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SCE WWスタジオプレジデント 吉田修平氏囲みインタビュー

「Project Morpheus」からMicrosoftの「Mojang」買収までざっくばらんに答える!

9月18日~21日 開催(一般公開日 20日~21日)

会場:幕張メッセ1~9ホール

入場料:
前売り 1,000円
当日 1,200円
小学生以下無料

 東京ゲームショウ2014といった場では大きな発表も相次ぐこともあり、各種トップインタビューなども企画されることが多い。ソニー・コンピュータエンタテインメントでいえば、WorldWide Studioのトップを務める吉田修平氏が大きな発表に前後する形で、毎回インタビューに答えていただいている。

 今回はゲーム媒体数社の囲み取材において、プレイステーション 4の動向からその方向性に付いてまでざっくばらんに質問の答えていただいた。内情をバラせば、こういった場でのインタビューは記事チェックを求められることも多い。今回を含め、吉田氏のインタビューにはチェックが無いことが多く、それはSCE社内において絶大なる信頼感があるということだ。

 今回は海外タイトルについての話題から、インディーズタイトル、そしてもちろん「Project Morpheus」に関してもお話を伺っている。さらにはMicrosoftの「Minecraft」の制作で知られるMojangの買収に関するコメントまで伺っている。なかなか興味深いので、ぜひともご一読いただきたい。

プレイステーション 4は本当に好調なのか?

――プレイステーション 4が全世界で好調な中で、海外のインタビューで好調の理由がわからないと仰っていましたが、その後分析は進んだのでしょうか?

吉田修平氏: あれは好調の理由がわからないといったのではなく、我々が想定していたよりかなり上の成績を行っている状況の中で、データを見てみたときに、発売後半年の間にPS4を購入した人の中にPS3を持っていない人が半分近くいらっしゃったんです。それはXbox 360から乗り換えられたユーザーさんもいらっしゃるので、それならわかるのですが、実はその中に、他社の製品も含め前世代のコンソールマシンを1台も持っていらっしゃらないユーザーさんがわりと多かったんです。それがわからないと言ったんです。

 その方達はプレイステーション 2の時代に遊んでいて戻ってこられたのか、それとも全く新しいユーザーさんなのか? 最初に想定するのは、ゲームのコアユーザーであるPS3のユーザーさんがPS4も購入すると思うじゃないですか? ところが前世代のコンソールマシンを持っていない人がかなりの数いらっしゃったのがすごく不思議でした。ただ、それはすごくいいことだし、我々の想定より好調な理由としてはわかりやすいんです。ですが、今後も売上げが上り調子であり続けるためには、我々が想定しなかったユーザー層がなぜPS4を購入して、何をしているのか? そういったことがわからないと、今後も売上げを期待できないじゃないですか? その理由を知りたいというのはありました。

 その記事が出たあと、あちこちで「PS4の好調の要因を考える」といった記事がたくさん掲載されて「PS4が売れている」という話しが巷で溢れて、それはそれで良かったのですが(笑)。その中の1つに、元となったデータが米国のニールセンの数値だったのですが、ニールセンの質問が「その時に持っていますか?」だったんです。ユーザーさんによってはPS3を下取りに出して売って、PS4を購入する人もいますから、「今は持っていない」という数値が大きくなったのではないかと。それを聞いて「ああ、なんだ」と(笑)。それならわかると。

――ここ数年、ゲーム機はスマホとの対比として語られることが多いのですが、そんな中でPS4が売れたのは、経済アナリストの人たちにとっては想定外だったと思うんですね。

吉田氏: そうですね。彼らにとってはゲーム専用機は必要ない、時代は終わったという風潮だったんですね。PS3やXbox 360の売上げが徐々に落ちてきて、Wiiはそれより早く売上げが落ちてきていましたから、数値を見れば2008年頃から落ちて、このままずっと落ちて帰ってこないという風潮でした。Xbox OneもXbox 360より早くに多くの台数を販売しています。PS4とXbox Oneを合わせれば、次世代機はかなりの数をいっているというのは、発売前のアナリストの論調からするとガラッと変わりましたね。

――それはゲームの嗜好が2極化しているというか、コアゲームとカジュアルゲームに集中しているという風に感じていらっしゃるのでしょうか?

