グリー、「GREE Platform」インタビュー
海外に感じる手応えと「GREE Platform」の行方を直撃
2011年の東京ゲームショウへの鮮烈デビューに続き、E3にも初出展となったグリー。5月には世界統一プラットフォーム「GREE Platform」を公開し、アメリカではβ版という形ながら、世界進出への第1歩を踏み出した。
グリーではGREE Platformのリリースに先立って、アメリカでソーシャルカードバトル「Zombie Jombie」を配信して米国App Storeのランキングで4位を獲得するなど、実績はすでに見え始めている。
GREE Platformはまだ動き出したばかりだが、E3で直に感じる来場者の反応からGREE Platformの行く先についてまで、グリー執行役員メディア事業本部長で開発本部副本部長の吉田大成氏に話を聞けたので、この模様をお伝えする。
■ まずはタイトル拡充。ビジネスモデルやゲームジャンルも柔軟にチャレンジ
グリー執行役員メディア事業本部長で開発本部副本部長の吉田大成氏 |
――数多くのタイトルがプレイブル出展されていましたが、来場者の反応はいかがですか?
吉田大成氏:アメリカで受け入れられるようなゲームデザインや世界観を持ったものを考え、用意してはいましたが、キャラクターや世界観に対してクールと言ってくれたり、「Wacky Motors」ではオンラインで8人同時対戦ができる点やグラフィックスの綺麗さを「スマートフォンでここまでできるんだ」などと褒めてもらえて、いいフィードバックがもらえているなと思います。
――昨年の東京ゲームショウと比べてはいかがですか?
吉田氏:東京ゲームショウの際にも「受け入れてもらえるのか?」という心配がありましたし、今回も同じように思っていましたが、両方共に好感触でした。
ソーシャルゲームでは「Zombie Jombie」での成功例があったので自信はそこそこあったのですが、それが実際に間近に感じられてよかったですね。
――GREE Platformは動き出したばかりですが、こちらの施策はいかがでしょう?
吉田氏:ゲーム単体での成功例が出てきたので、次はプラットフォームが成功できるかですね。プラットフォームとして大事なのは、より多くのタイトルを揃えることで間口を広くし、SNSなどを通してコミュニケーションが活発になることだと思います。
数値としては日本と同じようなものが出てきているので、プラットフォーム事業もゲームのラインナップが拡充してくれば成功できると思います。
海外ではネイティブアプリ、しかもiOSの市場が大きいなと感じています。グラフィックスや操作性などは市場にマッチさせることは必要ですし、スマートフォンでしかできないものを揃えて行くことで、ゲームジャンルの拡大をできればと思っています。
ネイティブアプリのタイトル「Monpla Smash」を手にとって実際に説明してくれる吉田氏 |
――実際にブースでも、WEBアプリ形式よりはネイティブアプリのタイトルが多かったと思います。
吉田氏:「Zombie Jombie」は日本と同じWEBアプリでの成功例ではあるのですが、広がりはそれだけではないなと感じています。もちろんWEBアプリも進化するとは思いますが、スマートフォンの機能をフルに使ったネイティブアプリのソーシャルゲームもまだまだかなと思うので、ならではの遊び方を提示していきたいと思います。
――今回のブースに出展されていたものは、日本にも提供されますか?
吉田氏:ほぼ同時進行で提供するつもりです。それがGREE Platformの強みです。日本からのタイトルが世界中に届きますし、逆にアメリカや中国のゲームが日本に届きます。国を越えたユーザー同士が交流することも可能です。
――海外のサードパーティーも揃ってきていますね。
吉田氏:海外のパートナーではEA、ゲームロフト、ユービーアイソフトなど、全世界の主要デベロッパーがGREE Platformに参加していただいています。滑り出しは上々です。
家庭用ゲームメーカーから続々と参加をいただくことからも、時代はゲームがスマートフォンに移るタイミングなのではと感じています。だからこそ「ASSASSIN'S CREED」のような強力なIPを使ったゲームが出てきます。この機会にソーシャルゲーム全体を成功させて、多くの人にゲームを届けたいですね。
――家庭用ゲームハードは意識されていますか?
吉田氏:事実として、昨今のスマートフォンはゲームハードと変わらないようなものになってきています。特にグラフィックスは携帯ゲーム機には負けていないと思います。ゲームハードは5年サイクルで新しいものが出てきますが、スマートフォンはいつでも新しくなっていて、さらに誰でも持ち歩いているというのが強みです。
またソーシャルな要素が重要だと思っていて、これからのプラットフォームはソフトウェアやデータで基盤を作っていくことが大事です。登録者数やソーシャルグラフといったところが、1つの強みですね。
――ビジネスモデルはいかがでしょうか?
吉田氏:この点も悲観はしていなくて、日本とほぼ同じようなマネタイズの方法や企画ができています。海外のユーザーもソーシャルゲームに支払いをしないというわけではありません。ただ、支払いには色々なタイミングがあるので、コンテンツに合わせて最適な支払い方法が見つかるなら、基本無料のアイテム課金形式だけでなく、月額でやるのもアリだなと考えていて、方法は自らその幅を広げていきたいと考えています。
――グリーとして基本無料ゲームにこだわっているわけではないと。
吉田氏:多くのユーザーにとっていいものを長く遊んでもらいたいので、考えられること、できること、チャレンジできることは実践してきたいです。それで新しい成功モデルが出てくれば、パートナーとも積極的に共有したいですね。
「Be My Princess for GREE」出展の様子 |
――タイトルの中ではとても日本的な恋愛ゲーム「ベツカレ」の北米版「Be My Princess for GREE」も出展されていて、チャレンジングだなと感じました。
吉田氏:ありましたね(笑)。ただ面白いことに、ああいった日本ならではのゲームの方が「なんだこれ?」と興味や関心を持ってくれます。日本から出たものが受け入れられないことはないはずなので、そういったものはサポートしたいですし、新しい市場を拡大できればと思います。
――収益的な面では、日本と海外のユーザー比率はどの程度を目指していますか?
吉田氏:日本ではWEBアプリの比率が高いので、スマーフォンが基盤となる海外とは比べづらいのですが、ネイティブアプリに限って言えば5:5までは持って行きたいです。最終的には、日本と世界全体で2:8くらいまでになればと考えています。
――プラットフォームの中で、コミュニティを国ごとに切り分ける際のポリシーは何かありますか?
吉田氏:グリー全体としては特にポリシーは設けていません。現時点では、例えば「ドリランド」などの戦略が必要になるようなものは分ける予定ですし、コミュニケーション重視の「クリノッペ」はデータベースを同じにしています。しかし、これもやってみないとわからないことなので、パートナーごとに話し合いながらポリシーを決めていきたいと思います。
――Windows8も発表されましたが、Windows Phoneなどへの対応は考えていますか?
吉田氏:考えていないわけではありません。アメリカでは、Kindle Fire向けへも準備していますので、特に限定はしていません。全てにおいて、可能性のあるところはチャレンジしていきたいです。
――では最後に、GREE Platformに対する今後の意気込みをお聞かせください。
吉田氏:海外では日本でのノウハウを持ち込んでのチャレンジとなりますが、日本でやってきたものだけなく、スマートフォンならではの新しいジャンルというものを拡大したいと思います。ソーシャルゲームは日本だけで流行ったよねと言われないように、工夫していきます。年末にかけて色々とタイトルを出すので、多くの方に遊んでいただける環境を作っていきたいと思います。
――ありがとうございました。
(2012年 6月 9日)