケードのシステムと新しく作るコンシューマのシステムを融合させた最後の新しい作品を作る事になって、色々と新たに作り直しています。
いつも心がけているのは、前作をプレイしてくれたプレーヤーさんはそのタイトルも楽しんでプレイしてくれていますが、次に作るものは新しく手元に届くものですので、新しい体験も盛り込まないと、「買って良かった」と感じてもらえないと思うのです。ですからお手元に届けるところのプラットフォームに合わせたプラスアルファを必ず盛り込むよう心がけてます。
針谷氏:すこし補足しますと、今回の「ダライアスバースト クロニクルセイバーズ」をご覧になった方は移植と思っている人が多いと思いますが、柏木さんのお話の通り新規モードはかなり大きなモードになってます。一言で言えば「ストーリーモード」と言えますかね……これがなかなか熱く面白いモードになっていますので、そこもアピールできるかと思います。
――タイトーさんとしての「ダライアスバースト クロニクルセイバーズ」のキモとなるところは?
針谷氏:タイトーの主な役割としては、音楽を新しく作り直したというところと、ライセンサーとしての監修なんですけれども、例えば、デザインという点では「ダライアス」らしさというのがあって、それをわかっていただいている海老川兼武さんや柳瀬敬之さんにお願いしていたり、ゲーム性についてもピラミッドさんはよくわかっていただいているので、大きく変更して欲しいという要望はありませんでした。
要望として出したのは、コンシューマー版に移植するにあたって「最初の難易度は下げて欲しい」ですとか、ボスについては新しいデザインが欲しかったので、1体については「この魚でやって欲しい」と要望を出しました。
柏木氏:候補が5つくらいあって、もともと「カニ」をPSP版の頃からやろうという話があったんです。PSP版の頃からデザインはあったのですが、アーケード版でも入れることができなくて、今回まで寝かされていたデザインなんです。それと、ダンクルオステウスとアオミノウミウシの2体に絞られていきました。ほかに最後まで候補として残っていたのが、リメイクになるのですが、巨大戦艦タイプのチョッカクガイ(タイタニックランス [ダライアス外伝])かなんかをやりたいなという話はありました。
針谷氏:そう、最初は「巨大なボスを入れて欲しい」という要望を出したんですよね。
柏木氏:最終的には「カニ」が今回遂に採用されて日の目を見たというのと、「ダンクルオステウス」と「青ウミウシ」ですね。
針谷氏:「青ウミウシ」は可愛くて綺麗なヤツではあるんですが、実は結構獰猛だったりして、なかなか見たら忘れられないデザインなんじゃないかなと思います。日々テレビですとか変な魚なんかがいたら、「こいつは格好いいな」とか記憶に止めておいて、そんな中でも1番派手なヤツが今回採用されています。
これまでの「ダライアス」の歴史が詰まっている「CSモード」
――最も大きなオリジナルの要素とは?
柏木氏:「CSモード」ですね。クロニクルモードという、アーケード版にある、みんなでマップを攻略するというモードに見た目が近いので、ああいう感じかなと思っているとそうではなく、全く新しい内容になっています。
シューティングゲームは一通り最終面まで遊んだらそこで止められてしまうユーザーさんが多いので今回も長く遊んでもらえるような仕組みを入れました。「ダライアス」は元々ルート分岐があったり、ボリュームがかなりあるんですね。アーケードの時もみんなで遊ぶ「クロニクルモード」も付けました。ただ、もう少しゲームジャンルとしてバリューというものが欲しかったんです。あと、「ダライアスバースト」ではPSP版の時もアーケード版の時も実はバックの世界観やストーリーがあったんですね。今回はそれを総括するようなモードを入れたかったんです。それが最初オマケと言っていたのに、すごく大きな「CSモード」になったんですよ。
「CSモード」は、面数で言うとだいたい230面くらいあります。アーケードの「クロニクルモード」の時は3,000面あるのですが、全く新規で作られている面というのは180面くらいで、いろんな設定を変更して遊ばせていたのですが、今回の「CSモード」はフルで230面を新規で用意されているので、実はボリュームで言うとクロニクルモードより多いんですよ。
年代によって4つくらいに分かれています。1番最初はダライアス歴1904年でPSPの「ダライアスバースト」のリーガ・プラティカやTi2(人間型のAI端末)が戦っていた時に、裏で今回のプレーヤー達がどのような戦いをしていたのかが描かれています。アーケードの時はダライアス歴1910年なのですが、その間にどういった話があって、アサルト シルバーホークバーストやフォーミュラ シルバーホークバーストが作戦に加わっていったのかといったエピソードが描かれているモードです。