吉田氏: 我々作っている側から見ると、PS3からPS4に向けて、1タイトルに対して投資を増やしているんですね(1本あたりの制作費を増やしている)。それに、ユーザーさんの目も肥えてきて、特にFree to Playで遊ぶゲームはたくさんありますから、お金を払うのであれば、それなりの内容でなければいやだと。ですから、AAタイトルと呼ばれるような中間層がゴソッと抜けていきましたよね。同時にAAタイトルを作っていたメーカーさんも消えていきました。経営が成り立たなくて。そうなるとAAAの規模が逆に大きくなり、タイトル数は減っているけど、1タイトルの売上げは伸びています。それがPS4などの時代になり新しい技術になり、よりはっきりしたんじゃないかと思いますね。

 「Destiny」も「Watch Dogs」も「Grand Theft Auto V」、「The Last of Us」もそうですが、長い時間と製作費をかけて、かなり気合を入れて作っているタイトルです。それがユーザーさんにガンと伝わっているというのはすごくヘルシーなことだと思います。

 今後の計画を立てるとき、毎年レポートを見たりしますけど、将来の普及予想とかが毎年ガラッと変わるんですよ。過去のデータを見て将来の予測を行なうので、新しいデータが入ればガラッと変わります。PS4が出て数値が変わりましたし、良かったですね。調査会社の数値を変えるのは、業界の人間なんです。業界がなにをするかによるんだなと。自分たちで業界を作り上げないといけないなと思いましたね。

日本独自のタイトルについて

――きちんとした数値的な裏付けはないのですが、PS4は「世界的には好調だけど、日本ではそれほどいってないよな」というイメージがあります。

吉田氏: 日本は全くいってないですね。

――そんな中で、PS4の年末商戦に向けて、タイトルを揃えるというのはもちろんでしょうけど、どういったアイディアで挑むのか。日本で失われたユーザーを取り戻していくのか、考えていらっしゃいますか?

吉田氏: それはもう、日本のコンテンツしかないですね。海外のコンテンツはすごいものが出ていています。PS4の発売前から海外のパブリッシャーさんからは早くPS4を出してくれとまで言われていました。作り手側が準備ができていました。PCの市場もありますから、わりとプラットフォームの環境を整えていらしたパブリッシャーさんが多かった。

 日本の場合はポータブルも強いですし、モバイルもあります。かなり分散されていますし、PSPからPlayStation Vitaへの移行もそうですが、やはり遅いです。両方のプラットフォームでタイトルをリリースして、ユーザーさんが徐々にシフトしていった。PS3の普及もゆっくりでしたし、そういう形で進むと私は思っています。

 ですから9月1日のカンファレンスで、かなりたくさんのパブリッシャーさんがPS4とPS3、PS4とPS Vitaで新作を出しますと言っていただけたことが、第1歩として嬉しいんです。最初は両プラットフォームで出て、ユーザーによってはPS4版を買って、PS4版の方が解像度が高いですとか、絵が綺麗ですとか、全く同じタイトルでもPS4版の方が遊びやすいですとか、色いろんなところが気持ちいいということがわかっていただけるので、徐々にそういったユーザーさんが増えていけば、パブリッシャーさんもPS4の方に軸足を移していこうか……と言うことが今後起こってくると思います。

 日本ではPS3からPS4への移行はゆっくりであると思っていますが、それは着実に起きてくると思いますし、その第1歩がカンファレンスなどでも示せたかなと思います。ですからやはりコンテンツが1番大事だと思っています。

――そのサードパーティーさんも含めたプレイステーションプラットフォームの中で、ファーストパーティとしてのワールドワイドスタジオでは、文字通りワールドワイドでソフトを作っていらっしゃいます。吉田さんも日本において海外のタイトルをよりアピールしなくてはという部分があると仰っていました。

吉田氏: それは今も思っています。「Destiny」、「Grand Theft Auto V」、「The Last of Us」この辺の動きを見ていると、少しずつ「海外のゲームいいな」というユーザーさんが増えているというのを実感しますね。そして、今後も増える一方だと思っています。海外で作られるゲームの技術ですとか、発想も含めて……私は海外のでデベロッパーとたくさん仕事していますが、海外のスタジオを訪問するのが楽しいんですよ。彼らのアイディアですとか技術などの凄さというのが、徐々に日本のユーザーにも伝わってきましたね。海外のパブリッシャーさんで長く日本でプロモーションされてという方は少ないですから、日本で目立ちにくいんですよね。

 昔は海外のゲームは作りが荒かったり、読み込みが長かったり、バグが多かったり、ユーザーさんに優しくない作りが多かった。そういったことを覚えていらっしゃるユーザーさんもいるのかもしれませんが、最近は海外のクリエイター陣もすごく勉強してます。海外の業界のいいところというのは、人も移動しますが、情報も移動し、ノウハウの共有が盛んで勉強熱心ですよ。日本のゲームの勉強も含め、どんどん隙が無くなってきています。

