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東大から生まれた2次元に特化したジェスチャーシステムが凄い!

“高速ビジョン”テクノロジーで遅延を感じさせないジェスチャー操作を実現

9月18日~21日 開催(一般公開日 20日~21日)



会場:幕張メッセ1~9ホール



入場料:
前売り 1,000円
当日 1,200円
小学生以下無料

 ゲームの分野でナチュラルユーザーインターフェイス(NUI)というとXboxのKinectがその筆頭に挙げられるが、この分野で新たに盛り上がりつつあるのが、スマートフォンやタブレットで使われる“タッチ操作”をジェスチャーで行なうという取り組みだ。

取材に協力して頂いたエクスビジョン取締役の森本作也氏。Xbox Oneに搭載されたいわゆるKinect2を開発したCanesta(現MSの子会社)に所属
「Fruit Ninja」が超快適に遊べる!
EGSが認識している映像。顔の位置から手の所属を把握するため、手を差し込んでも誤動作は発生しない
プロトタイプとして使われていたカメラモジュール。1つは予備で、動作しているのは1台のみ
一般公開日には多くの来場者が集まっていた

 Windows PCやAndroidベースのセットトップボックスを、TVに映し出して使う場合のUIとして脚光を浴びている分野だが、今回東京ゲームショウに参考出展されていたエクスビジョンの「エクスビジョン・ジェスチャー・システム(EGS)」は、その本命になり得るポテンシャルを秘めたシステムだった。さっそく紹介したい。

 「エクスビジョン・ジェスチャー・システム」の画期的な要素は3点ある。まず1つ目は価格が安いこと、2つ目は遅延を感じさせない極めて優秀な応答速度を実現していること、3点目に2次元に特化しているため外乱光や太陽光による誤作動に強いことだ。これらは裏を返せば、Kinectを頂点としたエンターテインメント用途に使われているNUIの弱点でもある。

 Xbox 360やXbox Oneに搭載されているKinectは、高性能な3次元センサーや赤外線センサーに加えて画像処理を行なうプロセッサを搭載し、五体の動きやボイスを含めた多彩な入力に対応する。その代償として単体で150ドルもしてしまうだけでなく、3次元処理を行なうため応答速度に限界がある。結果、どうしてももっさりとした操作感になってしまう。

 これに対して「EGS」は、スマートフォンやタブレットのタッチ操作をジェスチャーで行なうことに特化したシステムになっており、単眼の2次元のセンサーを使い、120fpsで映像をスキャンして30ms以下の応答速度でジェスチャーを入力に反映させる。その代わり奥行きを検知するデプスセンサーや、声に反応するボイスセンサーなども搭載しないシンプルな構成になっているため、数十ドルで作れる。

 このシステムのコアテクノロジーとなっているのは、ベンチャー企業の母体となっている東京大学 石川・渡辺研究室が生み出した「高速ビジョン」と呼ばれるテクノロジー。これを活用することで、より高いフレームレートで映像をスキャンし、通常では実現できないスピードで画像処理を行なうことができるのだという。

 実際にブースで「Fruit Ninja」や「Candy Clash Saga」などを試してみたが、まさにタッチパネルで操作しているような、もっさり感のまるでないピタッとした応答速度でゲームが楽しめた。「Fruit Ninja」は手の動き通りに手刀のアイコンが動いてくれるため、ズバズバ切るのが楽しくてたまらないし、トラップの爆弾をすいすい避けられた。「Candy Clash Saga」は、あたかもキャンディを自分の手でズリッと動かしている感覚が味わえて、新鮮な楽しさが味わえた。動きの遅延も認識のズレもほとんど感じられず、鏡に映る手の動きのような感じで画面内の手のアイコンが動く。これはまさに衝撃的だ。

 まだセンサーも含めすべてプロトタイプということで、画面の右上のサブモニタには、カメラの映像が映し出されており、カメラの視界となる緑の枠、頭部の位置を示す黄色い枠、手の動きの設定可能範囲となる青い枠、そして実際の可動範囲枠となる赤い枠が表示されている。

 「EGS」の用途は実はゲームにこだわっていない。今回、Androidベースのゲームコンソールである「gamepop」と相乗りする形でブースを構えていたのも、東大発のベンチャーとして新たにゲームビジネスに参入したいからではなく、ゲームがもっともEGSのインパクトを世間に伝えられると考えたためだという。このためプリセットされている認識範囲の設定が、あまりゲームと噛み合っておらず、たとえば「Fruit Ninja」で手刀を大きく振りかぶると、認識範囲を出てしまうため簡単にロストしてしまうなどゲームのUIとしてはちょっともったいない感じだった。もっとも、このあたりの操作は設定次第でどうとでもなる印象で、ポテンシャルを損なうものではない。

 3次元センサーであるKinectと単純比較はできないが、“手の動きを画面に反映させる”という点に限定して言えば、「EGS」はKinectより数段優れており、すでに未踏の領域にいるといっても過言ではない。ただし、Kinectは6人までの全身トラッキングに対応しているのに対して、「EGS」は、トラッキング対象は両手だけで、誤動作を防ぐために頭部の位置関係をリアルタイムでチェックする仕組みがあるのみだ。タッチ操作の代用に機能を絞り込み、性能を特化させているところが最大の特徴となる。

 エクスビジョンでは、この「EGS」を2015年より発売予定で、価格は数千円代を予定。リリース形態は、専用チップを組み込んだセンサーの販売に加えて、カメラモジュールを搭載したPCやタブレットに対するソフトウェアライセンスの2通りを考えているという。

 ゲーマーの手に届くようになるどころか、実際にゲーム用途に使われるかどうかもわからない状態だが、すでにいくつか問い合わせは来ており、手応えを得ているということだった。日本発の超高性能ジェスチャーシステムの登場に期待したい。

(中村聖司)