これらのお話しの骨子はPSPの時にSF設定を手がけてくれた、スタジオオルフェの千葉智宏さんが叩き台だけは作っていて、こういう風に話が展開して欲しいという流れは作られていたんです。ただ、PSP版の時に話されていた人類の領域はここまで大規模に広がっていなかったのですが、アーケードになった時に面数が3,000面となり、人類の生存圏が数千星系に拡大していたという大風呂敷を広げた形のバックボーンがその時にできてしまったんです。
針谷氏:PSPの「ダライアスバースト」までは、歴代のシリーズでストーリーがあって、それぞれ主人公2人の英雄達の物語だったんです。ですが、アーケードでそれだけフィールドが広がったという設定になったので、名もなき戦士達の戦いと言いますか、一般兵の戦いを描くようになるんです。ですから今回の「CSモード」では、名もなき戦士達の1人の物語をプレーヤーが体験していくということになります。
柏木氏:先ほど200面あると申し上げましたが、200面がそのまま年表になっていて、それぞれ年代が書かれているんですね。1番さかのぼっていくと、PSPで事件が起きたときのエピソードが描かれています。ただ、PSPの話はダライアス軍に属する軍属は全て全滅したと謳っていて、ネットワークに接続している軍は全て焼き尽くされてしまい反撃する能力はないのですが、実は軍の下請けで何でも屋の傭兵のような会社があり、そこは特殊な環境下であったため、戦力を維持していたんですね。そこでベルサーが襲いかかってきたので、反撃に出るんです。「ダライアスバースト」の時は新鋭のバースト機を持っていたのですが、今回は傭兵ですから、ダライアス歴1904年の時点でたいした機体がある訳ではないのですが、その機体を駆使してエースパイロットが戦い抜く設定なんです。ベルサーが1番強かったときに“オリジン シルバーホーク”という「ダライアス」の1番弱い機体で戦わなければならなくなるのです。
このほかにも“セカンド シルバーホーク”で出撃する「ダライアスII」や、「ダライアス外伝」の機体で戦っていた歴史も収録されています。そしてゲームが始まるのは、ダライアス歴1906年ですね。最初のエピソードからずいぶん経っているのですが、彼らが新鋭機(バース機)を入手したところから物語が始まります。
初めにオリジン(「ダライアス」の1作目に登場した機体)の機体が出てくると、昔のユーザーは喜ぶかもしれませんが、「ダライアスバースト」からプレイし始めた人は“バースト機”でプレイしたいと思うんです。なので、ここからプレイはスタートします。
さらに進めると歴史をたどっていき、ダライアス歴1910年で時系列的にはアーケード版の物語が始まります。ここの1番最初がアーケード版の楽曲「光導」が掛かったりします。ここからまたどんどん進んでいくと、アーケード版のクロニクルモードに登場した地名なども登場します。さらに進めるとアーケード版の最終面の扱いだったチハイエリアで、強力なマッコウクジラの亜種(G.T.B)なんかが登場するんですよ。
最後の最後には、PSPでもアーケードでも語られなかった最終エピソードが入っていて、ここでいったん今回の「ダライアスバースト」は終了します。
――ものすごい分量ですね? それぞれのエピソードで年代が違うということは、機体も変わるわけですよね?
柏木氏:(さらりと)そうですね。機体も変わるのと、プレーヤーを傭兵にしたというのは理由がありまして。今までのクロニクルモードでは設定された機体で出撃していたんですね。もちろん今回もプリセットの機体があるのですが、それ以外にプレーヤーが戦闘してポイントを溜めていって機体を購入していったりですとか、溜めたポイントを使って自由に設定を変えたりして遊ぶことができるモードも用意しています。
土屋氏:そうなんだ……知らなかった。面白そうだなぁ。成長要素があるなんて聞いてなかった……。
柏木氏:「クロニクルモード」の時は限定された遊びだったのですが、今回はそれも全部プレーヤーに解放している感じですね。プレイ時間は上手い人で100時間くらいでしょうか。
――いくらでも遊べますね……。
柏木氏:そうですね。歴史を辿って戦っている感じを出したかったので、ベルサーに占領されている星系を取り返している途中に、逆にベルサーに解放した星系を逆に奪い返されてしまったりするイベントが起きたりもします。イベントが発生すると画面に「WARNING」と表示され、「こことここが再度敵に奪われました」といったメッセージが流れ、また全く違う面が出てきたりします。
――分岐が増えるんですね?