 もちろん日本で生まれて日本でしか作れない……マンガやアニメベースのコンテンツなどもありますし、日本の文化をそのままゲーム化したような「龍が如く」シリーズもありますが、そういうものでなければ、非常にクオリティの高いゲームがたくさん出てきていますし、日本で発売されていない欧米のインディゲームのクオリティや発想が素晴らしい。そこは我々の努力がまだ足りなくて、PS4でもPS Vitaでも、毎週のように登場するクオリティの高いインディゲームがもっとたくさん日本で発売されるようになって、日本のユーザーさんが全く知らないメーカーやタイトルだけど、こんなに面白いものがあるんだと気付いてもらえる努力は、SCEとして、SCEJAが中心となって今後もやる必要があると思っています。

 将来については少しずつ少しずつ、「海外のゲームもいいな」と思ってもらえるユーザーさんが少しずつ増加していると思っていますので、そこは楽観しています。しかし、短期的には、PS4を持っていれば日本のメーカーさんのコンテンツがリリースされるという、ユーザーさんが安心していただけるような環境というか雰囲気作りが大切だと思っています。

――一方で、ファーストパーティとして日本向けのコンテンツをリリースしなければいけないというのもあるかと思います。私感ではありますが、昔に比べて日本スタジオのタイトルが減っているように感じますが?

吉田氏: 「減っている」という話はされるのですが、減らしているわけではなく、実は全世界的なタイトルも減らしているんです。これは我々だけでなく業界的にそうなんですが、1つ1つのタイトルにかかるリソースが増えていますので、全体的にタイトル数を減らして1作1作の投資額を増やしているんです。なので、日本のスタジオの活動を減らしているわけでも、日本のスタジオが海外向けのタイトルを一生懸命作っているわけでもないんです。ただ単に業界の流れとして本数を絞って、より1つ1つにお金と人を掛けているという流れが、力を入れていないように見えるだけなんです。

 ジャパンスタジオで言えば、「欧米のゲームがいいな」と言ってくださるユーザーさんが増えてはいますが、(そういった層が増えるまで)なかなか時間がかかる中で、日本のスタジオの存在意義はメチャクチャあるんです。日本でしかできないタイトルの制作といった、彼らに課せられたミッションを一生懸命進めてもらっています。

 ただし、どういったものを作るかは1人1人のクリエイターの方のビジョンがあるので話をして、「俺の屍を越えてゆけ2」や「フリーダムウォーズ」といった日本市場向けのものから、「Bloodborne」や「The Tommorow Children」といった海外の人にも受け入れやすいタイトルも作りますし、それはどちらかを狙っているわけではなく、クリエイターと話しをする中で「こういうのをやりましょう」と決めていきます。結果としてこうなっているわけで、「Bloodborne」も「The Tommorow Children」にしても日本でも受け入れられると思います。

 今回「Bloodborne」の試遊を行なっていますが、かなりの反響をいただいています。ですので、日本のスタジオの意義と価値はすごく認識していますし、新ハードが出ればそのハード専用タイトルを出します。ユーザーさんにPS4でしかできないと感じてもらえるようなタイトルを頑張ってたくさん出していきたいと思っています。そんな中で、2月に発売される「Bloodborne」と「THE ORDER:1866」は両方共PS4らしいタイトルになったかなと感じていますので、注目して欲しいなと思います。

THE ORDER:1866

――一「Destiny」について伺いたいのですが、1つは日本での反応やユーザー感では賛否両論である点についてはどう感じていらっしゃるのか? そしてActivisionさんと10年契約を結んで今後やっていかれるタイトルだと思うのですが、SCEJAとして日本で10年間規模で展開していくおつもりなのでしょうか?

吉田氏: どういう形で提携が結ばれたのか、また期間についてはお話しできませんが、今回ActivisionさんやBungieさんとPS4のローンチに向け、2013年の2月のニューヨークのお披露目イベントで同時に発表させていただきましたけども、それはPS4でやりたいこととをまさに実現しようとしているタイトルになりつつあるなと思ったので、アメリカ(SCEA)とヨーロッパ(SCEE)がActivisionさんとお話をして盛り上げていきましょうと言うことになりました。その流れで日本でSCEJAとしても応援しましょうとなり、そこからもう1歩進めてプレイステーション・フォーマットのみでの展開となりました。欧米で進められた提携が日本どもこういった形で実現したという形です。

