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NVIDIA、高性能タブレットブランド「Tegra Note 7」を発表

業界最速を謳うTegra4を搭載し、4つの目玉機能を搭載。ゲーム用途にも!

12月4日発売予定

価格:25,800円

「Tegra Note 7」リファレンス・デザイン

 NVIDIAは12月2日、Androidタブレットの新プラットフォーム「Tegra Note 7」を発表した。このプラットフォームに基づくZotac版の7インチ端末が12月4日より国内発売されることも合わせて発表された。こちらの価格は25,800円。

 「Tegra Note 7」は、NVIDIAの最新モバイルプロセッサTegra4をベースとし、NVIDIA独自のソフトウェア技術をOSレベルで実装したAndroidタブレットの新規格だ。各メーカーは本規格に基いてタブレット端末を開発し、「Tegra Note 7」のブランド名を冠して販売できる。

 都内で開催された発表会ではNVIDIA Japanのマーケティング マネージャー林 憲一氏が登壇し、「Tegra Note 7」が持つ高い性能と新たな利便性をアピール。ペン機能の紹介では書道家の涼風花さんも登壇するなど賑やかな発表会となった。

Tegra4パワーで4つの独自機能をOSレベルで盛り込み、ゲームにも強い

NVIDIA Japan マーケティング マネージャー 林 憲一氏

 Tegra4 といえば今年6月に北米で出荷が開始されたAndroidベースの携帯ゲーム機「NVIDIA SHIELD」にも使われた高性能モバイルプロセッサだ。72個のカスタムGPUコア、クアッドコアのCortex-A15 CPUにより高いグラフィックス性能を有し、ざっくりと言えば据え置きゲーム機PS2とPS3の中間程度の能力を持つ。

 その性能をAndroidタブレットで活かしきるにはどうすればよいか……という問題の答えが「Tegra Note 7」というプラットフォームだ。本プラットフォームは単なるハードウェア規格ではなく、Android OSにカスタムビルトされる独自機能を含む規格であり、本規格を採用するタブレットメーカーは労せずして以下の4つの機能を製品に盛り込む事が可能だ。

「Tegra Note 7」のコンセプト
よく知られた複数のメーカーがパートナーシップを締結

1.DirectStylus

専用スタイラスが付属する
書道家の涼風花さん

 Androidタブレットはスタイラス(柔らかい先端を持つタッチペン)での入力に対応するものも多いが、そのほとんどはパッシブ方式(静電容量方式のパネルでポイント位置を読み取る)であり、指先のように太いペン先が必要で、細かい操作が難しいという問題がある。これに対して高性能と言われるのがアクティブ方式のタブレット、いわゆるペンタブだ。こちらはペン側に回路が搭載されており正確な入力やペン圧の検出などが可能だが、高価である。

 「Tegra Note 7」ではパッシブ方式のセンサーを搭載するが、タッチ面の大きさ・形状をリアルタイム画像処理で検出することにより、付属する独自形状のペン操作にて高速な擬似筆圧検知が可能となった。これがDirectStylusテクノロジーとなる。自在な太さの線が書け、ペンの反対側を押し当てると自動的に消しゴム機能になるなど、その性能はアクティブ方式のペンタブに匹敵する。

 これを書道家の涼風花さんがデモンストレーション。スムーズな筆さばきで、鮮やかな抑揚を持つ「夢」の字をスラスラと書き上げた。「途切れずに、反応が遅れることもないので、滑らかに書けます」と絶賛。

「Tegra Note 7」で書いた直筆サイン
涼風花さんがスラスラと「夢」の字を書く
円錐を斜めにカットしたようなペン先で、タッチする角度、強さによって接触面積が変わる仕組み
任意の画面をペンで切り抜き、書き込んで共有する機能をOSレベルで搭載

2.高性能カメラ

3つのカメラ機能

 「Tegra Note 7」に搭載されるカメラ機能には3つの特徴がある。ひとつは、常にHDR撮影が可能となる“Always-On HDR”機能。HDR写真撮影は露出の異なる写真を合成する方式のため通常は動くもの撮影すると大きくブレてしまい使い所が限られてしまうが、「Tegra Note 7」では独自カメラ機構とTegra4の処理能力により異なる露出の写真を“ほぼ”同時に2枚撮影し瞬時に合成するというアルゴリズムで、激しく動く目標のHDR撮影も可能となっている。

 2つ目の特徴は“Tap-to-Track”と呼ばれ、動画撮影時に任意の動目標をタップすると以後自動的にその目標にフォーカスを当て続けてくれるというものだ。これもTegra4による高速な画像処理技術によって実現している。3つ目は“Slo-mo Video”機能。これも処理能力を活かし、720p画質にて300fpsの高速動画撮影が可能だ。

3.Pure Audio

ハードとソフトの両面で高音質にこだわり

 タブレット端末ではスピーカーの配置やサイズが限られるなかで、限界まで良い音を鳴らそうという技術。「Tegra Note 7」では本体前面にスピーカー・フロントグリルを備える上、内部構造を工夫することで両側面にバスレフポート、内部に5ccの空気室まで備えた。端子類が配置される左側面にも同様の構造を実装し、USB端子の穴をバスレフポート代わりにするという工夫の凝らしようである。