柏木氏:あとクロニクルモードは全く分岐がないルールなのですが、今回の「CSモード」は、「何点以上取ってください」とメッセージが出るんですね。2面くらいの間にその指定の点数を取らないとそのまま進んでいくのですが、指定の点数をクリアすると分岐が発生し、分岐した先に進むと難易度が高い違うエピソードが見られたりもします。
――機体を買って使用することで、難易度に違いは出るのでしょうか?
柏木氏:アームですとか、武器、ミサイル、バリアすべて設定で変更できるので、難易度も割とプレーヤーが自由に変えることができますね。
――今回は歴史をたどるということで全ての面で違う面として制作されているんですね。
柏木氏:はい。音の面で言うと、「ダライアス外伝」などは曲の何処でボスが登場するかのタイミングが決まっているので、曲のサビのところで「WARNING」が表示されボスが出現します。なので、1分くらい効果音だけで音楽が鳴らない面がなどがあったんです。
今回も同じルールで作られています。「ダライアスバースト」のほうが「ダライアス外伝」より長い面があるので、2分ぐらい「音が鳴ってないぞ」って言うところが発生します。(オリジナルに忠実という点で)クロニクルモードでより、凝った作りになってますね。
過去の楽曲が100曲も収録され、聴き応えもばっちり!
――音楽の話題が出たということで、音楽の方のお話も伺えますか?
土屋氏:「ダライアスバースト」の音楽で大切にしているところは、強烈な音楽であることだと思っています。どこかにありそうな音楽ではなく、その世界をきちんと表現した強烈な音楽であり続ける。それを毎回作るということがすごく大変なのですが(笑)、PSP
版から始まりアーケード版、スマートフォン版へと続くにあたって、常にそういう気持ちで作曲しています。どの曲も他にはない不思議な曲を毎回入れることができたのではないかと思っています。
ボクはどのゲームの時も捨て曲を作らない方なんですが、「ダライアスバースト」シリーズの場合は特に、どの曲がアルバムの1曲目に来てもいいぐらいのクオリティで作っているところがあるので、どの曲もその勢いで作っています。
――今回は何曲くらいつくられたのですか?
土屋氏:全部で12曲で、そのうちボクが8曲作っています。
――効果音も全て新録なのでしょうか?
石川氏:元がPSP時代の音を引き継いでいるので作り直したわけではないのですが、毎回プラットフォームが違いますので、効果音1つ1つは調整し直しています。PSPとアーケードで鳴る環境が違いますし、アーケードの場合はボディソニックがあったので、音は同じでもイコライザとかエフェクタとかかけて、それぞれのプラットフォームに向けて調整していたんですね。スマートフォン版はPSP版に戻る形で調整しています。今回は再度コンシューマ版で、しかもPCとPS4というかなりハイスペックなマシンでプレイできるということで、元の素材を使いつつも、全体的にグレードアップするような音の調整をしています。
毎回同じ音に対して調整をやっているので、このシリーズはそこがわりと大変ですね。終ったかなと思うと、このシリーズは続きができてきて(笑)。「ダライアスバースト」はこれまでに何種類かサウンドトラックが出ているのですが、毎回こぼれた楽曲があって、今回は「クロニクルセイバーズ」のサウンドトラックにてようやくそういった楽曲を全て収録することができました。「小出しに収録しないでほしい」と言われることもあるのですが、実は毎回「ダライアスバースト」シリーズはこれで最後のつもりでやっているので、サントラも次回はないつもりで制作しているんですよ。
私のところにお話しが来たときは「PSPでおわりだよ」と言われ、制作が終ってCDを作ってリリースして終ったと思ったら、「アーケードですよ」と。「これが決定版で最後に違いない」と思って、制作が終ってサントラもリリースすると、スマートフォン版のお話しが来ると。それが終ると「クロニクルセイバーズ」の話が来る。毎回次の話が来るとは思わず、決定版のつもりで取り組んではいます。「本当に今回で終わりなのか?」と思わないでもないのですが、そろそろここで終って、完全新作に行きたいなというのが正直なところですね。
――今回、かなりの分量の「CSモード」が入っていますが、これも全て調整されたのでしょうか?
