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【CEDEC 2013】日本人の知らないアジア新興国ゲーム事情
ゲームのニーズは結構あった。アジア中間層こそ隠れた新市場!
(2013/8/21 22:30)
CEDEC 2013の会期1日目、Kent Ho & Partners Company Directorの大和田健人氏によるビジネス&プロデュースセッション「アジアの常識は日本の非常識」が開催された。
このセッションでは、大和田氏の10年におよぶアジア圏でのコンサルティング業務の経験を活かし、アジアにおけるゲームコンテンツ市場の現状と分析が語られていった。
アジア中間層こそ真の「新市場」? 日本人の知らないゲーム事情とは
大和田氏は、元Sony Computer Entertainment Asiaで台湾・上海などで10年マーケティング業務や対台湾政府とのマネージメント業務に従事しており、そこではとにかく「ゲームが売れない」現実が待ち受けていた。
海賊版や並行輸入品が横行するアジア圏では、売れない、儲からないの二重苦のため大和田氏はSCEを辞めることになってしまう。しかしその後、中国広東省の工業地帯で出会った若者が、2、4、6、8ボタンが削れた携帯電話を持っていることに気がついたという。
そしてよくよく街を見返してみれば、他の若い世代の携帯電話も同じような状態になっていた。その頃の携帯電話では、2、4、6、8ボタンはゲームを操作する際の十字ボタンにあたる。これは携帯電話内蔵のゲームをやり込んだ結果なのだという。ここで大和田氏は、実際にはゲームにニーズがあることに気づいた。
実際のところ、日本の製品を手に入れられるのはアジアでは富裕層にあたっており、ゲーム以外の企業も参入する熾烈な市場となっている。しかし一方で、ゲームをボタンが削れるほど遊ぶ層は、アジアの中では家や車も買える中間所得層になる。このマーケットこそが、手つかずの真の新市場だと大和田氏は話した。
アジアにおいては、2000年には2.2億人だった中間層は、2009年には9.4億人になり、2020年には20億人に達するという予測も出されている。日本の製品は手に入らないがゲームはする、という新たな市場は非常に魅力的に感じるが、ここで大和田氏は「そもそものビジネスモデルが違うのでそれを理解しなくては」と注意を促した。
日本人にとって未知となるのは、そこに暮らす人々の感覚だ。例えばある地方都市では、シャンプーやガソリンなどはその日使いきれる分だけを買うという習慣であるため、店先ではシャンプーはバラの袋売り、ガソリンはペットボトルによる屋台売り(非常に危険な気もするが)が通常の風景となっている。しかし、そんな彼らもスマートフォンを普通に持っている、というわけだ。
これら中間層ではどちらかというと、生活を快適にしたいということが優先されるため、実用的なスマートフォンが普及している。ゲームの内容としてはどういうものが好まれるかというと、通信環境が整っていないためデータ通信が少ないもの、そして難しいゲームに対する耐性がないため、カジュアルであるものだという。実際にミャンマーでは、ローカルでも遊べるパズルゲーム「Candy Crush Saga」を遊んでいた人に出くわしたという。
またインドネシアではプレイステーション 3カフェというものがあり、1時間50円で好きなゲームを楽しめる。インターネット環境が整っていないインドネシアやミャンマー、タイの奥地では、ローカルでも遊べる家庭用ゲームも人気があるということだ。
このほか、カードゲームなどの物理的なものが人気があり、娯楽をコミュニケーションの手段として楽しむ。こういった新興国では、大々的な広告ではなく、口コミや店頭でのオススメが最も信用される傾向もあるそうだ。
これらの傾向から、アジア新興国では手の届く価格設定や、口コミなどによる宣伝方法がマッチするだろうというのが大和田氏の考えだ。コピーソフトの流通や日本では考えられないビジネスモデルからズレが生じてしまうが、タイの田舎のゲームショップでも日本のコンテンツは浸透している。
「日本のコンテンツ」に少しエグ味すらあるアジア的なビジネスモデルを取り込むことで、「世界最強のコンテンツ産業がアジアから生まれるのでは」と話した。