 バスレフポートの形状が左右で異なるため響きも変わってしまいそうだが、音声をリアルタイム加工することで左右のスピーカーから同質のサウンドが出力されるというソフトウェア技術も盛り込まれている。このハード・ソフト両面の実装を総称して“Pure Audio”機能と呼ぶ。

4.ゲーム機能

NVIDIA製品らしくゲームへの強さをアピール
Tegra4の描画能力を活かしたタイトル

 Tegra4はゲームに強いプロセッサだ。もちろん「Tegra Note 7」もゲーム用途を意識した端末になっていて、「NVIDIA SHIELD」と同様に、NVIDIAのTegra向けゲームポータルである「TegraZone」へのアクセス機能がビルトインされている。Blutoothゲームパッドのサポートと、micro HDMI出力ポートの装備により、大画面TV+ゲームパッドというスタイルで擬似据え置き機としての活用も可能だ。

 「TegraZone」はAndoidのアプリマーケットであるGoogle Playに掲載されたゲームのうち、Tegra向けのハイスペックタイトルを集めたゲームポータルだが、「NVIDIA SHIELD」の登場に合わせてTegra4向けに最適化された作品もぽつぽつと登場しつつある。代表例としてはMadfinger GamesのFPS「Dead Trigger 2」や、Gameloftが発売するレースゲーム「Alphalt 8: Airbone」など。

 中でも、ワールドワイドで「Tegra Note 7」端末にプリインストールされる作品が、日本のゲームデベロッパー、イニスによるタワーオフェンスゲーム「Eden to Green」だ。本作はすでに80万回以上ダウンロードされた人気作だが、今回、Tegra専用ステージや、Tegra4向けに作られたスペシャルバージョンを用意。Unreal Engine 3の機能をさらに引き出した美しい映像でゲームを楽しめるようになるという。

「Tegra Note 7」にプリインストールされるゲーム「Eden to Green」。デベロッパーであるイニスの副社長・ゲームデザイナーの矢野慶一氏がデモンストレーション。大型TVに720p解像度で出力してプレイするところも見られた。高詳細なシェーダーグラフィックスで、30~60fps近くまでフレームレートが出ている

初の端末は25,800円のお値ごろ感。ゲーム機としても興味深い

12月4日に発売予定のZotac版端末のパッケージ。中身はほぼNVIDIAリファレンスになる模様
ペンの性能は感動的だった。EnchantMoonなどペン専門端末ほどではないが、応答性も良い
やはりゲーム用途が気になる。写真は据え置きゲーム機スタイルで「Tegra Note 7」をデモするNVIDIAの矢戸氏

 「Tegra Note 7」プラットフォームの製品となるZotac製の端末は、設計としてはリファレンス端末そのままで、画面サイズは7インチ、画面解像度は1,280×800ドットとややレガシーな仕様。しかし価格25,800円と非常に値頃感があり、ペンタブレットとしての実用性や高品質なカメラを搭載する高速端末としての使い出を考えれば高い人気を獲得しそうな予感がある。

 Zotacの端末に搭載されるベースOSは当初Android 4.2となり、NVIDIAによるOSアップデートの自動配信により順次4.3、いずれ4.4とバージョンアップされていく予定だ。アップデートはNVIDIAが“On-the-Air”と呼ぶ仕組みでダイレクトに反映される仕組みで、OSだけでなく基本的なアプリケーションの追加やアップデートも透過的に行なわれるようだ。

 その中の文脈でいうと、「Tegra Note 7」は携帯ゲーム機「NVIDIA SHIELD」が持つPCゲームのストリーミングプレイ機能を現時点ではサポートしていないが、そのようなゲーム方面の用途についても“On-the-Air”を通じたアップデートにより様々な機能追加が予定されているという。「今後続々とクールなゲーム機能が追加されていくはずなので期待ください」とは、NVIDIA Japanのテクノロジーマーケティング、矢戸知得氏。

 Androidタブレットというとビジネスや日用の実用面ばかりかクローズアップされがちだが、据え置きゲーム機とモバイルゲームの間にある、意外と広大なスキマを埋めるゲームタブレットとして「Tegra Note 7」を考えればゲーマー的にも関心をそそる。

 このスキマ市場は6月に北米で発売された「OUYA」が端緒を開いたが、Tegra3 搭載ゆえのスマフォと変わらない性能レベル、カスタムされすぎたOSの搭載による用途の狭さなどいまひとつ決め手に欠けていた。そのあたりの微妙さが、Tegra4搭載タブレットの形を取ることで一挙に解決されるかもしれない。

 近日中にはMadCatzによるTegra4搭載の小型ゲーム機「M.O.J.O」が北米・欧州などで発売される見込みでもあり、間違いなくひとつの流れができつつある。Tegra4がゲーム市場の新たなニッチを本当に開けるかどうか、今回の「Tegra Note 7」登場から1年をまたずして明らかになるだろう。

(佐藤カフジ)