Electronic Entertainment Expo 2010現地レポート

新世代のジェスチャーコントローラー「Kinect」体験レポート
全身の動きを“ほどよく”ゲームに伝えてくれる“疲れおもしろい”インターフェイス


6月15~17日開催(現地時間)

会場:Los Angeles Convention Center



 米Microsoftは「Xbox 360 Media Briefing」で体全体で操作を行なう新世代のジェスチャーコントローラー「Project Natal」改め「Kinect(キネクト)」を正式発表した。その前日にはワールドプレミアも行なうなど、今年のMicrosoftはKinect一色といった様相になっている。それはE3会場のブースも同様で、「Kinect」体験コーナーを6箇所に設け、それぞれ異なるタイトルの試遊が可能になっていた。ゲームメディアも短い時間ではあったが実際に体験することができたのでファーストインプレッションをお届けしたい。

 なお、「Kinect」および、今回発表された「Kinect Games for Xbox 360」(Kinect対応タイトル)の北米での発売は11月4日になることがアナウンスされたが、日本での発売は未定となっている。価格は全世界共通で未定。Microsoftからの正式発表を待ちたいところだ。なお、今回紹介したタイトルのスクリーンショットはこちらにまとめているので合わせて参照いただきたい。

【「Kinect」一色のMicrosoftブース】
今年のMicrosoftブースは「Kinect」一色。ニンテンドー3DSやPlayStation Moveよりも早くSDKを公開していたため、サードパーティーのブースでも「Kinect」の存在が目立っていた。トイレにまで「YOU ARE THE CONTROLLER(貴方がコントローラー)」のキャッチコピーでアピールしていた



■ 子供から大人まで楽しめる“ほどよい”認識性能。触ってみて初めてわかる「Kinect」の魅力と可能性

「Kinect」初回起動時に実施するバイオメトリックセットアップウィザード。手を頭上に載せると認識が始まる。関節とボーンが認識されているのがわかるだろうか。本文でも触れているが、ゲームプレイ時にはこのプロセスは省かれる
「Kinect」のリリースに合わせてダッシュボードも一新される。手の操作と声で簡単にダッシュボードが操作できる
「Kinect」で映像の再生も便利になる。早送り、巻き戻しを手の動きで行なうことができる

 今回実際に体験できたのは「Kinect Adventures」(開発/発売元:Microsoft)、「Kinect Animals」(開発/発売元:Microsoft)、「Kinect Joy Ride」(開発元:Big Park、発売元:Microsoft)、「Kinect Sports」(開発元:Rare、発売元: Microsoft)、「Dance Central」 (開発/発売元:MTV Games)、「Your Shape:Fitness Evolved」(開発/発売元:Ubisoft)の計6タイトル。

 Microsoft Game Studiosが用意している「Kinect~」シリーズは、「Kinect」のベーシックな機能をひととおり使った「Kinect」ならではのエンターテインメントを提供するミニゲーム群だ。「Adventures」は遊園地にあるようなライドアドベンチャーもの、「Kinect Animals」はペットとの触れ合いが楽しめるもの、「Joy Ride」はレースもの、「Sports」は文字通りスポーツものだ。「Dance Central」はダンスゲーム、「Your Shape:Fitness Evolved」はフィットネスものだ。

 現時点ではいずれも価格は未定だが、「Kinect~」シリーズはローンチに勢いを付けるためリーズナブルな設定になることが予想される。「Dance Central」と「Your Shape」はサードパーティータイトルということもあり、フルプライスになる見込み。

 さて、実際に体験してみて気づいたことはいくつがあるが、まずひとつはプレイする前に認証プロセスが一切ないことだ。今回は技術的な詳しい情報については伏せられていたが、ゲームを始める前にモニタの前に立てばすぐ認識される。2人プレイ可能なゲームなら2人が並んで立つことで2人プレイモードになる。1度設定されると、衣服の色やボーンの大きさ(体格)によっておおざっぱな認識が行なわれ、ゲーム中に他の人が入っても誤動作しなくなる。このお手軽さはパーティーゲームとしては非常に大きなメリットだ。

 ちなみに同日、「Kinect」によって新たに追加されるダッシュボードやXbox LIVEの機能も紹介されたが、ダッシュボードによるXbox LIVEにおける操作は、Xbox LIVEアカウントに紐付けられた行為となるため、こちらはしっかりとした個人認証が必要になっている。といっても右手を頭に載せて数秒待つだけ。認証後は、どのXbox LIVE IDにヒモ付けるかを選択することで、次回からモニタの前に姿を現わすだけで、Xbox LIVEへのログインできるようになる。

 次に「Kinect」の認識精度については、思ったほど高くなく、細かい動きより、関節認識に重きが置かれているという印象を持った。これは別の言い方をすれば、相当荒っぽい遊び方をしても操作系統が破綻しないし、大人と子供によってキャリブレーションを変えたりといった細かい手間もいらないということになる。たとえば、「Kinect Sports」に収録されているボウリングゲームでは、手首のひねりによってボールに回転を掛ける事はできない。その代わりに腕をやや大仰に回しながら投げることで左右上下への回転を加えることができるようになっている。これは手首の動きをうまく認識できないという技術的な問題ではなく、手の小さい子供でもストレスなく操作が行なえるようにするための措置だということだ。

 SCEのPlayStation Moveや任天堂のWii Motion Plusがプレーヤーの手の動きを正確にゲームを伝えるデバイスだとすれば、「Kinect」はともすれば大仰になりがちな体全体の動きをほどよくゲームに伝えてくれるデバイスだと言える。