石川氏:曲は全部で100曲くらいあるのかな? アーケードになったときに「クロニクルモード」用に過去のシリーズの曲やアレンジアルバム「ワンダーワールド」の曲を追加したのですが、実はその時に、過去のシリーズのテーマ曲っぽい曲は外していたんですよ。例えば初代「ダライアス」であれば「CAPTAIN NEO」ですとか、「ダライアスII」であれば「OLGA BREEZE」、「ダライアス外伝」の「VISIONNERZ」などですね。テーマ曲はそのゲーム固有のものだと思っているので、安易に追加という形にはしたくなかったんです。
ただ今回は柏木さんが仰ったように、全てのストーリーを包括した決定版ですから、それならこちらも全ての楽曲を解禁しようということで、これまでのシリーズ楽曲のほとんどのテーマ曲を網羅した結果、RPGみたいに100曲くらいになりまして、それを全て家庭用に一定の音量、一定の音質で聞こえるようにマスタリングを行ないました。まぁ、なかなか100曲は大変でしたね。
柏木氏:例えば「ダライアス外伝」の機体を使っているときは必ず「ダライアス外伝」の曲が鳴っていて、それ以外の曲は流さないといったルールがあって、それに従っていないといけないといった決まりがあるんですね。
他にも、「ダライアス外伝」の1面の曲「VISIONNERZ」は、本当は1面から1面のボス、2面の冒頭と連続で流れているんです。さすがに3ブロック連続で鳴らすことはしていないのですが、今回も「VISIONNERZ」を入れたときは、面とボスも同じ曲が鳴っています。
オリジナルで使われていた場面の曲を「ダライアスバースト クロニクルセイバーズ」でも同じシーンで使用しましょうというお約束があって使っているんですよね。アーケード版の「クロニクルモード」の時って、けっこう被って同じ曲が鳴っていることが多かったんです。今回は、それは全部冒頭のところとか調整して、たくさん面があるからいつも同じような曲が鳴っているのではなく、法則をコントロールして「毎回楽しく違う楽曲が鳴っているんだな」と感じてもらいたいと思い、石川さんの方とやりとりしていて調整して頂きました。
石川氏:「CSモード」ってACモードの「クロニクルモード」よりも、スクロールが早く見えるステージがいっぱいあって、それで「クロニクルモード」と同じ曲の配置にすると、ちょっとゆったりとした感じになってしまうので、「『CSモード』の時に曲を配置するときは、テンポ感のある曲を中心に配置してください」といったお願いはしました。
柏木氏:この面とこの面はこの曲に切り替えてくださいとか、いろいろお願いされました。
――ゲームの流れに合わせて曲が流れることが重要ですものね。
石川氏:そうですね。せっかく100曲もあるので、できればいろいろな曲を聴いて頂いた方が良いかなと思って。
柏木氏:開発初期は比較的「クロニクルモード」と同じルールで作っていたのですが、途中から石川さんの方から「やはり変えてください」ということで、最終的には「クロニクルモード」とは違った感じで鳴っていますね。
――それはテストプレイされて雰囲気を考えて調節されたんですね。
石川氏:そうです。最初は柏木さんがBGMを指定していて、出来てきたテストROMを僕の方でプレイして、画面のテンポ感と曲のテンポ感がちぐはぐだなと感じたところは変えさせて頂きました。
柏木氏:これまで毎回、毎回、オーダーを聞きながらやっているところがあったので、ここはこうなっていると「絶対に(石川さんから)怒られるな」というのが見えているところがあるので、今回は割と怒られることが少なかったかなと(笑)。
針谷氏:でも音の追加もギリギリまでやっていましたよね。いつものことですが(笑)。
柏木氏:今回すごく良かったなと感じたのは、スタートの各機体を選択するときにクレジット音が鳴るという仕様を入れ込んでもらったんです。あの音が鳴るだけで全然違うなと。
石川氏:つまり「オリジン」を選択して出撃すると、初代「ダライアス」のコイン音が鳴るといった仕様を最後にやって欲しいと言われまして。個人的に“コイン音”は大好物ですので、それはやりましょうと(笑)。
――それが1つあると盛り上がりが違いますものね。
柏木氏:もともとアーケードのシリーズなので、スタートはコイン音なのが良いのかなと。
新機体(ムラクモ)というのがあるのですが、モチーフを何にしようかなと考えたんです。昔のタイトーのゲームに「スクランブルフォーメーション」というタイトルがあり、ボタンを押すとどんどんフォーメーションが変わって対地対空を使い分けていたのですが、今回はレーザー/ミサイル/ウエーブと武器を使い分けられる新機体を入れましょうと考えました。モチーフは「スクランブルフォーメーション」なので、先ほどの機体選択時のクレジット音は「スクランブルフォーメーション」を入れて頂きました。
石川氏:「ムラクモ」を選択すると「スクランブルフォーメーション」のコイン音が鳴ります。
柏木氏:新ルールのディフェンダーとかスクランブルなどもあります。ディフェンダーはタワーディフェンス的なゲームモードで、敵を後方に逃がし続けるとゲームオーバーになる「ハレーズコメット」的なルールです。
石川氏:今思えば、「ハレーズコメット」のアレンジ楽曲とかやったら良かったですかね?
