ニュース

革命的な低遅延! 「GRID Game-Streaming Service」をガッツリ試す

国内サーバーの好適環境で楽しむクラウドゲーミングシステム

3月12日公開運用中

SHIELD端末の「SHIELD Hub」からアクセスできるGRIDゲームカタログ

 NVIDIAが展開するクラウドゲーミングサービス「GRID Game-Streaming Service」が、3月12日より公開運用を開始している。このサービスは既報のとおり、NVIDIAが発売している各SHIELD端末向けに、AAAクラスのPCゲームタイトルをストリーミングで提供するというコンセプトのクラウドゲーミングサービスだ。

 現在提供されているのは、無料で試せるテスト版といった格好だ。解像度とフレームレートは当初予告されていた1080p/60fpsではなく720p/60fpsとなっており、また、最新タイトルの販売といった有料オプションも開始されておらず、至極ベーシックな要素を確認できるだけ。とはいえ、格闘ゲームにレースゲーム、TPSやFPSといった各ジャンルのゲームを実際に試すことができ、既存のクラウドゲーミングサービスの常識を覆すほどの“低遅延”も確認できたので詳しく解説したい。

遅延わずか3フレーム!格闘ゲームも実用圏内となる革命的レスポンス

「SHIELD Tablet」と「SHIELD Controller」のセットでプレイ
「SHIELD Hub」内でできる環境テスト。かなり高品質の通信環境を要求する
実際のプレイ映像。60fpsでヌルヌル動く

 この「GRID Game-Streaming Service」は、NVIDIAが開発したサーバー用GPU「NVIDIA GRID」を用いて運用されているクラウドゲーミングサービスだ。KeplerアーキテクチャのハイエンドGPUコアによる高いレンダリング性能と、GPUコアにビルトインされたハードウェアH.264エンコーダーによるタイムラグなしの動画エンコード機能がウリ。“従来よりもずっと低遅延の快適なクラウドゲームが実現可能”とされている。

 そのうえ、サービスの提供にあたってNVIDIAでは東京にもサーバーを設置した。国土が狭い上に高速回線網が非常に充実している日本は、クラウドゲーミングサービスのために理想的な条件が揃っている。そこにNVIDIAのソリューションが組み合わさるとどうか?というのが今回、本サービスを試そうと思った主な目的だ。

 本サービスは各SHIELDプラットフォーム専用に提供されていて、現在では「SHIELD Portable」、「SHIELD Tablet」の2機種で無料体験ができる。が、「SHIELD Portable」は液晶パネル解像度が720pであるため1080p映像の表示ができないので、現時点では本サービスのベストプラットフォームは「SHIELD Tablet」だ。ちなみに対象プラットフォームの本命としては3月3日に発表された「SHIELD Console」が挙げられるが、NVIDIAによればその発売時期は北米で5月、日本を含むその他の地域では今年の後半とされている。このため、今回は「SHIELD Tablet」で試すことにした。

 そのうえで、本サービスを快適に利用するためには以下のような環境が必要だ。

・有線のブロードバンド接続(100Mbps以上の光回線が理想)
・5GHz帯の規格に対応したWiFi無線ルーター
・上記のルーターの近くでプレイできる状況
・大画面でプレイしたい場合、HDMI入力可能なモニタもしくはテレビ

 のっけから提供対象が恐ろしく絞られているだけに、サービスクオリティの下限は非常に高い。現在、50タイトル近く用意されているほぼすべてのゲームで720p/60fpsでの提供が行なわれており、その動きはクラウドゲームとは思えないほど滑らかだ(ちなみに提供開始当初は全ゲームが30fpsで提供されていたが、NVIDIAのによればそれは設定ミスだったとのことで、現在は60fpsに改善されている)。そして画質もいい。WiFiルーターのすぐ側でプレイできればストリーミング映像とは思えないほどクッキリした画質でゲームがプレイできる。

 それに輪をかけて驚いたのが遅延の少なさ。まずは以下の検証動画をご覧になってほしい。

【NVIDIA GRID - 遅延テスト(SHIELD Tablet)】
レースゲームはローカル端末でプレイするのと変わらないレベルの感覚
シューティングゲーム「アスタブリード」。弾幕シーンも全く問題なくプレイ可能
「Saints Row IV」。TPS/FPSも普通に快適だ

 上記動画は「Ultra Street Fighter IV」のプレイを60fpsカメラで捉えたもの。動画上の1フレームは1/60秒(16.666ms)だ。この動画ではWiFiルーターから1部屋離れた場所で実験しており、もう少し離れると端末から「品質低下の警告」が出るというギリギリのラインでレスポンスを確かめている。

 コマ送りで見たところ、ボタン押下の瞬間から小パンチが出始めるまでに3フレーム、アナログスティック操作でのジャンプ/しゃがみはスティックを倒し始めてから初動が起こるまで4~5フレームとなった。ただ、アナログスティックは原理上、物理的な入力が完了するまで若干のラグがあるため計測が曖昧になりやすい。正確な入力→映像の遅延の評価にはボタン入力のほうを採用するのが妥当だろう。つまり「GRID Game-Streaming Service」の筆者環境における遅延は、3フレーム、およそ50msである。

 50msの遅延というと、家庭用ゲーム機を一般的なHDTVに接続したときに得られる、標準的な遅延に匹敵するか、それよりもやや速いくらい。鈍感な人なら遅延の存在にすら気が付かないレベルである。日頃120Hzや144Hzといったハイリフレッシュレートのゲーミングモニターで1~2フレーム遅延のPCゲームをプレイしている人ならともかく、そこまで求めない“普通のゲーマー”なら全く問題を感じずにあらゆるジャンルのゲームを遊べる。

