騰訊、完美時空、捜狐など、中国メーカーレポートその2

「聖闘士星矢オンライン」や、ロボFPS「逆戦」、さらには怪しさ爆発の「小小航海王」


7月26日~29日開催(現地時間)

会場:上海新国際博覧中心(Shanghai New International Expo Centre)



 中国メーカーレポートその2では、よりタイトルにフォーカスした紹介をしていきたい。中国のオンラインゲームはあまり日本では展開していないが、魅力的なタイトルも多い。今回はChinaJoyに出展されていた多数のタイトルの中からいくつかをピックアップしてみた。

 ロボットと生身の人間が戦う「逆戦」や、美しい2Dグラフィックスで武侠世界を描く「神彫侠侶」、そしてセガと完美時空が共同開発しているMMORPG「聖闘士星矢オンライン」は、今回会場で流されていたムービーをお見せしたい。

 そして、もうひとつ会場で見かけた「小小海賊王」を紹介したい。人気漫画「ONE PIECE」そっくりなキャラクターが登場するオンラインゲームで、「ONE PIECE」の中国版タイトル「航海王」の名前を微妙に見せてあたかもオフィシャルであるかのように装っているところが怪しさ満点なのだ。





■ 騰訊ブースは巨大ロボットがお出迎え。「逆戦」や「軒轅伝奇」など多数のタイトルをアピール

3メートル近い巨大ロボットが出迎える
コスプレコンパニオンの撮影ブースなどを試遊台以上に力を入れていた

 騰訊遊戯(テンセント・ゲーム)は、「テンセントQQ」というメッセンジャーソフトで中国のシェアNo.1であり、このメッセンジャーから直接立ち上げられるオンラインゲームで人気を博しているメーカーだ。「Dungeon & Fighter(アラド戦記)」が大ヒットしたほか、「QQ」という名前をつけた様々なオンラインゲームを自社開発している。

 騰訊は今回の中国ブースの中でも特に派手な出展を行っているメーカーだった。出展方法としては、イベントが中心で、サービスするタイトルをイメージしたダンスなどを行なっていた。騰訊ブース前の通路は人が群がり通ることもできないほどになっていた。ステージの裏でタイトルの出展していたが、試遊台そのものは少な目で、コンパニオンを配置した撮影ブースを多く設けており、こちらも人でごった返していた。

 騰訊ブースで目を惹くのはなんといっても「逆戦」というタイトルに登場する、巨大なロボットを再現したオブジェクトだ。3メートルを超えるロボットで、コンパニオンが乗ることもできる。ゲーム中ではこのロボット兵器と人間とどちらでも選んで戦える。ロボットは大きくジャンプすることができ、火力も高いが、小回りがきかない。一方人間は装甲や火力で劣るが、ロボットの隙が狙える。チームにわかれた対戦の他、PvEモードも搭載されている。

 PvEモードでは、敵ロボットの他、モンスターなどとも戦え、世界観はさらに広がる。フィールドは障害物が多く、かなり入り組んでいて、生身で戦ってもうまく立ち回れるようにできている。ロボットのモーションなどはまだ改良の余地はあるように感じたが、グラフィックスも美しく、通常のFPSとはまた違った楽しみかたができそうだ。現在オープンβ中だ。

 この他のタイトルとしては武侠ものが中心で、「軒轅伝奇」は中国を統治した最初の帝「黄帝」をテーマにしたMMORPGで、「元魂」というモンスターのような存在を召喚して戦う事ができる。「QQ仙霊」はかわいらしい雰囲気のクオータービューのゲームだ。こちらはフィールドの描き込みも細かく、シリアスな雰囲気の3Dモデルとは異なる。騰訊ブースは、他にも様々な雰囲気の作品タイトルに合わせたコーナーを設けており、溢れるような数のタイトルを、多数サービスしているメーカーというイメージを前面に出していた。

他のブース以上に多彩なラインナップをアピールしていた

【「逆戦」プロモーションムービー】

ロボットと人間がぶつかる「逆戦」。PvEモードも紹介されている




■ 完美時空ブースに「聖闘士星矢」のアテナ降臨! 「神彫侠侶」にはロッククライミング要素が?

