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VR史上最恐! カプコン謹製「The Kitchen」の恐怖!

多才に広がるVRエンタメの未来を感じたMorpheus試遊レポート

6月16日~18日開催

会場:Los Angeles Convention Center

 VR関連の試遊のためE3の会場中を駆けずり回った3日間だったが、やはり、コンテンツ面で最もクオリティの高い体験を楽しませてくれたのはPS4向けVRヘッドセット「Project Morpheus」だった。

 前日お送りした試遊レポートに続き、本稿ではサードパーティ製の高品質コンテンツ3種のインプレッションをお届けする。中でも強烈だったのは、カプコン謹製の「The Kitchen」だ。これは、これまで無数のVRコンテンツを試した筆者にとって、史上最恐のVR体験となった。

先端恐怖症ならプレイするな! 逃れられぬ死、圧倒的恐怖「The Kitchen」

SCEAのミーティングルームでは大漁のPS4新作タイトルが試遊でき、Morpheus対応作品も複数試すことができた
「The Kitchen」体験中の筆者。拘束された両手をどうにかできないかと腕を動かしている

 「The Kitchen」はカプコンがMorpheus向けに開発した技術デモだ。短編ホラー映画のような内容で、着席したままプレイするスタイル。

 Morpheusに視界を投入すると、そこは古びた家屋の一室。天井には蜘蛛の巣、木製の床にはゴミや、血の染みのようなものが散乱しており、たいそう不気味な雰囲気だ。

 視界を下に向けると、自分の両手がワイヤーで固く拘束されていることに気がつく。体は椅子に縛り付けられているようで、全く動くことができない。DUALSHOCK 4を動かすとVR内の手も連動して動くが、拘束を解くことはできず、無駄な抵抗だ。

 うめき声がし、ふと左に目をやると、怪我だらけの男性が倒れている。やがて男性は起き上がり、切迫した表情で脱出しようと訴えてきた。男性は床に落ちていた包丁を持ち、筆者の両手を拘束するワイヤーの切断を試みる。

 切りやすいように両手を差し出す。包丁の切っ先をこちらに向けてギコギコするものだから、勢い余って体に刺さるのではないかとヒヤヒヤだ。包丁の切れ味は悪く、複数本巻かれたワイヤーが1本、2本と切断されるのに数十秒。だが、ようやく拘束が解かれそうだという寸前に、右手奥の暗がりにいたらしい、女性のゾンビがむくりと起き上がり、こちらに迫ってきた!

 しわくちゃで青白い顔をしたゾンビは、その目に狂気を宿らせ、男性を後ろから引き倒す。刹那の格闘が繰り広げられ、ゾンビが包丁を奪った。そして、男性の胸に深々と包丁を突き立てる。吹き出る鮮血。これでは助かるまい……。

 そしてゾンビは、意識を失った男性の腕を掴み、部屋の奥の暗がりにひきずって行った。床にズルリと鮮血の痕跡。いったい何が起きているんだと焦燥していると、暗がりから不気味な切断音、咀嚼音が聞こえてくる。そしてスイカ大の何かがゴロリと足元に飛んできた。さきほどの男性の、生首である。

本作はスクリーンショットがなく、イメージを掴みにくいと思うので、参考用に「The London Heist」の絵を掲載する。部屋の雰囲気はこれに近く、スキンヘッド親父のかわりに女性ゾンビがプレーヤーを殺しにくるという感じだ

 これは怖い。すぐにでも逃げ出したい気持ちになるが、腕の拘束は解かれておらず、身じろぎすることもできない。しかし、暗がりから聞こえてきていた不気味な音が鎮まり、部屋は静寂に包まれる。もうゾンビの気配はない。これで終わりか、とほっと安心……。

 と思った刹那、背後からヒタリ、ヒタリと湿っぽい足音が聞こえてくる。様子を見ようと首を回しても、拘束のせいで真後ろまでは見ることができない。足音が死角から次第に近づいてくる。そして足音がピタリと止まった時、ささくれた手が背後から目前に伸び、筆者の顔面をガシッと掴んだ。瞬く間に、視界がドロリとした血で覆われる。