 筆者は日頃から遅延を限界まで削ったハイエンドな環境でゲームをプレイしているせいもあり、遅延にはめちゃくちゃうるさいほうだ。が、実際、本サービスではあらゆるジャンルのゲームを普通にプレイできてしまった。若干の遅延は確かにあるけれども、プレイの障害にはならない範囲である。特に、アナログな操作がメインとなるレース系ゲームでは、オフラインの環境と全く違わない感覚でプレイできる。もし30fps動作の家庭用ゲーム機と比べるなら、「GRID Game-Streaming Service」のレスポンスのほうがほうが確実に上だといえる。

 以下に、実際にいろいろなタイトルをプレイした映像をダイジェストでご紹介しておこう。

【NVIDIA GRID - いろんなゲームを遊んでみた】

現状でまだサービスとして未成熟。今後の取り組み次第で決定的なプラットフォームに

大型モニタに接続しての“コンソールモード”例
ちなみに各ゲームは英語PC版をそのまま載せてるだけなので、一部ゲームではベンチマークもできる。NVIDIA GRID K520によるオーバーパワーでサーバー上では軽く200fps以上出ている
ゲーム内で表示言語に「日本語」を選んだところ、文字が正しく表示されなかった
オンライン要素にアクセス不可。これはタイトルによっては致命傷になる

 というわけで本サービス「GRID Game-Streaming Service」は、遅延の少なさという点で本当に革命的な存在だ。既存のクラウドゲーミングサービスではある程度の遅延の存在を見込んで、快適にプレイできるジャンルを無意識に絞っていたところが間違いなくあったが、本サービスならその必要もない。e-Sportsレベルのプレイも可能かと問われれば否だが、もっと手軽にいろんなゲームをエンジョイしたいと考える層には救世主になりうる。

 という、大きなポテンシャルを秘めた本サービスだが、全体に目を向けると穴だらけなのも事実だ。

 まず、現状で提供されているタイトルはグローバルで共通の内容となっており、日本語サポートがあるはずのタイトルで日本語が使えない。例えば上記の「Ultra Street Fighter IV」は北米版の英語UIだし、国産インディーズタイトルの「アスタブリード」に至っては、言語オプションで日本語を選ぶと文字化けする始末(おそらくOSに日本語フォントが入っていないため)。

 この点についてNVIDIAに問い合わせたところ、“既存タイトルの日本語対応はできればやっていきたいが、具体的なところは決まっていない”、“新たに日本語のタイトルを追加していく取り組みはしていきたい、現在準備中”といった、具体性に欠ける回答ばかりだった。日本にサーバーを置いただけではまさに宝の持ち腐れとなってしまうので、日本語サービスの拡充や国産タイトルの拡充は両輪としてしっかり進めていただきたいものだ。

 また、わりと決定的な仕様の不備として“ゲーム内のオンライン機能がまったく使えない”という問題がある。具体的には各ゲームとも“Steamにおけるオフラインモード同等の動作”となっている。格闘ゲームやレースゲームでオンライン対戦ができないのはもちろん痛いし、ソロプレイ系のゲームでもオンラインのリーダーボードや非同期の連携要素、DLCといった要素にアクセスできないのは痛い。実際に遊んでみると使えない機能が意外とあって、なにか体験版をプレイしている気持ちになるし、そもそもとして、オンライン接続が前提のゲームも多い昨今、この仕様は対応タイトルを大きく狭めてしまうことにつながるだろう。

 この点についてNVIDIAは“技術的には対応可能だが、実際にどういう仕様にするかは未定”としている。やはり玉虫色の回答となってしまったが、本サービスで“高品質なAAAタイトルを提供する”というのなら、オンライン要素にはアクセスできるようにすべきだし、オンライン対戦もしっかりサポートすべきだろう。

 最後に、実際のサービスとしてどのようなものになるかもまだ不明だ。北米では2015年5月に予定されている「SHIELD Console」の発売に合わせて1080p解像度での提供や、プレミアムタイトルの有料提供といった商業サービスも始まっていく見込みだが、日本でどのように商用サービスを展開していくかについては、やはりまだ未定だとのことである。やるということは決まっているが、具体的な中身がまだ詰め切れていないという状況のようだ。

 少なくとも今年後半には「SHIELD Console」も発売され、本サービスも正式なコンシューマー向けサービスとしてローンチすることになるというこの段階で、具体的になにをどのように提供してもらえるのかがユーザー側にまったくわからないというのは問題だ。そもそも「SHIELD Console」が北米で5月に発売されるという情報も、NVIDIAからはろくに露出されていない(公式サイトやブログにも記述がない)。NVIDIAはGPUメーカーとしてB2Bビジネスを展開してきた歴史が長く、消費者に直接訴えるB2Cのビジネスでほとんど経験がないのは確かだが、同じノリでやっていては間違いなく「GRID Game-Streaming Service」が市民権を得ることは不可能だろう。

 革命的な低遅延でクラウドゲーミングサービスの世界に新境地を開けるかどうかは、ひとえにNVIDIA自身がプラットフォーマーとして市場を牽引していけるかかかっていると思う。宝の持ち腐れにならぬよう、しっかりと本サービスを育てていってほしいものだ。

ゲームカタログの例。現時点で用意されているタイトルラインナップはちょっと古いものが中心。ゲーマー的には今更感が強いので、新規タイトルの拡充も急務になりそうだ

(佐藤カフジ)