【「Kinect」タイトルの記念撮影機能】
「Kinect Joy Ride」と「Kinect Adventures」では、ハイライトシーンに自動でプレイシーンを撮影してくれる機能が付いている。撮られた写真はXbox LIVE経由でTwitterやFacebookに投稿可能。優れたコミュニティ機能だ



■ 文字通りの全身運動と音声による操作が“疲れおもしろい”

「Kinect Animal」
「Kinect Adventures」
「Kinect Sports」
「Your Shape: Fitness Evolved」
「Dance Central」

 せっかくなのでほぼすべてのゲームを全力で体験してみたが、体全体を使ってのプレイはあたかもアーケード筐体を遊ぶようで非常に楽しいが、本格的に疲れた。“疲れおもしろい”とでも表現するのが適当だろうか。考えて見れば当然かもしれないが、「Kinect」はひとりで何時間も楽しむようなエンターテインメントではなく、家族や仲間と代わる代わる楽しむものだ。それでは以下、順に簡単なインプレッションをお伝えしたい。

 「Kinect Joy Ride」は両手をハンドル代わりして車を操作するアクロバティックなレースゲーム。体を前後左右に動かすことで車を回転させられるほか、お尻を動かすことでドリフトの効果が得られ、体を前後に倒し、両手を前に突き出すことでブーストが発動する。こうしたテクニックを駆使することでレース展開を有利に運ぶことができるため、全身を動かしまくることになり、実際の車を運転するよりずっと疲れる。

 また、車を使ってスノーボードのフリースタイルがプレイできる「スタントモード」では、まさに全身を動かして回転を加え、地上に降りるたびに、素早く手を突き出すブースト行為を繰り返すことになるため、かなりの全身運動になる。遊ぶ際は動きやすい恰好で望みたいところ。ちなみにスタントモードはオフライン専用ということだが、「レースモード」はXbox LIVEを通じて最大8人でマルチプレイが楽しめる。ボイスチャットで声を出し合いながらプレイすればかなり楽しそうだ。

 「Kinect Animal」は、プレスブリーフィングでは少女が登場してベンガルトラとの触れ合いを実演してくれただけに若干油断していたが、こちらもペットの代わりに自ら全身でレースを行なうミニゲームがあり、やっぱり全身運動を伴う。数少ない音声認識対応タイトルのひとつで、初回プレイ時に、ペットの名前を実際に呼びかけて設定する。名前で呼びかけることで反応してくれるようになる。ペットとの触れ合いは非常に良くできている。ペット好きな女性や子供に遊んでもらいたいゲームだ。

 「Kinect Adventures」は、遊園地のライドアドベンチャー仕立てのミニゲーム集。急流滑りやトロッコに乗って全身を使ってジャンプしたり危険物をかわし、ステージ上のコインを集めていく。2人で協力プレイする際はふたりの動きを合わせないとなかなか思ったところにたどり着けない。大げさにジャンプしても、小さくジャンプしても反応は変わらないように感じられた。ジャンプと両手両足を直感的に動かすだけなので老若男女問わず、誰でも遊べるパーティーゲームだ。

 「Kinect Sports」は実際にプレイしたボウリングゲームのほかに、サッカー、ビーチバレー、ボーリング、卓球、ボクシング、陸上競技(100メートル徒競走、200メートルハードル、やり投げ、円盤投げ、幅跳び)がプレイできる。ボーリングは、左右どちらからでも投げられるほか、上から投げたり、下から投げたり、どういう投げ方にも対応しているところがおもしろかった。個人的には手首の動きが重要になる卓球がどの程度「Kinect」で再現できているのかが気になったが、プレイできず残念だった。

 「Your Shape: Fitness Evolved」はUbisoftが手がけているフィットネスソフト。Wii Fitの発売以降、メジャーなジャンルと化したフィットネスの分野だが、「Your Shape」はその分野に決定的な進化をもたらしてくれる。Wii Fitのように体の動きが制限されたり、EA Sports Activeのようにアタッチメントを体に取り付ける必要もない。文字通りありのままの姿でテレビの前に立てば、そのままジムやトレーニングが行なえる。実際にプレイしてみると感動的だ。間接認識をしっかり行なうため、ズルもできないし、正しい姿勢がわかりやすいため運動もはかどりそうだ。フィットネスは「Kinect」に明確なアドバンテージのある分野と言って良いと思う。

 MTV Gamesが手がけるダンスゲーム「Dance Central」もまた「Kinect」と相性の良い分野だ。基本的なゲームデザインは、音楽に合わせてボタンを押していくダンスゲームの方法論を、そのまま体の動きに置き換えたもの。ダンスを構成する動きのパーツ「ダンスルーティン」を覚え、それを音楽と合わせて連続して演じることにより、一連のダンスが完成する。

 このゲームも関節認識を駆使し、恰好は悪くても、キッチリ曲げたり上げたりを行なうことで、しっかり動きを認識してくれる。ちゃんと認識してくれるとプロに自分の踊りが認められた感じがして嬉しい。ダンスゲームのブームを予感させてくれる出来映えで、ダンスに興味のある人にとっては「Kinect」最大のブロックバスタータイトルと言っても過言ではないと思う。

 最大の懸念点としては、MTV Gamesの大ヒット作「RockBand」シリーズと同様に、日本で発売される可能性が低いことだ。多くの実在の楽曲を使用しており、権利の関係でそのまま持ってくることが難しいためである。個々に再契約するか、すべて日本の楽曲に差し替えることによって発売が可能となるが、マイクロソフトにはそのいずれかの選択肢を取ってもらいぜひ発売にこぎ着けてもらいたいところだ。


(2010年 6月 17日)

[Reported by 中村聖司 ]