柏木氏:あぁ、そうですね。
――テーマ曲について伺いたいのですが、今回ボーカル曲になっています。なぜボーカル曲にしたのでしょうか?
土屋氏:なぜボーカル曲にしたのかというより、結果的にボーカル曲になりました。作りたい曲をいろいろ考えていく時に、今回どんなアプローチで「ダライアスバースト」の世界を表現しようかと考えました。もともとのPSP版の楽曲から、アーケードの楽曲やスマートフォン版の楽曲も引き継いできているところがあるので、今までの「ダライアスバースト」の世界も踏襲しつつ、チャレンジもしたいなという気持ちもありつつ。そういったことをいろいろと考えていく中で、ボーカル曲になりました。
いろいろなきっかけはあったのですが、今まで「ダライアスバースト」の中で流してきた自分の曲の中で人気の曲など、逆にリスナーさんからインスピレーションや応援をもらったりするなかで、1面の曲は結果的には元々作ろうと思っていた曲とは違った曲になりまし
た。
――テストプレイなどを通じて変わっていったということですか?
土屋氏:テストプレイというよりは、お客さんの声が私の方に届いたタイミングがあって、それがすごく大きなきっかけにはなりました。通常は、自分の世界を表現するために、できる限りお客さんの声を聞かないようにしているのですが、たまたま今回は耳に入ることがあって、それが1つのきっかけでボーカル曲を作ろうと思いました。
結果的に、1番気合いが入って変わった曲になったと思います。今回モチベーションは相当高いんですよ。というのも、Steamを通して全世界でリリースされ、海外でも曲が流れるというのが僕の中ですごく大きなモチベーションとなっています。いろいろな国の人に僕の曲を聴いてもらいたいので、相当気合い入れました。
ただ、世界中の方に聴いてもらうからといって「日本人らしさを出そう」といったことは考えませんでした。自分の中で描いている“日本人らしさ”を曲に反映させてしまうと、「日本人が考えるアメリカ人」といった風にズレた感覚で少し変な感じになってしまうので、そういった点は意識的に出さないようにしようといったことは考えましたね。できる限り自分の曲を素直に表現して、それがいろいろな国の人にどう評価されるのかが楽しみですね。
発売後には「ナイトストライカー」など追加機体をDLCとして配信!
――発売後の追加機体について伺いたいのですが。
小金澤氏:タイトーさんに「ダライアスバースト」の案件をOKして頂き実際にゲームを作り始めるにあたって、どうしたらより多くの人に手にとって頂けるか、社内外でいろいろと話をしたんです。「ダライアス」はこれまで日本でしかリリースされていないんです。ですから今回、欧米では新参者なんですよ。日本では歴史のあるタイトルなんですが、海外ではけっこう敷居が高いかなと。ですからただ「ダライアス」は楽しいと言うことだけではないプラスαの部分が欲しいということで、スタッフ間でディスカッションをする中で、「ダウンロードコンテンツ」という案が出ました。そこで、タイトーさんの機体だけでもいいのですが、タイトーさん以外のゲームの機体も出した方がインパクトとしては大きいと。
そこから何社さんかにお願いしたところ、快くOKを頂けましたし、タイトーさんの方からもOKを頂けたので、夢のコラボが実現しました。
――初めに提案があったときはタイトーさんとしてはどのように感じられましたか?
