「秋葉原PCゲームフェスタ」、最終日はWindows 7祭り!
CP重視のAMD/ATIと付加価値のNVIDIAがDX11世代ビデオカードで激突

5月10日 発表

 

 4月29日から10日間にわたってベルサール秋葉原で開催されてきた「秋葉原PCゲームフェスタ」も5月9日に最終日を迎え、メインステージでは「Windows 7 Day」と題する終日イベントが行なわれた。

 

 このイベントでは、2009年秋に発売された最新のWindows OSにちなみ、マイクロソフトをはじめにAMD、インテル、NVIDIAといったPCのコアテクノロジーを扱う企業によるエンドユーザー向けのプレゼンテーションが披露された。PCゲームをキーワードに、日ごろはライバル関係にある各社が揃い踏みしたというわけだ。

 その中でも特に注目はビデオカードという製品ジャンルでしのぎを削りあうAMD(ATI)とNVIDIAによるセッション。エンドユーザー向けに各社が何をアピールしたいのかがハッキリと分かれた点が興味深かった。本稿ではそのあたりを中心に、「Windows 7 Day」で行なわれた大小各種のイベント内容についてお伝えしよう。



■ 「5,000円からのDX11ビデオカード」。AMDのキーワードはコストパフォーマンス

ゲーマーの「三種の神器」について紹介する日本AMDの箕輪誠氏
強調されたAMD製品の「コストパフォーマンス」

 当日の先頭打者となったのは、日本AMDのマーケティング&ビジネス開発本部コンシューママーケティング部でマーケティングマネージャーを勤める箕輪誠氏。「最強のゲーマーになるためのAMD三種の神器 ~AMD 最新 Leo PlatformとEyefinity 6~」と題するセッションで、AMD/ATIが提供するゲーミングソリューションについての解説を行なった。

 箕輪氏の言う「三種の神器」とは、国内で4月29日に発売になったばかりのCPUである「Phenom II X6」と、これまた発売になったばかりの「AMD 890GX」を初めとするAMD 8シリーズのチップセット、そしてDirectX 11対応GPUである「Radeon HD 5xx0」シリーズだ。

 いずれも発売済みの製品であるため、説明の詳細は割愛してポイントをまとめよう。箕輪氏は、まずCPUの新製品である6コアの「Phenom II X6」について、「世界で最先端を行くPCユーザーは誰か、それは日本の皆さんです。そのために、我々が強く働きかけてゴールデンウィーク前の発売を実現しました」と報告。

 続いて、6より少ないコア数で動作するプログラムを高効率で実行するため、各コアのクロックを向上させるという「Turbo CORE」テクノロジーのデモンストレーションを披露し、「Phenom II X6」の高い処理能力を紹介。そのハイエンドなCPUを、「Phenom II X6 1055T」で22,000円前後、「Phenom II X6 1090T」で35,000円前後という実勢価格で購入できるという点を特に強調していた。

 続いて箕輪氏は、三種の神器の2つ目、最新チップセットであるAMD 8シリーズに言及。上記の「Phenom II X6」シリーズのCPUに対応するチップセットだが、最新のSATA 6GB/sインターフェイスを搭載し、記憶装置を含めたPCのトータルなパフォーマンスアップに貢献するものであることが紹介された。

 三種の神器の最後は「ATI Radeon HD 5xx0」シリーズのビデオカードだ。箕輪氏は現在までに10製品をラインナップするこのシリーズについて、「DirectX 11対応で、最も安価なモデルでは5,000円程度で購入できます」とそのコストパフォーマンス(CP)の良さを強調した。

 その中で箕輪氏が強調した機能は、「ATI Eyefinity」と呼ばれる、多モニタ対応の出力機能だ。会場に置かれたデモ機では6つのHDMI端子を持つ「Eyefinity」バージョンのビデオカードが実装されており、Samsungから発売予定とされるシンベゼルタイプの液晶モニターで6画面同時使用のデスクトップが実現されていた。ちなみにこの環境は、現時点では「世界でここにしかない」というスペシャルなセットアップであるそうだ。

 箕輪氏は以上の「三種の神器」の紹介を終え、これら最新のテクノロジーを搭載したPCが、その他の必須デバイス込みで10万円程度で構成できるという現状を解説し、ここでもコストパフォーマンスの良さに言及。AMD/ATIによるゲーミングPCは、価格・性能のバランスにおいて魅力的なソリューションである、というわけだ。

CPU「Phenom II X6」、チップセット「AMD 8シリーズ」、GPU「ATI Radeon 5xx0」シリーズの3種がゲーマーの「三種の神器」として紹介され、そのコストパフォーマンスの良さが強く印象づけられた
Radeonのマルチモニタリング機能である「ATI Eyefinity」。「世界でここだけ」という最新液晶モニターによる実機デモが披露され、様々なコンフィギュレーションで、多数の対応タイトルが利用できるということが紹介された


■ NVIDIAは「3D立体視」という最新の付加価値をアピール

NVIDIAの立体視ソリューションの紹介のため登場した平柳太一氏とスティーブン・ザン氏
3D利用時にはより多くのGPUパワーが必要、というグラフ。「GTX 250」で通常使用時のフレームレートと、「GTX 480」で3D利用時のフレームレートがほぼ同等水準となっている

