E3 2011レポート

対戦型FPSの新定番になるか? 「Battlefield 3」マルチプレイプレビュー
進化した表現、広大なスケール、新構成のクラスシステム。動画も収録!


6月7日~9日 開催(現地時間)

会場:Los Angeles Convention Center



 E3 2011の会場、サウスホールの入り口付近に巨大ブースを構えるElectronic Arts。世界最大手のゲームパブリッシャーとして多数のゲームを展示し、堂々たる風格を感じさせるブース構成となっているが、さらにその一角で大変な注目を集めていたのが「Battlefield 3」のマルチプレイ体験ルームだ。

 ルームからは行列がぐるりと巨大ブースを取り囲む格好で伸び、一般入場者は3時間、4時間待ちという状態になっていた。北米市場における「Battlefield 3」への注目度の高さを感じさせる光景であるが、本作の登場を心待ちにしていた日本のファンも同じ気持ちだろう。

 「Battlefield 3」は、2002年に登場した「Battlefield 1942」から連綿と続く「Battlefield」シリーズの最新作として、対戦型FPSの定番となることに熱い期待を寄せられている。先日行なわれたElectronic Artsのプレスカンファレンス等ではシングルプレイ要素が紹介されたのみだったが、今回は実際にマルチプレイモードを体験することもできたので、本稿でレポートしたい。

【「Battlefield 3」トレイラームービー】



■ 進化した表現、拡大したスケール、再構成されたクラスシステム

マルチプレイ体験コーナーでは“ラッシュ”ルールを紹介していた
クラスは4種類にまとめられている。「アサルト」がメディックを兼ねるというのが特徴的だ
もちろん搭乗兵器にも力が入れられている。画像の戦闘車両は6人乗りだという

 マルチプレイ体験に先立ち、EA DICEのスタッフから「Battleifled 3」のポイントをレクチャーしてもらったので、まずは簡単にまとめておこう。本作はシングルプレーヤーキャンペーンと同時に協力プレイモード、対戦型マルチプレイモードを搭載するミリタリー系FPSだ。技術的には「Battlefield Bad Company(BFBC)」などで使われたエンジンのアップデート版である“Frostbite 2”を採用し、様々な点で先進的な表現力を獲得している。

 まず会場で強調されていたのは、DirectX 11に最適化されたレンダリング機能ではなく、アニメーションシステムだ。本作では真に迫るリアルなアニメーションを実現するため、EA Sportsの「FIFA」シリーズで磨かれたアニメーションシステムを採用。スポーツゲームでは選手の動きを表現する際3~6種類のモーションをブレンドしたり、そこに物理処理による影響を加えるなど複雑な計算により動きを導き出すようになっている。「Battlefield 3」ではプレーヤーの動きをさらにリアルに、“クリエイティブ”なものとすることに成功しているとのことだ。

 その上で、ゲーム性に深く影響する要素として強化されているのが破壊システム。「BFBC」シリーズでも導入されていたフィーチャーだが、本作ではさらに詳細かつ大規模な破壊シミュレーションが実現したとされている。シングルプレイモードで高層ビルの外壁が広範囲にわたって剥がれ落ちたり、丸ごと倒壊するようなシーンがそれだ。もちろんマルチプレイモードでも活用されているという。

 そしてスケール感。その大きさについて「かつてない規模のマップが構築されている」とEA DICEのスタッフは断言していた。そして単にデカいだけでなく、都市環境から荒野まで、ダイナミックに変化していく複数の環境を一度に表現できることが大きな強み。規模感溢れる戦闘が展開する(べきとみなが考えている)「BF」節の強化に大きな役割を果たしているようだ。

 その上で、マルチプレイモードでは少なくとも“ラッシュ”ルールが搭載される。「BF2」以来の“コンクエスト”ルール等の存在はまだ明らかにされていないが、本作PC版で最大64人対戦という規模が実現されている以上、期待はしてもいいだろう。

 マルチプレイモードでは共通して4つのクラスを選択してプレイするシステムになるようだ。クラスの種類は「アサルト」、「エンジニア」、「サポート」、「レコン」。面白いのは、「アサルト」がメディックの能力を兼ね備えていることだ。従来のシリーズでは衛生兵系のクラスが存在しても戦闘力の弱さから人気がなく、あまり使われることがなかったというのが理由らしい。

 また、純粋な戦闘能力でいえば「サポート」が強くなっている。軽機関銃と弾薬パックを持って分隊を支援するクラスだが、“伏せ”の姿勢をとって照準をズームしての射撃を行なうと、銃のバイポッド(二脚)を展開して超精密な射撃が可能になる仕組みがあるのだ。その姿勢で制圧射撃を行なうこと敵の攻撃精度を落とすことができ、分隊をサポートしつつ多くの敵を打ち倒すことができる。

