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ゲームミュージックコンサート「伝説の音楽祭 勇者たちの饗宴」が開幕

「激!帝国華撃団」初演奏! あの「モンスト」がオーケストラデビュー

10月24日、25日開催



会場:新宿文化センター大ホール

ゲーム史に名を残す“勇者たち”を集めた音楽祭

 面白法人カヤックが主催するゲーム音楽交響楽団JAGMOは10月24日、秋のフルオーケストラ公演「伝説の音楽祭-勇者たちの饗宴-」を開催した。公演は新宿文化センター大ホールで10月25日まで開催される。

 JAGMOは、2015年2月に定期公演を開始して以来、徐々にファンを増やしているが、今回も事前予約で完売となり、チケットそのものがプラチナ化しつつあるほどの人気振りを見せている。

 7月の公演では「伝説の戦闘組曲」と題し、バトルミュージックに特化した曲目でコンサートを行ったJAGMOだが、今回は「伝説の音楽祭-勇者たちの饗宴-」と題し、ゲーム史に名を残した歴代の“勇者たち”を集め、その珠玉の名曲たち、全37曲が演奏された。セットリストは以下の通り。

「伝説の音楽祭-勇者たちの饗宴-」セットリスト

【クロノ・クロス】

「時の傷痕」

【クロノ・トリガー】

「クロノ・トリガー」
「風の憧憬」
「王国裁判」
「カエルのテーマ」
「魔王決戦」
「世界変革の時」

【サクラ大戦】

「檄!帝国華撃団」

【モンスターストライク】

「タイトル BGM」
「メニュー BGM」
「イベントクエスト:極 BGM」
「降臨クエスト:究極、超絶 BGM」
「降臨クエスト:BOSS BGM」
「勝利 BGM」

【MOTHER】

「Eight Melodies」
「Bein' Friends」
「Pollyanna」
「SMILES and TEARS」

【ロマンシング サ・ガ】

「オープニング」
「四魔貴族バトル」
「四魔貴族バトル2」
「玄城バトル」
「ラストバトル」

【キングダムハーツ】

「Dearly Beloved」
「Traverse Town」
「Roxas」
「Tension Rising」

【ファイナルファンタジー】

「ザナルカンドにて」FINAL FANTASY X
「ノーマルバトル」FINAL FANTASY X
「シーモアバトル」FINAL FANTASY X
「Other World」FINAL FANTASY X
「決戦」FINAL FANTASY X
「Brass de Chocobo」FINAL FANTASY X
「ビッグブリッヂの死闘」FINAL FANTASY V
「ゴルベーザ四天王とのバトル」FINAL FANTASY IV
「片翼の天使」FINAL FANTASY VII

「素敵だね」FINAL FANTASY X(24日 昼公演限定)

「Eyes on me」FINAL FANTASY VIII(24日 夜公演限定)

「KISS ME GOOD BYE」FINAL FANTASY XII (25日 昼公演限定)


指揮者/クラリネッティストの吉田誠氏
コンサートマスターを務める主席バイオリニスト枝並千花氏のソロパートも聴き所のひとつ
「素敵だね」メインパートを担当する吉田氏
クラリネットを手に指揮を行なう吉田氏

 JAGMOの定期公演の魅力は何と言っても、特定のメーカー、タイトルに寄らない、バラエティ豊かな曲目たちが、一流の演奏者たちによってフルオーケストラで味わえるところ。とりわけゲームミュージックファンであればあるほど深い楽しみが味わえるようになっている。

 今回の目玉は、JAGMO初公演となる「サクラ大戦」の主題歌「激!帝国華撃団」。また、今回はミクシィがミュージックパートナーとなり、同社の人気タイトル「モンスターストライク」の楽曲5曲が演奏された。

 さて、「伝説の音楽祭-勇者たちの饗宴-」開幕は、JAGMOの十八番となりつつある「クロノ・クロス」の「時の傷痕」から入り、「クロノ・トリガー」の「クロノ・トリガー」、そして同作屈指の名曲「風の憧憬」へと繋げ、光田康典氏名曲メドレーでいきなり来場者の心を掴みにきた。

 とりわけ「風の憧憬」は、コンサートマスターの枝並千花氏のピチカート(バイオリンを指で弾いて弾く)から入り、後を追うようにバイオリンの美しい旋律が包み込むという、スーパーファミコン版の原曲への深いリスペクトが感じられる演出には、開幕10分でいきなり涙腺が緩まされた。