 一方のNVIDIAは、異なる面からエンドユーザーへのアプローチを試みた。セッション名は「パソコンで3D!」。会場にはNVIDIAジャパンのマーケティングマネージャーを勤める平柳太一氏と、テクニカルマーケティングエンジニアを勤めるスティーブン・ザン氏の2名が登場した。

 セッション名が表す通り、NVIDIAが一押しする差別化ポイントは3D立体視ソリューションだ。平柳氏は3D映画を皮切りに、エンターテイメント産業で「3D」が盛り上がりつつある現状を紹介した。

 興味深いトピックとしては、「漫画を立体でお見せできるようになりたい」というモンキー・パンチ氏のコメントや、STUDIO 4℃のようなアニメーションスタジオが立体視製作に取り組んでいること、また日本の様々なメディアアーティストも3Dに取り組みつつあることが紹介されている。

 そんな時代の流れの中にあって、現状で3D立体視を楽しめるコンテンツが最も多いプラットフォームは、他でもないPCだ。現時点ではNVIDIA GeForce 搭載PCが立体視の代表的なプラットフォームとなっており、「NVIDIA 3D Vision」のような3Dメガネを通して、120Hz入出力に対応した最新モニターを用いることが最もパーソナルなソリューションとなっている。平柳氏によれば、「毎年1億4千万台のPCが3D Visionに対応している」とのことで、これはNVIDIA GeForceの出荷数に対応する数値となっているようだ。

 そこまで説明して、「PCで3Dを楽しむためには、通常より多くのグラフィックスを描く必要があるため、よりパフォーマンスの高いGPUが必要です」と会場に集まったユーザーの購買意欲に油を注いだ平柳氏。ここでプレゼンテーションはスティーブン・ザン氏にバトンタッチして、3D対応の家電TVにPCをつなぐためのソリューションである「NVIDIA 3DTV Play」に言及された。

 「NVIDIA 3DTV Play」は、NVIDIA GeForce搭載PC用のソフトウェアで、導入することによりビデオカードのHDMI端子から、3D対応のHDMI 1.4a対応の信号が出せるようになる。これによりほぼすべてのHDMI 1.4a対応3DTVにて、PCを繋いで3D立体視が楽しめるというものだ。

 そしてコントローラーを手に取ったザン氏は、「3DTV Play」を導入したPCに、パナソニックの「3D VIERA」を接続した大画面環境で3D立体視のゲームをプレイ。題材はカプコンの「ストリートファイター IV」で、女性イリュージョンユニットのプリマベーラの面々と対戦してみせた。「NVIDIAの名にかけて負けるわけにはいかない」という負けん気には、会場も大爆笑。

 という形で、NVIDIAはビデオカードの付加価値として「3D立体視」を強調するプレゼンテーションとなった。対応モニターも出揃ってきたことだし、そろそろ……と考えているエンドユーザーには良い刺激になったかもしれない。

3D対応に向かうメディアエンターテイメント業界の状況が報告された。特に今回は、国内の事例で有名アーティストやスタジオの名が上がった点が興味深い
「NVIDIA 3DTV Play」を使い、「3D VIERA」にGeForce搭載PCを接続。「ストリートファイター IV」をプレイしたプリマベーラのメンバーは「奥行がすご~い」など、感嘆の声が絶えなかった。ちなみにザン氏によれば、このゲームでは「ずっと立体が強調されていると目が疲れるので、必殺技の時だけ立体感が強くなるというゲームデザイナーの工夫が凝らされている」とのこと


■ Windows 7にちなんだ各社大小のセッション

【インテル】
インテルからは、技術本部アーキテクチャー・エバンジェリストの天野伸彦氏が登場。「プロセッサーとインテルの開発ツールに関して」と題する、少々硬めの講演を行なった。インテルの最新CPUファミリ「Core i5」、「Core i3」の統合グラフィックス機能について「ハイエンドゲームは無理だが、少し古めのゲームやカジュアルゲームにはもってこい」として実際にプレイデモも披露。話題はオーバクロッキングやインテルの提供する開発ツールにも広がり、最新状況を報告する内容となった

【マイクロソフト】
マイクロソフトからはDirectX プログラムマネージャーの鵜木健栄氏が登場。「Real Windows 7 Power with DirectX 11」と題して、Windows 7の持つ真のパワーはDirectX 11によってこそ引き出されるという講演を行なった。重点が置かれたのはDirectX 11の新機能であるテッセレーションとDirectComputeで、デモを交えてその威力を会場のユーザーに披露。また、Windows標準のGPGPU環境であるDirectComputeなど、ゲーム外の用途も広がるとして講演をまとめている

【Colin McRae DiRT 2 ゲーム大会】
会場では、予選・決勝の2部に分けてユーザー参加によるPC版「Colin McRae DiRT 2」(イーフロンティア)の大会が行なわれた。進行役を務めた作家の渡辺浩弐氏は、以前から本作をコンシューマー機でプレイしていたとのことだが、改めてPC版の映像をみて「クオリティが高く衝撃を受けた」とコメント。イーフロンティアの八木達夫氏を交えて場を盛り上げたのは声優の伊瀬茉莉也さんと酒井香奈子さん。ちなみに筆者も飛び込みで参加してみたが、敢え無く6位で敗退。皆やり込んでいるなあと、参加ユーザー諸氏のゲーム愛を感じずにはいられなかった



(2010年 5月 10日)

[Reported by 佐藤カフジ ]