 搭乗兵器の表現にもこだわりがある。例として挙げられた歩兵戦闘車には最大6名が搭乗可能で、プレーヤーの装備アップグレードと同じく、搭乗兵器のアップグレードやカスタマイズといった要素もサポートされるとのことだ。このあたりは「BFBC2」に近い仕組みかもしれない。


【「Battlefield 3」技術要素の紹介ムービー】
アニメーションシステム、破壊システム、戦場のスケール、グラフィックス、そしてサウンドと、「BF3」で注力されている要素がひととおりわかる

破壊システムのコンセプトイメージ。建築物の各部位がダメージに応じてリアリスティックな壊れ方をする

新しいアニメーションシステムのイメージ。「FIFA」シリーズで培われたモーションブレンディングの技術が応用され、自然な挙動を可能にしているようだ

「Frostbite 2」エンジンが描き出すグラフィックス。非常に写実的なものとなっている



■ パリ市街を舞台とする“ラッシュ”モードのマップを実際にプレイ!

 クラス間の力関係に新解釈もあり、その手ごたえが気になる「Battlefiled 3」。試遊のためのゾーンでは32台のPCが用意されており、1セッションのゲームを楽しむことができた。試遊ゾーンでは一切の写真撮影が禁止されていたため、画像でご紹介できないことをお許しいただきたい。本稿の最後にマルチプレイの模様がわかるムービーを掲載するので、そちらもあわせてご覧いただければ幸いだ。

 プレイできたルールは“ラッシュ”。「BFBC」シリーズにも搭載されていたモードで、攻撃チームがマップ内の固定目標を撃破することで戦線が次のゾーンに進み、全体でいくつかのゾーンを突破すると勝利となるモードだ。今回提供されたパリ郊外を舞台とするマップでは4つのゾーンに分割されていた。

 早速「サポート」クラスでゲームに参加。このマップは歩兵戦闘のみで構成されるマップで、大型の乗り物は登場しないようだ。それでも展開はかなり派手で、時折空爆(あるいは野戦砲の砲撃)が着弾し、マップ内の建物などが派手に崩壊する。マップの構造が少し変わってしまうほどの勢いだ。

 そんな環境の中で攻撃側は目標達成のために進撃していく。普通にプレイしていると「BFBC」シリーズに近いプレイ感覚だ。しかし攻撃に成功してゾーンが1つ進んでいくたびに、テンポの違いが明らかになってくる。とにかく、「マップがでかい!」と驚かざるを得ないのだ。

 まず市街地の公園付近で始まった戦線は、地面に開いた大穴から地下鉄内に進入する流れとなり、そこからさらに旧市街へ突入して……と、屋外と屋内環境が入れ替わるように展開していく。それぞれの空間はかなり広めで、明かに32人以上でのプレイも想定している印象だ。このように広いので、基本の出現地点からの移動は相当時間がかかる。チーム内で“小隊”を構成し、生存メンバーの近くから出撃する方法の重要性が増している。

 この環境の変化が、各クラスの有利不利にも影響してくる。サポートクラスで遊んでいると、平地の多い公園周辺では“伏せ”の姿勢をとっての射撃が非常に有利で、スコアを荒稼ぎできる。しかし次に地下鉄構内に突入すると、なかなか良い射撃ポジションを取れずに苦戦。そこでは「アサルト」がいい。さらに旧市街に入っていくと、建物内の窓から射線を取れる場所が非常に多いため、今度は「レコン」による狙撃が有効になるという按配だ。このあたり、クラス構成とマップ構成がうまくかみ合うことで、ゲーム展開に多くの変化があって面白い。

 欲を言えば“砂漠に戦車と戦闘機”といった、もっとBFらしいマップをプレイしたいところだったが、今回公開されたのは以上だ。“ラッシュ”ルールということで「BFBC」シリーズに近いプレイフィールだったものの、マップの広大さ、クラス特性を生かしての戦いといった部分に本来の「BF」シリーズ由来の香りを感じることができた。

 なお操作性について言及すると、キャラクターの動きなどはとてもクイックで、段差を乗り越えたり、ダッシュ状態から伏せに移行するといったアクションも自然にすばやくコントロールできて好印象だった。これでさらに、戦車、装甲車、戦闘機が登場して巨大な戦場でドンパチできるとしたら……早速ワクワクが止まらなくなってしまいそうだ。

 「Battlefiled 3」の発売日はワールドワイドで10月25日を予定。対応プラットフォームはWindows Vista/7のPC版を筆頭に、プレイステーション3/Xbox 360。PC版では最大64人のマルチプレイ、コンシューマー版では24人までのマルチプレイをサポートする。9月にはマルチプラットフォームでβテストがスタートするとのことなので、ファンの皆さんは続報をお待ちいただきたい。


【「Battlefield 3」マルチプレイムービー】
今回プレイできたパリ市内を舞台とするマルチプレイモードの様子がわかるムービー。遠方まで描写された風景で臨場感たっぷりだ



(2011年 6月 10日)

[Reported by 佐藤カフジ]