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【特別企画】君は「ウォーターライン」シリーズを知っているか!?(後編)

自分の手で完成度を追求するのが艦船モデルの楽しみ方

自分の手で完成度を追求するのが艦船モデルの楽しみ方

「艦これ」によるブームを受け、新製品の企画も進んでいるという
艦船プラモデルの部品は非常に細かい
金属製のエッチングパーツは瞬間接着剤が有効

――艦船のプラモデルを作る上でのアドバイスは何かありますか?

飯塚氏: 実はお客さんのニーズが現在は昔と変わってるんです。ディテールにこだわり、細密なものを求めている。部品はピンセットでつまみ、接着剤をつけて貼り付けるようになっています。初めての人にはちょっとしんどいところもありますね。

 昔のプラモデルは設計も含めてある程度の形を再現できれば良い、というものだったのです、しかしお客様の声はより細かく、精密にというのが多くて、昔より今のプラモデルの方が難しいところがあります。

――今のプラモデルは確かに細かいですね。昔は電動ギミックがある船などが多く、そのための設計という所もありましたが、今は模型としての“再現”に力を入れていますね。

飯塚氏: 甲板と船体は昔は一体成型だったりもしましたが、今は別部品ですからね。「精密ピンセット」という先がきわめて細いピンセットも使うことがあります。またランナーからパーツを切り離すニッパーもかなり細かく作業できるものが必要となります。

――それでも組み立てやすさも考えている部分もあると。

飯塚氏: 特に自衛隊の艦船などのプラモデルの場合は、若い人達も買うので設計の段階から組み立てやすさは意識しています。金属製のエッチングパーツはより細かい表現が可能になりますが、通常の接着剤ではくっつきにくいです。瞬間接着剤を使ったり、エポキシの樹脂製の接着剤が金属となじみが良いですね。初心者の方はパーツの細かさ、作り方の難しさという部分で、驚かれる場合もあるかもしれません。

 うーん、あとはランナーから部品を切るときに飛ばさないように気をつけてください、というのが1番のアドバイスじゃないでしょうか。プラモデルの箱の中で部品を切るとか、作業スペースを作るとか、部品をなくさないように注意するのが良いと思います。アンテナとか細いので、大変だと思うんですよ。ただ補修も含めてプラモデルの楽しさだとも思うんです。部品販売も行なっていますので、くじけずに挑戦して欲しいですね。

――最近は成型色から色がついている「イロプラ」や、完成品を食玩で出す、といったものも出てきていますが、艦船プラモデルはそういったハードルを下げていくものとは違いますね。

飯塚氏: 180度違いますね。手をかけて作るほど完成度が上げられる。自分の手で追求してこそ艦船プラモデルだと思いますね。

――「艦これ」のヒットで、これまであまり注目されなかった駆逐艦までユーザーが覚えるという面白いブームが起きています。これについてどう感じていますか?

飯塚氏: やっぱり驚いてます。実は9月にウォーターラインシリーズの新製品として「長門」を出したんです。ところがこの長門に艦これパーツを足して「艦これ」仕様で10月に出すことにしたら、受注が9月のものに比べて3倍ですよ! 「何じゃこりゃ」って感じで、びっくりですよ。

 これはチャンスだととらえてます。「艦これ」で注目の高い艦船をプラモデル化していきたいですし、最新資料と考証に合わせた商品を出していける良い機会ですからね。プラモデルの設計は採算を考えなくてはいけないから難しいんです。まさに「今しかない」という感じで、来年にかけてとても忙しいです。

 こういったキャラクター商品となるのをイヤがる人もいるかもしれませんが、人気によって艦船プラモデルに勢いがついて、これまで出せなかった商品が出せたり、リニューアルができるところがあるので、チャンスとしてとらえて欲しいと思います。ちょっと“バブル”かなと(笑)。

――艦船モデルの“楽しみ方”について教えて下さい。

飯塚氏: 写真とか残っている資料と同じような角度でプラモデルを見て、再現度の高さを感じて欲しいですね。この船の中で何人も乗組員がいて、実際に動いてたんだ。といったことを想像して貰いたいですね。そして戦記などを調べて、実際どんな活躍をしたのかを知って欲しいと思います。知ることでプラモデルの魅力が何倍にもなると思います。

――最後に、艦船プラモデル初心者へのメッセージを

飯塚氏: せっかくの機会なので色々な艦船プラモデルに挑戦して欲しいですね。「艦これ」は設定的にかなり現実の艦船のイメージを取り入れていると聞いてますし、1つの船にこだわるのも良いですけど、実際の艦船にも詳しくなって、色々な船を作っていただければと思います。

【アイアンクラッドシリーズ 重巡洋艦 摩耶】
1/350スケールの「重巡洋艦 摩耶」の試作品。大きなスケールで、1/700のウォーターラインシリーズより精密な表現が可能となっている。別売りのエッチングパーツを使うことで、さらに精度を上げることができる

(勝田哲也)