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【CEDEC2013】オープン化するゲームハードとインディーズゲームのステキな関係

XBLIGやPSMなどで活躍する同人ゲーム開発の手練たちが未来を語る

9月21日〜23日開催

会場:パシフィコ横浜

 CEDEC 2013の最終日、興隆するインディーズゲームシーンの将来を、作り手の側から占うセッションが開催された。「オープン化するゲームハードウェアとその未来」と題する本セッションを主催したのは、NPO法人国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)の執行部一条貴彰氏。

 議題は「オープン化が進むゲームプラットフォームと、インディーズゲームの過去、現在、未来」。近年ではXbox 360上で展開するXbox Live Indie Games(XBLIG)やPlayStation Vitaなどで展開されているPlayStation Mobile(PSM)に加え、PC上ではSteamなどで、さらに今後は新たなオープンプラットフォーム系ゲーム機 OUYAや NVIDIA Shieldなど、秀逸なインディーズゲームが多数登場する舞台がますます広がりつつある。そんな中で、小規模組織で長くゲームを作り続けてきたインディーズ開発者たちは何を思い、どういった展望を抱いているのか。登壇した2人の同人ゲーム作家の語りを通じて、その肌感覚を本稿でご紹介したい。

ゲーム機上に広がるインディーズの可能性。同人ゲーム作家自らの立場で自由に語る

右から、IGDA日本執行部の一条貴彰氏、同人ゲーム作家の北山功氏、同じく同人ゲーム作家の佐川直樹氏
ほぼ完全なオープン度となる新興のゲーム機。多数のインディーズゲーム制作者が活躍を始めている
自由なマーケットを持つOUYAでは、従来のゲーム機では見られない内容のゲームも多いようだ

 本セッションを主催したIGDA日本執行部の一条氏は、CRIミドルウェアの営業部に属するミドルウェア業界人だ。元々同人ゲームサークルに参加していたこともあって、同社の高機能サウンドミドルウェア「ADX2」を多数の開発者に使えるよう、無料版の「ADX2 LE」を実現。インディーズ向けの開発環境を充実させる取り組みを続けている人物でもある。

 そんな一条氏に並んで議論に参加したのは、同人ゲーム制作サークル“神奈川電子技術研究所”の北山功氏(埼玉県在住)と、同じく同人ゲーム制作サークルを主催する佐川直樹氏の2名。どちらも長年にわたって趣味のゲーム開発を続け、コミックマーケットなどの即売会に参加したり、XBLIGや、PSMといったインディーズ向けのオンライン流通プラットフォームにも作品を公開してきた人物だ。

 まず、同人ゲーム作家として過去と現在の環境をどう見ているのか。まず佐川氏は、2000年からWindows向けの個人制作活動を続け、2006年にはXNAを利用してXBLIGにゲームを公開、2013年にはPlayStation Mobileに展開を始めているとのことだが、現在注目しているのは Xbox One のインディーズ支援プログラムとなる「Independent Developers @ Xbox(ID@Xbox)」とのこと。

 佐川氏は、90年代にFM-TOWNS上で富士通が作品を募集してCD-ROM化してほぼ実費で販売するというフリーソフトウェアコレクションの例を上げ、それはそれで時代的に感動的な体験だったとしつつも、ID@Xboxではいちはやく日本語でもインディーズ開発者からの作品申し込みを受け付けていることなどXNA時代よりもずっと体制が整っていることを上げ、状況を歓迎。同人ゲーム作家として隔世の感を得ているようだ。

 いっぽう、北山氏はこれまで約20回もコミックマーケットで作品を発表してきているということで、ゲームを作って、遊んでもらう環境はすでに持っていた。その中で、同人ゲームのダウンロード販売やマーケティングを手がける Playism のスタッフに声をかけられたのがPSMでの配信デビューの切っ掛けだという。

 北山氏いわく、実はそれを狙ってゲームを作ってきたそうだ。そのポイントとなるテクニックは、「一次創作にこだわる」、「言葉のいらないゲーム内容で翻訳不要」、「スマホでもできるレベルの操作内容」などなど。半分くらいはそれを狙ってるゲームです、とのトークには下心を隠す気もなく、会場の笑いと感心を誘っていた。

12年ほどにわたってコミックマーケットに作品を出しているという北山氏。パズル性の強い、ユニークなメカニクスを持つゲームを多数発表してきている
2000年よりWindows向けのゲーム制作を始め、いち早くXBLIGにゲームを公開してきた佐川氏。音楽制作も得意というマルチタレントを活かしたコンテンツを作り続けている
現時点の家庭用ゲーム機上では、XBLIGやPSMといったインディーズ向けの配信チャンネルが存在する