バルコニーに現われたアテナ。「アテナの聖衣」を再現しているのが楽しい
ブースにロッククライミングの施設を設置してしまうのがスゴイ

 日本でも知名度の高い完美時空ブースで目立っていたのは、なんと言っても「聖闘士星矢オンライン」だ。昨年セガとの共同開発が発表されたものの、出展はムービーのみで、ゲームの詳細も、サービススケジュールも未定だが、ムービー、コーナーの人気はとても高かった。

 「聖闘士星矢オンライン」は、少年ジャンプに連載されていたコミック「聖闘士星矢」を原作としている。中国での「星矢」の人気は非常に高く、ホビーショップには必ずといっていいほどフィギュアがある。ムービーは原作初期に登場した「ブラック聖闘士」と星矢が戦うというものだが、星矢が戦いながら徐々に聖衣(クロス)をまとっていったり、必殺技の「ペガサス流星拳」が、何匹ものペガサスが出現し襲いかかるようなエフェクトだったりと、ユニークな解釈が見れるのが楽しかった。

 「聖闘士星矢オンライン」のコーナーではバルコニーにきらびやかな「アテナの聖衣」をまとったコンパニオンが出現し、来場者の目を集めていた。また、聖衣を収めるための箱を原作の雰囲気を再現したバッグとして販売しており、こちらも人気だった。現時点ではゲームとしてはまったく詳細が分からないものの、ブースには原作ファンには思わず楽しくなってしまう要素が随所にあり、そのこだわりには期待させられる。

 もう1つ目立っていたのが「神彫侠侶」という中国神話を題材にしたMMORPGで、クオータービューの美しく描き込まれたフィールドで、かわいらしいキャラクターが活躍するのだが、水墨画のようなアレンジがしてあり、世界観にとてもマッチしている。女性キャラクターにフォーカスしており、“恋愛”がテーマになるなど、ストーリーにも力が入っていると感じた。また、1,000人が同時に戦えるというPvP要素にも注力している。

 面白かったのが、「神彫侠侶」をモチーフとした会場のコーナーで、ゲーム内でのエピソードを再現しているようで、「断腸崖」と名付けられた、ロッククライミング体験コーナーがあったところだ。一体どんなストーリーなのか気になるし、挑戦している来場者の姿も楽しいコーナーだった。

完美時空は自社開発タイトルを中心にアピールしていた

【聖闘士星矢オンライン プロモーションムービー】
クロスや、仲間の登場など、ファンの心を沸き立たせるムービーだ

【神彫侠侶】
中国神話を題材にしたMMORPGで、クオータービューの美しく描き込まれたフィールドと、ストーリーが大きな特徴





【鹿鼎記 プロモーションムービー】

捜狐公司(チャン・ユー)が出展していた。「鹿鼎記」は、香港の人気作家「金庸」の武侠小説を原作としたMMORPGだ。かわいらしいキャラクターとダークな世界観を持った作品となりそうだ

【黎明之光 プロモーションムービー】

青港網絡(Line kong)が出展していた、「黎明之光」は特に演出面を強化することで差別化を図ろうとしている。ムービーではコミック風の展開が面白い


■ キャラクターの再現度は高いながら怪しさ爆発の「小小海賊王」

PPSブースの「小小海賊王」は注目度は高かった

 この他、会場でとても気になるタイトルを見つけた。PPSというメーカーがサービスしているオンラインRPGで、「小小海賊王」というタイトルだが、ロゴマーク、キャラクター、海賊というテーマ、背景の雰囲気も「ONE PIECE」そっくりなのだ。中国国内では、「ONE PIECE」は「航海王」という名前で正式な許可で新聞連載されているが、「小小海賊王」は本物のように装ってキャラクターをコピーして使っているのだ。

 「小小海賊王」のジャンルはブラウザオンラインRPGで、プレーヤーはキャラクターを操作し、街で情報を集めてから船で島の多い海域を向かっていく。敵と出会うと、パーティを組んで敵と戦うこととなる。戦闘はオートで、各キャラクターがスキルを使うときにはカットインが入る。試遊台では、ハンコックやバーソロミューくま、エースといったキャラクターが確認できた。

 「ONE PIECE」は正式に展開する前から中国では広く知られ、人気も高い。好きな作品のゲームはやってみたいと誰もが思う。「小小海賊王」はそのユーザーの気持ちを利用したタイトルだ。しかし、本作は原作者の許可も監修も受けていない違法のものであり、“海賊版”に過ぎない。メーカーは違法な方法で、ユーザーから料金を回収するビジネスを展開し、そして、ユーザーのコンテンツを望む心は、偽物で満たされるとは思えない。このビジネスは本質の部分で、誰も幸せになれない、不幸なものだと思う。

 ChinaJoyでの「小小海賊王」の出展は、中国ではまだこんな違法なビジネスが堂々と展開しているのだということを象徴している。偽物でユーザーを騙すというビジネスには未来はないし、駆逐されてくべきものだ。ユーザーが望む本物のコンテンツがきちんとユーザーの手に届く、そういう状況がきちんと中国にも来て欲しい。

【小小海賊王】
キャラクターグラフィックスなどにはこだわりも感じられる。このこだわりはもっと健全なビジネスで活かして欲しいと思う

(2012年 7月 30日)

[Reported by 勝田哲也]