 「クロノ・トリガー」の後、本日の真打ちとなる「サクラ大戦」の主題歌「激!帝国華撃団」が演奏された。出だしの部分は打楽器が大きすぎて音が潰れ気味になったり、主旋律を担当するクラリネットがやや弱かったり、若干音のバランスがちぐはぐな印象があったが、サビ部分でのめくるめく盛り上がり、芳醇な音の広がりはフルオーケストラならではであり、いちファンとして満足のいく内容だった。今回「サクラ大戦」はこの1曲のみだったが、ぜひ今後も「御旗のもとに」(「サクラ大戦3)、「地上の戦士」(「サクラ大戦V」)とレパートリーを増やしていって欲しい。

 その後も、前半の曲目として「MOTHER」、「ロマンシング サ・ガ3」といずれもJAGMOが得意とする曲目ばかりが続いたが、もっとも盛り上がったのは、やはり「ロマンシング サ・ガ3」だ。

 前回公演では全体のトップバッターを飾り、「伝説の戦闘組曲」らしさを強く印象づけてくれたが、今回も「オープニング」から入り、「四魔貴族1、2」、「玄城バトル」、そして「ラストバトル」と、前回とまったく同じ“玄人好みのバトルメドレー”を展開し、本日最初の「ブラボー」を呼び込んだ。

 人気の理由は、繰り返し演奏し、演奏が円熟していることに加え、オーケストラ向けの編曲がピタリとハマっていることが挙げられる。とりわけ素晴らしいのは「四魔貴族1、2」だ。主旋律のバイオリンは不協和音ギリギリのところまで弦を鳴らし、枝並氏のソロパートでキリッと締めるという感じで、今にも壊れそうなスピード感と際どい感じがたまらない。

 激しいティンパニーと共に厳かに始まる「ラストバトル」もまた最高だ。“イトケン節”特有の圧倒的な疾走感を維持したまま、トランペットをはじめとした様々な楽器が各パートを入れ替わり立ち替わり担当するという聴き応え十分の内容で、オーケストラらしくスローテンポで厳かに締めるフィナーレもお見事。「ロマサガ3」はまさにJAGMOの十八番中の十八番といっていい。

 コンサート後半では、「モンスターストライク」、「キングダムハーツ」、そして「ファイナルファンタジー」が演奏された。「モンスト」は、前回の「チェインクロニクル」に続いて今回もスマートフォン向けのタイトル。スマホ向けのタイトルは通勤時間や休憩時間など、ちょっとした空き時間にプレイすることが多いため、こういう風にじっくり聴ける機会が増えるのは嬉しいことだ。

 今回「モンスト」は、「タイトル」、「メニュー」、「降臨クエスト:究極、超絶」、「降臨クエスト:BOSS」、「勝利」の全5曲を演奏した。アレンジも最小限で比較的オーソドックスな演奏で安心して聴くことができた。次回はいよいよ満を持して伊藤賢治氏の「パズドラ」だろうか?

 フィナーレを飾った「ファイナルファンタジー」は、「FFX」の楽曲を中心としたラインナップで、全10曲が演奏された。JAGMOと「FF」シリーズは切っても切れないほど深い関係にあるため、どの曲も非常にクオリティが高かったが、原曲を忠実に再現したピアノソロから始まる「ザナルカンドにて」、曲の終盤にゴールドソーサーのテーマをこっそり挿入していた「Blass de Chocobo」、セフィロスのテーマとして知られる「片翼の天使」などが強く印象に残った。

 また、演奏の良さに加えて、編曲の点でも高く評価できるのが、「ゴルベーザ四天王とのバトル」と「ビッグブリッジの死闘」の2曲。シリーズも曲調もまったく異なる2曲のボステーマをシームレスに繋げて演奏し、“ゴルベーザ四天王と死闘を繰り広げていたら、いつのまにかビッグブリッジでバトっている”という不思議な感覚を味わうことができた。

 そして本日最大のサプライズが、24日昼公演限定曲目だった「素敵だね」。指揮者の吉田誠氏が、曲目を残したまま指揮台を降りて途中退席し、何事かと思いきや、自身のクラリネットを持ってきて指揮台に戻ってきた。今回、パンフレットには吉田氏の肩書きは「指揮者/クラリネッティスト」とあり、コンサートの最後でその種明かしが行なわれることとなった。吉田氏は、指揮より先にクラリネット奏者としてキャリアを積み上げており、今回はそのお披露目となった。

 最後の曲目となった「素敵だね」では、声楽パートを吉田氏のクラリネットがソロで担当し、指揮者不在のまま、吉田氏の主旋律に合わせてオーケストラが伴奏するというユニークな形で演奏が行なわれた。間奏では吉田氏は指揮台でオーケストラに向き直り、左手にクラリネットを持ったまま指揮を行なうなど、普通のコンサートでは見られないような光景も現出された。JAGMOならではの珍しい試みだ。

 次回公演に関する情報は明らかにされなかったが、ユニークなコンサート内容で今後もますます人気を集めそうなJAGMO。その活動に引き続き注目していきたいところだ。

(中村聖司)