 軽く後ろに目をやると、さきほどのゾンビが凄まじい形相で筆者の首をねじろうとしていた。しばし抵抗すると、ゾンビは包丁を筆者の眼前に向け、クァァアと威嚇の声を上げる。鮮血に染まった切っ先が、筆者の目の前に突き立てられ、本能的な恐怖を感じる。先端恐怖症の人なら、ここで失禁してもおかしくない。

 もうダメだ。これは死ぬしか無い。諦めの境地に至ったところで、ゾンビは筆者の胸に包丁を突き立てた。鮮血が溢れ出し、筆者の足元に大きな血だまりが広がっていく。その鮮血を見ながら、力なくうなだれる。そして画面は暗転。これは死んだ、確実に死にました。

 Morpheusを取り外し、死後の世界ではなく現実に戻ってほっと一息。カプコン謹製のデモだけあって、「バイオハザード」シリーズで見られたような高品質な3Dで描かれた環境と人物が、VRの恐怖体験をひときわ真に迫るものにしていた。筆者にとって、これほどのホラー体験は記憶にない。VRで広がる可能性の一端を、強烈に印象づけられた次第だ。

レトロゲー「Battlezone」がVRで復活!「EVE Valkyrie」もスゴかった

「Battlezone」、「EVE Valkyrie」も体験した
「Battlezone」。わざとらしい低ポリ感がたまらない
雲霞の如く押し寄せるスウォームの群れ

 「The Kitchen」に続いて、2種類のサードパーティタイトルもプレイできた。ひとつは、「Battlezone」。英国のRebellionが開発中のVRタンクシューティングゲームだ。

 往年のゲームファンならご存知の通り、「Battlezone」は1980年にAtariからリリースされたアーケード用3Dゲームだ。ワイヤーフレームを使た映像で、3Dアクションゲームの先駆けとなった。

 それがVRで復活したのが、この「Battlezone」である。戦車のつくりとか、背景の感じは、すごくローポリゴン風を意識しており、レトロゲーの雰囲気をぷんぷんと匂わせている。それでいて、Morpheusを通した視界は臨場感たっぷりの戦車のコックピット環境だ。レトロゲーらしく動きは軽快で、すごく遊びやすい。

 ゲーム性は非常にシンプルながら、VRならではの頭を回しての索敵、コックピット全面に据え付けられた3Dレーダー(遠近感があるので、レーダーに写った敵アイコンがちゃんと3D的に配置されて見える)などなど、非常に良い雰囲気。手軽に遊べるVRシューターの筆頭になりそうだ。

 本作はMorpheusのほか、Oculusにも対応するとのこと。SteamVRについては未定だというが、Steamで配信されるなら対応可能性はかなり高いはずだ。

【Battlezone Official E3 Reveal Trailer】

Battlezone

「EVE Valkyrie」。映像が非常に豪華になっていた
発進準備OK、ワープドライブ駆動!
大規模艦隊戦の後らしい、残骸まみれの宇宙空間

 「EVE Online」や「Dust 514」で知られるCCP Gamesは、「EVE Valkyrie」の最新版を披露。筆者は本作を初期プロトタイプから繰り返しプレイしてきているが、今回、最新版のVRコックピットや、宇宙の風景が劇的に進化しており、大いに満足できた。

 雰囲気たっぷりのコックピットから見えるのは、大破した宇宙戦艦や残骸が密集した宇宙空間。遠方にはAmarr陣営のタイタン級戦闘艦が見える。全長20キロにもなるタイタン級の大きさは、やはり圧倒的だ。EVE Onlineにおける筆者の乗艦であるMegathronの姿も確認できた。リアルスケールで眺める宇宙戦艦の威容は感動的である。

 上下左右の概念がない宇宙空間を自由に飛び回るゲームとなるため、敵機との戦闘でグルグル回っていると空間失調を起こしそうになるが、それもスペースパイロットの追体験と言えそう。正直にいって万人向けとはいえないハードコアな内容だが、EVE Onlineファンをはじめ、本格SFコンバットゲームを楽しみたいゲーマーにとって、絶対に外せないタイトルになりそうだ。

 多くのサードパーティタイトルの例にもれず、本作もMorpheus、Oculus双方への展開を予定している。

【EVE: Valkyrie Gameplay B-Roll (E3 2015)】

EVE Valkyrie

(佐藤カフジ)