「秋葉原PCゲームフェスタ」で日本マイクロソフトがプレゼンを実施

PC版Kinect「Kinect for Windows」の仕様や開発のポイントを紹介


5月3日 開催

会場:ベルサール秋葉原

入場料:無料



 5月3日から5日までベルサール秋葉原で開催されている「第5回 秋葉原PCゲームフェスタ」。その2日目となる5月4日、日本マイクロソフト株式会社によるイベントが1階ステージにて行なわれた。

 今回の同社のイベントは2本立て。1つ目は「Kinect ポテンシャル」と題して、Xbox 360とWindows PC向けのデバイス「Kinect」についての解説が行なわれた。もう1つは「Windowsスペシャルステージ」で、同社が提供するクラウドサービス「SkyDrive」が紹介された。




■ ゲームの外にも広がる「Kinect」の活用と、その基本仕様を紹介

日本マイクロソフト インタラクティブ・エンターテイメント・ビジネス デベロッパーネットワークグループの鵜木健栄氏
Windows用の「Kinect」を使いながらプレゼンを行なった

 「Kinect ポテンシャル」のステージには、日本マイクロソフト インタラクティブ・エンターテイメント・ビジネス デベロッパーネットワークグループの鵜木健栄氏が登壇。「Kinect」の技術的な解説と、Windows PC向けに発売されている「Kinect for Windows」の紹介を行なった。

 「Kinect」は、当初はXbox 360向けにゲーム用として提供されたデバイス。内蔵したカメラやマイクでプレーヤーを認識し、体の動きや声でXbox 360のゲームをプレイしたり、さまざまな操作をゲームパッドなしで行なえるというものだ。現在は「Kinect for Windows」というWindows PC向けの製品も登場している。鵜木氏のプレゼンテーションでは、ステージ上に置かれた「Kinect」を使い、手を横に振るジェスチャーでスライドをめくるという実演も兼ねていた。

 元々はゲーム向けとして登場した「Kinect」だが、現在はゲーム以外の様々な用途で使われたり、研究が進められたりしている。具体的な例としては、医療現場が紹介された。手術中、執刀医は衛生的な問題から、機械を操作できない。そこで「Kinect」を使えば、手を触れることなく操作できる。工場などでも、防塵のため触れられない機械の操作に使われている。

 メカトロニクスの分野では、危険な現場でのロボット操作に「Kinect」を使う研究が進められている。他にもリハビリを楽しくする目的や、教育現場でより体感できるような教材の開発、デジタルサイネージ(電子看板)の操作など、直感的かつ直接手を触れなくてもいいという長所を生かした使用法が各所で研究されている。

 続いて「Kinect」のスペックが解説された。取得できる情報は、プレーヤーの座標と音声の2つ。座標に関しては、四肢や頭、腰などで20カ所の点を認識できる。手の部分に関しては、認識できるのは手首の動きまでで、指1本1本の動きまでは認識できない。この骨格追跡ができるのは2人まで。人数としての認識は6人まで可能となっている。またプレーヤーがセンサーからどれだけ離れているかという深度カメラや、プレーヤーの色を認識するカラーカメラも搭載している。なお深度に関しては、「三角測法ではない。もっとハイテクなことをしている」という。音声に関しては、センサー内に4つのマイクが内蔵されている。これは声がどちらから来ているかを正確に認識するためだという。

 「Kinect」には前述のとおり、Xbox 360用とWindows用の2種類の製品がある。これらは外見はほぼ同じに見えるが、いくつか仕様や利用条件に違いがある。物理的な仕様の違いとしては、接続用のUSBケーブルがWindows版は短め(延長は可能)、雷サージがXbox 360版のみ内蔵、その他にもロゴの違いなどがある。

 またセンサーの能力にも違いがある。深度カメラの解像度はXbox 360版は320×240ドットだが、Windows版はより高精度な640×480ドットも利用できる。同様にカラーカメラはXbox 360版は640×480ドットのみで、Windows版は1,280×960ドットも利用できる。他にもWindows版は手の形なども認識できるニアー・モード(近距離)も使用できる。フレームレートは「Kinect」のハードウェアとしては秒間30フレームだが、Windows版はPCスペックや実際に行なう処理の重さによってそれを下回ることもある。

 価格はXbox 360版が14,800円、Windows版が24,800円と差がある。これはWindows版ではハードウェアを売るだけでロイヤリティなどが発生しないため高めになっているという。その代わりに、Windows版は商用利用が認められている。

 また鵜木氏は、Windows版では誰でもアプリケーションを開発できる点もアピール。開発・動作環境は、OSにWindows 7(Windows 8にも対応予定)、2.66GHz以上のCPU、2GB以上のメインメモリ、開発環境にはMicrosoft Visual Studioと.NET Framework 4、Kinect for Windows SDKが必要。さらにこれらで開発されたアプリケーションについて、「まもなく某社と手を組んで、6月か7月にKinectコンテストを行なう」という。詳細は近日中にWEBサイトで発表される予定。

