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【特別企画】君は「ウォーターライン」シリーズを知っているか!?(後編)

アオシマ、艦船関連プラモデル担当者・飯塚秀実氏インタビュー

アオシマ、艦船関連プラモデル担当者・飯塚秀実氏インタビュー

アオシマ企画開発部の飯塚秀実氏
12月発売予定の新製品「日進」。SD(スーパーディテール)という細部の表現にこだわったウォーターラインシリーズの上位モデル
資料となった写真。こういった写真から当時の装備を再現する

――ウォーターラインシリーズの特徴は喫水線から上の船を再現したものですが、まずなぜこういった設計にしたのでしょうか。

飯塚氏:ウォーターラインシリーズの企画は「連合艦隊を再現したい」というタミヤさんの発案の下、静岡模型教材協同組合(アオシマ、タミヤ、ハセガワ)の共同開発によって生まれたものと聞いております。

 海の上に浮かぶ艦船が艦隊を形成した姿を再現するために、このシリ-ズは生まれたのです。企画が生まれた1970年代のヒーローは戦艦大和だったり、零戦だったりするわけで、彼らが活躍する姿を再現したい、コレクションしたいという想いがありました。

 ウォーターラインシリーズはそのコレクションを実現するための1/700サイズであり、艦船は喫水線から上の上体を再現した設計だったと思います。

――ウォーターラインシリーズでアオシマさんで1番売れた艦船は何でしょうか?

飯塚氏: やはり戦艦ですね。戦艦長門が1番です。次に扶桑、そして巡洋艦の高雄の人気が高く、コンスタントに売れています。アメリカやイギリスの艦船は在庫が切れる場合もありますが、日本の艦船はそういったことも無いので現在も入手できると思います。

 ウォーターラインシリーズは日本海軍の艦船を全て再現した後、海外の艦船や、自衛隊の艦船も再現するなど、今でもシリーズを拡張しています。最近は護衛艦の「ひゅうが」やイージス艦の「あたご」といった船の人気が高いですね。

――ウォーターラインシリーズは1970年代からのプロジェクトですが、飯塚さんはどの位から関わっているのですか?

飯塚氏:担当していた方が退職されて、僕は最近ですね。前の方は本当に船の専門という方が担当されていて、当時の資料などはその方の私物だったりしたので現在は資料集めに苦労するところもあったりします(笑)。

 ホビーショーの展示では写真を掲載しましたが、写真があれば良い方ですよね。特に大戦末期の艦船の写真はほとんどありません。当時の設計図である「公式図面」という資料はあるので、そこから読み取ってプラモデルを設計するのですが、まず文字が当時の文字なので、瞬間的に理解するのが難しかったりします。まず文字の解析から、ということもあります。

――艦船は時代によっても姿を変えますよね。

飯塚氏:「公式図面」は竣工する前のものであって、艦船はその場の状況や戦局に合わせて装備を変更します。年代によっても違いますし、機銃をつけるなど改造し、全く形が異なってくる。そういった資料を集めてくるのは本当に大変です。当時の艦船のプラモデル化への設計は、パズルを解いている様な難しさがあります。

 船の違いなども昔はおおらかだったんですよ。特徴を少しつければ良いというものだったんですが、今は1艦1艦完全に異なる設計にしていかなくてはならない。時代は進み資料はどんどん失われているのに、お客さんのニーズは先鋭化していっている。

 今のプラモデルは窓に透明パーツを使っている。これも要望を実現したのですが、小さい船だと本当に透明パーツを使っているか使っていないか見えなかったりするんです。そのパーツを取り付けるための設計も考慮しなくてはいけないので、模型としての設計の難易度はどんどん上がっているのが現状です。

――それでも、やはりお客さんはこだわりたいんでしょうね。

飯塚氏: 1/350という大きなサイズの船を手がけるようになってから、お客さんの要求がより細かいところに、というのが強くなりました。ここで盛り込んだギミックや精密さを1/700でも実現して欲しいというところで設計のハードルが上がったというか、変わってきましたね。

 資料は偶然手に入ったりなど、出会いは様々です。海外の図書館からひょっこり出てきたりする。海外の雑誌もチェックしていますが、今はインターネットがありがたいですね。ファンが知らせてくれることも多くうれしいですが、定説がひっくりされてしまうことで困ったなあ、みたいな事もありますね。

 今はファンの方の情報量は私達メーカーと変わらないところまで高まっています。設計はその水準に追いつくのがやっとで、だからこそ楽しいという所もあります。こういった会場で皆さんと話したり、意見を聞けるので私達としてもありがたいです。

(勝田哲也)