キングレコード、CD「交響組曲『ドラゴンクエストIX』星空の守り人」
発売記念イベントですぎやまこういち氏の握手会が実現


2月10日 発売

価格:3,000円


2月10日発売の「交響組曲『ドラゴンクエストIX』星空の守り人」。キングレコードから3,000円で発売される
イベントは、六本木にある「ルイーダの酒場」と同じビルのレストランスペース「バハマール」で行なわれた。イベントは抽選で選ばれた20名ということで、マスコミも含め会場はギッシリとなった

 キングレコード株式会社は、2月10日に発売されるすぎやまこういち氏の「交響組曲『ドラゴンクエストIX』星空の守り人」の発売を記念し、一足先にすぎやま氏と一緒にCDを視聴するというイベント「みんなで盛り上がろう!『交響組曲 ドラゴンクエストIX星空の守り人』」が六本木で開催された。イベントには抽選で選ばれた20名が来場しトークショーとCDの視聴を楽しんだ。

 すぎやま氏は発売前の心境を問われ「楽しみと同時にドキドキする。バッと売れて欲しいね」とコメントすると会場からは拍手が起こり、すぎやま氏も「よろしくお願いします」とうれしそうに答えた。

 試聴会はまずは「酒場のポルカ」からスタート。会場が「ルイーダの酒場」と同じビルにあるレストランスペースで開催されたことからこの選曲となった。この曲のイメージについてすぎやま氏は「ヨーロッパのちょっと昔のパブで、皆がジョッキでビールを飲み、奥で演奏しているバンドのバンマスのおっちゃんがアコーディオンを弾いている感じ」と表現。ゲームの音源ではアコーディオンを使ったが、オーケストラにはアコーディオンがいないためクラリネットが活躍したり、また手拍子が入る時はパーカッションを始め手の空いている人が実際に手拍子を打つなどノリノリで演奏されたといった収録時のエピソードも語られた。

 続いて試聴会で流されたのが「天の祈り」。これは天使界で流れる気高く荘厳な曲だが、この曲が「ドラゴンクエストIX」のテーマ曲とも言える曲となっている。すぎやま氏は音楽の入ってないテストロムでプレイし寝床に入った時にフッとメロディが浮かび、ガバッと起き上がり五線譜のメモ帳にボールペンで書き留めたのだという。すぎやま氏は「へその部分の曲ができれば、勝負あった!! という感じで、この曲が出来た時それは思いました」と振り返った。オーボエがメロディを奏でそのまま盛り上がるのではなく、フルートが入りそこで弦楽器が入ることで分厚いハーモニーがついてくるという展開で、この展開を思いついた時に「いける!」と思ったという。

 「ドラゴンクエスト」シリーズは基本的にはクラシックをベースにした音楽形態だが、カジノのシーンでは懐かしいジャズっぽい雰囲気を採用したり、場面にあった展開を見せる場合もある。今回は異彩を放つ妖精のキャラクター“サンディ”の場面でポップス系の歌ものっぽい曲が奏でられる。すぎやま氏は曲の入ったロムをプレイしこのシーンで思わず笑ってしまったという。それだけドンピシャだったと言うことだ。一方、今回のCDでは組曲として収録されており、曲の後半で一転して悲しい展開となる。これはサンディとの別れのシーンで流れる曲だが、メドレーでどうやって繋いでいくかを考えるのも大変ではあるが、作成時の楽しみだと付け加えた。

 トークショウの後半では来場者の質問にも答えた。「最後の戦闘シーンで流れる曲について恐ろしさや威厳を強調した曲が多いが、勇ましい曲を作ることはないのか?」といった質問にすぎやま氏は、「2種類あって、激しく戦う曲とラスボスの威厳や恐ろしさをドーンと出す場合がありゲームによってどちらでいくか (考える)」と答えて「ドラゴンクエストIX」では激しい戦闘でいくことにしたのだという。しかし実は、「『ドラゴンクエストIX』のラスボスは非常に神経質でピリピリしたボスだと聞いていたから、初めは威厳のある静かな曲調だったのですが、その後『ごめんなさい! いきなりガーっと来るんですよ!!』と変更が入り現在の曲調になりました」とガラッと曲調が変わった顛末を明かした。すぎやま氏は「『ドラゴンクエストIX』では様々なラスボスと戦えるので、(曲の)比較検討して欲しい」と語った。