 さて、そんな彼らの作品は、XBLIGやPSMといったオンライン配信サービスに載せることで、より多くの人に触れてもらうことができたのだろうか? その点について2人とも包み隠さず実情を語っている。

 北山氏の代表作となった弱肉強食シムゲーム「僕は森世界の神となる」、パズルアクション「QUALIA」はPSMで配信された。値段は即売会の半額くらいとのことだが、販売本数は、その売り上げを合計しても“ファミレスに何回か行ったらなくなる程度の金額”だという。そうビッグビジネスになるということもなく、あくまで趣味の範囲にとどまっているようだ。

 対して佐川氏は、XBLIGで「クレッシェンドシンフォニー」、PSMで「月待ちの夜 すくみゅ」といった萌え系キャラクターをフィーチャーしたシューティングゲームやパズルゲームなどなどをリリースしている。作曲も趣味というマルチタレントな佐川氏の作品は海外受けが良いようで、いちばんよかったタイトルで15,000くらいの有料DLを達成、そのほとんどが海外ユーザーだったという。特にPSMに関しては想定していたより高い数字が出てきたとのことで、さすがPlayStationブランドは凄いなあ、と嘆息したという。ちなみにコミックマーケットでは100本も行かない程度だそうなので、いかにオンライン配信サービスへの掲載が作品の露出機会を広げたかがわかる。

PlayStation 4ではインディーズゲームの発掘・支援に注力しており、海外ではすでに多数のクリエイターが参画。国内でも同種のサポートが展開する見込みだ
Xbox Oneでは、Independent Developers @ Xbox プログラムがスタート。XNA時代よりも環境が広がり、日本国内からの申し込みも受付中であるとのこと
今後広がっていく「オープンなゲームハードウェア」の世界。PCやスマホなどとは違い、あくまでゲームを遊ぶために所有する、ゲーム機であることが作り手・遊び手双方にとってのポイントだ

 いずれにしても個人レベルの活動範囲でゲームを作り続けている両人。PlayStation 4やXbox One、OUYAやShieldといった、従来よりもオープン度を増したプラットフォームに対しては明るい展望を持っているものの、プラットフォーマーにはひとつ言いたいことがあるという。

 それは、「作品を見つけに来てほしい」ということ。北山氏によれば、現時点でも同人ショップなどからはよく連絡が来るそうなのだが、なにぶん個人レベルのサークル活動で、しかもプレゼンが苦手なプログラマーばかりという構成ゆえ、ゲームのプラットフォーマーに自分から営業しにいくのは難しいという。それが原因で、個人製作者が大勢集まるコミケやコミティアといった場では、非常に秀逸な内容なのに、誰にも知られず宙ぶらりんになってしまっている作品が多いことを気にかけている。

 佐川氏は、「載せられるゲームの水準について、ガイドラインを明確にしてほしい」との希望を語った。個人レベルの作者にとって、自分の作品が配信チャネルに載せられるだけの品質にあるかどうかを自己で判断するのは難しく、確信が得られないゆえに及び腰になってしまう部分があるそうだ。それが、国内でインディーズゲームがなかなか盛り上がらない原因のひとつではないかと語っている。

 最後にオープンプラットフォーム系ゲーム機による、作品の開発・プレーヤーとの接触、販売の拡大について。これについては両氏とも大きな希望を抱いている。

 北山氏は、「ゲームを作ることは自分自身にとってのライフルスタイルで、人生の主張。やはり親兄弟や友だちに自慢できる、皆が遊べるコンソールに作品を出せるかどうかにそれがかかっていますので、ぜひもっと皆さんに協力してもらいたいと思っています」と、ゲーム専用機で作品を発表することの意義を語った。

 佐川氏は、ゲーム機で作品を発表することはかつては“特権のようなものだった”とし、オープンプラットフォーム化がそれを取り払う時代になっていると指摘。そこで拡大していくインディーズの役割として、「例えば企業で作るには小規模すぎるコンテンツは、とっとと自分で作ってしまった方がいい。コミケのような抽選や、期間といった制約もないので、ちゃんとしたものを作れば必ず出せる、このあたりが大きな事だと思っています」と議論をまとめた。

 次世代ゲーム機も登場が近づき、そのスペックを活かした全く新しいゲームの登場が期待される。そこにインディーズゲームという、新しいアイディアの苗床が大きく広がっていけば、巡り巡って大手企業が開発するビッグタイトルのありかたにもまた違いをもたらすはずだ。そういう意味では、北山氏と佐川氏のような個人レベルのゲーム開発者がのびのびと作品を制作・発表できる環境がますます広がりつつあることは朗報である。皆さんもぜひ、インディーズゲームシーンの今後が見せる風景に期待してみよう。

(佐藤カフジ)