 発売後の印象については、皆さん一緒かなと。手触り感ですとかスケールとかアートなどは素晴らしいが、コンテンツが限られているというか、似たようなミッションが多いということで評価しづらいと言うことのようですが、やはり10年という話もあるように、ずっとコンテンツを作り続けていくというプランで作られているので、バリエーションとかボリュームですとかが足りないと言われる方が、ゲーム性に問題があると言われるより健全だと思っています。ですから、私もデベロッパーもわかっていたと言いますか、色々計画していてコンテンツが増えていけばその進化が理解されると思います。

 「Destiny」は、ダラダラ遊んでもずっと楽しいゲームだと思うので、長く遊んで欲しいタイトルです。

Destiny

インディーズコーナーについて

――一インディーズについてですが、これまでSCEさんは「ゲームやろうぜ!」や「PlayStation C.A.M.P!」などのクリエイター支援策をやってこられてきました。現在大型タイトルは絞っていく中で、小さなアイディアのタイトルを社内のチームで制作しやすいような組織作りというのはされているのでしょうか?

吉田氏: SCEとしては「ゲームやろうぜ!」も「PlayStation C.A.M.P!」もすでに辞めてしまいました。インディーズゲームがブームの中でなぜ辞めるのか? 我々がパブリッシャーとして人を募集して、支援をしなくてはいけない環境ではもうなくなるだろうと。欧米を見ていても実力のある人は独立してどんどんゲームを作ったり販売できるようになるので、パブリッシャーがいらないというとおかしいですが、セルフパブリッシュできる環境ができたということなので、我々の活動の役割は終えたかなと。

 ゲームを作ってデジタルで販売できる(ダウンロード販売できる)ということは、我々も含めて手に入ったということなので、、社内で企画があってビッグタイトルではないけれども、デジタルでの取り扱いにむいているタイトルであれば、今後もそういった形で出していきます。

 今、SCE内部でどうかと言われれば、日本のスタジオは大きめのタイトルで忙しい実情はありますけどね。

 ですから、企画があればやると言うことです。そしてそういったスタイルは、デジタルで販売できるようになったことで、昔よりやりやすくなってます。PSPよりPS Vita、PS3よりPS4のユーザーのほうが、デジタルで買う人の数がすごく増えているんです。ディスクベースのゲームもすべてデジタルで販売していますが、50GBもあるようなゲームをデジタルで買う比率が毎月のように上がってきているんです。それはデジタルで購入することの便利さみたいなものに気付くんですね。任天堂の岩田さんも仰ってましたが、1度デジタルで購入した人は次もデジタルを選ぶ傾向がある。そういったことからデジタルで購入するユーザーさんが増えているので、デジタルでゲームを販売する環境も良くなってきていると思います。

――日本市場を盛り上げて行くには日本向けのゲームが必要と言うことですが、「俺の屍を越えてゆけ2」のような日本狙い撃ちといったタイトルを今後仕込まれていたりするのでしょうか? ユーザーとしてはこういったタイトルに投資していってもらえると嬉しいなと思うのですが。

吉田氏: ユーザーさんからも色々と続編を作って欲しいというリクエストが来るのですが、それはやはりクリエイターの現場から企画が上がってこないと、ゲームを作るのは大変なので、後押しできないんですよ。例えばオリジナル版のクリエイターがいるですとか、新しいクリエイターが「違ったアプローチでやりたい」といったような企画提案があった場合には検討したいなと思ってますね。

 我々は新作(新規IP)を作るのも好きですから(笑)、なかなかたくさん手を出すことは難しいところではあります。

 ですが、今、JRPGは見直されているんですよね。海外でも「二ノ国」ですとかすごく評判良かったですし。「俺の屍を越えてゆけ2」も注目してもらっていますし。「ペルソナ」も海外のユーザーさんが増えているような気がしますね。

――「Project Morpheus」についてですが、未来は感じさせますが、どのように商品に落とし込んでいくのか? 難しい商品ではあると思うのですが、どのように利用されるのかなど想定していらっしゃっる所はあるのでしょうか?

吉田氏: (頭に取り付けるのが大変であるとか)使い勝手については、こだわりたいと思っています。いまのプロトタイプも結構頑張っていて、頭で支えることでゴーグルを自由に動かせて眼鏡を付けたままでも使いやすいですとか、頭で支えた方が軽く感じるのでそういった工夫をしていたりはしています。とはいえ視界を覆ってしまうものですから、ユーザーさんが1人でどうすればいいのかわからないことが無いようにするにはどうすればいいのだろう?など重要な開発テーマとして持っています。