 そのアプリケーション開発において留意すべき事項も紹介された。最も注意すべき点は、認識に頭と両手両足が必要であるということ。犬や猫など4足歩行のものは骨格を認識できない。また服装も女性が足首まであるようなロングスカートを着用している場合も認識が難しくなる。他には大人と子供のように背丈が違うと縮尺がうまくいかなかったり、センサーをスピーカーの近くに置くと振動で認識しづらくなることもある。

 一通りの解説の後、鵜木氏が実際にKinectを使ってデモを行なった。1つは「3D Kinect」というサンプルプログラムで、Kinectで認識した人物の半身をリアルタイムに立体データへ変換し、画面に表示する。プレーヤーは画面に映った自分の姿をコントローラーで上下左右から見られる。見えない部分は処理されていないので体の半分だけとはいえ、今の自分自身を真上から見たりできるというアイデアが面白い。

 もう1つは、リアルタイムモーションキャプチャのような使い方。Windows 7のプロモーションキャラクター「窓辺ななみ」の3Dモデルが、プレーヤーの動きに合わせて同じように動くというもの。これもモデルや状況を変えるだけで様々な用途に使える可能性がある。

 最後に鵜木氏は、Kinect for Windows SDKのバージョンアップが1~2カ月以内に行なわれることを明かした。詳細は言えないとしながらも、「素晴らしい機能が入る。とあるSDKがビルトインされ、それを使うことで取得できる情報量がすごいことになる。自分がやりたいことや思っていることを汲み取れる。ヒントは首から上かもしれない」と述べた。「Kinect for Windows」で開発している、あるいはしてみようと思っている人は、このバージョンアップに向けてアイデアを練っておくといいだろう。


「Kinect」で取得できるのは全身の20カ所「3D Kinect」によるデモ。画面にはリアルタイム処理された3Dモデルが表示されている。ズームしてポリゴンモデルも見られる
「窓辺ななみ」を使ったリアルタイムモーションキャプチャのデモ1~2カ月以内に、Kinect for Windows SDKでかなり大きなバージョンアップが行なわれる来場者が参加するじゃんけん大会も行なわれ、「Kinect」同梱のXbox 360がプレゼントされた



■ クラウドストレージ「SkyDrive」を実演

森洋孝氏

 続いての「Windowsスペシャルステージ」には、日本マイクロソフト Windows本部の森洋孝氏が登壇。4月末にアップデートされた「SkyDrive」について、実演も交えながら紹介された。

 「SkyDrive」は、同社が提供するオンライン上(クラウド)のストレージサービス。誰でも無料で7GBまで利用できる(アップデート前からの利用者は25GBまで無料)。森氏は同社が「SkyDrive」を提供する考え方として、「普段使っているPC環境とオンラインストレージを別々に扱ったり、特定のハードウェアやアプリケーションを使わず、普段使っているアプリケーションと境目なくスムーズに連携するサービス」と説明した。

 具体的な特徴としては3つ挙げられた。1つ目はコミュニケーション機能。「SkyDrive」上にあるファイルをFacebookやTwitterなどに直接投稿したり、メールで共有したりといったことが標準機能として搭載されている。公開レベルを埋め込みながらURLを発行する機能もあり、他の人とのファイルのやり取りにも便利に使える。

 2つ目はパーソナルクラウドストレージ。PCに「SkyDrive」のアプリケーションをインストールすると、「SkyDrive」がエクスプローラーに統合され、専用のフォルダが生成される。ここに入れたファイルは自動的にクラウドのストレージと同期される。オフライン時にも使用でき、オンラインになった時に同期する機能も搭載する。Windowsとの親和性の高さは自社製品ならではだ。

 専用のアプリケーションだけでなく、WEBブラウザからもストレージにアクセスが可能。さらに「Windows Live Mesh」と呼ばれていた機能を統合したことで、オンラインに接続されている自分のPCにWEBブラウザでアクセスしてファイルを操作できるという機能も搭載している。

 3つ目は、「いつでも、どんなデバイスでも」。「SkyDrive」の対応OSは、Windows、Windows Phone、Mac OS、iOS、Android(サードパーティ製)、さらにWEBブラウザ経由と、デバイスを問わず利用できる。

 森氏は「SkyDrive」について、「同様のサービスは各社から出ているが、試しに使って比べて欲しい。ご自身にあったものを使ってほしい」と述べた。

 ゲームユーザーにとっては、クラウドサービスは直接関係ない分野ではあるが、それなりに使い道はある。例えばオンラインゲームの個人設定ファイルを入れておけば、どこでもすぐに同じ環境を整えてプレイできる。あるいはスクリーンショットや動画を撮影してクラウドストレージに保存し、他のプレーヤーに共有するといった使い方も可能だ。オンライン状態が前提のオンラインゲームユーザーならば、その恩恵を受けられる場面も多いはずだ。


「SkyDrive」の3つの特徴。Windowsとの親和性の高さだけでなく、多くのプラットフォームに対応している
実演デモでは、森氏の自宅のPCにWEBブラウザで接続するなど、利便性の高さをアピール
恒例の4択クイズ大会も実施。今回はゲームイベントにちなんで、同社のゲームに関する問題も用意された

(2012年 5月 4日)

[Reported by 石田賀津男]