ニュース

“パックマンの生みの親”岩谷徹氏が「パックマン」開発当時を振り返る

誕生35周年! パックマン大暴れの映画「ピクセル」特別映像も上映

9月19日 公開予定

 パックマンにドンキーコング、ギャラガなど、1980年代を代表するゲームキャラクターが敵となり、地球を襲うという9月19日に公開予定のディザスター映画「ピクセル」に関して、特別フッテージの上映とパックマンの生みの親である岩谷徹東京工芸大学教授の記者会見が5月18日に開催された。

 今回のイベントは5月22日に迎える「パックマン」誕生35周年を記念して企画されたもの。「ピクセル」では様々なゲームキャラクターが登場しているが、中でもパックマンは大きく取り上げられており、映画の中にも岩谷氏が“パックマンの親”として登場する(演じるのはカナダ出身の俳優、デニス・アキヤマ氏)。

ニューヨークでリアル「パックマン」。特別映像で細かすぎるゲーム愛を見た!

 映画「ピクセル」についてはこれまで予告編場面写真が公開されているが、今回上映された特別フッテージではより映画の雰囲気を感じることができた。

 フッテージは8分30秒ほどで、アダム・サンドラー氏ら演じるおっさんゲームオタクチームがパックマンと対峙する場面がメインとなっていた。5m近くはありそうな巨大パックマンはニューヨークの街並みをゲームステージかのように移動しており、路上にある車や邪魔なものをすべて飲み込んでいく。パックマン自身は光を発しており、食べられたことによって“ピクセル化”する物質も光を放って夜の場面に映える。表現として綺麗であり、想像力を掻き立てられる映像だ。

パックマンに対峙するMINI4台(オバケ役)。食べられたら終わりの「パックマン」アクションがニューヨークで展開する!

ドンキーコングとギャラガ。どう絡むかは今回の映像ではわからなかった

 そしてゲーオタチームは、赤やオレンジに色分けされたMINIを「パックマン」の「オバケ」に見立て対抗。どういう仕組みかはわからないが、パックマンはオバケ役のMINIで体当りすると消滅するようで、ニューヨークがステージ、しかも立場は逆転の「パックマン」が繰り広げられるというシーンになっていた。

 興味深いその細かい設定で、パックマンは途中で「パワークッキー」を食べる。するとMINIがみるみる真っ青な色へと変化し、パックマンは強気な表情と変わり、MINIを追いかけてくる。途端に劣勢になったぞ、なんてこった! というシーンなのだが、MINIの色の変化など丁寧かつ大真面目に描写されていて、GAME Watch読者であれば思わず笑ってしまう場面だろう。

 ほかに映像内では、「頭を狙え!」 「キノコが邪魔だ!」というアタリの「Centipede」、「Q*bert」など様々なゲームキャラクターがすべて3DCGとして実写の中に登場する。「Centipede」では上空からゲームそのままの動きで襲ってくるCentipedeに対してアダム・サンドラーらがガトリングガンを撃ちまくって「攻略」するのだが、それらすべてを壮大なギャグとしてやっているのが微笑ましい。テンションの高さは折り紙つきで、今から公開が楽しみな1作である。

岩谷教授登場! 「パックマン」開発の起源を語る

映画のシーンを再現する岩谷教授本人
岩谷氏自身も、アーケードをメンテナンスする役で出演している

 フッテージ上映後の岩田氏によるトークショウでは、「パックマン」制作当時の状況が話されていった。

 「パックマン」の開発がスタートしたのは1979年になるが、当時のゲームセンターは殺伐としていて、「男の遊び場」や「汚い、暗い、臭い」というイメージがあり、これを明るくしたいと考えたのがきっかけとなっている。岩谷氏が考えたのは「女性やカップルが楽しめるゲーム」で、そのため敵を倒す方法を「食べる」とマイルドな表現にし、その敵もどこか憎めないようなデザインとなっている。

 「パワークッキー」の要素は、「ポパイ」におけるほうれん草にヒントを得ており、「追いかけられるだけだと苦しいので、たまに逆転してスカっとしたい」要素として取り入れたそうだ。

 そして1980年5月22日、当時の東急文化会館(現渋谷ヒカリエ)でロケテストが実施され、「パックマン」が誕生する。結果は岩谷氏の目論見通り女性も楽しんでくれたそうで、企画が狙い通りに上手くいったと感じた瞬間であったという。

 岩谷氏のゲーム作りのポリシーは、「人に優しいゲーム、人の気持ちを考えたゲームをいかに作るか」。この考えは任天堂の宮本茂氏も共通で、「とても一緒の考えで、意見が合った」と当時の交流を振り返っていた。

 当時の「パックマン」はアメリカでも爆発的ヒットで、2005年に「最も成功した業務用ゲーム機」としてギネスに認定されるほど。アメリカでパックマンは「正義の味方」として認知されてもいるそうで、「カジノのキャラクターに使いたい」という企画が持ち上がった際、公的機関から「パックマンは子供の味方だから、カジノでは使ってはいけない」という判断が下されたという逸話があるほどだそうだ。

 フッテージの中では、暴走するパックマンを止めようと身ひとつで立ち向かう岩谷徹氏が登場するシーンもあった。「いい子だからおやめなさい」と手を伸ばすのだが、あっさりパクつかれて右手がピクセル化というギャグシーンで、海外版の予告編でもこのシーンは採用されていた。

 本人が演じているわけではないのだが、映画のキーマンとして印象深いだけでなく、これは役者を立てて配役してしまうほど岩谷氏が海外ゲームファンにとって有名であり、尊敬されていることを示している。

 岩谷氏は撮影現場に赴き、1シーンのみ特別出演もしているが、実際現場でも岩谷氏を一目見る、あるいはサインをもらおうと人だかりができるほどだったという。ちなみに主演のアダム・サンドラー氏は会う度「笑いながら肩をバーンと叩いてくる豪快な人」(岩谷氏)だったそうだが、「パックマン」が大好きで、家に筐体があるのだという。

 映画については、特にギャラガがワシントンDCの上空に佇む姿を印象的で格好良いシーンとして挙げ、「当時は2Dで見ていた平たいキャラクターが立体的になって、圧倒的な存在感がある。心の中のキャラクターの存在感と合わさって、とても楽しめる作品」だと語った。

 最後に岩谷氏は、「監督(クリス・コロンバス氏)が3Dがすごいと言っていた。街中で迫ってくるパックマンは迫力満点らしいので、見るときはぜひIMAXで」と付け加えた。IPのオープン化やそれに伴うGoogleマップのジャックなど、「パックマン」関連の話題が今年は多い。映画とあわせて、「パックマン」の動向にも注目の1年だ。

(安田俊亮)