 しかし、あのVRでできることは、圧倒的にこれまでになかったことなので、必ず世の中に普及すると思うので、我々は可能性を感じているので、自分たちで広めていきたいと思っています。そういった中で、この「Project Morpheus」にはPS4が必要なんです。これだけパワフルなコンピューターで動かさないとリアルタイムの映像は作れないですから。現在PS4が普及していると言うことはいいことなんです。「Project Morpheus」をどうやって浸透させるんだと考えたとき、追い風になってますし、「Project Morpheus」をたくさん体験してもらえれば、「PS4でこんなこともできるんだ」と思ってもらえると思うんです。PS4を買っておくと将来いいことがありそうだなと感じていただいて、PS4の普及に拍車をかけられるのでは無いかと。その両方の意味で、一生懸命取り組んでいます。

Microsoftの「Mojang」買収などについて

――先日、Microsoftが「Minecraft」の制作で知られるMojangを買収しました。これについてコメントをいただきたいのですが。

吉田氏: 先日パーティで、Microsoftのフィル・スペンサーと会ったので「おめでとうとう!」って言いましたよ!

――「おめでとう!」ですか?

吉田氏: だって、「買収されたからプレイステーション版をもう辞めます」とか言われたら大変ですけど、全然そんなことは無いじゃないですか。

――フィルさんとは仲がいいのですか?

吉田氏: 仲がいいというか、フィルはわかりますね。それ以前のMicrosoftの人ってわりとすごくビジネスな人たちで、なにを言ってるのかよくわからなかった(笑)というか、違和感を感じる人が多かったのですが、フィル・スペンサーが言っていることは理解できます。

――MojangのNotchさんは「Minecraft」のコミュニティが大きくなりすぎてその重みに耐えられなくなったと仰ってましたが、吉田さんもTwitterなどでプレイステーション・ファンの声にダイレクトに応えていらっしゃいます。そのような重みを感じることはありますか?

吉田氏: それはありますね。毎日毎日朝起きたら「なにがプレイステーションで良くないか」を聞かされるわけですよ。ものすごく強烈な言葉で。それで悪意を感じたらすぐブロックするんですけど(笑)。悪意じゃ無くても、みんな困っていたりですとか、我々に無いフィーチャーを他社が発表して「どうしてプレイステーションではできないのか?」といった意見は来ます。すごく便利なんですよ、早いですから。ゲームにバグがあったりですとか、なにかトラブルがあれば私が1番最初に知っていますから。同じような問い合わせが来れば開発関連部署と情報共有しますし。仕事上では非常に役に立ってますし、他の関連部署からも有り難がられているんですよね。

 それに、例えば発表したことに対するフィードバックを知りたいときなどは、ぱっとわかりますよね。そういった便利な側面と、「できていないこと」にたいする恨み辛みや怒っているユーザー、勘違いしているユーザー、ほかの商品のファンで単に意地悪なユーザーとか、混じってきているわけです。たまに精神的にキツいなという時はありますね。でも、ただ単に「プレイステーション買ったよ!」とか「ゲームでプラチナ取ったよ」とか、嬉しいお知らせもいっぱい来るので、そちらのプラスの方が大きいです。

 最近、ブロックとかミュートとかできる機能があって本当にありがたいなと。

 Mojangの買収の件ですが、Notchさんの言葉にもありましたが、「Minecraft」とXboxの個人的な繋がりの中で、自分はもう関わらないけど、任せる相手として信頼できる相手として選んだということであれば、それは良かったんじゃ無いでしょうか。

――かなり巨額の買収劇となりましたが、その件についてネガティブに反応している方もいらっしゃるようです。2,700億円という価値換算を吉田さんはどのようにとらえていらっしゃるのでしょうか?

吉田氏: 最近は金額的にはインフレ気味ですよね。ですからMojangの買収金額に関しても色々な評価の方法はあると思うのですが、高いか安いかは結局は買った会社がどうするか次第なんですよね。Microsoftさんのお話によると短期的なやりくりで見るとリクープするんだよという話もあって、すでに収入のあるビジネスですから、そこの収入とのれん代の償却とか費用が同じような金額になっているのかなと、私は推測したんですけど、ただそれを何年続ければリクープできるんだというのは、それだけの話しでは無いんだろうなと思います。つまり、それをテコにして新しい市場に入っていくとか新しいユーザーを獲得するですとか、買った企業を利用して今は無いビジネスや価値をその会社のために作り出すことができれば、買収の価値があったと言うことになるわけじゃないですか。それはなにを狙ってらっしゃるかは、我々は推測はできてもわからないです。それはfacebookのOculus Rift買収も同じですよね。

【お詫び】
記事掲載当時、冒頭に記事内容とは異なる発売日などが入っておりました。ここにお詫びして訂正いたします。

(船津稔)