 また、「最近のゲームはストーリーやキャラクタの性格が激しく、それに合わせてゲームの音楽も誰が聴いても同じようなコントラストのはっきりした曲が増えた気がします。聴きやすいが耳に残らない。ハードの性能が上がり音色が選べ自由度が増したが、ステレオタイプの曲が多い気がします」といった厳しい質問も。これにすぎやま氏は「作曲する時は、ハードのスペックとは関係なく良いメロディを考えている。発想自体は影響を受けることはないと断言できる」と自信を持って言い切った。

 「ドラゴンクエストIX」の序曲のアレンジが今回変更となったことについては、「『ドラゴンクエスト』の4作目の時、新しいシリーズが始まるので考えて欲しいと言われ、今回また新しいシリーズを始める意図があったようで、4作目から8作目まで続いたイントロダクションを変えて欲しいと言われた」と説明。5~6種類の曲を考えたなかなから、ゲームがいきなり天使界……宇宙から始まることから壮大で雄大なコンセプトの曲調に決定したという。すぎやま氏は「ゲームが始まる時の印象は大切」と語り、オーケストラの曲をストリーミングで流すことになったようだ。

 さらに質問は曲作りにまで及び、すぎやま氏は制作について「鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス」とその方針を語り、締め切りに追われないそのスタイルを幸せだと語った。ちなみに「酒場のポルカ」はご飯を食べている時に思いついたとか。そして最後に「負けるものか」の試聴が行なわれて、来場者と握手が交わされてイベントは終了となった。

 この後、記者陣の囲み取材が行なわれた。CD「交響組曲『ドラゴンクエストIX』星空の守り人」の聴き所については、ゲームで使われた音源とは違った楽器で演奏されているところがあり、そういったところも楽しいとコメント。「天の祈り」で女性のコーラスが使われているところを、メロディを任されることが多いというオーボエが担当していたり、オーケストラバージョンならではの楽しみを探して欲しいと語った。

 すぎやま氏と言えばゲーム好きとしても知られているが、「ドラゴンクエストIX」に関しては「170時間くらい遊んでいるかな」とさらりと答えた。キャラクターはレベル99でバトルマスターや賢者などの組み合わせだとか。ちなみに「ドラゴンクエストVI 幻の大地」も「やってますとも!!」と力強い返答が帰ってきた。ゲームの展開もけっこう忘れていたりして新たな気持ちでプレイできたとか。「ドラゴンクエストIX」はクリア後に無限に遊べるが「ドラゴンクエストVI」はクリアまでの道のりが「大変」とすぎやま氏。もちろんその「大変」の裏側には「面白くて楽しい」ということだが、いまもプレイ中で「大いに楽しんでいる」とのことだ。

 近況に関しては、「ドラゴンクエストX」について作曲などが進んでいるかとの質問が飛んだ。これに関しては「僕自身スタートしていません」と切りだし「堀井雄二さんやスタッフがプランニングなどを考えているところだと思う。音楽の構想は依頼を受けてから考える。依頼を受けてないし、依頼が来ない可能性もある」と続けると、同席していたスクウェア・エニックスのスタッフからすかさず「それはありません」とコメントが入った。次回作もすぎやまこういち氏の音楽が聴けそうだが、「世界観などがわかった時点から考え始める。それが楽しみでもある」とすぎやま氏もまだ楽しみにしている段階のようだ。

 「ドラゴンクエストIX」に関して言えばすでに「『ドラゴンクエストIX』星空の守り人 シンセサイザー版&オリジナルサウンドトラック版」が発売されているが、すぎやま氏も語るように交響組曲ではまた違った楽しみが発見できるはず。ぜひともチェックしていただきたい。


冒頭流れた「酒場のポルカ」では手拍子の場面で自ら手拍子をしたり、曲がかかっている間はタクトを振る仕草を見せたり、すぎやま氏自身も曲を楽しんでいたトークショーでは「『ルイーダの酒場』のメニューは堀井雄二さんが自ら監修していると言うことで面白い。『ギガンテスのこんぼう』なんて食べたいですね」と答え笑いを誘う場面も最後は来場者1人1人と握手をしてイベントを終えた。すぎやまこういち氏は「楽しい時を過ごせた」と満足そうに挨拶した
以前、コンサートの時の取材時にも仰っていた「ドラゴンクエストIX」においてキーとなる曲は「天の祈り」。この曲が浮かんだ時は「勝負あった!!」と思ったとか会場が「ルイーダの酒場」の上の階と言うことで、まず流された曲が「酒場のポルカ」。会場からもすぎやまこういち氏と共に手拍子を打つ来場者もいたこれは通常の戦闘シーンだが、ラストのボスとの戦闘時に流れる音楽についてもいろいろと裏話を明かした

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(2010年 2月 9日)

[Reported by 船津稔]