針谷氏:ウチではあまりやったことのないことでしたので、面白いと思いました。シューティングが厳しい時代において、できる限り新しい試みもやっていきたいとも思ってまして、その中でダウンロードコンテンツでのコラボレーションは、海外を含めて非常に可能性があると感じました。
実は社内で否定的な意見もあったのですが、ここは新たなチャレンジで、ぜひやらせてくださいということで、進めさせていただきました。
――「ナイトストライカー」とかDLCでプレイできるようになりますが、こちらも機体が登場すると音楽などが変わるのでしょうか?
小金澤氏:変わります。他のIPの機体が登場するときの楽曲は、他社のアレンジャーの方が手がけています。「レイストーム」などは元KONAMIの山根ミチルさんに原曲をアレンジしていただいているので、ZUNTATAさんとはまた違った雰囲気の楽曲が流れますね。そのCDがキャラアニ限定版に付くので、買った人はどういった機体が追加されるかわかるでしょうね(笑)。
――では最後にユーザーの皆さんに一言ずつ頂けますでしょうか?
針谷氏:私は初代「ダライアス」に衝撃を受けて、ずっと思い入れのあるタイトルです。実は現在私はゲーム制作から離れているんです。柏木さんからお話しいただいたときから、本来なら手がけることができなかったのですが、そこを弊社内で「やらせて欲しい」と無理矢理やらせていただきました。
先ほど石川の方から「これが最後の『ダライアス』だ」という話がありましたが、それは私も同じで、最後の「ダライアス」と思って一生懸命、「これが最後のゲーム制作になるかもしれない」という想いでやってきました。意気込みとしては皆一緒です。そういった想いのこもったタイトルですので、ぜひ遊んでいただければと思います。
土屋氏:曲で言うと、「僕と小塩広和君と小倉さんの曲が全て聴けます」と言っても過言ではないタイトルですので、とても楽しいと思います。同時に、小塩君と小倉さんには、まずは感謝します。
僕としては「ダライアスバースト」のメインを張らせていただいて、これで「ダライアスバースト」シリーズとしては総決算かなと思っていますので、今回の新曲達はとても面白いので、じっくりと味わっていただければと思います。
あとは、制作メンバーの愛だけで出来上がっているゲームなんだなと感じていますので、その愛を存分に味わってください。
石川氏:「ダライアスバースト」シリーズは最初から関わっているのですが、PSP版が2009年で、今回は6年間やってきたサウンドの積み上げの総決算です。「ダライアス」シリーズとしては「ダライアス外伝」から参加していまして、そういった意味でも非常に思い入れがあるんですね。もちろん初代「ダライアス」からプレイしている世代です。そういう意味でも、非常に多くの「ダライアス」に関わることができて幸せだったと思いますので、これを集大成という事で楽しんでもらえればと思います。
それと、「ダライアスバースト クロニクルセイバーズ」のサウンドトラックも発売されているので、ぜひそちらも忘れずによろしくお願いいたします!
小金澤氏:キャラアニにとって「ダライアスバースト クロニクルセイバーズ」は、「Evolution」シリーズ以外の初めてのタイトルということで、いろいろなグループの力をお借りして「オデッセイ」の特別バージョンを作ったり、CDをプレスしたり、いろいろなノウハウを使って作らさせていただきました。キャラアニはいろいろなことができるんだぞとユーザーの皆さんに見てもらえたらと思います。
柏木氏:今回、PSP版から数えて4作目です。連作で作っていて、サウンドの方は石川さんと土屋さんに作っていただいているのですが、実はプログラムもデザインもほとんど同じメンバーで作っていて、連続で4作も同じメンバーで作る事ってあまりないことなんです。そのメンバーで6年間もゲームを作り続けてきてすごく楽しかったんですね。楽しかった僕らが作ってきたものが集大成として詰め込まれていて、遊びきれないほどのボリュームなので、ユーザーの皆さんにも「楽しいゲーム」をお返しできるのではないかなと。
21世紀にもなって、こんなにシューティングゲームを作れるとは僕も思わなかったので、楽しく作らせていただきました。ユーザーの皆さんにも楽しんでもらえる物になったと思います。
石川氏:集大成というとフィナーレ的な雰囲気になって「もう終わりなんて寂しい」と仰られるファンの方もいると思いますが、そもそも「ダライアスバースト」って「ダライアス」シリーズの中ではもっとも長寿なシリーズなんですよね。毎回終ると言われて不死鳥のように6年間も続け、ファンの皆様のおかげで非常に大きくなったコンテンツですので、フィナーレというよりは大きなお祭りだと思って楽しんでいただけたら嬉しいですね。
――ありがとうございました!
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